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Sunday, June 30, 2013

通信傍受でワシントン混線さす

どえらい事件が現在進行形で起きています。

焦点:スノーデン容疑者の暴露と逃走、米当局の対応に疑問符 | Reuters
スノーデン氏は現在モスクワの空港に滞在中といわれますが、おそらくこのまま長期滞留となるものと思われます。まるでスパイ映画のような展開ですが、リアルに起きている事件から、いろいろなことが見えてきます。

アメリカの通信傍受そのものは、9.11を受けてブッシュ政権時代に成立した愛国者法によって令状なしで可能なのですが、イラク戦争に反対しブッシュ政権に対決姿勢を示していたオバマ大統領だけに、国民の失望は大きく、支持率も急降下しています。しかもカリフォルニアでの周金平中国主席との首脳会談で中国発のサイバー攻撃を名指ししていただけに、当のアメリカがやってたって話ですから具合が悪いですが、是非はともかくサイバー空間での主権国家のせめぎ合いの実態を垣間見ることはできます。

とはいっても個人情報を直接収集していたというわけではなく、通信ログの収集が中心で、通信の相手やアクセス先、時間や頻度などで突出したものをアルゴリズムで絞り込んでターゲットを抽出するわけで、無差別に国民や外国人の個人情報を集めていたわけではないんですが、元々移動体通信では端末の位置情報が通信キャリアに把握されていましたし、昨今のスマホのようにGPS機能建ついていたりすれば、特定個人の行動記録が完全に把握できてしまうわけですから、テロ対策や犯罪捜査のためとはいえ、当局にフリーハンドを与えることは問題ですが、日本ではよく議論のされないまま、通信傍受法を成立させており、貧弱な個人情報保護法だけで対応という心許ない状態ですが、メディアも取り上げないし国民も無関心という困った状態です。

話をアメリカに戻しますと、こうしてターゲットを絞り込んで特定個人を監視し、テロの実行を未然に防げるかといえば、ボストン爆弾テロのような事件も起きるわけですし、むしろ無人攻撃機によるビンラディン殺害のように、いわゆる「危険人物」の排除に使われるのが関の山です。ある意味通信ログから抽出されプロファイリングされた挙句に裁判を経ずに殺人マシンの餌食というのは、人権上も問題がありますが、いわゆる「テロとの戦い」を標榜する限り、相手は主権国家ではなく民間人なんですから、サイバー空間における主権国家の対応はこうならざるを得ないという程度のリアリティは持ち合わせておくべきでしょう。是非はともかくとして。

アメリカ政府は否定していますが、以前からエシュロンと呼ばれる通信傍受組織の存在は言われておりましたし、この分野はイギリスがハブの役割を果たしているらしいことは以前から言われていました。スノーデン氏の告発では2009年のG20首脳会合や財務省・中銀総裁会合の出席者の通信傍受までしていたということで、サイバー空間では既に主権国家同士の虚虚実実の駆け引きは行われていると見るべきでしょう。また米CIAによるイラン核施設のコンピュータをウイルス感染させたとか、イラクが大量破壊兵器を隠し持っているという英情報機関のうその情報でイラク戦争が始まったなどなど、この手の話は枚挙に暇がありません。

そういや先日のG8ではシリア情勢で米ロ間で応酬がありましたが、アメリカが渋っていた反政府勢力への武器供与に踏み切る決断をしたのも、シリア政府がサリンを撒いたという英情報機関の報告によるものですが、なんかデジャビュな感じです。ロシアは外から見ているからその辺が冷静に見えるのでしょう。ソ連時代からの軍事基地設置などの蜜月関係がメディアで報じられますが、実態は浮き桟橋1つで重大な利権なのかということもあり、メディアによるロシアのネガティブキャンペーンと見たほうが良さそうです。メディアが嘘をつくのは日本に限った話ではないようですね。ちなみにG8ではシリア問題の比重が高かったので、日本のいわゆるアベノミクスに「理解を得た」というのも大ウソ。そもそも日本に対する関心は低かったというべきです。

気をつけたいのは、これらはいわゆるIT技術の進化によるもので、最近言われるビッグデータのダークサイト問題として捉えられるわけで、以前に指摘した武雄市のTUTAYA図書館やFB良品の問題点はかなり鮮明になるかと思います。上記の通信傍受法のように、世界のトレンドを後追いする日本では、危なっかしい法律が議論もなく素通りするという意味で、より怖い状況にあるということは指摘しておきます。

同時に、サイバー空間の拡大は、主権国家同士のせめぎ合いの場もサイバー空間に移行して、リアルな軍隊の意味も変化を余儀なくされます。有体に言えば、使えない戦略核兵器はもとより、殺傷能力を高めた通常兵器の使用も現実的には難しくなる中で、リアルな軍備増強は単なる金食い虫に成り下がりつつあるということで、いち早く気づいたアメリカはその方向にシフトしつつあるわけです。オバマ大統領の核廃絶も、その文脈で理解すべき事がらです。「憲法変えて国防軍作ろう」という議論の周回遅れっぷりはひどすぎますね。

そうすると厄介なのは、アメリカの軍事的プレゼンスを頼みにしている西側諸国の立ち位置が微妙になってくるわけで、シリア反政府軍への武器供与問題に限らず、欧州主導で進められたボスニアやコソボなどの旧ユーゴ地域の紛争に典型的に見られた、アメリカの軍事的コミットを引き出すいわゆるワシントンコンセンサスが機能しなくなる可能性があるわけです。シリア問題に引き寄せれば、チュニジアやエジプトで平和裏に政権交代が実現したいわゆる「アラブの春」にかこつけて、親欧米的な湾岸産油国が絡んで反政府勢力への資金供与が行われている現実があり、それに欧州諸国が相乗りして例えばリビアで政変が起きたわけで、周辺国から嫌われているシリア政府の毒ガス使用という情報も、一応疑っておくことも必要じゃないかと愚考いたします。

