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Sunday, October 27, 2013

ホテルの墓

何ともアホらしいニュースです。

阪急阪神ホテルズ社長「偽装でなく誤表示」 :日本経済新聞
リッツ大阪でも虚偽表示 公表なしにメニュー訂正  :日本経済新聞
食品偽装という意味では、コメ産地偽装の三瀧商事のそれと比べて、悪質性は高くないとは言えます。とりあえず有害だったり品質的に問題があったりするものを供したわけではありませんし、ぶっちゃけ食材の値段と味は比例しませんし、安い素材でおいしいものを作るならば、問題はないわけです。ただし謝罪会見が自爆会見となった会社幹部の対応はお粗末すぎます。

そもそも虚偽表示を甘く見ていないかということです。法令上は景品表示法違反ってところで、不正競争防止法違反に問われるかは微妙ですが、幹部たちは何を勘違いしたのか、虚偽ではなく誤表示と強弁すれば処罰されないと考えているようです。当然実際は事実関係から判断されるんで、会社幹部のコンプライアンスに対する認識がここまで甘いと、そりゃ自爆しますわ。

それと気になるのが、この手の食材仕入れは、実は不正の温床になる怖い部分でして、仕入れ担当が仕入れ先からリベートを受け取るケースは意外に多いんです。仕入れを担当するとお屋敷が建つとさえ言われるほど、裏金が動く世界なんです。経営幹部が例えばブラックタイガーと車エビ、バナメイエビと芝エビの仕入れ単価の違いや、個別メニューの原価率などの基本的なデータを把握せずに現場任せにするというのは、業界の常識として考えられません。いわば謝罪会見で自爆したに留まらず、自らの無能を告ったわけです。田舎のラブホじゃあるまいし、阪急阪神ホテルズにしろ系列のリッツ大阪にしろ、顧客離れは避けられないでしょう。

なぜこんなことになったのかjはわかりませんが、思い当たるのが2006年の阪急による阪神TOBによる経営統合です。持株会社の阪急阪神HD傘下に各事業会社をぶら下げる形態ですが、鉄道事業が阪急電鉄と阪神電気鉄道がそれぞれ独立を維持しているのに対し、関連事業である百貨店やホテルは統合が進んでおります。今回の阪急阪神ホテルズも、阪急東宝グループの阪急ホテルズと第一ホテルグループに、阪神系列のホテル阪神を統合したもので、寄り合い所帯だった上に、親会社のHDから厳しい利益貢献を求められる立場ということで、安い食材で高く売れるメニューに走った可能性を否定できません。業者リベートなどの不正ではないにしろ、売り上げと原価のバランスをちゃんと見ていれば、見抜けた事柄ではあります。故に問題を現場のせいにした経営幹部は墓穴を掘ったと言えるわけです。

元々阪急阪神の経営統合はいろいろと問題含みだったわけで、虎をめぐる冒険、阪神の行方で指摘したように、元々本業の鉄道事業でのシナジー効果には疑問符がついていたわけで、実際その後の阪神なんば線の開業による近鉄との相互直通で好調な結果を見ると、阪急阪神の経営統合は、阪神が近鉄神戸線になるのを阪急が嫌ったという構図が見えます。一方で梅田地区の再開発ではシナジー効果を発揮しやすいわけですから、百貨店やホテルの統合は、鉄道事業の独立性とは裏腹に、経営統合の効果を問われる立場にあったと見て良いでしょう。HDからホテルズ経営陣へのプレッシャーは大きいと推察されます。

という構図ですが、みずほ銀行のオリコ提携ローンでの反社会勢力融資の放置問題でも、経営陣は事態を把握できる環境にありながら対応しなかったわけですが、これもみずほ銀とコーポ銀の統合によるワンバンク化を金融庁に示唆されていたプレッシャーの中で放置された公算大と言われており、みずほ幹部の責任は免れませんが、日本企業の危機管理のお粗末さという点は共通します。

そして汚染水ダダ漏れ状態の東京電力福島第一原発の現状ですが、相変わらず注水して冷やすことしかできていない状況が続いています。作業員の被曝量も限界に近づく中、マンパワー不足は相変わらずですが、柏崎刈羽には再稼働準備で待機する作業員がいるという状態は、東電の経営不在を示します。今は福一にマンパワーを集中させるべきなのは言うまでもありませんが、社債発行を事実上封じられた東電では、銀行の追加融資が滞れば運転資金がショートするとして、銀行の顔色を伺うために、無駄と分かっていても柏崎刈羽の再稼働申請をせざるを得ず、当然柏崎刈羽から福一へ人を回すなどできない相談というわけですが、どっち向いて仕事してるんでしょうか。

政府も「コントロールされている」として頬かむりですが、実質政府は何もしていません。元々大量の地下水流入がある上に、台風接近による大雨で雨水流入もあり、実質汚染水はダダ漏れ状態ですが、漏れた水は結果的に希釈されているので、線量測定すれば基準値以下になるとして海への流出を放置している状況です。汚染問題で希釈して拡散させるのは、汚染物質の絶対量は減らない上に、事後的な処理が困難になるという意味で禁じ手なんですが、お構いなしです。こういったことが許されている日本企業のガバナンスはお寒い限りといえます。

