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October 2013

Sunday, October 27, 2013

ホテルの墓

何ともアホらしいニュースです。

阪急阪神ホテルズ社長「偽装でなく誤表示」 :日本経済新聞
リッツ大阪でも虚偽表示 公表なしにメニュー訂正  :日本経済新聞
食品偽装という意味では、コメ産地偽装の三瀧商事のそれと比べて、悪質性は高くないとは言えます。とりあえず有害だったり品質的に問題があったりするものを供したわけではありませんし、ぶっちゃけ食材の値段と味は比例しませんし、安い素材でおいしいものを作るならば、問題はないわけです。ただし謝罪会見が自爆会見となった会社幹部の対応はお粗末すぎます。

そもそも虚偽表示を甘く見ていないかということです。法令上は景品表示法違反ってところで、不正競争防止法違反に問われるかは微妙ですが、幹部たちは何を勘違いしたのか、虚偽ではなく誤表示と強弁すれば処罰されないと考えているようです。当然実際は事実関係から判断されるんで、会社幹部のコンプライアンスに対する認識がここまで甘いと、そりゃ自爆しますわ。

それと気になるのが、この手の食材仕入れは、実は不正の温床になる怖い部分でして、仕入れ担当が仕入れ先からリベートを受け取るケースは意外に多いんです。仕入れを担当するとお屋敷が建つとさえ言われるほど、裏金が動く世界なんです。経営幹部が例えばブラックタイガーと車エビ、バナメイエビと芝エビの仕入れ単価の違いや、個別メニューの原価率などの基本的なデータを把握せずに現場任せにするというのは、業界の常識として考えられません。いわば謝罪会見で自爆したに留まらず、自らの無能を告ったわけです。田舎のラブホじゃあるまいし、阪急阪神ホテルズにしろ系列のリッツ大阪にしろ、顧客離れは避けられないでしょう。

なぜこんなことになったのかjはわかりませんが、思い当たるのが2006年の阪急による阪神TOBによる経営統合です。持株会社の阪急阪神HD傘下に各事業会社をぶら下げる形態ですが、鉄道事業が阪急電鉄と阪神電気鉄道がそれぞれ独立を維持しているのに対し、関連事業である百貨店やホテルは統合が進んでおります。今回の阪急阪神ホテルズも、阪急東宝グループの阪急ホテルズと第一ホテルグループに、阪神系列のホテル阪神を統合したもので、寄り合い所帯だった上に、親会社のHDから厳しい利益貢献を求められる立場ということで、安い食材で高く売れるメニューに走った可能性を否定できません。業者リベートなどの不正ではないにしろ、売り上げと原価のバランスをちゃんと見ていれば、見抜けた事柄ではあります。故に問題を現場のせいにした経営幹部は墓穴を掘ったと言えるわけです。

元々阪急阪神の経営統合はいろいろと問題含みだったわけで、虎をめぐる冒険、阪神の行方で指摘したように、元々本業の鉄道事業でのシナジー効果には疑問符がついていたわけで、実際その後の阪神なんば線の開業による近鉄との相互直通で好調な結果を見ると、阪急阪神の経営統合は、阪神が近鉄神戸線になるのを阪急が嫌ったという構図が見えます。一方で梅田地区の再開発ではシナジー効果を発揮しやすいわけですから、百貨店やホテルの統合は、鉄道事業の独立性とは裏腹に、経営統合の効果を問われる立場にあったと見て良いでしょう。HDからホテルズ経営陣へのプレッシャーは大きいと推察されます。

という構図ですが、みずほ銀行のオリコ提携ローンでの反社会勢力融資の放置問題でも、経営陣は事態を把握できる環境にありながら対応しなかったわけですが、これもみずほ銀とコーポ銀の統合によるワンバンク化を金融庁に示唆されていたプレッシャーの中で放置された公算大と言われており、みずほ幹部の責任は免れませんが、日本企業の危機管理のお粗末さという点は共通します。

