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Saturday, March 16, 2013

獲らぬ狸のパートナーシップ

確定申告を無事終えて、久々にゆったりとした週末を過ごしております。申告書を提出する前はとにかく神経を集中していましたが、そんなときの来客の応対は面倒ですが、さらに「ご挨拶にうかがいました」とか言われた日にゃ、殺意すらもよおします。ま、確定申告は期限までに申告書を提出すればとりあえず終わりですが、財政の崖問題で議会と対立が続くアメリカのオバマ大統領に日本の5人目の首相がご挨拶とは、空気読めないのか、って話になります。

実際、最初の外遊で訪米を目論んでいた安倍首相は断られており、また尖閣問題や北朝鮮核開発などで日米軍事同盟増強や集団的自衛権を視野に入れた近い将来の憲法改正を手土産にしようとしても相手にされず、TPP参加表明を迫られてやっと会えたというのが実際のところです。アメリカから見た日米首脳会談はこう見えてます。

安倍訪米が”大成功”とは言えない理由 | アメリカから見た世界 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
総選挙ではTPPに慎重姿勢だったことはどこへやら、本質は対米ポチ政権の安倍政権には、アメリカのご意向には逆らえなかったのです。さらには大手メディアは完全無視しているものの、11日の衆院予算委で民主党前原氏がTPPを巡る日米事前協議の内幕暴露までありました。
東京新聞:TPP 米、車・保険で譲歩要求:政治(TOKYO Web)
もはやTPP参加表明はアメリカに良い顔したい政治家や官僚の保身のためでしかないということです。アメリカの無茶な要求にTPP参加表明を逡巡した野田政権の方が、国民目線に近い対応だったということは言えます。ま、それ以前に日本のTPP参加は外圧を口実に新たな利権を創り出したいということに他ならないことは以前にも指摘しております。それも含めて民主党政権はナイーブ過ぎたという指摘もできますが。

不思議なのはTPP参加を後押ししてきた大手メディアの報道姿勢です。TPPは関税同盟というよりは、非関税障壁を標的としているもので、その中にはよく言われる医療保険分野に留まらず、新聞書籍の再販制度やメディア企業のクロスオーナーシップ(メディア企業グループの排他的株式持合い)や記者クラブ制度なども俎上にのぼるでしょう。そうなったときのメディアの対応はある意味楽しみです。また原発事故を受けて重い腰を上げた電力改革の行方も見ものです。外国企業の電力事業参入とかあると大騒ぎになることでしょう。

てなわけで、どう見ても改革開放とは程遠い安倍政権では、再建に成功したJALが法人税を払わないのはおかしいとか言って損失繰越の見直しに着手しておりますが、明らかに特定企業をターゲットにした制度変更は中国ばりのアナクロ政策です。ま、損失繰越が9年も可能というのは明らかにおかしいんですが、これも小泉政権当時に銀行に不良債権処理を促す狙いで延長されたものが見直されず、むしろ財界の顔色をうかがってさらに延長なんかするからおかしくなるんで、見直し自体は大いに結構ですが、JALに遡及させる変な規定を設けると、それが非関税障壁として槍玉にあがる可能性は指摘しておきます。そんな政治の思惑とは裏腹に、JALの絶好調は止まりません。

再生JAL値下げ攻勢に不満続出 政治巻き込む航空業界の“地上戦”|Close-Up Enterprise|ダイヤモンド・オンライン
財務体質が強化された新生JALですが、同時に現場レベルのコスト意識の浸透もあり、路線ごとに価格見直しで収益最大化を模索した結果、LCCには及ばないものの、大手より安値で市場参入してきたAirDoやスターフライヤーの運賃に近づいて摩擦が生じています。とはいえJALが極端なダンピングをしたわけではなく、当局は静観の構えです。元々中途半端なビジネスモデルで参入してきた新規参入社の領域まで脅かす存在にまでなったのですから、JAL恐るべしです。新規参入社も経営は稚拙で、スカイマークを除く社は全てANAの資本が入っているわけですから、当局の業界ヒアリングでは圧倒的なJALバッシングになるわけですが、それを口実に民主党の手柄と見られているJALを目の敵とは、ここは中国か-_-;。

一方でJALと並ぶ大型上場と期待された西武HDの再上場が頓挫しています。2004年の証取法違反による上場廃止以来、リストラを進めてきた西武グループを支援してきた米投資ファンドのサーベラスと株式売り出し価格で対立し、サーベラスが西武HDにTOBを仕掛けております。

西武HD、悲願の再上場に暗雲…サーベラス「路線廃止」提案も+(2/2ページ) - MSN産経ニュース
既に32.4%を保有するサーベラスが拒否権を行使できる33.4%超を目指すわけですから実現は時間の問題で、西武HDの再建は出口で躓くことになります。サーベラスの主張はより高い売り出し価格を実現するための追加リストラ策の実行を迫り、その監視役として役員人事まで提案しており、本気度満点ですが、追加リストラ策の中身は一部鉄道線の廃止を含む過激なもので、すんなり受け入れがたいものでもあります。とはいえ大株主の意向を無視するわけにもいかず、西武は何らかの対応を迫られることになりそうです。