とはいえこういったダークサイド問題を踏まえつつ、テクノロジーの進化による社会の変化は押し止めることは不可能なわけで、むしろダークサイドに留意しつつ、ビッグデータ活用による消費者へのポジティブフィードバックがどれだけあるかという点にこそ注目すべきでしょう。その点から注目したニュースがこれです。

日立、Suicaビッグデータから駅利用状況を分析するサービス - ITmedia ニュース
ある意味日本のビッグデータ活用が初歩レベルに留まっていることを証明するようなニュースです。POSシステム導入で大量取得されたPOSデータをコンビニチェーンがメーカーに売っていたのがPOS導入初期ですが、統計処理でデータマイニングしてクラスター分析や回帰分析などの統計手法を用いて初めて有意なデータとなるのがビッグデータですが、改札データから年齢や性別などの属性を抽出しただけで何ができるのかは疑問です。残念ながら日本ではまだこんなレベルなんですね。

例えばグーグルは検索連動広告をはじめ、廉価に集めたビッグデータを巧みに収益化していますし、アマゾンは自社の基幹システムをクラウド環境で構築して自社のコスト構造を改善したに留まらず、システムの外販までしている状況で、しかもグーグルにしろアマゾンにしろユーザーから支持されている一方、日立のこの取り組みに対しては「気持ち悪い」といった批判が寄せられています。これはビッグデータの企業向け加工に留まっていて、末端ユーザーのメリットが見えないことが原因と考えられます。逆にフェイスブックとGPSを連動させたチェックイン機能など、ユーザーに見えるメリットのあるサービスは受け入れられているわけです。つまりはビッグデータの活用は、ユーザーメリットをどれだけ見せられるかにかかっていると言えるかと思います。その意味で日本企業の意識のガラパゴスっぷりこそが問題です。

身近なところでは交通系ICカードの共通化が典型ですが、関西のPiTaPaはポストペイ方式で電子マネー機能は共通利用できませんし、広島のPASPYはICOCAとのみ一部連携だったり、JR四国はそもそもICカード乗車券の導入ができないままで、現状は高松・坂出両駅限定でICOCAの岡山・福山エリア間で利用可能なだけです。しかも費用は全額JR西日本持ちでカードの発売はなしです。一応四国共通カードの構想はあり、高松琴平電鉄のIruCa、伊予鉄道のICいーカード、土佐電気鉄道のですかがそれぞれ現状スタンドアローン状態で導入されていて、資金難にあえぐJR四国の導入を待っている状況です。

また首都圏でいえばSuicaエリアとTOICAエリアの間に除外区間がありますし、ここに限らずエリア間に跨って利用ができない状況です。公式の説明では、経路検索の能力の限界を超えるためとされておりますが、EXICやモバイルSuicaで新幹線利用の場合に限って使えるようにしているように、新幹線利用への誘導の意図が丸見えです。加えてSuicaとTOICAではシステム自体も別物で、現状ではこれ以上の共通化はできない(少なくともJR東海は消極的)というのが現状です。

以前にも取り上げましたが、そもそもベースとなるFeliCaシステムが割高だという根本問題もあるわけで、SuicaにEdy機能を搭載したいというJR東日本の申し出を断ったソニーの近視眼が、結果的に互換性のない類似システムの乱立を招いたわけです。

またSuicaが振替輸送の対象外となっていることや、消費前が二段階に小刻みに上がるためにシステムの改修に多大なコストを要することなど、様々なマイナス面も出てきております。挙句にICカード限定で10円未満の端数容認で事実上の二重運賃なんてふざけた話まで飛び出します。

一方でJR東日本では気仙沼線と大船渡線のBRT区間限定のICカード乗車券システムを導入湯します。

JR東日本、東北BRT専用のICカード「odeca」導入…8月3日から | レスポンス
これは単純に鉄道での復旧が長引く中で、BRTの利用促進策を迫られた結果と見るべきでしょう。Suicaシステムと別建てとしたのは、接続路線がいずれもワンマン運転のローカル線で、仙台のSuicaエリアと接続していないため、接続線区のSuica導入のコストと天秤にかけて別システムとしたということでしょう。現状でも交通系ICカード共通化で勘違いしてPASMO1枚でワンマン列車でローカル線の無人駅に突撃する人が後を絶たない状況で、混乱回避を優先したということでしょう。

というわけで、ますます複雑化するICカード乗車券事情ですが、上記のように個人情報を容易に特定できるダークサイドを抱えるビッグデータ利用に関しては、ユーザーの目に見える明らかなメリットを示さないと、ビッグデータの利用自体が進まないジレンマに陥ると考えられますから、日本企業がマインドセットをリセットしないと取り残されそうです。

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Comments

免疫力をつけて身体がウイルスに感染することを何とか避けたい。
同時にパソコンがウイルスに感染することも避けたい。
gooブログにアクセスすると、ウイルスに感染することがあるから、近寄らないことが望ましい。
URLがblog.gooで始まっている。また角の中にgが入った赤いマークが付いている。
ウイルス対策ソフトがパソコンに入っておれば、ウイルスをブロックするので問題ないと思われるが、念のため。
君子危うきに近寄らず。

Posted by: うなぎ | Sunday, June 30, 2013 08:12 PM

I believe people will be able to learn a lot from what you've mentioned here. The podcasts by Cara Cake talk about a lot of similar stuff. Have you heard them?

Posted by: business credit cards for new business | Friday, July 19, 2013 02:16 PM

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