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July 2012

Sunday, July 29, 2012

近郊型消滅? suburban首都圏品質

首都圏の鉄道で大きなニュースが2つありました。1つは京王電鉄の調布市内連続立体化事業の進捗に伴う地下線への線路切替が発表され、それに伴うダイヤ改定が発表されました。

8月19日(日)切り替え完了後から
調布駅付近地下線への切り替え完了後、京王線のダイヤ改定を実施します
とりあえずは調布駅での平面交差解消による上り列車の調布駅入場待ちの解消に伴う修正と、調布で折り返す相模原線ローカルの扱い(おそらくつつじヶ丘回送)の変更が中心で、抜本改正は年度内として、時期や内容は現時点で不明です。おそらくATC導入と所属車両の全VVVF化に伴う高加速運転を反映したスピードアップがあるものと期待されます。

もう1つは副都心線と東横線の相互直通に伴う諸々ですが、こちらは5社が絡むため、実質東横線と一体の横浜高速(みなとみらい線)を除く各社で一斉に発表されました。

平成25 年3 月16 日(土)から相互直通運転開始
副都心線と東急東横線・横浜高速みなとみらい線がつながります(PDF)
東急東横線と東京メトロ副都心線
相互直通運転の開始日が2013年3月16日に決定!(PDF)
池袋線が東急東横線、横浜高速みなとみらい線との
相互直通運転を開始します。(PDF)
東武東上線がより便利に!
自由が丘、横浜、元町・中華街方面とつながります!(PDF)
各社それぞれ自社の守備範囲に限定した発表ですが、関連して廃止される東横線の日比谷線直通列車に関し、東武と西武が触れていないのは当然として、メトロでは最後の1行で「日比谷線全列車が中目黒折り返しになります」という表現なのに対し、東急は「菊名折り返し列車を渋谷方面行きに振り替え」としていて、廃止というマイナスイメージを敢えて回避しているところが涙ぐましいです(笑)。

日比谷線に関してはいろいろなことが言われ続けてきましたが、18m車の採用は東急がゴネたという俗説は裏づけがありません。東武が20m車の採用を打診したのは記録に残っていますが、実際は東京都の都市計画でターナー式と呼ばれる都市鉄道網整備手法の採用で、各線のルートを意図的に交差させて乗り換えの利便性を取る前提でルート選定されたため、カーブが多くなり、また可能な限り道路下に地下トンネル躯体を納めて地上権設定を要する民地下を避けた結果、20m級の大型車の運行に適さない路線状況だった結果と見るべきでしょう。また戦前、東京地下鉄道の銀座駅建設時点で、都市計画決定されていた東京市営高速鉄道新宿月島線の交差部を先行施工し、それを活用する狙いもあったのだと思います。東京の地下鉄で20m車が標準となるのは東西線以降の話です。逆に今となっては迂回ルートとなる日比谷線のウェートはそれだけ下がったとも言えます。

余談続きですが、東京市営高速鉄道に関しては、東京市で免許取得しながら、震災復興で財政が逼迫したこともあり、東横電鉄系の東京高速鉄道に免許譲渡されていて、渋谷―新橋間も同様ですが、現場レベルでの直通協議の結果、都市計画と異なる東京地下鉄道との直通運転が実現したもので、東京地下鉄道の早川徳次が構想した京浜地下鉄道品川線との連携、京浜電気鉄道、湘南電気鉄道直通は、戦前段階では具体化していませんでした。

むしろ市営地下鉄の免許譲渡を受けた東京高速鉄道の事業が先に具体化した結果、両者の連携は自然に起きたと見るべきで、銀座駅の交差部の先行施工もその一部と考えられます。猪瀬副知事が著書で指摘する「民間同士の連携で一元化は不可能」は根拠が怪しいわけです。戦時統合で帝都高速度交通営団が発足した後、最初の施工区間となった赤坂見附―四ッ谷間は、元々渋谷線と新宿線の連絡線として追加申請された区間であり、戦後の丸ノ内線(都市計画4号線)に組み込まれました。

話を戻しますが、平日日中の基本パターンで、東横線は18本/時を維持し、渋谷折り返し4本、副都心線直通14本、内4本は東横線特急―副都心線急行という形になり、ほぼ東横線と副都心線の現行ダイヤが踏襲されます。日比谷線直通を振り替えた菊名折り返しの存在が謎ですが、単純に本数を減らしたくなかったこともあるでしょうけど、新横浜経由の相鉄線直通プロジェクトを睨んで、そちらへ振り替えることも考えられます。つまり東横線に関しては現行のダイヤパターンを大きく変更することなく対応可能というわけです。