そして汚染水ダダ漏れ状態の東京電力福島第一原発の現状ですが、相変わらず注水して冷やすことしかできていない状況が続いています。作業員の被曝量も限界に近づく中、マンパワー不足は相変わらずですが、柏崎刈羽には再稼働準備で待機する作業員がいるという状態は、東電の経営不在を示します。今は福一にマンパワーを集中させるべきなのは言うまでもありませんが、社債発行を事実上封じられた東電では、銀行の追加融資が滞れば運転資金がショートするとして、銀行の顔色を伺うために、無駄と分かっていても柏崎刈羽の再稼働申請をせざるを得ず、当然柏崎刈羽から福一へ人を回すなどできない相談というわけですが、どっち向いて仕事してるんでしょうか。

政府も「コントロールされている」として頬かむりですが、実質政府は何もしていません。元々大量の地下水流入がある上に、台風接近による大雨で雨水流入もあり、実質汚染水はダダ漏れ状態ですが、漏れた水は結果的に希釈されているので、線量測定すれば基準値以下になるとして海への流出を放置している状況です。汚染問題で希釈して拡散させるのは、汚染物質の絶対量は減らない上に、事後的な処理が困難になるという意味で禁じ手なんですが、お構いなしです。こういったことが許されている日本企業のガバナンスはお寒い限りといえます。

そういやJR北海道も会見でどこか他人事です。よく言われる組合対立問題や、新規採用抑制による技術継承の断裂などは他のJR各社も共通であり、北海道だけの問題ではありませんし、多数派組合と会社の関係はどこも良好です。むしろJR北海道に固有の問題としては、他地域と比べてローカル線廃止で規模の縮小が大規模で、それだけ余剰人員が多かったということがあります。その結果国労系組合員を差別的に扱ったとして不当労働行為として摘発されたこともあり、会社側から組合側にものを言いづらい雰囲気はあったのかもしれません。それにしても経営陣が現場を掌握できていなかったわけで、結果として現場丸投げが常態化していたと考えられます。

以下与太話ですが、みのもんたの次男の問題で昨日記者会見を開きました。中身については同意できない部分が多いんですが、阪急阪神ホテルズの自爆会見と比べると、うまくこなしたとは言えます。善し悪しはともかく、フリーアナウンサーというのは身一つの自営業者であり、保護されていない立場ですから、結局自らの裁量で道を拓くしか術がないわけで、親会社や当局や銀行のプレッシャーを気にしながら仕事する雇われ経営者とは立場が違うわけですね。みのもんたを認める気はさらさらありませんが、危機管理は凡百の日本企業より上という評価は可能ですね。

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Sunday, October 20, 2013

イコールフッティングの視点

注目された羽田空港国際線発着枠の増枠分の配分が決まりましたが、ANA11枠に対してJAL5枠という極端な傾斜配分となりました。多少の差はつけるのではないかとは言われていたものの、ここまであからさまなJAL叩きは驚きです。それほど官邸には逆らえないという政府の現在を示しているのでしょうか。国交省の言い分がまたふるってます。

羽田国際線枠配分でもANAに軍配 国交省の不透明試算でJAL成田便にも打撃|inside|ダイヤモンド・オンライン
法的整理の結果JALが免除される6年分の法人税が約2,000億円で、今回の6枠差で年間に生じる利益の差が60億円で、10年で600億円、20年で1,200億円となり、格差がある程度是正されるというのですが、この試算自体根拠のあいまいなドンブリ勘定です。

問題は国際線発着枠が国内線と違って再配分がされないという点、また成田ルールで羽田の発着枠を配分された同一国向けの成田便を維持する義務があること、もっと根本的には今回の発着枠拡大は競争促進の意味もありますから、成田便は競争条件が不利になりますが、ドイツなど羽田枠がANAのみに配分された国向けのJAL成田便は競争力を失うのに路線維持の義務を負うわけで、再配分がなければ影響は20年では終わらないわけで、JALを意図的に風下へ置くことを意味します。財務面でのJAL優位を理由とした傾斜配分の範囲を超えた不公正なものと言わざるを得ません。

