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Sunday, August 26, 2012

どこでもホームドアな未来

メディアジャック状態だったロンドンオリンピックも終わり、いろいろありましたが、とりあえず無事終了しました。驚きなのは事前に予想されたロンドン市内の交通の混乱でしたが、事前告知が効いたのか、混乱を恐れたロンドンっ子たちは、仕事を前倒ししてオリンピック期間に長期休暇を取得し、期間中ロンドンを訪れるビジネス客も減少し、ロンドン市内は閑古鳥が啼く始末。またロンドン東部再開発に連動して競技場や選手村をイーストサイドに集めたこともあり、ロンドン中心部はいつも以上に閑散としていたそうです。

その一方で凱旋帰国した日本選手団のメダリストが銀座でパレードをやって主催者発表で50万人が集まったそうです。毎週金曜日の官邸前デモで主催者発表20万人警察発表7万人から敷衍すると銀座パレードの警察発表なるものがあり得るなら17万人ぐらいか(笑)。いずれにしても大きな混乱もなく実行されたわけで、原発問題に限らず政治的インパクトを求めるなら東京で100万人ぐらい動員できなきゃ効果がないのかもしれません。

もう1つ特筆すべきは8月10-12日の3日間東京ビッグサイトで行われたコミックマーケットで延べ56万人の一般参加者を集めたそうですが、こちらはメディアではほとんど話題にもなりませんでした。このクラスの動員で東京の都市交通に負荷がかかるということはないようです。とすると2020年に万が一東京オリンピックが開催されて、1日100万人規模の観客動員があったとしても、朝のラッシュに被るとかしない限りははあまり心配は要らないのかもしれません。ただし落とし穴はあります。

コミケはあくまでも会場が東京ビッグサイトということで、ゆりかもめにしろりんかい線にしろ輸送力に余力がありますし、都心に比べて道路が整備されていて大駐車場も用意されているなど、車の増加に対してもある程度余力があるわけですが、ロンドンの場合と違って1964年のオリンピック施設を中心に開催が検討される2020年東京オリンピックの場合、関係者やメディア関係の会場間移動だけで道路交通にとっては大きな負荷になることが予想されます。さりとてロングバケーションが必ずしも定着していない日本のビジネス環境では、前倒しで仕事を片付けて休暇というのも難しそうです。また築地魚市場の豊洲移転と跡地のプレスセンター設置は、道路状況を勘案すれば魚市場は移転せずプレスセンターを豊洲に持ってくる方が合理的かと思います。

ただロンバケ習慣のない日本ですが、2011年の電力使用制限令の許でのさまざまな工夫の経験は使えるかもしれません。1つは在宅勤務の拡大で、特にオフィスが集積する東京の場合、必ずしもオフィスでなければできない仕事ばかりではないけど、惰性でそうなっている傾向は否めません。それならば仕事の中身を見直して、出社の必要性の有無をシビアに検証するチャンスと捉えることは考えられます。加えてこのことは首都直下地震など大災害の被害最小化や帰宅難民を減らすなどの意味合いもあり、どうせならオリンピック開催の意義に加えればアピールポイントとなる可能性もあります。それとフレックスタイム制の拡大で通勤ラッシュの平準化を組み合わせれば、通勤ラッシュと観客輸送の競合もある程度緩和できる可能性があります。これも昨年の節電で多くの会社が操業時間を見直した結果、朝ラッシュのピーク時混雑率が改善した実績もありますし、オフィスワークならコアタイムの見直しやテレビ会議の活用などである程度対応できる可能性はあります。むしろ新しいことに消極的な日本企業の背中を押す効果は期待できるかもしれません。

とはいえ人口集積地でもあり、居住人口が巨大な東京の場合、大きなネックがあります。それは人口集積地ゆえの生活物流の問題です。時間帯や時期をずらせる可能性のあるビジネス物流はオリンピック期間をある程度外す体制を組むことは不可能ではありませんが、生活物流はこうはいきません。特に今や都市の重要なライフラインとして存在感を増したコンビニエンスストアの場合、毎日の定時物流が店頭品揃えに直接影響するのは3,11でも明らかで、物流が正常に動かなければ直ぐに棚が空になるのが実態です。もちろんコンビにに限らず多数ある食品スーパーやドラッグストア、個人経営の青果、精肉、鮮魚店や豆腐、麺の製造販売など、生活に密着した多数の小売り業態が影響を受けることになります。これらの業態は大型店と違ってバックヤードに十分なスペースがありませんし、鮮度管理の問題もありますから、事前に在庫を厚くするなどの対応も不可能です。つまり住民生活を支える生活物流の維持を考えると、東京でのオリンピック開催は望ましくないというのが今のところの私の見解です。

