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Sunday, June 02, 2013

成田スカアクセス

昨今問題になっているヘイトスピーチ問題ですが、橋下大阪市長の大炎上っぷりであらぬ方向へ向かっています。呆れてものも言えませんが、またその釈明がどんどん傷口を広げてドツボにはまっています。

sex slave(性奴隷)問題は決して日本固有の問題ではないことはそのとおりなんですが、だからこそ時代と共に高まる人権意識の中で、多くの国が格闘してきた問題なのに、選挙で選ばれた公人がそれをスルーして「日本だけが悪いんじゃない」というズレた認識が問題なんです。21世紀の現代に70年前のことの釈明を必死に行うことの異常さこそが問題なんで、この点は侵略戦争に関する認識のあいまいな安倍首相や、オリンピック候補のライバル批判と取られた猪瀬都知事のイスラム批判なども同様ですが、選挙で選ばれた公人のこの手の失言は、諸外国から見て国民の民度への疑義を想起させるだけに悪質です。

ま、そんな国際感覚だから、国際競争力会議なるもので、羽田空港と成田空港を1時間で結ぶ浅草線バイパスで、キャリーバッグ引いて徒歩で乗り継げる仁川空港に対抗して東京の競争力を高めようというんですから眩暈がします。そもそも成田のリアルな実情を知らないんじゃないかとさえ感じます。

羽田の国際化で成田には異変が起きています。成田のピークタイムは到着便が15-17時、出発便が17-19時と、必ずしも国内ユーザーの使い勝手を反映していません。何故こうなったかといえば、主に北米とアジアを結ぶゲートウエーとしての地位を成田が固めつつあるからです。国内基点ならば、利便性に勝り今後も発着枠が増える羽田に比べて見劣りは否めないところですし、深夜や早朝が使えないのもマイナスです。というわけで、羽田と成田の役割分担は既に始まっていて、今さら成田空港のアクセス改善で活性化は画に描いた餅でしかありません。

そもそも成田へのLCC誘致こそが活性化の目玉だったはずですが、皮肉なことに、夕刻のピークタイムがボトルネックとなって、度々門限問題で欠航を生じている状況で、成田拠点のジェットスターとエアアジアの2社は、搭乗率が低迷し、黒字転換の見込みが立たない状況にあります。つまり夕刻のピークタイムでは出発も到着も待ち時間が発生し、特に到着便が成田上空で1時間以上旋回待機となれば燃料費も嵩みますし、夜のフライトを後ずれさせて最終便が門限に引っかかるという悪循環を引き起こしているわけです。成田はLCCにとっても使い勝手の悪い空港というわけです。

そんな中で関空拠点のピーチだけは好調なんですが、ジェットスターは関空を、エアアジアは中部を第2拠点とすべく空港側と交渉中ですが、関空に関してはピーチが反対しているということで、すんなりいきそうにありません。エアアジアに関しては機材の追加調達を凍結するなどしてコスト圧縮に努めているという状況で、社長の退任などもあり、撤退も視野に入っているかもしれません。ジェットスターにしてもJALとのコードシェアで親掛かりで搭乗率を上げようとしている状況ですが、そもそも同一空港をLCC2社が拠点とするということ自体に無理があるので、ジェットスターとしてはエアアジアの撤退待ちが本音かもしれません。この辺は親会社のJALとANAの体力差の問題もあり、自民党政権のJALバッシングもあるので、予断を許さないところではあります。

こういった現実を見ないふりをしてアクセス改善で活性化しようという発想がそもそもおかしいわけですが、そのほかにもいろいろ問題があります。国土交通省の公表資料から見てみましょう。

成田・羽田両空港間及び都心と両空港間の鉄道アクセス改善に係る調査結果概要①(pdf)
運行本数の少なさが驚きですが、これは泉岳寺と押上が現行のままであれば、両駅がボトルネックとなり、浅草線とバイパスの合計で28本/時が限界ということです。つまり浅草線の輸送力を維持する前提ではバイパス線経由は4本しか設定されませんし、逆にバイパス線経由を増やせばその分浅草線の列車本数を減らさなければならないわけで、一応ケース3の浅草線18本、バイパス線10本を想定して需要予測として約22万人/日とはじいております。注意が必要なのは、これが純増を意味するわけではないということです。

これがメディア報道ではこうなるわけです。成田・羽田アクセス短縮 都営浅草線にバイパス新線 :日本経済新聞国交省の資料では、整備費用に問題があることをぼかしてはいるものの認めていますが、日経の記事では東京都の懸念という形で触れる程度です。そもそも国交省資料は突っ込みどころ満載なのに、報道機関としてどうなんだろうかと思います。矛盾ははっきりしていますね。バイパス線はできても前後区間のボトルネックに制約されて列車本数はあまり増やせないわけです。仮に需要予測の22万人/日がほぼ純増だとすると、今度は浅草線の輸送力が2/3に減って混雑を助長することになるわけですから、浅草線の利用者にとってははた迷惑な計画ということになります。