傾斜配分といえば携帯電話の電波割り当てで、圧倒的な規模を持つNTTドコモに対して後発のソフトバンクが優遇されたことなどが思い起こされますが、JALは再建過程で規模を縮小しており、既に事業規模ではANAが勝っています。元々傾斜配分の必要性は高くなかったわけです。また根本的に羽田と成田の発着枠拡大の結果、基本的に発着枠は余ってきているということもあります。だからこそ成田ベースのLCC2社が参入したわけです。そのLCCにも変化があります。

ジェットスター、営業赤字90億円 LCC3社の決算出そろう :業績ニュース :企業 :マーケット :日本経済新聞
LCCに関しては3社3様の結果ですが、関空ベースのピーチの好調に対して成田ベースの2社が赤字となり、既にANA系のエアアジアジャパンはエアアジアとの合弁解消でANA全額出資のバニラエアとして11月からリゾート路線中心に近距離国際線中心の路線展開を目指し、一方のジェットスタージャパンは、128億円の売上で88億円の赤字という驚くべき結果ですが、ハイペースで機材を増やした一方、関空の第二拠点化が遅れて稼働率が下がったために固定費が嵩んだという事情があります。拠点の成田空港の使い勝手の悪さに足を引っ張られた格好です。ただし国内線中心でJAL本体とのコードシェアなど、JALを含むワンワールドの国際線からの乗り継ぎ狙いを明確にしており、戦略の違いが見られます。

ジェットスタージャパンの短期間での機材増強は早く採算ベースに乗せる意図もありますが、規模拡大を急いだ結果、昨年11月に社内規定に満たない整備士2名に業務を行わせて国交省がら厳重注意を受けたというのがありますが、規模の拡大に人材育成が追い付かない現実を示します。また今年10月には検査漏れも発覚しております。

LCCで初歩的ミスが相次ぐワケ | 産業・業界 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
これはエアアジアジャパンも同様ですが、本来国交省指定のマニュアル(TCD)に準拠すべきところ、わかりやすいメーカーマニュアル(AMM)に基づく整備を行い、結果的に整備漏れを起こしたもので、初歩的ミスという意味で人材育成の遅れが見られます。マニュアルの取り違えは、JR北海道の保線作業でも、国鉄時代の基準を更新せずにより許容度の高い新基準を当てはめたことにも通じますが、放置すれば重大事故につながりかねないだけに、早くわかって良かったとは言えますが。

とはいえ国内線のLCC定着は重要です。円安やオリンピック関連で近頃話題のインバウンド(訪日外国人観光客)輸送の観点からも、料金面で利用しやすいLCCが一定のシェアを得ることは重要です。インバウンド輸送に関しては、貸切バスの新規参入による競争激化の影響が最も心配される分野でもあり、LCCやチャーター便など航空輸送でカバーされれば、結果的に競争力を維持できないバス事業者の撤退によって、道路交通の安全性は高まります。尚、インバウンド輸送の鉄道での吸収は、ジャパンレイルパスでのそみに乗れないなどの制約を課している現在のJRのスタンスでは期待しない方が良いでしょう。実際東海道新幹線に限ればビジネス客で手一杯でしょうし。

ANAとJALの発着枠争奪戦も、基本的には良い時間帯の発着枠を巡る争いであって、羽田と成田を合わせれば発着枠自体は余ってきているわけですから、現状の成田の使い勝手の悪さも、将来的に緩和傾向となる可能性はあります。成田の発着時間の制限はなくせなくても、24時間コンビニを誘致してロビーも開放するなどの変化も見られますが、できれば24時間利用可能なショップや飲食店や簡易宿泊施設を備えて、空港の滞在時間を楽しめるようにすることも課題です。少なくともあまり意味のない連絡鉄道を新たに整備するよりは可能性がありますし、空港にとっては着陸料以外の収入を増やすことにもなります。チェックインの締切が早くシビアなLCCですが、空港滞在時間が長くなると考えれば、空港にとっては逆においしいビジネスモデルになり得ます。