それでも心配なのは、やはり鉄道のラッシュ対応なんですが、いわゆる新年度現象というのが鉄道業界ではありまして、毎年4月新年度に、不慣れな新入社員や新入生が鉄道に殺到する結果、混乱や遅れが出る現象です。いわゆるラッシュビギナーの大量デビューにより繰り返される年中行事ですが、仮にオリンピックが実現すると、今度は日本語ワカリマセーン^_^;なビギナーが大挙出現するわけですから、混乱なく対応することのハードルはかなり高いと見るべきでしょう。不謹慎かもしれませんが、いわゆる触車事故も心配されます。というわけで、やっとタイトルに辿り着きました^_^;。

自殺を含む触車事故防止に効果があると言われながらホームドアの設置が進まない事情は過去のエントリーで取り上げましたが、既存路線への設置にいろいろ制約条件が多い点と共に、そもそも混雑が触車事故を誘発する最大の要因であると共に、その混雑がホームドア設置を阻害する要因でもあることを述べました。それでも事故が絶えない現状からJR山手線で設置を決めた他、東京メトロ有楽町線や都営地下鉄大江戸線、横浜市営地下鉄ブルーラインなど地下鉄で設置が進む一方、首都圏各社は乗降客の多いターミナル駅で設置する例が出てきています。過走余裕がなくATCでバックアップしながら低速進入するターミナル駅で、ドア位置を合わせるための定位置停止装置の設置をせずに実現した事例が東急大井町線大井町駅などで見られるようになりました。

そんな中で今月19日に地下線に切り替えられた京王線調布市内3駅にホームドアが設置され、うち布田駅では既に使用開始しています。面白いのは布田だけ線路と駅ホーム空間を完全分離したタイプで国領と調布は下半分だけのホーム柵と異なっている点です。おそらくシールドトンネル駅の布田と箱型トンネル駅の国領と調布で使い分けたという意味と、乗降客の違いといった事情がありそうですが、それ以上に初のホームドアに関する経験値の積み上げの意味がある気がします。ちなみに布田は初日から使用開始している一方、国領と調布は可動柵を開放状態でした。様子見なのか準備が間に合わなかったのかはわかりません。

いくつか気づいた点は、まず停止時に極端に減速して位置合わせをしていた点で、その分ダイヤは寝ているようです。おそらく調布駅の平面交差支障がなくなって上りの入場待ちがなくなった分だけ余裕時間を取っているのだと思いますが、それでも初日は2分程度の遅れが出ていました。この辺は馴れてくれば改善されるのかもしれません。ひょっとしたらダイヤの抜本改正を見送って暫定ダイヤとした理由は、ホームドア関連で乗務員の習熟期間を見たという意味かもしれません。

また開口部がメトロなどに比べて明らかに広いのですが、ひょっとするとTASCの省略の意図もあるのかもしれません。元々駅部のATC区間は細分化されていますから、過走防止機能の精度を上げて代用ということかもしれませんが、現時点で裏は取れておりません。またドア位置は京王独自の4扉が中央に寄った特殊な配置ですから、都営車との誤差吸収の意味で開口部を広くしているのかもしれません。

尚、一部で特急廃止という話も出ましたが、結局暫定ダイヤで平日日中と休日の基本ダイヤで特急が準特急になったものの、朝などに特急は少数残っています。おそらく抜本改正では特急停車駅を増やして準特急と統合し、速度アップで運転時分は維持する予定が、ホームドア関連?で暫定ダイヤにせざるを得ないために中途半端に特急が残り、特急と準特急の統合ができなかったということだろうと思います。おそらく年度内に実施される抜本改正を楽しみにしましょう。

しかしこの辺は京王のクレバーさを感じるところでもあります。地下化というプロジェクトに乗じてホームドアの経験値を積み上げ、将来の全面設置の布石にしようというわけですね。今後着手される代田橋―仙川間の連続立体化では、ここでの経験に基づいたホームドアの標準仕様が決まるのかもしれません。

というわけで、ホームドア設置は各社各様の取り組みが見られることになると思いますが、現時点で将来像を見通すのは難しいところがあります。郊外部ではホーム拡幅で済ませる東海道線辻堂のような事例もあり得ます。ただでさえ人口減少で増収が見込めない中、人身事故が多くて輸送障害が増えていることに悲鳴をあげたという側面はあるものの、コスト制約の中で鉄道会社が新たな安全投資に舵を切ったことは評価したいところです。

