インフラ、インフル、インフレ
最近メディアによく登場するキーワード並べてみますた。五段活用ぢゃないけれど、見方を変えれば見えてくるものがあるます。
まずインフルですが、中国で鳥インフルエンザで死者が出ているというのですが、強毒性ではないH7N9型で死者が出ていることが変なんですが、メディアではほとんど取り上げられておりません。私も素人ですが、一部の専門家はPM2.5による肺疾患との相関を疑っているようです。つまり罹患して死亡した人は健康だったのかということです。
というのも、情報開示が不十分なために、判断できないということなんですが、そもそもPM2.5問題も、元々杜撰だった環境汚染の監視体制が、曲がりなりにも整ってきた結果、ひどい大気汚染が明らかになって騒ぎになったというのが正確な流れでして、急に大気汚染がひどくなったわけじゃありません。中国も国内でネットや一部メディアなどでは以前から批判があり、日米欧先進国の前例もあるからということで重い腰を上げてみれば、というところのようです。
で、問題が明らかになってから慌てて対策をといっても、そもそも当事者意識が希薄だから、春節の爆竹自粛など、明らかに見当違いの対策を講じてお茶を濁しているわけで、今回のインフルエンザ騒ぎも、同様に情報開示の不備に当局のアリバイ作りが合わさったものである可能性も視野に入れておくべきでしょう。とはいえ日本でも先日福島第一原発で起きた使用済み核燃料プールの停電事故や、汚染水漏洩事故など、いずれも仮設状態のまま長期化している結果であり、また専門家からの指摘もあったのにできていなかったという意味で、中国のこととやかく言えたもんじゃないですが。20xx年に中国で原発事故が起きたと想定すると背筋が寒くなります。
ま、そのせいでケンタッキーフライドチキンがアメリカでも売り上げを落としているとかで、この手の「風評被害」はいずこも同じです。それでも習近平体制になってからの中国に、こうした情報開示の姿勢が見え始めたことは確かで、中国自身は内在的に変わろうとしているのかもしれません。ま、変われるかどうかはまた別の問題ですが。
中国の変化は北朝鮮に対する態度にも見えます。中国にとっての北朝鮮は、共に朝鮮戦争を戦った仲ということで、党の長老たちが肩入れしていて、言ってみればアメリカのユダヤロビーのような圧力団体を形成しているのですが、最近の人工衛星打ち上げや核実験などでネットなどの国内世論が「なぜ北朝鮮を庇うのか?」という方向へシフトしており、そうした声を無視できなくなってきています。また中国政府自身も度々煮え湯を飲まされ面子を潰されてきているわけで、北朝鮮を庇う理由が見出しにくくなっているということはありそうです。今回のミサイル騒動も結局空振りのようですが、キム・ジョンウン第一書記は日本の政治家の為替口先介入を学習したのかも^_^;。
中国と北朝鮮の関係は、つまりアメリカとイスラエルの関係との類似性で見ておくとわかりやすいのですが、そのアメリカとイスラエルとの関係にも変化が見られます。少なくとも歴代政権と比べて中東和平に後ろ向きなネタニヤフ政権に対する不信感をオバマ政権は高めています。加えてシェールガス革命とTPPに代表されるアジア太平洋地域へのプレゼンス拡大で、相対的に中東地域に対するプレゼンスが低下するのではないかと言われています。
実際マリ空爆はフランス軍が、アルジェリア人質事件では英仏両国が対応するなどで、アメリカは前に出ませんでした。アメリカの目下の関心事は国防費削減にあり、それに伴って同盟国との関係見直しに動いているというところでしょうか。日本やイスラエルも例外ではないということです。というよりむしろ、尖閣問題ひとつ自前で解決できない日本に対する不信感を高めているというのが正直なところでしょう。その意味で台湾漁船の日本のEEZX海域での操業を認める日本と台湾の協定は、中国政府が理由の1つとしてきた問題に決着をつけることでもあります。ただし北京政府への説明をうまくやらないとヤブヘビの可能性はありますが。
イスラエルの核保有は自らは否定してはいるものの、公然の秘密状態で、その結果イランが核開発に進むことは認めないというのは、核不拡散の原則に従えば正しい話です。とはいえ産油国で経済的な裏づけのあるイランの核開発を抑止する手段には乏しく、むしろイランが核保有すればカシミール問題で度々戦火を交えてきたインドとパキスタンのように安定するのではないかという議論も保守派中心にありますが、オバマ政権はその道は採らないということです。翻って北朝鮮の核開発に関しては、直接的な脅威よりも同盟国である日本や韓国の核開発の口実にされることのほうを懸念しているということです。丁度中東におけるイランの立場を認めないってことです。その意味で保守色を隠さない安倍政権に対する不信感は相当高いといえます。