ここで気になるのがリニアの問題です。東京―名古屋間が2027年、大阪までは2045年とアナウンスされており、名古屋までの時点では航空との直接競合はありませんが、大阪まで開業すれば当然影響があります。JR東海の目論見では大阪開業時点で輸送シェア100%になると想定されておりますが、おそらくそうはならないと考えられます。生産年齢人口が50年で半減する状況で、のぞみ+700円~1,000円という運賃料金を払って利用するいわゆるビジネス客自体は減りこそすれ増えることはありません。

JR東海もそれを見越してか、東海道新幹線のリニューアルのための長期運休に備えるとか、東海、中南海地震に備えた二重化といった説明をしていますが、前者については、そもそも1列車700席で1,300席の新幹線のぞみの半分強で1時間最大5本という運行計画では、現行新幹線の輸送力の1/4しかカバーできないわけですから矛盾します。また東海道新幹線のリニューアル自体も長期運休せずに設備更新する新工法をJR東海自身が発表しており、運休する気はさらさらなさそうです。JR東海の本音は東阪間の輸送シェア独占こそが狙いと見て良いでしょう。実際こんなニュースがあります。

リニア全線同時開業、建設費支援あれば「検討」 JR東海社長  :日本経済新聞
全額自己資金での建設を表明しているJR東海ですが、大阪までの2027年の同時開業を求める経済界などの声に応える形でのコメントですが、全額自己資金では借入金の増大で同時開業は無理とすることで、国に暗に補助金をおねだりするというスタンスです。自己資金の限界を示すことで補助金を誘導するとか、財産区分を明確化するとか、鉄道事業者はこの手のことをよくやります。しかし問題があります。

そもそも東海道新幹線は当時公社だった国鉄の自己資本と借入金で建設され、開業後借入金は完済されてますから、事実上国鉄が自前で整備したのですが、意外に知られておりません。それでも黒字間違いなしの収益性の高さから、世論の反対の声を抑えて建設されたわけです。リニアも同様に収益性が高いならば、公社時代の国鉄にできたことをなぞるだけのはずです。こういう本音が見え隠れするのは、JR東海自身が事業に自信が持てていない可能性があります。また航空を締め出して市場独占を狙うならば、尚のこと財政資金の投入ははばかられます。

こう言うと「航空会社は空港整備を公的部門に依存しているではないか」と言われますが、バカ高い空港利用税を負担した結果の空港整備ですから、その限りにおいてイコールフッテイングは成り立ちます。むしろ羽田など少数の黒字空港から地方の赤字空港への内部補助を考えれば、余分なコストを負担したとも言えます。もちろん東海道新幹線が国鉄の屋台骨を支えてきた現実もありますから、この辺の評価はせいぜいおあいこぐらいでしょう。同様のロジックは自動車と道路関連諸税及び高速道路料金の関係でも成り立ちます。

逆に民営化され、新幹線の買い取りで負担額が確定したJR東海は既に競争上優位にあります。民営化初期のようにリースだと、国の都合で追加負担を課される可能性が否定できませんでした。実際旧国鉄共済年金の職域加算分の厚年基金への移行に伴う積み立て不足分のJR本州各社への追加負担は行われ、政治的に紛糾しました。このとき社民党が裏切って政府と手打ちをするという失態を演じました。新幹線の買い取りで負担が確定したからこそ、リニアの自己資金での建設が可能になったのはたびたび指摘しております。そこへさらに補助金をというのは、市場の競争条件を歪める禁じ手です。

今年8月実施の新高速バスでも、元々高速乗合バスと高速ツアーバスという一国二制度問題が根底にあり、高速乗合バスへの一本化が行われたわけですが、旧ツアーバス組にとってはバス停の確保がネックとなり、多くの事業者が撤退しました。一方で移行した事業者は高速道路料金の区分変更(特大車→大型車)で負担が軽減したこともあり、今のところ採算面での不安はないようですが、バス事業に関しては昨今ドライバー不足が日常化していることもあり、いずれ求人難で人件費の高騰という事態も考えられます。その時に生き残るのがどの事業者になるかはわかりませんが、同一制度の下で競争条件が整備されたという意味では、鉄道や航空より先を行っているという評価は可能です。鉄道や航空も見習うべきでしょう。