そして整備費用を3,500億円+αとしていて、車両基地や運行管理システムの改善、泉岳寺駅改良や両空港駅への引上線設置その他、事業費の試算に盛り込めなかったわけで、実は事業費自体は確定していないわけです。また事業主体が東京都交通局とすると、都市利便増進事業のスキームでは国と自治体と整備主体となる事業者で1/3ずつ負担するわけですが、当然交通局が整備主体となれば実質東京都が2/3を負担することになります。もちろん交通局分は地方公営事業として別会計ですが、それはとりもなおさず交通局の地下鉄事業に新たな負荷を与えることになるわけで、黒字転換で鼻息荒くメトロ併合をぶち上げる猪瀬都知事の一元化構想が遠のくことになります。

というわけで、国交省は苦肉の策として整備主体が30年償還可能な工事費の上限として4,700億円という数字を示しておりますが、これも要注意です。というのは、両空港駅の引上線設置などの+α部分を誰が負担するかがあいまいで、京成、京急を巻き込んだ負担の押し付け合いに発展する可能性もあり、関係社局間の協議がまとめられるのかなど、課題ばかりが目に付く計画です。

それともう1つ、大深度地下利用の鉄道計画という意味で、目新しさはありますが、それ故に通常の地下鉄と異なり、換気兼避難路としての中間駅を多数設置する都市地下鉄とは異なり、トンネルと並行する換気ダクト通路と避難通路を確保することになります。というのは、折角私権を制限した大深度地下利用でも、立抗を地上にd洗馬その部分は私権の影響を受けるわけで、中央リニア同様中間駅は極力減らす必要があり、実際バイパス線では丸の内仲通を想定した新東京駅以外の中間駅設置は明言されておりません。あくまでも速達化による需要誘発が狙いということになります。

その意味で小渕政権時代の緊急経済対策として事業化された副都心線との類似性の指摘もありますが、副都心線は純粋に輸送力増強であったことや、南北線や大江戸線で顕在化した人口の都心回帰による高層マンション建設などの再開発など需要誘発効果が見込めたことから、整備主体となる東京メトロが積極的に動いたことが指摘できます。早い段階で計画図面を公開し、東新宿の待避線を明記する一方で、渋谷駅は島式ホーム1面2線の最低限のものとして描いて、東横線の副都心線直通に興味を示していた東急を巧みに誘うという知恵を働かせました。つまり直通のために渋谷駅の規模が大きくなるとすれば、その拡大部分は東急の負担になるよということを暗に示唆して後に横浜高速を含む直通6社協議会へと繋げたわけです。東京都交通局にこんな寝技まがいのことができるのかどうか、はなはだ疑問です。

北総線という低稼働インフラと幻の計画線成田新幹線の未成区間を繋いで160km/hの高速運転でアクセス改善を果たした成田スカイアクセスと比べても意が足りないから「スカイ」じゃなくて「スカ」にしかならないわけです。ま、こういうわけですから、この浅草線バイパス計画は、かなりスジが悪いと言わざるを得ません。

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Comments

そもそも地下鉄は都市鉄道等利便増進法によって国が1/3、地方自治体が1/3、残りの1/3を事業者が負担するというスキームで建設されるものです。東京都の地下鉄は、東京都とせいぜい関東圏の自治体が利益を受けるもので、それ以外の地域にはなんら関係が無いわけです。成田や羽田の拠点性が高まって嬉しいのもまた地元です。こういう事業が「国家戦略」になることに違和感を感じます。国家戦略ということは、国が1/3以上の金を拠出するということになります。じゃあ、関空アクセス改善のなにわ筋線は「国家戦略」じゃ無いんですか、関空と神戸or伊丹を結ぶ鉄道を作ればそれは「国家戦略」にしてもらえるんですか、という疑問が生じます。東京都としては、せっかくの成田スカイアクセス、上野発着では利便性が今ひとつというところでしょう。ならば東京都の成長戦略として頑張っていただきたいところです。

Posted by: sawada | Sunday, June 02, 2013 at 10:58 PM

国家戦略だから国が1/3以上を負担っていうのも変じゃないですか。成田の国際空港としての使い勝手の悪さを口実に屋上屋を架すようなアホな政府に国家戦略を語れるのかってことです。

しかもこのバイパス線計画は通常の地下鉄などの都市鉄道とは異なり、ほぼ開発利益は期待できないわけで、東京都としても取り組みにくい事業です。

また本文でも指摘したように、北米対アジアの乗り継ぎ拠点としてアクセスの悪さに影響されないコアな需要が見え始めた成田の、アクセス強化が本当に意味があるのかということは問われるところです。

Posted by: 走ルンです | Monday, June 03, 2013 at 10:34 PM

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