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Comments

過去のホームドアの記事を拝見しました。
既にご存知かもしれませんが、TASCとATC/ATSは別物です。
東急池上線のようにATSでもTASCは設置できます。
ちなみに重箱の隅をつつくようですが、現在の大井町線はATCです。

京王線のホームドアですが、TASC省略は驚きです。
ATCの誤通過防止機能でその代わりとしているようですが、ピーク時30本の過密路線にしては効率が悪く、無理がある気がします。効率重視の山手線のホームドアとは対照的ですね。コスト重視なら、西武ATSのZパターンのように過走防止と割り切って、最高速度からの非常制動パターンにする方法もあります。運転士の操作優先で効率が良く、しかも低コストです。

いずれにしても、ホームドアの技術は発展途上で高コストなのが現状です。各社で普及が進み、改良され、コストが下がることを期待したいですね。

Posted by: yamanotesen | Monday, August 27, 2012 at 12:35 AM

もう少し、駅に降りて、運転席の速度メーカーを眺めてなぜ遅延しているかを、お調べになった方がいいのでは?

現行ダイヤですが、今回の改定で調布つつじヶ丘間で普通のスジを1分寝かせましたが、実際はさらに1分寝かせないといけないでしょう。布田駅のホームドアは安全確認手順が複雑(ホームドア確認用のモニタが2段10画面もある)で発車まで大幅に時間がかかっています。私が確認した時はまだ国領調布のホームドアは稼働してませんでしたので、さらに30秒寝かせた方がいいかもしれません。ATC化で特に調布、つつじヶ丘、八幡山、桜上水(上り)の駅進入が目を覆うばかりの超鈍足になり、これはATCの仕様を大幅に変えないとどうしようもないので、もはや現行設備で無理なくスジを立てるのは絶望的でしょう。確かに列車間隔は明確に詰められていますが、踏切がホームすぐそばにある現行京王設備での現行仕様ATC運用はデメリットが多すぎます。(カーブの速度制限についても以前に比べかなり手前での減速を余儀なくされています。あとブレーキパターンも緩慢。)少なくてもダイヤ作成上の一点については京王型ATCの導入は明白に失敗であったと言えるでしょう。高加速スイッチを常用化してもこれなんですから。

現行の状態だとつつじヶ丘折り返しの
本線系統の普通がつつじヶ丘で優等の2重退避をすると、確実に府中まで逃げ切れないので、(東府中で捕まる)抜本改定では急急接続はなくなるでしょうし、つつじヶ丘折り返しの普通も無くなるでしょう。(普通停車駅に負担をかけ過ぎている上に上記の関係でダイヤも崩壊している)

抜本改定では優等優先、速度優先よりも各駅の乗車チャンスを均一化する方向に振られる気がしています。速度優先は現行仕様ATCとホームドアがある限り無理です。ATC改善の噂すら聞こえてきませんし。(一応一回直してますが)

もちろんダイヤ今より遅くなっても京王の経営に負の影響がそれほどあるとも到底思いませんけどね。

Posted by: ATCガッカリ | Monday, August 27, 2012 at 04:33 AM

コメントありがとうございます。ご指摘のように、初日のチラ身だけで、全てを見きれていませんし、裏も取れてませんので、ツッコミ感謝です。

確か名古屋のあおなみ線がATS-SとTASCを組み合わせて浸かってたと思います。池上線も東急ATS(旧国鉄B型相当)とTASCを組み合わせてますね。大井町線のATC化は忘れてました^_^;。

逆に京王の場合ATC化が仇になったのかもしれません。西武のATSはAF軌道回路を用いながら、あくまでも乗務員バックアップ用ですから、機能もシンプルになるんですね。ATCはそれ自体が保安装置で、故障や誤作動の防止のために多重系になっていますから、簡単ではないようです。

ホームドア以前に首都圏で触車事故が多いのは、明らかに混雑の影響ですが、混雑緩和が進まない中で、ホームドアは次善の策ですが、それすら混雑がネックで設置が進まないし、コスト面にも課題がありますね。

ホームドア設置で列車が遅れれば、結果的に輸送力を減らしてむしろ混雑を助長する結果になりかねないだけに、事業者の苦悩は大きいですね。しかもこれ自体が増収に繋がるわけじゃありませんし。

というわけで、いろいろ不備もあり、不満もあるところでしょうけど、チャレンジは始まったばかりです。むしろ今後各社がいろいろな工夫を見せるとすれば、趣味的には注目すべきことかと思います。

Posted by: 走ルンです | Monday, August 27, 2012 at 10:25 PM

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