そうすると目黒線は?という疑問もありますが、現行の6連のまま相鉄線に直通することは考えにくい一方、目黒線開業後も東横線の混雑率は改善が見られず、横浜市営地下鉄グリーンライン開業による新規需要はあるものの、目黒線とそれに連なるメトロ南北線と都営三田線の現状を見る限り、あえて8連化が必要とも思えず、相鉄直通と目黒線8連化のタイミングがずれる可能性まで織り込んだと見ることができます。この辺は蓋を開けてみないとわからない部分ですが、もっと深読みすれば、目黒線系統の8連化が実現し相鉄線直通が目黒線に振り替えられたとしても、多摩川線の延伸線となる蒲蒲線(蒲田ー大鳥居間)直通の受け入れに使い回せるというところまで読んでいるかもしれません。

一方、相鉄側から見れば、元々新横浜経由の東急との直通構想は、神奈川東部方面船として早くから構想されてはいたものの、具体化したのは相鉄が西谷からJR東海道貨物線の羽沢までの新線を建設して都心ルートとする構想を発表した後、新横浜を通らないということで横浜市がクレームをつけたことで具体化した経緯があります。

その観点からいえば、相鉄線から渋谷方面へ向かう列車は走らせたくないはずです。何となれば渋谷の再開発に賭ける東急と、地盤沈下が囁かれる横浜西口の大家である相鉄は、ターミナル同士がライバル関係にあるということから、東急が考えるようにはすんなりと進まない可能性があります。そうでなくても相鉄から見れば東急の車両限界は小さく、また渋谷方面にせよ目黒方面にせよ、私鉄標準寸法に準じたホームドアが設置されており、10000系以降ドア位置もJR仕様で保安装置もJRに合わせてATS-Pに切り替えるなどJRに寄り添う姿勢が鮮明な相鉄にとっては気が進まない話ということになります。横浜市の圧力で実現する都心ルートですが、相互直通関連社局も多く、事業者間の調整にも手間がかかるこのルートが果たして機能するでしょうか。

とはいえ相鉄も10000系以来JR仕様の新車を登場させながら、E231系相当の10000系では1Mユニットを組み込んだ5M5T編成で、加速度3.0km/h/sとしており、E231系の2.5km/h/s(E電仕様)と2.3km/h/s(M電仕様)に対し独自性を見せており、山手線向け500番台の6M5Tで3.0km/h/sを先取りしています。JR東日本ではE231系で通勤型と近郊型が統合されたとされていますが、種を明かせばVVVF制御の特性を利用して制御プログラムの変更で多様な用途に対応できるようにしたものです。E231系では歯車比7.07と高歯車比にしてモーターの回転数を高めて所定の性能を実現するため、高回転に伴うノイズが大きく、また性能に余裕のない使い方なので機器の寿命も短くなり、結果的に「寿命半分」が実現してしまい、それがE233系開発の契機となります。その意味でE233系はJR東日本の新系列車の集大成とは言えますが、コンセプトはかなり薄まりました。

モーター出力が95kwから140kwに増強された結果、モーターの高回転はなくなり、ノイズは劇的に減りましたが、このモーターは常磐線向けのE531系で採用されたもので、つくばエクスプレス対策で130km/hを実現するためだったのですが、E531系では交流回路と交直切替システムという高価なパーツがあるのでMT比はE231系並の2M3Tが踏襲されました。それが中央快速線の201系置き換えに際して、トラブルメーカーだった201系よりも安定を求められた結果MT比が見直されたということになりますが、京浜東北線の209系のトラブル多発で急遽置き換えとなり、6M4Tで加速度2.5km/h/sという余裕のある使い方がされ、それが標準となり京葉線に投入され、埼京線、横浜線もと予想以上の増殖が進んでいます。また田町と新前橋に残っていた近郊型の211系の置き換えも近郊型バージョンの3000番台が投入され、こちらは加速度2.3km/h/sと更に余裕のある使い方がされています。

