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Monday, September 17, 2012

緩和マネーで甘い林檎に渋い顔でも鶴は飛べるか

何だか世界が騒がしくなりました。残念ながらその一角に日本がいるのですが。尖閣国有化問題で中国が予想以上の過剰反応を見せております。どうも東京都と日本政府がグルだと見られているようで、結果的に尖閣諸島の実効支配を強めたと取られています。だから放っとけって言ったのに。東京都がどう出ようと、政府が上陸許可を出さなければ事態は動かないし、上陸を強行するなら現職の都知事といえども逮捕すれば良いし、繰り返すならば刑事訴訟手続きまで踏み込んでも良いんで、結果的に国内法の適用で実効支配の実を取りながら中国側も納得する落としどころになるのに、国有化を急いだ結果、問題を大きくしてしまいました。

世界ではイスラム圏の反米デモが先鋭化し、9.11にはリビアで大使が殺害される事態まで起きています。騒ぎの元はネット配信された預言者ムハンマドを侮辱する内容の動画ということで、アメリカ政府は大使殺害を非難しながら、配信された動画も批判し、米政府の立場を明確にしました。少なくとも政府が絡んでいないからこういう態度が取れるんで、尖閣国有化では日本政府は不用意に踏み込みすぎたわけです。結果的に更迭が決まった丹羽大使がメディアに対して発言した内容が正しかったわけですが、外国メディア向けの発言というところが咎められたとはいえ、この更迭劇も中国の過剰反応を誘発した可能性があります。

丁度日本では民主代表選と自民総裁選、アメリカは大統領選と政治の季節が重なったこともあり、野党側からの弱腰批判に晒されている点は日米共通です。ただし日本の場合、自民党総裁候補の石原伸晃候補は都知事に帯同して地主との交渉に臨んだりして原因を作っておいて、マッチポンプだろって話です。また生活保護をナマポと俗語を用いて蔑んだり、尊厳死の法制化に言及したり、福島第一原発をオウム真理教施設のサディアンと呼んだりして失言を重ねています。とはいえ社会保障問題を問われて生活保護や尊厳死を持ち出すあたり、社会保障費の削れるところという意識丸出しで、単なる失言というよりも、やはり本音ということですね。

というわけでノブテルはいってる(笑)自民党総裁選ですが、5人の候補の主張があまりに重なりすぎていて、誰と誰がどう違うのかがわからない展開です。とにかく 5候補全て憲法改正、TPP反対、原発ゼロ反対、尖閣を含む島嶼部防衛強化、日米同盟強化で揃っていますし、日本列島強靭化で公共事業の拡大やデフレ脱却で日銀に緩和を求めるなど、将に先祖帰り状態ですし、日本も海兵隊を持つべき(石破氏)や変動相場制の見直し(林氏)などの珍説まで飛び出し、自民党は保守政党としても劣化していることを曝け出しています。あと林芳正氏の父親の林義郎氏はサンデン交通の社長を務めた人物ですが、組合潰しの不当労働行為やらかしてます。そろいも揃ってろくでもない面々です。

一方の民主党ですが、原発ゼロ方針を巡って迷走しております。問題なのが核燃料サイクルの停止に踏み込めなかったことです。本来原発本体以上に危険な高速増殖炉にしろ再処理工場にしろ止めるべきですし、いずれも予定通りに稼動できずに予算を食い潰している状況ですから、直ちにやめるべきですが、問題になるのが政府が立地自治体と交わした協定でして、むつ市の中間貯蔵施設も含め、核燃料サイクルが推進される限り最終処分場にはならないとする内容です。

ま、わかりやすく言えば、原発立地自治体に対しては、使用済み核燃料は六ヶ所村の再処理工場が引き取ってくれるから原発敷地内に溜まる心配はないと説明し、六ヶ所村や青森県に対しては、核燃料サイクルを進めるから最終処分場にはならないとして、双方に補助金付で空手形を切っていたわけで、歴代自民党政権の原子力政策の欺瞞が噴出した形です。なるほど「原発ゼロなんてとんでもない」わけです。というわけで、問題山積ながら、こと原発問題に限っては、暫く民主党政権の下で進める方がマシということでしょう。