伝えられる限りでは、採算性の低い秩父線、多摩川線、山口線(レオライナー)の廃止や、レッドアローの特急料金値上げやプリンスホテルのサービス料アップ、品川地区の再開発などですが、いずれも簡単ではないだけに、相当揉めそうです。それでもここまで細かく事業内容を把握しているサーベラスはさすがです。いずれも山岳路線だったり孤立路線だったりランニングコストの高い新交通システムだったりと不採算の原因がはっきりしているところばかりです。例えば秩父線は秩父鉄道、太平洋セメントや自治体と合弁で受け皿を作り切り離すなどは考えられます。

というわけで、企業再生支援機構という政府機関に助けられて再生したJALは政治家に因縁をつけられ、民間の外資ファンドに助けられた西武はその外資ファンドの無茶な要求に窮している状況をどう理解したらよいのか迷います。後者はさしずめTPP加盟のあかつきにはIMFへ提訴される案件になりそうですが、そのTPPを推進する政府が、自ら助けたJALを追い込むってのがどうも悪い冗談にしか見えないのは気のせいでしょうか。

気がかりなのが第2のJALや第2の西武が控えている点です。電機メーカーは儲からない半導体事業を切り出してルネサス・エレクトロニクスなる会社を作ったけどうまくいかず政府支援に駆け込みましたし、同様に儲からないディスプレイ事業を切り出してジャパン・ディスプレイを立ち上げたものの、深手を負っているシャープは参加せず独自にスポンサー探しに明け暮れた挙句のサムスンとの提携ですが、これでゴールというわけでもなさそうです。

鉄道の世界ではJR三島会社の問題を指摘しておきます。例えばJR四国は公的助成なしに将来が描ける状況にはないですし、ここへ来てトラブル続きのJR北海道も雲行き怪しいですし、優等生のはずのJR九州も頼みの九州新幹線の利用が伸び悩んでおります。正確には熊本までの利用は順調ながら、観光客頼みの鹿児島までの利用がマイナスということで、実質は博多南線2.0状態。ならば全線フル規格は贅沢すぎたという評価になろうかと思います。ましてや長崎をや。

あと動かせない原発抱えた電力9社もですが、経営再建予備軍が予想以上に多い日本です。TPP発効のあかつきにはどうなることやら。これじゃTPPならぬTTP(獲らぬ狸のパートナーシップ)だぜっての。

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Comments

サーベラスの株主提案、ついにYahoo!ニュースにも出ましたね。
最初は週刊誌レベルの噂話だと思っていたのですが、どうやら本気のようです。

ただ、もし事実だとするとサーベラスが西武の事業内容をどこまで把握しているのか疑問です。

西武山口線は西武園ゆうえんちのアクセス路線で、単体で収益を得る性格の路線ではありません。ディズニーリゾートラインや山万ユーカリが丘線みたいなものです。

西武秩父線の廃止とレッドアローの特急料金値上げは矛盾します。
吾野〜西武秩父だけなのか池袋線の飯能〜吾野まで含んでいるのかわかりませんが、新宿線の小江戸号の惨状からして廃止すれば特急利用客が減少します。その上、特急料金を値上げすれば空気輸送間違いなしです。とても企業価値向上につながるとは思えません。

公的支援による分社化や上下分離という手もありますが、整備新幹線のように施設改良が難しくなるため、西武秩父線には不向きです。

やるとすれば
・西武秩父線は存続、特急料金値上げ、秩鉄直通廃止
・西武山口線は西武園ゆうえんちと一体運営でバス転換
・西武多摩川線は西武鉄道から切り離して、伊豆箱根鉄道や近江鉄道とまとめて公的支援
という形が現実的だと思います。

Posted by: yamanotesen | Wednesday, March 20, 2013 at 06:44 PM

y0ん、どうもサーベラスち西武HDの泥仕合のようですね。元々12年度中の再上場の予定がずれたわけですが、裏で深刻な対立が起きていたようですね。

しかし廃止を突きつけられた3線はいずれも運営コストが高い点で共通点があります。西武としては秩父を箱根にしたいという構想はあるものの、うまくいっていないのも確かです。もちろんだからといって廃止で解決できるわけではありません。

というわけで、真相は藪の中ですが、日本の企業経営では往々にして株主に限らずステークホルダー軽視の傾向がいられます。その意味でサーベラスのtob提案も他のステークホルダーを敵に回すという意味で褒められませんが、経営陣に対する強い不信感のなせる業なんでしょう。

というわけで、JALのように公的機関の支援を得れば国に追い込まれ、外資ファンドの支援を得れば思惑の違いから出口で躓きと、まともな資本主義国としての制度インフラに何か欠陥があるのでしょう。あと東京メトロは都が株を手放さないと頑張って邪魔してますし-_-;。

元々西武は株式名義貸しのよる不正で上場廃止になったもので、JALのようにリストラの動機付け自体は弱かったのかもしれませんが、JALとの対比でサーベラスには不満足な結果だったということなのでしょう。

こんなことが続くとそのうち日本企業の再建に手を差し伸べる者がいなくなることを心配しなきゃならない日が来るかもしれません。

Posted by: 走ルンです | Wednesday, March 20, 2013 at 11:04 PM

ちょっとその九州新幹線評は適当すぎるんじゃないでしょうか……。
誤差程度の増減をどうこう言ったって何にもなりませんよ。

Posted by: しょくぱん | Sunday, May 05, 2013 at 09:04 AM

確かに詳細は明らかではありませんが、減ったのは事実です。違うというデータなりを示して反論されるならば大歓迎ですが、ほとんど無意味なツッコミになってませんか?

Posted by: 走ルンです | Sunday, May 05, 2013 at 11:12 PM

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