動力性能が改善され、余裕のある使い方で故障に強いのは良いとして、10連で編成出力は倍増したものの、編成質量は54tも増えていて「重さ半分」は謳えなくなりました。もちろん乗り心地や走行安定性を得るために敢えて重くするということはあり得ますし、例えばドイツICEのような高速列車でも採用されている考え方ですが、回生電力の有効活用が難しい直流電化路線では電力消費量の増加にもつながることでもあり、元々大電流に悩まされる首都圏で節電がテーマとなる今後の展開は結構難しいところです。その意味ではacトレインの流れを汲むE331系がこっそり量産断念となったのは残念です。PMSM利用ではメトロに先行していたばかりか、PMSMの高トルク特性を利用した直接駆動(DDM)にまで踏み込んでいたものの、革新的過ぎてシステムの安定には程遠く、量産断念となりました。

結局JR東日本は私鉄とは異なったアプローチで首都圏の大量輸送のミッションに取り組み、結果的に私鉄にも標準設計という形で取り入れられました。また民営化当時、低性能老朽化が進む旧国鉄型を大量に抱えたJR各社は所属車両の更新も大きなテーマでした。その意味で「重さ半分、値段半分、寿命半分」のコンセプトで投入された209系以来のJR東日本の新系列は大きな役割を果たしました。金に糸目をつけない高性能車で車両更新を図ったJR西日本は、京阪神アーバンネットワークで広域に需要を掘り起こすことには成功したものの、高価な車両の投入で旧型車の置き換えは進まず、低性能の国鉄型をN40工事と称する更新工事で延命させるツギハギだらけのやり方を余儀なくされています。

JR西日本ではそもそも通勤型は運用範囲が限定され、3扉転換クロスの近郊型が標準となっています。このことに東大の曽根悟教授もJR東日本への苦言をRJ誌上で述べていますが、そもそも首都圏と近畿圏では都市構造が違うので、同一視する方がおかしいと思うのですが、ただ言えることは、いずれも大都市圏の輸送を担う立場からサービスの標準が決められている点に変わりはなく、顕著なのはローカル輸送ですが、JR東日本が秋田、山形地区の50系客車230両を701系電車89両で置き換えたことを曽根教授は「乱暴」と表現しましたが、JR東日本の見解は明快で、ローカル区間で利用が減っているときに、それ以上にコストを削減する経営判断ということです。JRが運営する限り、公共部門からの助成は期待できない以上、こういう判断を責めるわけにはいきません。基本的にローカル区間でも首都圏とほぼ同水準の運賃水準ならば、首都圏の大量輸送の標準モデルを援用するのは当然のことです。

この問題ではJR西日本もいろいろやってくれてます。例えば小浜線に投入されたクモハ125の悲劇をおさらいしますと、アーバンネットワーク標準の223系と車体や足回りを共通とした単行ワンマン用のクモハ125を投入したものの、2+1の横3列配置の転換クロスに両運転台と車いす対応トイレを装備した結果、座席数が極端に少なくなり、立席乗車で不興を買ったため、急遽2連化したのですが、その結果2連で運転室4箇所に車いす対応トイレ2箇所という無駄なスペースの塊となりました。最初から2連で作れば、運転室2箇所トイレ1箇所で済んでコストも下がるし旅客スペースも広く取れたのですが、アーバンネットワーク品質からすれば単行で十分となって、高価で乗れない電車が誕生しました。ある意味福井県の原発マネーが電化資金として提供されたからからできた道楽でしょうけど、大都市の品質をローカルに持ち込むという意味ではJR東日本と変わりません。むしろ公的助成のない岡山近郊や広島近郊では、103系が轟音を轟かせて走っており、同じ露骨なコスト圧縮でも、新車が入ったJR東日本のほうがマシです。

といった目くそ鼻くそ話はさておき、ロンドンオリンピックが開幕し、鉄道関連ではオリンピックジャベリンの活躍がニュースです。これはHigh Speed 1と呼ばれる高速新線(CTRL)のロンドン、セントバンクラス駅からオリンピック公園最寄りのストラトフォード国際駅(セントバンクラス起点9km)経由でエブスフリート国際駅(セントバンクラス起点37km)までを結び、それぞれ7-8分、10-15分の所要時間で6分ヘッドということになります。首都圏でいえば東海道新幹線の東京―新横浜間よりも長い距離を日立製のClass385型電車で結ぶもので、最高時速225km/h、ただし+15km/hの余力は欧州品質ですから、遅延時には240km/hで走ることもあります。これがロンドンの近郊列車の品質というのですから、冒頭の東急の新横浜延伸を巡るモザイク模様とは大違いです。もちろんユーロスターなどの国際列車の頻度は東海道新幹線のそれをかなり下回っているわけですが、逆に言えば日本が誇る東海道新幹線のサービスレベルはロンドンの近郊列車並みの品質という見方も。実際欧州ではそのように評価されているのが現実です。そんな中でこんなニュースです。

