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Sunday, October 06, 2013

あ緩和崖っぷち

アメリカがえらいことになってます。いわゆるオバマケア問題で議会がまとまらず、暫定予算も成立しないまま今月新年度に入ったため、資金繰りのため一部政府機関の閉鎖が行われて5日が経過しましたが、議会に歩み寄りの気配はなく、米国債の一部デフォルトという事態すら起こりうるということで、オバマ大統領が外交日程をキャンセルしました。

米大統領、アジア歴訪中止 TPP年内妥結不透明に  :日本経済新聞
TPPの年内妥結にあれほど拘っていたオバマ大統領の外交戦略が大きく狂うことになります。シリア問題ではロシアの助け舟もあって、むしろ戦争を回避したリーダーとして支持を高めたのですが、本命のアジア重視の通商政策すら犠牲にせざるを得ないアメリカの財政問題はそれだけ深刻ということです。

本当にデフォルトにまで至るならば、ギリシャの財政危機で世界があれだけ振り回されたわけですから、その比じゃないでしょうし、リーマンショックを上回るという見立てもありますが、どういう形であれ、デフォルトは回避されると見ております。おそらく満期の延長や短期債券によるつなぎ資金などで時間稼ぎをしながら、議会の妥協点を探ることになると思います。そもそも外貨準備として各国政府が多くを保有する米国債ですから、大量保有する中国や日本を含めて、自国の損失を回避する意味でも協力が見込まれます。ただし議会の妥協の内容はかなり玉虫色になり、火種自体は残ることになるでしょうから、アメリカ発の金融市場の不安定は続くという困った状況になりそうです。

共和党保守派が反対するオバマケア自体は既に法案も成立しており、大統領選で信任されたと見なせますから、あとは予算措置だけなんですが、来年の中間選挙で安易な妥協はしにくいということと、2014年に完全実施されると後戻りできなくなるということで、力づくで潰しにかかっているという事情があります。もはや弁証法もどこへやら、イデオロギーが支配し民主主義そのものがどうにかなってしまったのが今のアメリカということで、対立が解けないまま力づくの綱引きが続くという悪夢のような展開が予想されます。

財政の崖問題そのものは、昨年大いに騒ぎになったもので、11月のブッシュ減税失効と、今年1月の財政赤字上限問題による歳出強制削減問題で、結果的に富裕層減税の上限を大幅アップして妥結したものの、赤字上限アップは限られ、単なる時間稼ぎの先送りに過ぎなかったわけで、今年10月あたりが危ないというある意味予想されたオクトーバーショックではあります。

思い起こされるのが、昨年9月に始まった米FRBのQE3ですが、明言はしませんが元々財政の崖を睨んだショック緩和策の側面があります。発行残高が多く、世界中で保有されている米国債の安定は市場の番人にとっても重大事です。その流れから言えば先月のQE3解除延期は10月危機を見越してのものと見ることも可能です。で、実際5日に発表予定だった雇用統計も政府機関閉鎖の影響で発表されず、FRB自身の判断材料を失ったわけですから、込み入ってますがアメリカも日本同様緩和解除の出口を失った可能性があります。

アメリカのような経済規模の大きい国の財政金融政策は世界中に影響を与えます。良い例は総選挙前の11月に既に円安株高に動き始めた日本です。アベノミクスどころか民主党政権時代、野田首相が我慢して解散を見送れば、景気回復の手柄を手にすることができたわけです。黒田日銀の量的・質的緩和(QQE)は4月ですからますます無関係。当時ドル円95円程度の水準でしたから、あれだけ強引な力技でも結果的に僅かに円安に動かしたに過ぎないわけです。それだけアメリカの経済的プレゼンスは大きいわけです。

元々アメリカの実体経済は上向いております。いわゆるシェール革命によるものですが、エネルギー価格の低下に留まらず、エチレンなど化成品原料としての価格破壊効果もあって、アメリカの国内製造業の競争力が回復しつつあります。ただし皮肉なことに、オバマ政権の製造業復権政策で再建を支援したGMは新興国に軸足を移しておひざ元のデトロイトを破たんさせてますし、風力や太陽光などの環境技術での雇用創出もとん挫しており、シェール革命という偶然に助けられた面は否めません。