一方で今月14日、米FOMCは量的緩和第3弾(QE3)を決めました。中身は主に住宅担保証券の買い取りで、主に住宅ローンの金利上昇の抑制と値下がりが続く住宅価格の下支えということで、わかりやすく言えば住宅価格を梃子に株や債券などの資産価格を持ち上げて資産効果で消費を底上げし、雇用の創出につなげようという狙いです。ぶっちゃけバブルを起こそうというわけで、FOMCメンバーの地区連銀総裁の中にも反対論があり、ロムニー氏を大統領候補とした共和党はティーパーティーの影響などでFRBの金融緩和に批判が寄せられ、金本位制復活まで言われる中でQE3に踏み切ったわけです。アメリカの保守陣営もかなり劣化が見られますが、グローバル化の進んだ現在、金本位制に移行すれば1930年代以上のデフレ圧力がかかり、大教皇に至るのは目に見えています。林芳正氏の変動相場制見直し以上にトンデモな話です。

FRBとしては金融政策への政治介入は避けたいところですが、大統領選を睨むと万が一ロムニー共和党に政権が移行するとえらいことになるということで、不本意ながらオバマ民主党に援護射撃せざるを得ないというのが本音でしょう。結果的にダウ、ナスダック共に上昇に転じ、東証も含めて世界中の株価を押し上げたわけで、ここまでは狙い通りでしょうけど、原油価格上昇によるインフレ懸念は払拭できず、副作用を心配する声もあります。

金融政策のスタンスが最も厳しかったECBもユーロ危機には抗えず、7日に期間3年までの国債を無制限に購入することを宣言しました。財政と金融の連動した双子の危機で中央銀行の最後の貸し手機能を発動せざるを得なかったのですが、結果的に欧米金融当局の緩和姿勢で日銀が取り残された格好です。

こうなると日銀に対して追加緩和の圧力が増すわけで、困ったことに民主党からも声が上がる始末です。元々緩和に慎重なスタンスの白川総裁を選んだのは野党時代の民主党ですし、野党時代には日銀の長期に亘る金融緩和を批判していたのに、政権に就いたら態度を変えるということで、日銀内部では民主党政権への不信感が強いものの、デフレ脱却を日銀に求める姿勢はむしろ自民党の方が強く、白川総裁の任期も迫る中、中央銀行の独立性はあやしくなっています。しかし結果的に欧米中銀が揃って日本の後追いをしている点は、世界の日本化の一環と見るべきなのでしょう。

とはいえ日銀へのバッシングが強まることは間違いないところです。今週の日銀政策決定会合ではおそらく国債買い入れ枠拡大で対応することになると思います。リフレ派の人たちは株式を買えとか外債を買えとか言いたい放題ですが、できないことを日銀に求めても意味がありません。特に外債に関しては、事実米財務詳細を買ってるじゃないかという指摘があり、事実上の円売り介入となる外債購入論になっていると思いますが、これは財務省が所管する外貨準備を運用しているだけで、外貨準備自体が日銀がニューヨーク連銀に持つ口座を通じて運用される仕組みで、為替介入のときには財務省の依頼で日銀がニューヨーク連銀口座を用いて実務を行うだけで、日銀に権限はありません。この辺を誤解している人は学者や政治家にも多く困った問題です。

丁度日本列島狂人化計画のコメント欄でやり取りがありまっすが、政府、日銀、民間銀行、事業会社の関係を整理してお話します。ロジックは至って簡単で、各主体のバランスシートを並べるだけです。まずバランスシートの構造ですが、単純化すれば次の等式で表せます。