日立 英高速鉄道で一括受注 NHKニュース
日本のメディアでは背景説明が一切ありませんが、元々労働党ブラウン政権時代に日立が優先交渉権を得ていたものの、2010年総選挙出の政権交代のあおりで、キャメロン政権で事業が凍結されていたものが復活したものです。一方で2009年12月の大寒波でユーロスターが英仏海峡トンネル内で立ち往生し乗客500人が16時間カンヅメとなったときも、Class395だけは無事に走り続けるなど、安定性に定評があったので、プロジェクトが復活すれば間違いなく受注できる案件だったものです。日本のメディア品質は最悪です。

加えて英高速列車の老朽化は、主に保守党サッチャー政権時代の公共投資抑制のあおりで鉄道投資が大幅カットされた結果でもあり、後継のメージャー政権下で実施された国鉄改革で大高覧を来す原因にもなっただけに、歳出カットばかりで不人気なキャメロン政権は決断せざるを得なかったと見ることもできます。当然LIBOR不正疑惑やオリンピック警護問題などで失態続きなさまは、日本の民主党政権に負けず劣らず。成熟国の政治状況は混沌が支配しています。

ただし近郊列車の品質は高いロンドンですが、そもそもオリンピックジャベリンの構想はロンドンの脆弱な公共交通事情を懸念したIOCの提言によって計画されたもので、本来ならば地下鉄やバスが果たす役割を高速新線で行わなければならない事情もあるわけです。ロンドンの地下鉄は大江戸線よりも小ぶりな車両で絶えず混雑していて、また故障も多く、混雑や故障による改札封鎖も日常的というのがロンドン品質ですが、オリンピックで2割、100万人程度の利用増が見込まれる中、まともに走るかどうかさえ危ぶまれる状況ですし、元々ロンドンは渋滞全がかけられるほど渋滞の名所なのに、オリンピック関係者優先のオリンピックレーンなるものまで設定され、タクシードライバーが抗議デモまでやるような状況では、バスはまず使えないと考えるべきでしょう。

というわけでせせこましくもごみごみしたロンドンで行われるオリンピックは、開会式の演出の見事さは北京と比べても出色ですが、同じことが東京で起こるとすれば、とりあえずオリンピック期間中は都内で車は使えないし、あらぬところで改札止めが起こるハプニングなど、8年後の東京を想定すれば、英国品質のオリンピックはある意味見所満載ではあります(笑)。

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Sunday, July 15, 2012

クラゲスクラム

まず前エントリー補遺補遺です(笑)。世界の日本化という観点で指摘すべきは、株式と債券の利回り逆転現象があります。株式の配当利回りが国債などの債券利回りを上回る現象です。

少し解説しますと、株式の配当利回りは時価に対する利回りを意味しますから、配当性向の高低とは無関係で、むしろ配当性向の高い銘柄は市場で人気となりますから、結果的に配当利回りは低下し、通常は元本保証のある国債利回りを下回る水準になります元本保証がなく紙くずになるリスク資産が利回りが低いというのは納得しにくいですが、逆に株価の将来の上昇や株式分割による権利拡大などでキャピタルゲインを得られる可能性がある一方、有限責任原則で株式購入費を超えた債務を負わないという下限のある投資でもあるという意味で投資の世界では常識だったのですが、グローバル競争激化で大企業でも将来の保障はなく、紙くずになるリスクが高まった一方、元本保証のある国債の安全性が評価されて、所謂市場間の裁定が働いて株式から債券に資金シフトが起きているわけです。その結果アメリカでもドイツでも国債金利は低下の一途を辿り、また中央銀行の金融緩和措置がそれを後押ししていることもあり、株安、債権高の流れが定着し、気がつけば日本同様利回りの逆転現象が起きてしまったわけです。