ただし重要なのは、リーマンショック後のアメリカの貯蓄率の上昇傾向でして、アメリカらしからぬ節約志向が国民に定着しつつあり、経常収支の赤字も改善に向かっています。つまりリーマンショックの原因と言われたグローバルインバランス(経常収支の黒字赤字の極端な偏り)は世界規模で解消されつつあるわけです。もちろん中東から大量に石油を買わなくて済むようになった面も寄与してます。

それでも政府財政の赤字は巨大で、結局財政の赤字を国内貯蓄でファイナンスできない以上、財政赤字分は経常収支の赤字で埋め合わせるしかないのが今のアメリカというわけです。そのために大量の財務省債を発行していて、その多くを外国マネーに頼っているわけです。実はアメリカ最大の輸出品目は財務省債というオチですが、それを実現するためには、財務省債を含むドル資産を魅力あるものに見せる必要があるわけです。ゆえに貨幣供給を増やして資産価格を高く見せることが求められるのですが、それは戦略物資である原油価格をも吊り上げるわけですから、エネルギー価格を通じてアメリカ国内のインフレを助長することになります。ということは、この面でもシェール革命はインフレ抑制に働くわけで、FRBは安心して金融緩和ができるということでもあります。

一方で政府が資金を出してまで助けたGMは国内工場を畳んで韓国と中国が主力工場になるなど、雇用の拡大には寄与せず、化成品や半導体などプラントや製造装置といった資本装備が競争力の源泉となる産業では元々雇用創出力は弱く、実体経済の強さとは裏腹に失業率は改善せず、FRBも緩和解除に慎重になり過剰マネーが溢れる状態ということで、喜んでいるのは資金彫琢が容易にになる金融部門ばかりで、投資に積極的になりますから、いわゆるリスクオン状態になり、株価が上がるという構図です。一種の集団躁状態ですね。

で、リスクオン状態になるとドル円が円安になるというのもゼロ年代以降の経験則ですから、FRBのQE3を受けて円安が進んだのは不思議でも何でもないわけです。で、以前ならばこの局面ではユーロが独歩高となるところですが、ギリシャショック以来低迷するユーロ相場のおかげで、新興国通貨に影響が及ぶわけです。成長過程にある新興国の場合、通貨高は輸入物価の下落から消費ブームを起こしやすく、経済が過熱することになります。丁度高度成長期の日本と同じですが、ブレトンウッズ体制で固定相場が維持されていた当時と違い、金融政策で加熱を止めるのが難しく、為替介入で対ドルレートを維持しようとします。新興国の為替介入は輸出競争力維持のためというよりは、経済の安定のための手っ取り早い方法と考えた方が実態に近いといえます。

だから逆にFRBのQE3解除は新興国に通貨安をもたらし国民生活を窮乏化しますので、ブラジルなどが激しく非難するのは、そうしないと政権を維持できないわけです。また日本の為替介入や金融緩和による円安誘導はあからさまな輸出強化策と見られますので、国際的には極めて評判が悪いわけです。

というわけで、アメリカの財政の崖問題は日本にもとばっちりが来ることは間違いありません。消費税増税を決めちゃった安倍政権はホント世界を見てないなぁ。それでいて横浜線の人身事故で感謝状とか、またしても頓珍漢なことやってるし。はっきり申し上げます。人を助けたいなら、冷静な状況判断こそが重要です。線路に入るなら、その前に非常ボタンを押して列車を止めてからということをこそ言うべきです。あまり言いたくはありませんが、輸送現場にも余計な負担をかけているわけですし、助けに入った女性の家族や知人を悲しませてもいるわけですし。ま、あらゆる問題を嘘と誤魔化しで塗り固めた現政権は本当にひどいとしか申し上げようがありません。

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