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Sunday, May 26, 2013

5月相場で日経平均がカブった波

このところハイペースで上昇を続けていた東証の日経平均(Nikkei225)が木曜日から乱高下しております。調整局面に入ったのは間違いありませんが、立場のよって見立てがずいぶん違うのが笑っちゃいます。というわけで、メディアではほとんど取り上げられていない視点から見ていきます。

テクニカルな話として、5月は元々調整局面になりやすい月ではあります。理由としては4月に225の構成銘柄の入れ替えがありますので、機関投資家やETFその他のインデックスファンドがそれに合わせて組み込み銘柄を入れ替えるタイミングとなります。通常は数銘柄の入れ替えですが、2000年4月には30銘柄の入れ替えで相場が荒れて物議を醸したことがあります。またこのときにハイテク業種の比率が高まり、以後ハイテク業種の影響が強くなりました。結果的にゼロ年代のITバブル崩壊とそれに続く2003年のソニーショック、リーマンショック後のシャープやパナソニックの迷走などの影響をより強くける結果となっており、世界の主要株式指標の中で唯一リーマン前の水準に達していないという結果になっています。実は日本を代表する株式指標が、グローバル経済の変化に追随できていないという笑えない現実があるわけです。

この辺はあくまでも流動性の高い指定銘柄225種で、しかもみなし額面価格を元に再計算された加工された数字ですから、その辺はちゃんと押さえた上で見るべき数字です。個人的な話で恐縮ですが、私がリーマン前に仕込んでいた株式もご他聞にもれず含み損状態でしたが、おかげさまで今は含み損を解消し含み益さえ出ております。個人による小口投資は長期保有を前提に銘柄を慎重に選び、安く拾うことに尽きます。加えて買ったら忘れて10年後に笑うつもりで、目先の値動きに一喜一憂しないこともまた重要です。とはいえ保有銘柄全てが値上がりしているわけではなく、沈んだままの銘柄もあります。他の銘柄の含み益でカバーされているから、全体としては損失は出ていないというのが正確なところです。

5月の株価調整にはもう1つ大きな要因がありまして、これまでそぷばを牽引してきた外国人投資家の仲で大きなウェートを閉めるヘッジファンドの手仕舞いが5-6月に集中しているということもあります。彼らは基本的に短期投資中心で、今まで買い越して上げ相場を演出してきたわけですが、ここで一旦利益確定売りに転ずるタイミングでもあります。ま、これは日本企業の決算発表時期と重なるという要素もあるわけで、「ヘッジファンドのせいで相場が乱れた」という批判は必ずしも当たりません。むしろ今までの上げ相場も含めて日本の株式市場がカモ扱いされているということです。ぬか喜びしている連中は案外相場観が雑です。

で、カモ扱いされているのは株式だけではなく、4月の黒田日銀の異次元緩和以来の債券市場の不安定ぶりに現れています。むしろ時系列ではこちらが先行しているわけで、既に取り上げているとおりですが、その結果何が起きたかというと、国債の安定消化に貢献していた銀行や生保などの機関投資家が国際から逃げ出し、こちらもヘッジファンドのマネーゲームが仕掛けられている可能性があります。日銀の国債大量購入で市場が手薄になっているわけですから、空売りを仕掛けて相場を動かして買戻しをかければ安く国債を購入できますし、入手した国債は日銀の買いオペに応札すれば高く買い取ってもらえるわけですから、資金量に物を言わせれば確実に儲かるわけです。もちろんその分日本の国富は流出するわけです。

しかも国債取引は為替取引と連動させることで、更においしいわけです。ただでさえ円安ドル高で、ドルベースで割安感がある上に、為替予約でドル高による為替差損をヘッジすることで、金利と為替の裁定による利益圧縮を回避して確実に儲けられるわけです。デフレ脱却のためのインフレ目標で国を貧しくするということですね。

ちなみに今回の株の乱高下が即ハイパーインフレになる可能性はほとんどないと思いますが、小泉構造改革の果てに起きたような賃金デフレが最も可能性の高いシナリオです。それが明らかになったときの国民の絶望的な怒りがどうなるのかが心配です。戦前の日本は、輸出を牽引してきた繊維産業の失速で、一方的に日本円の金との交換を停止して円安誘導して国際社会から非難されるなど似たような状況で国際連盟を脱退し「鬼畜米英」を叫ぶようになります。つまり当時の国際社会の変化に対応できずに追い込まれて暴走という意味で、ハイテク産業の失速に苦しむ現在の日本はダブります。

