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Sunday, July 14, 2013

猛暑の夏の静かな節電

ちうわけで電気ネタ2連チャンです。というか、昨年まであれほど節電を国民にお願いしてきた政府も電力会社も、今年は静かです。ま、原発動かさなくても電気が足りることが周知されたからということですが、原発停止=停電の危機を煽ってきたために、国民にすっかり節電意識が定着して、肝心の電力料金収入が減ってしまったというのが真相です。何しろ東武野田線に省エネ新車が入るぐらいですから(笑)。広島も夜明けは近いぞ(爆)。これ以上節電を煽っても、策に溺れるだけと気づいたってことです。

以前から指摘しているように、そもそも13ヶ月ごとに運転停止して3ヶ月かけて定期点検しなければならない原子力発電は、停止期間中のバックアップ電源の確保が必要で、電力会社は原発新設でお役御免となる償却済みの火力発電所を休止状態で残すことで対応してきたわけです。償却済みだから保有コストはほぼゼロで、旧式だから故障も多くて燃費も悪いけれど、めったに火を入れないからこれで十分ってことだったんですが、原発が全停止しても、それをカバーできる能力は元々持っていたわけですから、原発停止即停電ということにはならないのは当然で、これまでも度々指摘してきました。とはいえ故障が多くて燃費の悪い老朽火力への依存はリスクもあるわけですが、それはある意味自業自得。原発に依存してきた経営判断の結果ですから、国民を脅して原発を動かそうというのがどだい無理スジです。

また元々原発依存ゆえに処理に困った夜間の余剰電力対策として整備した揚水発電の存在を隠して、出力をごまかして突っ込まれて渋々開示したように、実は揚水発電がポイントです。能力的には揚水ポンプの消費電力の3割程度しか回収できない無駄の塊のような代物ですが、出力の立ち上げが短時間で可能なので、ピーク対応に力を発揮したのは怪我の功名ですが意外に知られておりません。ま、元々捨て場のない夜間電力を消費してピークカットに役立てるという仕組みで、多くは自治体所有で夜間電力割引を活用して揚水ポンプを動かし、ピークに合わせて高値で電力会社に買い取ってもらえるから成り立つ事業ですから、原発が動いていなければ下手すりゃ逆ザヤ。専ら損をかぶるのは電力会社というわけで、そりゃ電力会社としては1日も早く原発を再稼動したいのが本音です。

で、昨年発足した原子力規制委員会が新安全基準とやらを出してきて、7月に新基準に基づく再稼動の申請が北海道、関西、四国、九州の4電力会社から提出されましたが、不思議なのはその新基準の中身に関する報道が極端に少ないことで、専門家からは中身がスカスカと言われています。そもそも規制委発足から1年に満たない短期間での取りまとめですが、アメリカで数千ページと言われる安全基準と同等以上の基準をこんな短期間でまとめられるというのがウソっぽいところです。審査に半年として、年末の再稼動にこぎつけるためのタイムスケジュールの逆算の結果という見方を否定しきれないところです。

私自身は原発再稼動そのものに反対ではないんですが、このように再稼動ありきで事態が進むことには違和感を覚えます。少なくとも建設中を含む52基の原発を完全に再稼動できるという想定は、原発即時停止、全炉廃炉という共産党の主張とどっこいどっこいの非現実的な想定です。原発を停止しても消えてなくなるわけじゃないですから、何らかの形で原発と関わらざるを得ないのが、残念ながら現実です。ただし想定される現実的な落しどころには多様なバリエーションが存在します。