総資産=負債+純資産
これはある時点で必ず成り立つ恒等式で、例えば負債が総資産を上回れば純資産がマイナスになり債務超過状態になります。逆にプラスが大きければそれだけ財務が安定し信用力が増すわけです。まずわかりやすい事業会社からいえば、総資産には現預金、金融資産、実物資産、売掛金等の債権が当てはまります。負債には買掛金、銀行融資、社債などの債務があって、昨今は大手企業で投資に慎重で銀行融資の返済が進み、現預金が積み上がる傾向があります。そうすると民間銀行では総資産に含まれる貸出債権(融資)が減って負債に当たる預金が増えます。それで純資産が減ると信用不安になるので、融資の減少分を金融資産の購入で補填することになり、信用力と流動性で国債が購入されることになります。

今度は逆に政府のバランスシートを見ると、総資産に該当するのは民間と同じように現預金、実物資産のほか、政府特有のものとして税収見込みがあります。政府の場合実物資産といっても道路や橋など必ずしも価格が明らかでなくまた流動性のないものが含まれますので、一意には決まらないですし、経済環境や税制によって税収見込みも一定しませんがいずれも有限で、政府にとって負債となる国債は政府の総資産の裏付けで信用力を得ている形です。その国債は日銀や民間銀行が保有すれば資産になるもので、日銀にとっては発行済みの日銀券+日銀当座預金が負債になります。ここで政府と日銀のバランスシートを連結すると、政府にとって負債となる国債と日銀にとって資産となる国債が相殺されて、政府資産の裏づけで負債である日銀券+日銀当座預金が発行されます。つまり日銀は自由に通貨発行できるわけではなく、政府保有資産の範囲内で適切な純資産額を確保できる範囲内でしか動けないわけです。

で、ベースマネーは民間銀行にとっては資産となりますが、現金で保有しても利息を支払えませんから、通常はこれを融資によって貸出債権とするわけですが、事業会社の投資減少で融資が減っているから余剰の現金が国債の購入に向かうというわけで、政府が国債を発行し、日銀がベースマネーを増やす財政政策と金融政策の拡大は、政府と日銀と民間銀行の間をぐるぐる回るだけで有効需要を生まないわけですね。丁度日本列島狂人化のエントリーのコメント欄で長々と続いたやり取りで「流動性のわな」と呼んだ現象の仕組みはザックリこんな感じです。だから日銀を叩いても何も解決しません。

とはいえ日本でもここへ来て消費が減速し始めており、欧米当局の金融緩和を受けてとりあえずスタンスを合わせる局面ではあります。とりわけ当初7月にも予算消化で終了すると言われたエコカー補助金ですが、「いつまでも続かないぜ」のCMのスギちゃんが先に怪我で脱落しました^_^;。前回のエコカー補助金や家電エコポイントで見られた駆け込み需要が起きていないというのは結構深刻です。もちろん駆け込み需要があれば後の反動減が深刻になりますから、均せば同じかもしれませんが、前回がスクラップインセンティブで保有車の廃車が条件だったものが、今回は縛りがないので、下取り車が中古市場へ流れており、中古市場が厚くなっている、つまり中古価格が下がっている状況もあり、優良中古車との競合があるかもしれません。いずれにしてもこれまで内需を牽引してきた自動車販売にブレーキがかかっていることは間違いありません。

結局耐久財消費は買い替えが基本ですから、補助金で押し上げられる限度があるということでもあります。また如何に低燃費車を増やすとはいえ、車は廃車時にもCO2を排出しますから、トータルのライフサイクルアセスメントで評価されるべきものでもあり、実際前回も効果の検証はされませんでしたし、今回も同様でしょう。日本では経済下支えのための財政出動の効果がきちんと検証された事例は皆無です。つまり景気対策の効果はわかっていないのです。ついでに言えば家電エコポイントの駆け込み需要で薄型TVが品薄になり店頭価格が上昇した一方、終了後の反動減で余剰を抱えてエコポイント付与分を超えた値下がりとなりました。結局エコポイント終了を待って買った方が安かったということです。同様のことは消費税アップ前の駆け込み需要が見込まれる住宅販売でも起こる可能性があり、既に新築物件の値上がりが見られます。

