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Sunday, October 20, 2013

イコールフッティングの視点

注目された羽田空港国際線発着枠の増枠分の配分が決まりましたが、ANA11枠に対してJAL5枠という極端な傾斜配分となりました。多少の差はつけるのではないかとは言われていたものの、ここまであからさまなJAL叩きは驚きです。それほど官邸には逆らえないという政府の現在を示しているのでしょうか。国交省の言い分がまたふるってます。

羽田国際線枠配分でもANAに軍配 国交省の不透明試算でJAL成田便にも打撃|inside|ダイヤモンド・オンライン
法的整理の結果JALが免除される6年分の法人税が約2,000億円で、今回の6枠差で年間に生じる利益の差が60億円で、10年で600億円、20年で1,200億円となり、格差がある程度是正されるというのですが、この試算自体根拠のあいまいなドンブリ勘定です。

問題は国際線発着枠が国内線と違って再配分がされないという点、また成田ルールで羽田の発着枠を配分された同一国向けの成田便を維持する義務があること、もっと根本的には今回の発着枠拡大は競争促進の意味もありますから、成田便は競争条件が不利になりますが、ドイツなど羽田枠がANAのみに配分された国向けのJAL成田便は競争力を失うのに路線維持の義務を負うわけで、再配分がなければ影響は20年では終わらないわけで、JALを意図的に風下へ置くことを意味します。財務面でのJAL優位を理由とした傾斜配分の範囲を超えた不公正なものと言わざるを得ません。

傾斜配分といえば携帯電話の電波割り当てで、圧倒的な規模を持つNTTドコモに対して後発のソフトバンクが優遇されたことなどが思い起こされますが、JALは再建過程で規模を縮小しており、既に事業規模ではANAが勝っています。元々傾斜配分の必要性は高くなかったわけです。また根本的に羽田と成田の発着枠拡大の結果、基本的に発着枠は余ってきているということもあります。だからこそ成田ベースのLCC2社が参入したわけです。そのLCCにも変化があります。

ジェットスター、営業赤字90億円 LCC3社の決算出そろう :業績ニュース :企業 :マーケット :日本経済新聞
LCCに関しては3社3様の結果ですが、関空ベースのピーチの好調に対して成田ベースの2社が赤字となり、既にANA系のエアアジアジャパンはエアアジアとの合弁解消でANA全額出資のバニラエアとして11月からリゾート路線中心に近距離国際線中心の路線展開を目指し、一方のジェットスタージャパンは、128億円の売上で88億円の赤字という驚くべき結果ですが、ハイペースで機材を増やした一方、関空の第二拠点化が遅れて稼働率が下がったために固定費が嵩んだという事情があります。拠点の成田空港の使い勝手の悪さに足を引っ張られた格好です。ただし国内線中心でJAL本体とのコードシェアなど、JALを含むワンワールドの国際線からの乗り継ぎ狙いを明確にしており、戦略の違いが見られます。

ジェットスタージャパンの短期間での機材増強は早く採算ベースに乗せる意図もありますが、規模拡大を急いだ結果、昨年11月に社内規定に満たない整備士2名に業務を行わせて国交省がら厳重注意を受けたというのがありますが、規模の拡大に人材育成が追い付かない現実を示します。また今年10月には検査漏れも発覚しております。

LCCで初歩的ミスが相次ぐワケ | 産業・業界 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
これはエアアジアジャパンも同様ですが、本来国交省指定のマニュアル(TCD)に準拠すべきところ、わかりやすいメーカーマニュアル(AMM)に基づく整備を行い、結果的に整備漏れを起こしたもので、初歩的ミスという意味で人材育成の遅れが見られます。マニュアルの取り違えは、JR北海道の保線作業でも、国鉄時代の基準を更新せずにより許容度の高い新基準を当てはめたことにも通じますが、放置すれば重大事故につながりかねないだけに、早くわかって良かったとは言えますが。