上にも書いたように、Nikkei225の構成銘柄がハイテク産業に偏っているのですが、それ以外にも製造業のウェートの高さが気になります。そんな中で企業の設備投資が低調なため、結局国債市場から締め出された銀行は資金運用先を失いつつあるわけで、結果的に海外に出口を求めることになります。実は私の保有銘柄で含み損状態なのが銀行株だったりします。97年の金融危機以来、2000年代にかけての不良債権処理で身奇麗になったのは良いとして、融資先が見つけられない状況は続いていたわけです。

一方でシャープは亀山の液晶2工場を抱えながら堺工場を作り、パナソニックは尼崎にプラズマパネル工場をつくり、 結果的に薄型テレビの競争激化で供給過剰による値崩れから失速し、シャープは堺工場を鴻海との合弁で切り離し、パナソニックの尼崎工場は操業停止に追い込まれています。ちなみに赤字垂れ流しの元凶だったシャープ堺工場は、合弁になって稼働率を下げて収支を合わせています。典型的な収益逓減の法則が働いたわけです。

80年代以降の日本が専ら製造業が付加価値を稼ぎ出していたのは確かですが、当時と交易条件が激変しているにも拘らず、製造業で夢を追おうという成功のパラドクスに囚われているのが現状です。製造業の場合は市場の需給調整を在庫として調整することが可能ですが、その間に新興国の台頭とベルリンの壁崩壊に伴う東側諸国の市場参入の結果、世界規模で供給過剰が生じて在庫が積み上がりやすい状況になり、IT革命で、いわゆるムーアの法則による技術進歩のスピードが早まった結果、商品のライフサイクルが短くなって在庫の陳腐化リスクが高まり、いわゆる型落ち品が値下げを主導するという状況もあります。もはや製造業主導の産業構造は日本では成り立たなくなっているという現実を直視すべきです。

その一方で金融やサービス産業は在庫という概念がそもそもなく、生産と消費が同時進行となりますから、需給のマッチングが難しいのですが、逆にIT革命の進捗で従来は把握の難しかった需要側の構造の見える化が可能になってきているという意味で、成長余地があります。いわゆるビッグデータ活用はこういった流れの中で理解すべき事柄ですが、日本企業がこの分野で戦略性を発揮しているとは言いがたい現状です。また一般的にサービスは非貿易財となりますので、国際市況や為替変動に左右されにくいという意味で、日本のような成熟国の産業政策として見逃せないところです。

具体的には例えば大都市鉄道の通勤ラッシュの緩和とか、過疎化の進む地方の活性化とか、高齢化に対応する医療や介護サービスの高度化や、国内農業の高付加価値化や、やはり需給のマッチングで非効率を内包する電力改革や、将来不安解消のための社会保障改革や財政再建などなど、日本国内で山積する様々な課題に地味に取り組んでいくということしかありません。

金融に関しては国際金融取引は一般論として高利回りは為替変動で相殺されてしまうため、金融の自由化それ自体で富を生み出すことはできません。また国際金融取引と称する取引も、実態は例えば米ドル決済であればアメリカ国内の金融システムで決済されるだけですから、結果的に金融制度やインフラの整った先進国、なかんずく先行するイギリスとアメリカが有利になるのは当然で、TPPでアメリカのご機嫌取りしても改善されない問題です。

というわけで、日本の金融が国債依存からj舵を切るとすれば、製造業の国内拠点の整理統合と海外拠点の展開を支援することが中心にならざるを得ません。それは空洞化批判と裏腹ですが、既に2005年を境に日本の国際収支に占める貿易収支との所得収支の逆転は起きているわけで、その方向性をより洗練させることで、結果的に国富は増大します。また増えた国富を国内で循環させるには、上記のような国内の課題解決に資金提供する仕組みもまた重要で、間違っても輸出企業支援のために外債を買って為替リスクを負うことではありません。

今の日本が戦前の繊維産業の失速に苦しんだ時代と同様に産業構造いの変換期になるのに、それを自覚できていない日本のリーダーたちのどうしようもない時代認識が、戦争への道を繰り返す具は避けたいところです。

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