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Sunday, October 13, 2013

能面暗面裏(HOMEHKNATYPA)

特定秘密保護法が問題視されております。ここでは詳細には立ち入りませんが、ハフィントンポストの記事を張り付けておきます。

特定秘密保護法で「知る権利」が守られない理由
思い出されるのが2010年の尖閣諸島沖での中国漁船体当たり事件の顛末ですが、元々秘密情報でも何でもなかった現場のビデオ映像を、当時の政権が政治的配慮で秘密としたのですが、既に海保内では広く閲覧されており、実際に神戸の海上保安官によってYoutubeで公開されました。

これが公務員の守秘義務違反であるとして懲戒処分されるわけですが、その後防衛省のイージス艦関連情報の漏えいなどで日本政府の情報管理の甘さがアメリカからも指摘されることとなり、このような法案となったわけですが、同種の法律を持つアメリカでは、内部告発者の権利保護が法的に担保されているとか、情報公開原則であらゆる秘密情報を30年後公開など、別の法律で国民の知る権利を担保しているわけですから、それらが不備な日本ではバランスを欠きます。将に旧ソ連のような官僚支配国家へまっしぐらというわけで、特権官僚制度を示すロシア語に漢字をあててみますた。原因作った民主党は死ぬ気で阻止しろ!

民間でもみずほ銀行の反社勢力融資放置問題のような事件が起きています。オリエントコーポレーションとの提携融資で、1次審査はオリコが行い、みずほ銀行は事後審査となるのですが、少なくとも事案が発覚した時点でオリコへ通知し共同て対応する必要があったはずですが、それを怠ったばかりか、説明を二転三転させて責任回避する姿勢はある意味日本的ですが、責任を負うべき者が責任回避したり、現場へ責任転嫁するのは、官民ともに共通なのかと思うと憂鬱です。

そういえば汚染水漏れで対応に追われる福島第一原発でも、連日のトラブルは明らかにマンパワー不足で、累積被曝線量が上限に達した作業員も出ているのに、柏崎刈羽には再稼働準備で技術者や作業員が張り付いているというのも変な話です。優先順位を間違えていますが、東電幹部はお構いなしで、現場は疲弊に任せているという、何とも無責任な状態です。政府が前面に立つといっても、法的根拠の乏しい470億円の追加支援を決めて尻叩いただけで、むしろ現場には「国が出てきたんだから何とかしろ」とハッパをかけるだけですから、ますます疲弊するだけです。この辺の構図はJR北海道の一連の不祥事と通底します。

そんな中で今度はJR九州でこんなニュースです。

JR九州「ななつ星」、車体に傷…架線柱に接触 | レスポンス
いわゆる建築限界違反ですが、全線で73箇所もの違反があったというのが驚きです。通常は電化時に限界測定を行うはずで、問題があればその時点で修正されるはずですが、その後繰り返し計測されることは稀です。架線柱が一旦建植されれば基本的には動かないので、必要性が低いということはあります。

ただし線路が動くことはあります。キーワードは高速化ですが、曲線部のカント量調整と緩和曲線長の変更とか、交換駅の1線スルー化などで、鉄道用地内に収める前提で微調整されることはあります。その時に再計測されていれば発見できたんでしょうけど、実際に試運転列車を走らせて支障がなければ良しとされるケースが多いと考えられます。限界測定は線路閉鎖を伴う手間のかかる作業でもありますし。

