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January 2013

Monday, January 14, 2013

あけましてめでたく出ずる保守奔流

正月って暇です。テレビも新聞もクソ面白くない。けれどもテレビも新聞も正月期間が年間で一番の需要期であるというのは、あまり知られておりません。普段は忙しい人がテレビを視聴し新聞を隅々まで読むのは正月ぐらいということで、テレビ局も新聞社も最も力が入るし、広告料も高くなります。ただし選挙期間は例外ということで、クソ忙しい年末の総選挙は、結局メディアを喜ばせただけという結果です。

しかも選挙の隠れた争点は消費税増税であり、自公政権返り咲きで早速新聞の軽減税率適用を訴えるなど、あからさまに利益誘導している様は、社会の木鐸が聞いてあきれます。やはり改革を阻むアンシャンレジームの最大の抵抗勢力はメディアというのが、残念ながら日本の実情のようです。

思い返せば昨年の正月にはこんな記事を書いていたのですが、予想は大きく外れてはおりません。唯一日本の年末総選挙を除けばですが。1年前のエントリーでは政府と金融の接近による民主政治の空洞化が進むと見ておりましたが、欧米はほぼそのとおりで、例えばアメリカの財政の崖問題の本質は、財政法による歳出の強制削減は、緊縮財政を強いられて消費を悪化させたユーロ圏諸国の轍を踏むと見られて、投資家がリスクを取りにくい、つまりお金が動かないと心配されたからで、心配しているのは金融関係者ということです。

アメリカでも既に16兆ドル(約1,400兆円)と、絶対額では日本をも上回る水準の財政赤字を抱え、しかも経常赤字国ですから、海外マネーでファイナンスされるという不安定な状況です。基軸通貨国で第三国間の貿易決済にもドルが必要という状況だから、世界中の国が外貨準備として米財務詳細を買ってくれる状況だから成り立っている危うさです。逆に言えば貿易決済通貨としての使い勝手の良さ、つまり開かれた金融環境にあることが、財政ファイナンスに役立っているわけです。これはアジア唯一のハードカレンシー通貨であるのに、為替介入や金融政策への政治介入が公然と行われる日本円にとっては耳の痛い話です。

でもって11月の貿易統計で貿易赤字が拡大し、単月で経常赤字となったことなどで、実は円安はメリットとはいい難い状況になってきており、日本でもギリシャやイタリアで起きたような国債暴落=長期金利上昇がるんじゃないかという心配を銀行がし始めたという状況にあります。つまり銀行がアベノミクスに疑問を呈し始めたということです。

もちろん単月の経常赤字が定着するかといえば、それは現時点ではあり得ないのですが、円安進行は貿易赤字を促し、輸出物価の上昇は頼みの製造業の原材料費を押し上げますから、交易条件の悪化で貿易赤字が定着する可能性はあります。ただし欧米や新興国の景気が戻れば、海外進出企業の利益配当が戻って所得収支黒字を押し上げますので、経常赤字が定着するには至らないと考えられます。経済のグローバル化で世界の投資家が積極姿勢に転じるいわゆるリスクオン状態になれば、ドル円85-90円あたりの為替相場が当面定着する可能性は高いといえます。ただし繰り返しますがアベノミクスのおかげではありません。

心配なのは当初10兆円程度と言われていた大型補正予算は倍増の20兆円規模になり、13年度本予算では民主党政権で堅持するとされてきた中期財政計画による赤字国債上限44兆円も反故にされ、年末の特別国会で2015年までの特例国債発行を政府判断で認める決議までしてますから、事実上財政赤字の上限が撤廃され、財政出動のフリーハンドを与えられた政権の暴走は続きます。狙いは4-6月期のGDP押し上げで、10月に予定される消費税増税の景気条項に基づく閣議決定という構図ですが、増税のための財政出動とはひどい話ですし、その程度は民主党政権時代以上に悪質です。

政府が財政出動を急ぎ、しかも公共事業に重点配分する理由は、公共事業は執行即GDP数値を押し上げるからです。本予算の編成が遅れていて4月新年度に間に合わないので、大型補正で3月ごろから切れ間なく執行し、4-6月のGDP押し上げを政府が目論んでいるところです。復興加速や国土強靭化は単なる大義名分に過ぎないんで、要は4-6月期に執行できる案件ならば何でもありで、中身は問われないというのが、今の政府与党の議論の流れです。ただし死角はあります。