まぁかなり楽観的に見てですが、中身スカスカと言われる新基準に照らしても、再稼動できるのは10基程度というのが現実的でしょう。そしてそれ以外の炉は古いものから廃炉することになるでしょうけど、廃炉費用が莫大な上に、廃炉作業に従事するマンパワーの問題もありますから、相当数の原子炉は未稼働状態のままとなるわけです。これを逆手に、もんじゅの廃炉で出口のない核燃料サイクル計画を停止し、未使用炉を核燃料プールとして利用することで、核のゴミ問題を緩和するあたりが現実シナリオでしょうか。また未使用核燃料も大量在庫があり、将来のエネルギー需給も不透明な中で、逆に未稼働原発をバックアップ用とするという考え方もできます。実際ドイツはそういった作戦を立てています。ただしこれすら立地自治体の同意を得るのは至難の業でしょう。その意味で折角の参院選で、こういった問題の議論を深めてほしいのですが、その点はさっぱりです。ホント投票行きたくないなぁ。

あと原発の再稼動問題に関しては、減価償却と廃炉費用積み立ての問題もあります。現行では稼動時の収益から控除する形で減価償却と廃炉費用積み立てが行われていますが、問題のある変更がされました。

東電値上げの舞台裏、福島原発費用めぐり紛糾、歪められる会計ルール  | トレンド | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
原発の廃炉問題のネックとして、40年稼動を前提として減価償却が行われ、廃炉費用が積み立てられている現状では、未稼働だと計上できず、廃炉時に不足分を減損処理しなければならないところを、経産省は未稼働での減価償却費計上を認めたわけです。何が変わるかと言えば、料金算定のための総括原価に含まれるかどうかということです。減損処理ならば特別損失ですから、原価に含まれず料金に反映されませんが、減価償却ならば原価に算入されその分電気料金が上がるわけです。つまり料金を介した利用者負担となるわけですが、動いていない原発の費用を料金でカバーするというのはおかしいですね。

というわけですから、再稼動推進派が言う「原発動かさないと電気料金が上がる」はウソで、どのみち電気料金は上がります。その結果国民はますます節電に精を出し、電力会社の経営を圧迫します。特に割引のない住宅や小規模事業所などの小口電力契約者ほど節電に励みますから、電力会社のダメージはより大きいと言うことになります。結果大口電力ユーザーに負担を求めざるを得なくなり、財界から「困る」の大合唱となるという構図です。

あとよく言われる「原発停まると火力の燃料費が膨らみ貿易赤字になる」も、皮相的な見方です。元々電力会社がバラバラに相対取引で相手の言い値で買ってたから高値掴みになっていただけで、アメリカのシェールガス革命でロシアも危機感を持って日本に接近している状況で、商社が動いているものの、原発再稼動問題がネックで商談が進まないのが現実です。原発再稼動が既成事実化すればはしごを外されかねないのですから、結局国のエネルギー政策があいまいなことが問題なんです。既にビジネスとして動いているのですから、原発再稼動を含めて国がなし崩しではない方針を示す必要があります。

同様にビジネスが動き始めた再生エネルギーですが、これが電力会社の接続拒否で滞っています。特に北海道電力では軒並みですが、電力側の言い分としては、受電容量を超えるからということですが、元々人口密度が低く、大口ユーザーの乏しい北海道では、送電インフラが脆弱ではあります。とはいえ泊原発の再稼動を前提としているのですから、出力の大きい原発の存在が再生エネルギーの活用を阻んでいるとも見ることが可能です。

加えて津軽海峡を越える連系線の容量が小さく、本州への越境送電もままならないということですが、さりとて連系線増設のコストを誰が負担するかで足踏みしています。特に風力発電の適地の8割は北海道と言われるのに、道内でそれを消化できないというわけで、経産省は北海道電力の販路拡大という観点から北海道電力に負担させようとしているようですが、その一方で「冬に停電すれば命に関わる」と脅して原発再稼動仁つなげようという下心も隠さないというわけで、ここでもエネルギー政策の不在が問題になります。

北海道といえば度重なるディーゼル車の火災事故でメンテナンスに疑義を持たれるJR北海道の窮状がかぶります。電力も鉄道も三島会社は問題を抱えているということです。ある意味北海道新幹線はJR北海道にとって原発並みのインパクトのある事業なんでしょうけど、現状では明るい見通しは立ちません。もっと足元をしっかりしなければいけません。今回はこの辺がオチかな。

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