それが豪華クルーズトレインななつ星で限界一杯の幅広ボディと乗り心地重視で偏倚の大きい柔らかいバネを与えた結果、架線柱と接触し、建築限界支障が発覚したもので、問題の性格としてはJR北海道のそれとは異なりますが、国鉄時代の予算制約でインフラの投資不足だった中での高速化の模索という点では共通しています。そもそも論として国鉄改革のせいというつもりはありませんが、積み残した課題という意味で、今日の問題として再定義する必要はあるのではないかと思います。

限界に関しては車両限界と建築限界の関係も注意が必要です。車両の外寸を規定するのは車両限界の方で、曲線通過やバネの偏倚は車両限界内に収まる必要がありますので、公式の限界値よりも縮小された寸法が採用されます。JRの前身の国鉄では、車体幅3,000mmの限界値に対して、車体長19,500mmボギー中心13,800mmのE231系等の標準型電車で最大幅2,950mmとしているわけです。当然バネ偏倚の大きいとされるななつ星でも、車両限界を超える設計はされてないわけで、今回の問題も車両限界に一定の空間を足した建築限界の問題というわけです。

建築限界と車両限界の関係も、例えば地下鉄では建築限界を車両限界に沿わせた特殊な限界が採用されており、窓の開口制限などの条件を整えて特認を受ける形です。地上鉄道でも旧地方鉄道法準拠の私鉄線の場合、は国鉄よりも限界が小さく、例えば副都心線直通を控えた東横線では、限界を見直して2,850mmの車体幅を許容し、メトロ、東武、西武各社の車両を受け入れています。相互直通運転のためには、調整すべき問題がいろいろあるわけです。同じ東急とメトロの相互直通でも、田園都市線と半蔵門線では、最大幅2,800㎜ですから、東急5000系と5050系では車体幅が異なります。

三島会社に話を戻しますと、JR北海道が経営安定基金の運用先として鉄道・運輸機構への貸し付けと機関債購入で3.7%の高利回りを享受し、事実上の隠れ補助金を受けています。建前上は自主運用とされている中で、この3.7%という利回りは法令で定められているわけで、JR四国も同様の運用がされています。早い話、本業の赤字の許容範囲を決められている中での経営のかじ取りを強いられているわけで、必要なところへ資金が回らず、現場が疲弊するのは構造的な問題ということが指摘できます。

で、悩ましいのは三島会社は特別法を根拠とする政府全株保有の特殊会社であるために、勝手に清算もできませんし、例えば上場会社であるJR東日本が資金支援するというわけにもいきません。問題解決のためには経営形態の見直しにまで踏み込む必要があるわけですが、今の政権でそこまで踏み込めるかというと、疑問を禁じ得ません。おそらく福一を抱える東電同様にハッパをかけられながら放置されるのがオチでしょう。いや資金拠出を決めた東電以下の扱いになりそうです。あるいはこれを機に労組潰しに奔走するかですが、たびたび指摘するように、労組問題は本質的に無関係です。

経営安定基金に関しては、JR九州は鉄道・運輸機構以外の運用先へ資金を配分しており、その分運用益は北海道や四国より低いのですが、これはおそらく上場準備の思惑があるものと思われます。九州新幹線開業で収支は好転しており、また不動産や流通などの関連事業が鉄道に並ぶ収益の柱として育っており、三島会社の優等生となっています。鉄道事態の立地条件の良さもさることながら、北海道の青函トンネルや四国の本四橋のような経営の重荷となる資産がないことが寄与しています。

国鉄時代に電化が進んだことも併せて、JR九州は有利な条件が重なります。故に経営安定基金に頼る必要性が低いと同時に、株式上場となれば基金の国庫への返却が求められるのは確実ですから、依存度を下げる経営判断があるものと考えられます。ただし収支改善に寄与した九州新幹線が自社保有ではないという点で、JR東日本の上場時の証券サイドからの指摘で新幹線買取りへと進んだプロセスを考えると、整備新幹線として上下分離で整備された九州新幹線が上場のネックになるという皮肉な状況も考えられます。いずれも簡単には解決できそうにない問題ばかりですが、貨物も含めて見直しは避けられないところではあります。でも今の政権じゃ無理だろうなぁ。