所謂ケインズの言う「流動性のわな」が生じてマネーだけが無意味に空回りしているわけで、財政政策も金融政策も含むマクロ政策でこの閉塞状態は打破できないわけで、基本的には個別の経済主体のインセンティブに働きかけるミクロ政策を積み上げるしかありません。そしてミクロ政策の大きな流れとしては、主に企業部門のインセンティブに働きかける英米型の新自由主義モデルと、主に生活者としての国民個人に働きかける北欧モデルに二分されますが、直近の成果で見る限り、成功しているのは後者です。つまり「国民の生活が第一」は理念としては正しいわけです。残念ながら日本は前者に傾く傾向が強いようです。例えばこんな記事です。

東京新聞:逆転 新たに8都府県 最低賃金が生活保護下回る:政治(TOKYO Web)
この問題には最低賃金引き上げに財界が反対している構図と共に、生活保護受給者になると納税はおろか年金や健康保険の保険料まで免除されるため、結果的に勤労者の可処分所得を上回ることになるという構造問題があります。消費税増税ばかりがクローズアップされますが、社会保険料の負担が大きい一方で、勤労者の賃金が伸びず、結果的に可処分所得が減少している現実があるわけです。個人のインセンティブは後回しというわけです。

脱線気味ですが^_^;、本題は電力問題です。この問題はやや食傷気味の感もありますが、大事な問題ですので続けますが、大飯原発3号機の再稼動で火力発電8基を停止しています。大飯3号機のフル稼働に揚水発電のピーク対応を足しても170万kwの増強なのに対し、火力8基の停止で380万kwの供給が止まっています。

関電「でんき予報」に漂う“不信感”…大飯再稼働でも改善せず (産経新聞) - Yahoo!ニュース
もちろん火力の連続運転は燃料費がかかる上にトラブルの可能性もあるわけですが、8基を一斉に止める理由にはなりません。メンテナンスのために輪番停止して一定量の稼動は確保できるはずです。やはり安全よりも関電の経営上の都合が優先されたわけで、政府も企業である事業者の都合を優先させたことを意味します。

関電の特殊要因としては原発依存度が高いという点はあります。その結果資産計上されている原発の財務上の都合で稼動させなければ不良資産化するという点はあります。その分東電や中部電などと比べても原発のお荷物ぶりは高くなるわけですが、少なくとも使用済み核燃料の冷却をプールに入れて水を循環させるから電力消費が発生するわけですが、これをアメリカのようにドライキャスクに納めて発電所で保管する形にすれば、コストダウンが可能ですが、どうもそれをやりたくない事情があるようです。

以下は推論の域を出ませんが、核燃料サイクルとの関連で使用積み核燃料を再処理して燃え残りのウランやプルトニウムを抽出することを前提としているからなのかもしれません。ドライキャスク利用は所謂核燃料使い捨て(ワンススルー)が前提となるとすると、核燃料サイクルを含む国のエネルギー政策が決まらないと踏み切れないという理屈はありそうですが、仮にそうであっても、電力不足を理由に大飯再稼動を急ぐならば、緊急避難でドライキャスク利用でせめて止まっている原発の無駄な電力消費を回避することは考えても良かったのではないかと思います。どうせ六ヶ所村の再処理施設もトラブル続きで見通し立たないんですし。

また連続運転に不安があるとされる老朽原発にしても、例えば昨年東電では管理下の複数の火力発電所をガスタービン発電機などに更新したりして連続運転に備えましたが、関電が老朽火力の更新をおざなりにできたのは、死に体の東電に対して事故の当事者でなく発言力を温存している関電だからできた可能性もあります。この辺はスマートメーターの実証試験で、東電でさえ断念した独自規格のメーターを既に設置して、唯我独尊ぶりを見せていることなどと併せて見ると、事業者としての関電の事情ばかりが優先されているという見方を裏付けるのではないでしょうか。思えば東電の陰で業界No.2に甘んじていた同社が敵失でトップに躍り出たわけですから、最大限のチャンスと捉えている可能性すらあります。いずれにせよドライキャスクの問題も老朽火力の更新問題もやる気の問題と言えるかもしれません。