とはいえ国内線のLCC定着は重要です。円安やオリンピック関連で近頃話題のインバウンド(訪日外国人観光客)輸送の観点からも、料金面で利用しやすいLCCが一定のシェアを得ることは重要です。インバウンド輸送に関しては、貸切バスの新規参入による競争激化の影響が最も心配される分野でもあり、LCCやチャーター便など航空輸送でカバーされれば、結果的に競争力を維持できないバス事業者の撤退によって、道路交通の安全性は高まります。尚、インバウンド輸送の鉄道での吸収は、ジャパンレイルパスでのそみに乗れないなどの制約を課している現在のJRのスタンスでは期待しない方が良いでしょう。実際東海道新幹線に限ればビジネス客で手一杯でしょうし。

ANAとJALの発着枠争奪戦も、基本的には良い時間帯の発着枠を巡る争いであって、羽田と成田を合わせれば発着枠自体は余ってきているわけですから、現状の成田の使い勝手の悪さも、将来的に緩和傾向となる可能性はあります。成田の発着時間の制限はなくせなくても、24時間コンビニを誘致してロビーも開放するなどの変化も見られますが、できれば24時間利用可能なショップや飲食店や簡易宿泊施設を備えて、空港の滞在時間を楽しめるようにすることも課題です。少なくともあまり意味のない連絡鉄道を新たに整備するよりは可能性がありますし、空港にとっては着陸料以外の収入を増やすことにもなります。チェックインの締切が早くシビアなLCCですが、空港滞在時間が長くなると考えれば、空港にとっては逆においしいビジネスモデルになり得ます。

ここで気になるのがリニアの問題です。東京―名古屋間が2027年、大阪までは2045年とアナウンスされており、名古屋までの時点では航空との直接競合はありませんが、大阪まで開業すれば当然影響があります。JR東海の目論見では大阪開業時点で輸送シェア100%になると想定されておりますが、おそらくそうはならないと考えられます。生産年齢人口が50年で半減する状況で、のぞみ+700円~1,000円という運賃料金を払って利用するいわゆるビジネス客自体は減りこそすれ増えることはありません。

JR東海もそれを見越してか、東海道新幹線のリニューアルのための長期運休に備えるとか、東海、中南海地震に備えた二重化といった説明をしていますが、前者については、そもそも1列車700席で1,300席の新幹線のぞみの半分強で1時間最大5本という運行計画では、現行新幹線の輸送力の1/4しかカバーできないわけですから矛盾します。また東海道新幹線のリニューアル自体も長期運休せずに設備更新する新工法をJR東海自身が発表しており、運休する気はさらさらなさそうです。JR東海の本音は東阪間の輸送シェア独占こそが狙いと見て良いでしょう。実際こんなニュースがあります。

リニア全線同時開業、建設費支援あれば「検討」 JR東海社長  :日本経済新聞
全額自己資金での建設を表明しているJR東海ですが、大阪までの2027年の同時開業を求める経済界などの声に応える形でのコメントですが、全額自己資金では借入金の増大で同時開業は無理とすることで、国に暗に補助金をおねだりするというスタンスです。自己資金の限界を示すことで補助金を誘導するとか、財産区分を明確化するとか、鉄道事業者はこの手のことをよくやります。しかし問題があります。

そもそも東海道新幹線は当時公社だった国鉄の自己資本と借入金で建設され、開業後借入金は完済されてますから、事実上国鉄が自前で整備したのですが、意外に知られておりません。それでも黒字間違いなしの収益性の高さから、世論の反対の声を抑えて建設されたわけです。リニアも同様に収益性が高いならば、公社時代の国鉄にできたことをなぞるだけのはずです。こういう本音が見え隠れするのは、JR東海自身が事業に自信が持てていない可能性があります。また航空を締め出して市場独占を狙うならば、尚のこと財政資金の投入ははばかられます。