というわけで良かれと思って財政出動で政策対応しても、その効果が見えないばかりか、場合によっては需要の先食いで反動減で在庫増から値下がりという不安定さを増幅させるだけだとすれば、消費税アップの景気条項を理由とした補正予算などは無意味ということでもあります。そういった中で政府のこんな動きが波紋を呼んでいます。

“軽”優遇税制見直しの布石か 「超小型車」ガイドラインの波紋|inside|ダイヤモンド・オンライン
補助金をつけても自動車の国内販売が低迷する中、自動車諸税の税収も減っているため、何とかして車販売を増やしたいのが政府の本音ですし、メーカーも注目していますが、軽自動車の優遇がなくなることには慎重な姿勢もあり、どう転ぶかわかりません。ただ日常の買い物などで1人乗りが多いから超小型車に置き換えればエコだという説明には誤魔化しがあるわけです。

国内自動車市場も高齢化と人口減少でジリ貧ですが、国内メーカーにとってショックなのは、買い替え時のユーザーの選択でしょう。例えばヴェルファイアからタントのような乗り換えが普通に起きてしまい、買い替え時にグレードアップという常識が通用しなくなってしまったことでしょう。プリウスなどのHV車は減税と補助金の助けを得て売れているものの、逆に言えば補助金頼みでしか売れないし、海外ではそもそも高価で売りにくく、独VWなど欧州メーカーが進める過給エンジンによるダウンサイジングやクリーンディーゼルなどが世界的にはエコカーとして認知されている状況で、気がつけば車もガラパゴス化?という状況になってしまっています。

元々日本の自動車市場は特殊で、住宅事情からパーソナル空間としての効用が大きいという側面があります。ぶっちゃけて言えばいい車=ヤれる車(笑)ということで、高級輸入外車ならばブランドだけでヤれるかもしれないけれど、リーズナブルな国産ファミリーカーはおっさん車扱いで論外でした。そこでメーカーはファミリーカーの車台にスポーティなクーペボディを与えたスペシャルティカー(シルビア、セリカ、プレリュードなどのいわゆるナンパ車)を開発したり、フィジカルにヤれる(笑)ワンボックスカーにフルフラットシートを与えたり、オフロードビークルに似せたSUVや、ワンボックスの流れでミニバンなど、とにかくヤれる車が人気車となりました。エコカーもその流れで環境意識の高さがモテるというわけですし、コンパクトカーでもホンダSMXやトヨタ初代bBにフルフラットシートを与え、その流れでホンダはNBOX+で軽にまでフルフラットシートを与えるなど、車づくりもガラパゴス化まっしぐらです。

その中で、トヨタや日産などの登録車メーカーが軽潰しを画策して欧州で実績のある超小型車を日本に移植しようということなんでしょう。ただしこの分野は公共交通による都市交通とバッティングする分野でもあり、むしろ地域の衰退をもたらす可能性もあり、導入は慎重にすべきでしょう。尤もヤれる要素皆無ですから、日本じゃ売れないかも(笑)。

というわけでFRBのQE3とタイミングが合ったiPhone発表で株価を上げたアップルは幸運ですが、5月の上場日にナスダックのシステムトラブルもあって売り出し価格を下回る惨状のフェイスブックも少し上げて20ドル台回復ですが、売り出し価格の38ドルには遠く及ばず、個人情報の集積によるビッグデータ活用は魅力でも、プライバシーの扱いに課題があり、ビジネスモデルの確立が難しいという評価はなかなか変わりません。日本でもいよいよJALの再上場ということで、売り出し価格3,790円と発表され、70%は個人株主に配分するなどの方針も示されました。仮に日銀の金融緩和とタイミングが合えば、幸運スタートになりそうです。自民党が邪魔しなければですが。

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