こうなったのも元を質せば東電に公的資金を注入しながら生かした処理の問題に行き当たります。JALのような法的整理による破綻処理をいかさまな理由で回避したくだりは以前取り上げましたが、政権交代後の民主党でほぼ唯一成果を得たと言えるJAL破綻処理とオープンスカイ政策移行とは雲泥の差です。ちなみにライバルのANAがJALのV字回復を「税金の助けでリストラをして競争上不公平」と不満を述べてますが、関電と同じで敵失による市場独占が果たせなかった負け惜しみです。またJALを救済して競争条件を維持したからこそ、ピーチを皮切りとするLCCの時代を切り開いたわけで、自公政権時代にはこうはならなかったことは間違いありません。事実自民党はANAの言い分に乗ってJAL再上場に待ったをかけており、廃止された国内ローカル路線の復活など時計の針を戻そうとする呆れた主張をしています。

それでも東電管内ではPPSの新規参入や設備増強が出てきており、また東電自身も老境火力の更新を新規参入社に開放するなど柔軟なところを見せておりますが、関電管内では目立った動きはありません。やはりこの辺は力関係が影響していると同時に、ある意味草刈場と化している東電管内への越境営業などはほとんど見られず、地域独占を前提とする業界秩序は崩したくない電力各社の本音が透けて見えます。業界こぞって腐りきっております。JALを破綻処理してANAを刺激したように、東電を解体して業界秩序を壊すぐらいの荒療治が必要です。ひょっとしたら民営化から四半世紀を経てマンネリ気味のJRも何らかの活性化策が必要かも。

こんな風だから毎週金曜日に首相官邸前に再稼動反対デモで大勢の人が詰まるわけです。政治家が国民のために働かないなら、直接行動で意思を示すのは当然のことですが、日本もやっとフランス並みに追いつきました。ただ日本の場合、消費税問題もそうですが、大飯再稼動でも連合の暗躍が言われます。消費税採決前に民主党議員を回って反対したら次の選挙で支持しないと脅して回ったとか。大飯再稼動問題でも電力総連を抱える連合は民主党に圧力をかけているようです。国民に敵対する労組とは何者でしょうか(怒)。

最後のこんなニュースを。

大飯3号機クラゲ発生で出力低下 フル稼働ずれ込む可能性も 原発再稼働問題 福井のニュース :福井新聞
クラゲも抗議行動?ってわけじゃありませんが、原発の排熱は海水で熱交換されてますから、原発周辺は元々海水温が高めでクラゲの大量発生はそれなりにおきていたようです。この辺は未確認情報ですから断定はしませんが、恒温動物の哺乳類や鳥類を除く水生動物は水温=体温ですから、海水温の変化には反応しても不思議ではありません。それどころか反原発の立場の著作家広瀬隆氏に至っては、クライメートゲート事件を根拠に地球温暖化CO2原因説は破綻したとして、都市熱と原発の排熱を温暖化の原因とまで述べてます。私はクライメートゲート事件の不正発覚後でも、それがCO2原因説を否定する実証的な根拠にはならないと考えるのでこの説は採りませんが、原発の排熱の生態系への影響などは未知の分野ではあります。とはいえ国民に敵対する労組よりもクラゲスクラムの方が頼もしいかも(笑)。

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Saturday, July 14, 2012

日出ずる国の日本円が超強い

世界中の経済が変調を来しています。やはり一番大きなニュースはロンドン銀行間オファー金利(LIBOR)不正問題です。

LIBORシステム問題 英米、08年から認識  :日本経済新聞
英銀バークレイズの金利操作事件とされてましたが、不可解なのがLIBORを単独行で操作できるのかという点です。決め方は例えば米ドルであれば18行がそれぞれ、その日に他行から調達できると考える金利を午前11時までに申告し、英銀行協会がまとめるんですが、上下4行づつを除外して決めるため、極端な数字を申告しても参照されません。ゆえにバークレイズの担当者は他行の申告金利を予想して高め誘導ならばカットされない上限値で毎日申告するというほとんど神業のようなことをやっていたわけです。事前に談合されていたか、それに近い空気感があったということでしょうか。

あるいは毎日同じ傾向の申告がされていれば、それ自体かなり不自然なことですから、他行や当局も変だと思うはずなのに、ここまで見逃されてきたのは、ある種「阿吽の呼吸」があったのかもしれません。何だか東アジアのどっかの国のような話です。ただし不正と断定して損害賠償を求めるにしても、基本的に状況証拠ばかりですから、証明はかなり困難です。そもそもロンドンの金融街では伝統的な銀行融資自体は細り、LIBORはデリバティブ取引などプロ同士の相対取引を前提とする金融取引の参照金利という性格が強くなってきており、基準金利としての実質は空洞化していたとも見ることができます。ある意味不正を生む温床となっていたといえるかもしれません。