そういやJR北海道も会見でどこか他人事です。よく言われる組合対立問題や、新規採用抑制による技術継承の断裂などは他のJR各社も共通であり、北海道だけの問題ではありませんし、多数派組合と会社の関係はどこも良好です。むしろJR北海道に固有の問題としては、他地域と比べてローカル線廃止で規模の縮小が大規模で、それだけ余剰人員が多かったということがあります。その結果国労系組合員を差別的に扱ったとして不当労働行為として摘発されたこともあり、会社側から組合側にものを言いづらい雰囲気はあったのかもしれません。それにしても経営陣が現場を掌握できていなかったわけで、結果として現場丸投げが常態化していたと考えられます。

以下与太話ですが、みのもんたの次男の問題で昨日記者会見を開きました。中身については同意できない部分が多いんですが、阪急阪神ホテルズの自爆会見と比べると、うまくこなしたとは言えます。善し悪しはともかく、フリーアナウンサーというのは身一つの自営業者であり、保護されていない立場ですから、結局自らの裁量で道を拓くしか術がないわけで、親会社や当局や銀行のプレッシャーを気にしながら仕事する雇われ経営者とは立場が違うわけですね。みのもんたを認める気はさらさらありませんが、危機管理は凡百の日本企業より上という評価は可能ですね。

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Comments

メニュー偽装は鉄道会社系のホテルに集中しているように見えますね。どの会社も鉄道事業単体で儲けが出しにくい時代に多角経営化へと突き進んでいますが、収益増への貢献が求められるプレッシャーで不正が続くとなると日本のJRや3セクにも波及した、鉄道への公的助成が少ない代わりに周辺事業で利益をだす電鉄会社の経営モデルを見直さなければいけないのでしょうね。今後は副業の失敗で鉄道の経営が揺らぎかねない会社が出てくるかもしれないし…。(鉄道系以外のホテルでも同様のことが起きているし宿泊業界特有の商慣習とか何かが原因であるのかもしれませんが)


ところで国が観光庁設置をしたり観光立国化を推進しているし、自治体も観光での町おこしに力を入れているあまり行政や政治は旅行や宿泊(観光)業界に甘くないでしょうか。宿泊業界も政治力があるし、かんぽの宿が郵政民営化を機に削減されているのは旅館・ホテルの業界団体が民業圧迫だから廃止してほしいと政治家に要望したからとも聞きますし、そういう業界の環境が原因で大手宿泊業者や外食業者のチェーンでこういう不祥事が起きたと思えてなりません。うがった見方ですが日本で夜行列車や食堂車が絶滅寸前なのも宿泊業界や外食業界が旧国鉄やJRに暗に圧力をかけたからではと邪推してしまいます。寝台や食堂車がどこでもあれば鉄道旅行者が今のサービス水準の市中のホテルやレストランを使ってくれないですしね(^^; JR側も宿泊や食事の手段の多様化を理由にしてここまで食堂車や寝台車を冷遇してなければホテルやレストランのサービス水準と比較していい方を使えるのにと思うのですが。

Posted by: きさら | Thursday, November 07, 2013 12:02 AM

その後続々と出てきてますが、かなり中身は多岐にわたり、一概にどうこうというのは、むしろ本質を見逃す可能性があります。

ホテルのレストラン部門は宿泊以上に付加価値を生み出せる分野ということで、元々発言権も強く、なかなか経営陣が掌握できない分野ではあります。阪急阪神ホテルうで発覚した結果、業界全体で今のうちに公表しようということなんでしょう。今なら風当たりも少ないと。

つまりはかなりの部分は経営陣も把握していた可能性があります。また昨今の円安で、主に輸入食材の値上がりもありましたので、所定の原価率を維持するために安い食材に手を出したということかもしれません。この辺は個別事例ごとに異なると思いますので、断言は避けておきます。

元々食品業界は偽装が多い業界でもありますが、いわゆる高級店で、日常的に飲食する場ではないという意味では、社会的影響は限定的ではあります。ですから阪急阪神ホテルズがあんな自爆会見で炎上させるようなことをしなければ、違った展開の可能性もありました。そう考えると、阪急阪神ホテルズの経営陣の対応の問題が第一義ということになります。

客の立場としては、高級店ほど客も試される側面があります。今回の件で返金を申し出れば、見抜けなかった自分に跳ね返るという側面もあり、このあたりは通常の食品偽装とは異なり、客の品格まで明らかにになってしまうわけで、馴染み客ほど足が遠のく可能性もあり、影響は長引く可能性があります。

食堂車や寝台車の問題は、また別の問題ではないかと思いますが、国鉄末期の赤字拡大と現場の荒廃を知る世代としては、存続できた可能性は低いというのが正直なところではあります。

Posted by: 走ルンです | Thursday, November 07, 2013 10:51 PM

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Tracked on Tuesday, October 29, 2013 01:31 AM

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