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Sunday, October 06, 2013

あ緩和崖っぷち

アメリカがえらいことになってます。いわゆるオバマケア問題で議会がまとまらず、暫定予算も成立しないまま今月新年度に入ったため、資金繰りのため一部政府機関の閉鎖が行われて5日が経過しましたが、議会に歩み寄りの気配はなく、米国債の一部デフォルトという事態すら起こりうるということで、オバマ大統領が外交日程をキャンセルしました。

米大統領、アジア歴訪中止 TPP年内妥結不透明に  :日本経済新聞
TPPの年内妥結にあれほど拘っていたオバマ大統領の外交戦略が大きく狂うことになります。シリア問題ではロシアの助け舟もあって、むしろ戦争を回避したリーダーとして支持を高めたのですが、本命のアジア重視の通商政策すら犠牲にせざるを得ないアメリカの財政問題はそれだけ深刻ということです。

本当にデフォルトにまで至るならば、ギリシャの財政危機で世界があれだけ振り回されたわけですから、その比じゃないでしょうし、リーマンショックを上回るという見立てもありますが、どういう形であれ、デフォルトは回避されると見ております。おそらく満期の延長や短期債券によるつなぎ資金などで時間稼ぎをしながら、議会の妥協点を探ることになると思います。そもそも外貨準備として各国政府が多くを保有する米国債ですから、大量保有する中国や日本を含めて、自国の損失を回避する意味でも協力が見込まれます。ただし議会の妥協の内容はかなり玉虫色になり、火種自体は残ることになるでしょうから、アメリカ発の金融市場の不安定は続くという困った状況になりそうです。

共和党保守派が反対するオバマケア自体は既に法案も成立しており、大統領選で信任されたと見なせますから、あとは予算措置だけなんですが、来年の中間選挙で安易な妥協はしにくいということと、2014年に完全実施されると後戻りできなくなるということで、力づくで潰しにかかっているという事情があります。もはや弁証法もどこへやら、イデオロギーが支配し民主主義そのものがどうにかなってしまったのが今のアメリカということで、対立が解けないまま力づくの綱引きが続くという悪夢のような展開が予想されます。

財政の崖問題そのものは、昨年大いに騒ぎになったもので、11月のブッシュ減税失効と、今年1月の財政赤字上限問題による歳出強制削減問題で、結果的に富裕層減税の上限を大幅アップして妥結したものの、赤字上限アップは限られ、単なる時間稼ぎの先送りに過ぎなかったわけで、今年10月あたりが危ないというある意味予想されたオクトーバーショックではあります。

思い起こされるのが、昨年9月に始まった米FRBのQE3ですが、明言はしませんが元々財政の崖を睨んだショック緩和策の側面があります。発行残高が多く、世界中で保有されている米国債の安定は市場の番人にとっても重大事です。その流れから言えば先月のQE3解除延期は10月危機を見越してのものと見ることも可能です。で、実際5日に発表予定だった雇用統計も政府機関閉鎖の影響で発表されず、FRB自身の判断材料を失ったわけですから、込み入ってますがアメリカも日本同様緩和解除の出口を失った可能性があります。

アメリカのような経済規模の大きい国の財政金融政策は世界中に影響を与えます。良い例は総選挙前の11月に既に円安株高に動き始めた日本です。アベノミクスどころか民主党政権時代、野田首相が我慢して解散を見送れば、景気回復の手柄を手にすることができたわけです。黒田日銀の量的・質的緩和(QQE)は4月ですからますます無関係。当時ドル円95円程度の水準でしたから、あれだけ強引な力技でも結果的に僅かに円安に動かしたに過ぎないわけです。それだけアメリカの経済的プレゼンスは大きいわけです。

元々アメリカの実体経済は上向いております。いわゆるシェール革命によるものですが、エネルギー価格の低下に留まらず、エチレンなど化成品原料としての価格破壊効果もあって、アメリカの国内製造業の競争力が回復しつつあります。ただし皮肉なことに、オバマ政権の製造業復権政策で再建を支援したGMは新興国に軸足を移しておひざ元のデトロイトを破たんさせてますし、風力や太陽光などの環境技術での雇用創出もとん挫しており、シェール革命という偶然に助けられた面は否めません。