で、インフレですが、黒田日銀の緩和策に世界が驚きを見せております。前エントリーで指摘したように長期金利が異常な動きを見せており、瞬間0.4%台に低下したかと思えば、0.6%台に反発するなど、明らかに不安定な状態になっております。投資の常識として株価が上昇すれば債権は売られ金利は上昇するはずですが、新発債の7割相当に当たる日銀の国債大量買いによって、日銀自身が池のクジラになったものと考えられます。つまり流通市場で取引する弾がない状態で、買い注文が出れば値上がりし、金利は下がりますが、市場に参加する生保や銀行などの機関投資家にしてみれば、アセットアロケーション(投資先の選別とウェート付け)に狂いが生じ、市場に迷いが出ているということです。この状態を放置すれば市場そのものの機能停止につながりかねない問題ですが、なるほど、これなら日銀の姿勢の変化はアピールできます。ただし「クレイジー」というリアクション付ですが-_-;。
こうなると出口戦略を議論すること自体が無意味です。なにしろインフレ目標2%を達成したときには、日銀は保有国債の売り先を失うわけですから。ある意味わかっていたことだから、本当にやって世界に呆れられているのですが、日本のメディアは相変わらずネガティブな報道は「水をさす」と回避している状況です。国債ですから、償還されれば残高は減りますが、従来3年未満だった残存期間の縛りを無くし、長期債も購入し、平均残存期間を7年にするということですから、仮に2年後にインフレ目標が達成されたとしても、おおむね7年間は国債の追加購入はできないということになり、国債流通市場の機能停止は長期化することになります。つまり将来の日銀の金融政策の手段を狭めてしまうことになります。
まぁこれだけ金融緩和をすれば、株価や地価などのストック価格の上昇はある程度可能でしょうが、経済のファンダメンタルズの裏づけのない資産価格上昇は結局バブルにしかならないわけで、どこかではじけます。そして以後の長期停滞が待っているわけですから、意図的なバブル発生という犯罪的金融政策となります。
既に大都市圏の一部で地価の上昇が観測されてますが、これは底打ちでも何でもなく、ゼロ年代にも観測された再開発期待の先行でしかありません。そして人口減少が続く日本においては、大都市圏の大規模s大開発は人口の大都市集中を促すだけで、過疎地の人口減のみならず、大都市近郊でも選別が進み、空洞化する地域を生むことになります。寄せて上げれば谷間がクッキリするというわけです^_^;。大災害の備える意味でも帰宅困難者を減らす意味でも、大都市集中を是正して自立分散型の国土形成が望ましいのですが、バブルはその逆の動きを助長します。
加えて気になるのがインフラ投資の限界投資収益が逓減していることです。例えば東横線渋谷駅が地下へ潜り、同様に小田急線代々木上原-梅ヶ丘間の地下化がありました。いずれも乗り換え時間が拡大し、便利になるのか?という疑問がメディアでも取り上げられておりました。やや誤解もあるのですが、東横線のケースでは東京メトロ副都心線との相互直通によって、渋谷での乗り換えの必要性自体が減少する側面もあるわけで、評価が難しいところですが、今後東横線渋谷駅跡地に埼京線ホームと駅ビルが計画されており、更に東京メトロ銀座線渋谷駅も東口側に移転する長期構想が発表されるなど、渋谷駅周辺はまだまだ変化しそうですが、谷間の地形で高低差を利用した空中回廊の計画などで人口構造物の大集積となるわけですが、商業集積の特徴として歩行者動線を最大限延ばす方向へシフトするわけですから、原理的には乗り換え時間はますます延びるということになります。ちょっとおぞましい未来図です。
下北沢の方は破局的なカオス状態です。元々千代田線と小田急線の相互直通以後、乗換客は減少傾向とはいえ、急行線を用いた暫定的な線路切り替えで、将来の緩行線ホームを暫定通路としている現状ですから、今後通路の切り替えを何度も行うことになります。また小田急線が地下に潜ったことで一時的にランドマークを失うことになるわけで、渋谷とは対照的に街の空洞化の恐れすらあります。逆に言えば渋谷ヒカリエというランドマークを先に作った東急の事業の運びの巧みさが際立ちます。高架か地下かでもめた下北沢ではないものねだりではありますが、地元を敵に回してしまった小田急の戦略ミスではあります。