というわけで海の向こうの金融資本主義の最先端と思われていたロンドンの出来事が、日本人には既視感を拭えないものになっております。ロンドンといえば日本列島狂人化計画で指摘したJPモルガンの「ロンドンのクジラ」の巨額損失事件もありましたし、LIBOR不正への関わりも指摘されています。またユーロ危機でも元々通貨同盟に過ぎなかったユーロが曲がりなりにも機能した背景にロンドンの金融仲介機能があると言われますし、グローバル金融市場は元々リーマンショック後の再発防止機運で規制強化の方向性が打ち出されていただけに、規制強化は進むものと考えられます。

日本でも今、証券インサイダー問題で揺れていますが、元々規制の緩かったところに90年代後半の金融危機で規制強化に舵を切られ、旧大蔵省から金融行政を切り離し、銀行検査マニュアルの見直しや証券等監視委員会の設置などが行われた結果、さまざまな不正が明るみに出ているというわけで、時間がかかっているという点で日本独自の時間軸の流れはあるものの、おおむね日本の経験を世界が追体験する流れと見ることが可能です。世界の東の果ての日出ずる国は不始末も世界に先んずるわけです。

ということは、これから世界で起きることは、日本の経験を踏まえればかなり見通せるということでもあります。例えばスペインは典型的な不動産バブルの崩壊によって銀行が不良債権を抱えている状態で、処理を終えるには多大な時間を要するということは言えます。悪いことに日本と違って経常赤字国で財政出動の余地は乏しく、日本以上に時間がかかると見るべきです。

またリーマンショック後にアメリカとドイツで製造業が好調で、特にアメリカはGMの法的整理と政府の支援で自動車産業は復活しており、オバマ政権の製造業復権はある程度成功した形です。ただしドルの為替調整の結果と見ることもでき、丁度日本のゼロ年代の戦後最長景気時代と同じで、国内の設備投資はそれなりに出てきているものの、雇用には繋がらず格差拡大は進んでいる状況です。また新興国貿易の比重が高まっており、後述の理由で先行きは黄信号です。

この面ではむしろドイツの方が絶好調というべきでしょう。ユーロ危機で厄介なのは、元々経常黒字国のドイツはユーロ導入でユーロ圏諸国への輸出が為替リスクフリーとなり、域内輸出で稼いでいた上に、ギリシャなど南欧危機でユーロの信認が揺らいで、日米や新興国向け輸出でも優位にあり、ある意味南欧諸国の負担で輸出補助金を得ているようなものです。つまりドイツの本音はギリシャもスペインも破綻しない程度に危機が続いて欲しいということで、簡単に解決しないのはむしろ願ってもないことということになります。故に銀行同盟による金融行政統合には賛成しても、ユーロ共同債発行など政治統合は徹底的に値切っているという状況です。故に欧州危機は簡単に終結しないことがわかります。

しかしそのドイツにとってもいいことずくめとはならないのは、97年のアジア危機の再現の可能性が指摘されるからです。アジア危機の陰の主役は日本の大手銀です。バブル崩壊で不良債権を抱え、金融危機で規制強化に向かう中、所謂貸し渋りや貸し剥がしが横行しましたが、アジア危機も早い話、当時アジア進出を果たした邦銀がバーゼル銀行規制に対応するために資金を引き揚げた結果、アジア諸国は軒並み資金不足となり経済危機となったわけです。邦銀はこれに懲りて海外での融資に慎重だった一方、新興国には欧米銀の資金が流入し、特に欧州銀の協調融資は残高を膨らませてきていました。それがユーロ危機で資金を引き上げ、今年1-6月だけで26%減という状況ですが、どう見ても日米銀で全て肩代わりは不可能なんで、新興国は今後資金不足で経済が減速してきます。既に中国やインドはその傾向が出てきてますし、少なくとも資源国でない新興国の経済にはブレーキがかかる流れです。故にドイツもそうですが、アメリカの製造業復活には黄信号ですし、当然新興国向けに投資を拡大している日本企業も難しい局面にあると見るべきです。