ただし重要なのは、リーマンショック後のアメリカの貯蓄率の上昇傾向でして、アメリカらしからぬ節約志向が国民に定着しつつあり、経常収支の赤字も改善に向かっています。つまりリーマンショックの原因と言われたグローバルインバランス(経常収支の黒字赤字の極端な偏り)は世界規模で解消されつつあるわけです。もちろん中東から大量に石油を買わなくて済むようになった面も寄与してます。

それでも政府財政の赤字は巨大で、結局財政の赤字を国内貯蓄でファイナンスできない以上、財政赤字分は経常収支の赤字で埋め合わせるしかないのが今のアメリカというわけです。そのために大量の財務省債を発行していて、その多くを外国マネーに頼っているわけです。実はアメリカ最大の輸出品目は財務省債というオチですが、それを実現するためには、財務省債を含むドル資産を魅力あるものに見せる必要があるわけです。ゆえに貨幣供給を増やして資産価格を高く見せることが求められるのですが、それは戦略物資である原油価格をも吊り上げるわけですから、エネルギー価格を通じてアメリカ国内のインフレを助長することになります。ということは、この面でもシェール革命はインフレ抑制に働くわけで、FRBは安心して金融緩和ができるということでもあります。

一方で政府が資金を出してまで助けたGMは国内工場を畳んで韓国と中国が主力工場になるなど、雇用の拡大には寄与せず、化成品や半導体などプラントや製造装置といった資本装備が競争力の源泉となる産業では元々雇用創出力は弱く、実体経済の強さとは裏腹に失業率は改善せず、FRBも緩和解除に慎重になり過剰マネーが溢れる状態ということで、喜んでいるのは資金彫琢が容易にになる金融部門ばかりで、投資に積極的になりますから、いわゆるリスクオン状態になり、株価が上がるという構図です。一種の集団躁状態ですね。

で、リスクオン状態になるとドル円が円安になるというのもゼロ年代以降の経験則ですから、FRBのQE3を受けて円安が進んだのは不思議でも何でもないわけです。で、以前ならばこの局面ではユーロが独歩高となるところですが、ギリシャショック以来低迷するユーロ相場のおかげで、新興国通貨に影響が及ぶわけです。成長過程にある新興国の場合、通貨高は輸入物価の下落から消費ブームを起こしやすく、経済が過熱することになります。丁度高度成長期の日本と同じですが、ブレトンウッズ体制で固定相場が維持されていた当時と違い、金融政策で加熱を止めるのが難しく、為替介入で対ドルレートを維持しようとします。新興国の為替介入は輸出競争力維持のためというよりは、経済の安定のための手っ取り早い方法と考えた方が実態に近いといえます。

だから逆にFRBのQE3解除は新興国に通貨安をもたらし国民生活を窮乏化しますので、ブラジルなどが激しく非難するのは、そうしないと政権を維持できないわけです。また日本の為替介入や金融緩和による円安誘導はあからさまな輸出強化策と見られますので、国際的には極めて評判が悪いわけです。

というわけで、アメリカの財政の崖問題は日本にもとばっちりが来ることは間違いありません。消費税増税を決めちゃった安倍政権はホント世界を見てないなぁ。それでいて横浜線の人身事故で感謝状とか、またしても頓珍漢なことやってるし。はっきり申し上げます。人を助けたいなら、冷静な状況判断こそが重要です。線路に入るなら、その前に非常ボタンを押して列車を止めてからということをこそ言うべきです。あまり言いたくはありませんが、輸送現場にも余計な負担をかけているわけですし、助けに入った女性の家族や知人を悲しませてもいるわけですし。ま、あらゆる問題を嘘と誤魔化しで塗り固めた現政権は本当にひどいとしか申し上げようがありません。

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