両者に共通するのは、大都市圏でのインフラ整備が、さまざまな社会的要請でますます複雑化し、コストのかかるものになっているということです。元々集積度の高いエリアでは事業着手前の利害調整に手間取り、コストを押し上げてしまう一方、商業集積の拡大で動線計画が混乱することが避けられず、結果的に乗換時間の増大などのマイナス要素を生み出してしまうということです。端的に言えば装備拡大の一方で機能の低下が見られるということです。大都市圏のインフラ整備は今後このような困難の中で、結果的に限界収益逓減の法則に則った傾向を避けられないということです。ぶっちゃけインフラ投資が景気を底上げするのではなく、むしろ社会全体の生産性を押し下げてしまうということで、既に公共投資では見られる現象が、いよいよ民間投資の世界でも実現してしまう局面に至ったということです。
というわけで実は日本の病理を際立たせる3つのキーワードということですね。あーあ。
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Comments
いつも鋭い視点での世相の切り取りを楽しく拝見しております。
インフルエンザについて一言だけ。
今回の強毒性、弱毒性というのはあくまでトリに対してという意味です。人類はまだこのウイルスに厳密な意味で宿主とはなっていない(ヒトヒト感染しない)ので、毒性については不明となっております。もちろん死者が出ているので、現時点では致死率は高いと思いますが。
つまりこのインフルエンザの問題点は
「トリは元気でうろうろしている」
この一点です。トリにとっては弱毒でも、ヒトが高密度に接触し、一旦感染が成立すると致死率は現在のところ高いものと推定されます。
PM2.5と結びつけるのはちょっと飛躍しすぎではないかと考え、ご意見申し上げました。
これからも鉄道だけでない、広い視野にたいするお考えを楽しみにしております
Posted by: いつも拝見しております。 | Monday, April 15, 2013 12:14 PM
ご愛読ありがとうございます。インフルエンザに関する具祖的に感謝いたします。
なるほどヒトに対する毒性は未知ということなんですね。トリは元気に羽ばたいてウイルス撒き散らすというのは確かに怖いところです。
PM2.5との関係は不明ですが、大気汚染で心肺機能が低下していれば罹患しやすいということはあるかもしれません。それも含めて中国政府の情報開示の姿勢には疑問がありますが、それでもSARSのときと比べれば遥かにマシにはなっているのですが。
というよりも、中国なりにグローバル化の現実に向き合おうとしているようなんですが、何しろ日本の後姿を見ながらですから、中途半端感が否めないというのが主旨ですが、ちょっと強引な展開だったかもしれません^_^;。
今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by: 走ルンです | Monday, April 15, 2013 10:35 PM
こんにちは、走ルンです様。
ユニークな切り口に深遠な考察、
いつも楽しく拝見させていただいております。
中部地方批判も最近は少なく、心臓にはよいもののどこか物足りなく感じたりもします^^。
さて、すでに上の方もご指摘の様に私もインフルエンザのくだりは少し気になりました。
PM2.5が健康被害を引き起こすといっても、それは比較的長期的な疾患であってウイルスが引き起こす急性の疾患とは性質が異なります。仮に、どちらもが原因となって肺炎を引き起こして死んだとしても、死因として直結したのは急性疾患の方と考えるのが普通ではないでしょうか?もちろん医者の見立てがすべてなので、あいまいと言うご指摘はもっともですが、差し引いてもいささか強引に思えます。
余談ですが、私の所属する東海地方のとあるメーカーも、ずいぶん前から分散体制のためにフィリピンやらベトナムやらの新工場が次々に稼働しておりますが、その工場たるや実は分散どころの騒ぎじゃないくらいに巨大なものだったりします。おそらく多くのメーカーの判断は遠からず、と言ったところだと考えます。
あまりに身勝手な国作りがしっぺ返しを食らう日は果たして来るのでしょうか?
Posted by: ポポロ | Wednesday, April 17, 2013 10:16 PM
ご無沙汰してます。いやー、やっぱ強引でしたね^_^;。ただ今のところ被害は上海周辺限定のようなので、世界季語のパンでミックになるかというと、ちょっと違う気がしますが、いずれにしてもあいまいなところがありますね。
で、円安になっても日本メーカーの海外移転意欲は変わらずですが、結局スケールメリットを求めて巨大工場を作ってるわけですが、シャープの堺工場の二の舞が心配です。なにしろ昔なら1,000人規模の巨大工場を50人程度でオペレーションしていたわけですから、内外の人件費の差は本当は関係なかったんです。
結局設備を巨大化しないと利益を確保できない現実の中で、墓穴を掘っている気がしてなりません。
Posted by: 走ルンです | Thursday, April 18, 2013 12:18 AM