しかしなぜ日本がグローバル経済を先取りしているのかというと、簡単に言えば日本市場の閉鎖性の影響と考えられます。元々市場経済は開放系で市場外の要素を市場内に取り込むことで成長してきたもので、80年代以降は新興国の台頭と冷戦終結による社会主義国の参入でグローバル経済が活性化されてきたのですが、その流れに乗り遅れた日本市場は擬似閉鎖系となり閉塞感漂う現状にあるわけです。しかし経済のグローバル化は同時に市場の外部の喪失を意味しますので、開放系であるはずの市場は、これ以上の外部がない閉鎖系となるわけで、ある意味市場経済の到達点が見えてきたということでもあります。そうなると元々閉鎖的だった日本市場で起きたことが世界で再現されるわけです。

日本の擬似的な閉鎖性は経常黒字国故に可能なことではあります。故に正確には完全な閉鎖系ではないのですが、輸出で国外市場への進出に意欲を示す一方、国内市場への海外からのアクセスには障壁を設けて温存じてきたわけで、その結果国内の無風状態の一方で長年の経常黒字の累積による世界最大の対外純資産となっているわけです。だから原発停止で燃料輸入が増大して一時的に貿易赤字を計上しても、分厚い対外純資産の利益配当が2011年で14兆円にも上り、経常収支で9兆円の黒字を計上する結果となっています。

逆に言えばこの分厚い対外純資産が日本の財政規律を緩める原因でもあるわけで、その気になればいくらでも借りられるから歯止めが利かず、気がつけばギリシャ以上の財政赤字の累積となっています。それでもスペインなどのように金利上昇しないのは、資産の裏づけがあるからで、政府や財界が言うように日本は消費税率が低くて増税余地があるからという説明は大嘘です。むしろマンデル=フレミングモデルと呼ばれる為替の変動相場制を前提とする理論モデルでは、経常黒字国の財政赤字は金利上昇ではなく通貨高をもたらすとされています。

ザックリと説明すれば、通常の経済主体であれば、借り入れを増やせば信用力の疑義から金利が上乗せされるはずですが、経常黒字国の政府の借り入れ拡大は、金利上昇の前に為替で直ちに調整されてしまい、金利上昇が現象として現れないというものです。もちろん仮定を重ねた上での理論モデルで実証的に証明されているわけではありませんが、90年代の橋本政権やゼロ年代の小泉政権時代に財政緊縮化したときに円安が進み、その後を引き継いだ90年代の小渕政権とゼロ年代以降では麻生政権と政権交代後の民主党政権で財政赤字が拡大した結果、円高が進んでいるという事実関係があります。もちろんこれだけで断定できるわけではないにしても、企業が悲鳴を上げる円高を阻止したかったら、緊縮財政で赤字を減らす方が良いということになります。

というわけで今回の消費税増税法案には、成長に資するものや減災投資など真に必要な公共事業は行うと明記されており、首相周辺は否定するものの、自民党が狙う大型公共事業復活が織り込まれております。こんなもん実行に移されれば資産の浪費で日本は国として衰退の道へ向かうことになります。つまり「日出ずる国」とか「課題先進国」といった呼称は、実は世界にとっては反面教師というありがたくない意味でもあるわけです。

むしろいつまでも解消しない通勤ラッシュの混雑解消や、3.11で顕わになった帰宅困難者を減らすためにそもそも東京への通勤を減らすための投資こそ、実は最重要の減災投資であるはずです。それを財政に負担をかけずに実現できる制度面での工夫は例えば前エントリーで触れたゾーン運賃による運賃一元化に都心へのアクセスチャージを潜り込ませる手法などですが、このような議論を積み重ねていくことが重要です。でないといつまでもエンガチョ切れない困った状態が続きます。

若干の補遺ですが、アジアでもドイツに近いポジションを獲得している国と地域があります。1つは台湾で、中国という巨大下請けを抱えていて競争力抜群です。もう1つは韓国で、北朝鮮の瀬戸際外交のお陰で通貨ウォンが安く評価されやすいことで、言うまでもなく最近の海外市場での強いライバルですが、1人当たりGDPの比較で台湾は日本の3/4、韓国は半分の水準で、且つ差は縮まりません。台湾にとっての中国、そして韓国にとっての北朝鮮は、ドイツにとってのギリシャのような存在と言えばわかりやすいでしょうか。日本には生憎こういった不肖のパートナーは見当たりません。つまり対アジア通貨でも円高は続きます。
(7月15日記す)

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