1つは財政赤字の拡大は円高要因であるという点です。日本のような経常黒字国=対外順債権国で且つ金融政策が緩和的な環境で、財政赤字が拡大して国債の信認が揺らいで金利上昇圧力が発生しても、直ちに為替変動で調整されてしまい、表面上の金利変動は起きないということです。この辺リフレ派の人たちは認めたがらないのですが、事実90年代前半の円高不況はバブル崩壊後の財政出動によるものと見られますし、その収束は95年の橋本行革による財政赤字縮小を待たなければなりませんでした。加えて小渕政権以降再度悪化した財政収支の建て直しを模索した小泉政権下で2003-2004年の大規模為替介入を経て円安基調が定着するという風に、少なくとも90年代以降、財政赤字の拡大縮小とドル円の為替変動には相関が見られます。

もう1つは本当に予算が執行できるのかという点です。震災以来繰り返し指摘してきたように、バブル崩壊以来の構造不況業種であるゼネコンの弱体化が根底にあります。この20年間人材育成も設備投資も不十分な上に、大学進学率が上がり少子化もあって人材確保がそもそも難しくなっています。事実震災復興が進まないのは人件費の高騰によるもので、人手不足から人件費が上昇し、入札かけても予定価格を上回る入札不調が続いている現実があります。これは入札抜きで国庫負担で青天井のがれき処理と除染にリソースが集中していることや、復興予算の流用問題に見られるように、被災地の復興に直接関係ないところに手をとられていることも影響します。余談ですが、復興予算の流用問題や手抜き除染問題などは、このような予算配分のゆがみと業界構造のゆがみの相乗効果で起こるべくして起きたことと言えます。

後者の場合、結局国土強靭化事業も同様に執行が難しい状況に変わりはないわけで、現実的に春先に執行を固めてGDPを押し上げる目論見がうまくいかない可能性はかなり高いと考えられます。ただし前者と後者はトレードオフの関係にありますので、後者の場合円高反転が回避できる可能性はあるわけで、どちらもバッドシナリオながら後始末の難易度はかなり違ってきます。

というわけで、経済立て直しに鼻息の荒い安倍政権の化けの皮は春先にも剥落します。そうなると夏の参院選がどうなることやら。民主党も力不足だったとはいえ、JALの救済やオープンスカイ政策移行、LCCの誕生、高速ツアーバス問題を受けての高速路線バス新法など、交通分野ではおそらく自民公明政権では解決できなかったような課題をクリアしています。尤もJALに関しては自公政権のJALいじめを先取りするように羽田発着枠増枠分の配分でANAを優遇した国交省の対応など問題も残しました。そして閣議決定までこぎつけた交通基本法の制定はおそらくお預け状態でしょう。あと社会実験で効果が確認できた高速道路無料化も葬り去られました。蛇足ですが、現行制度では高速道路通行料は債務返済に重点配分された結果、メンテナンスに十分な資金が回らなかったのですが、大都市圏など残存する有料区間の通行料を債務償還から切り離せる民主党案の方がメンテナンス費用の捻出は容易です。ただ新規着工のハードルは高くなりますが。

というわけで、そもそも本来の保守派は財政規律に対して厳しいはずですし、厳格なルール遵守が持ち味なはずです。本来の保守思想は守るべきものがあるからこそ、時代の変化に敏感で変えることに大胆なはずなんですが、その視点からは民主党の方がやや保守寄りで、自公政権は時計の針を戻そうとするドンキホーテに見えます。ま、民主党も心変わりが激しく志しを置き忘れている状況で、現状見渡せば小沢一郎氏が最も保守政治家らしい政治家という評価になりそうす。私は嫌いですが。例えば20兆円補正予算で取り上げられた農業基盤整備事業は、鳩山政権時代の小沢幹事長裁定で半減され、野中元自民党幹事長が民主党幹事長室に陳情する珍風景がメディアでも取り上げられましたが、折角削った予算を補正予算で復活させたのが管政権ですし、安倍政権でさらに大盤振る舞いされそうです。そもそも人口減少で減反しても米が余る現状で農地を増やしてどうするの?って話です。こんなおバカな似非保守の暴走はまさに「保守奔流」と呼びたくなるアホらしさです。日本の保守派は明らかに劣化しています。あーメデタイ。

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