こう言うと「航空会社は空港整備を公的部門に依存しているではないか」と言われますが、バカ高い空港利用税を負担した結果の空港整備ですから、その限りにおいてイコールフッテイングは成り立ちます。むしろ羽田など少数の黒字空港から地方の赤字空港への内部補助を考えれば、余分なコストを負担したとも言えます。もちろん東海道新幹線が国鉄の屋台骨を支えてきた現実もありますから、この辺の評価はせいぜいおあいこぐらいでしょう。同様のロジックは自動車と道路関連諸税及び高速道路料金の関係でも成り立ちます。

逆に民営化され、新幹線の買い取りで負担額が確定したJR東海は既に競争上優位にあります。民営化初期のようにリースだと、国の都合で追加負担を課される可能性が否定できませんでした。実際旧国鉄共済年金の職域加算分の厚年基金への移行に伴う積み立て不足分のJR本州各社への追加負担は行われ、政治的に紛糾しました。このとき社民党が裏切って政府と手打ちをするという失態を演じました。新幹線の買い取りで負担が確定したからこそ、リニアの自己資金での建設が可能になったのはたびたび指摘しております。そこへさらに補助金をというのは、市場の競争条件を歪める禁じ手です。

今年8月実施の新高速バスでも、元々高速乗合バスと高速ツアーバスという一国二制度問題が根底にあり、高速乗合バスへの一本化が行われたわけですが、旧ツアーバス組にとってはバス停の確保がネックとなり、多くの事業者が撤退しました。一方で移行した事業者は高速道路料金の区分変更(特大車→大型車)で負担が軽減したこともあり、今のところ採算面での不安はないようですが、バス事業に関しては昨今ドライバー不足が日常化していることもあり、いずれ求人難で人件費の高騰という事態も考えられます。その時に生き残るのがどの事業者になるかはわかりませんが、同一制度の下で競争条件が整備されたという意味では、鉄道や航空より先を行っているという評価は可能です。鉄道や航空も見習うべきでしょう。

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Comments

はじめまして。

以前の見通しだとリニアは名古屋開業時点で1時間最大10本のダイヤで、列車は14-16両で運行するはずだったのに、現在は本数がその半分で両数は12両だから緊急時の東海道新幹線の代替どころか平常時にのぞみで東名・東阪間を移動する乗客を丸ごと転移させることさえままならないと思います。今のままだとリニアは実質的に東名2拠点だけを往復するシャトルみたいなものだし、思いのほか用途がニッチで需要が読みづらいということなんでしょうか?やはりリニアは鉄軌道より時隔を詰めたり輸送力を増強するのが技術的にやりづらいということなんでしょうか?それでも東海がリニアに固執するのは国内の顧客の利便というより海外への技術輸出用の広告塔としての宣伝効果を優先してなんでしょうかね。

新幹線保有機構の既設新幹線譲渡は、本州3社とりわけJR東海が国から新幹線を法外な値段と高金利で買わされたとか、国が整備新幹線などで無駄遣いするために民営化した会社に負担が押し付けられたいう視点でばかり語られることが多いのですが、実際は路線ごとの価額は収益力と不動産価格で決められたし、譲渡益は大半が既設新幹線の建設費償還と旧国鉄年金に充てられ、本州3社は新幹線を資産に計上し、減価償却して内部留保に当てられるし、資金調達の担保にできるしでJR側にも悪い話ではなかったですよね。特にJR東海は東海道新幹線を5兆円で買ったことで圧倒的な収益力を得てリニア建設の資金調達ができるというののにこの件で国に不当な高値をふっかけられたかのように東海が主張するのは虫がいいし、ネット上でも会社側にばかり与する意見が目立つのはなんだかなぁと思います。

Posted by: きさら | Wednesday, October 23, 2013 at 10:29 PM

コメントありがとうございます。

リニアの輸送力ですが、確かに構想より後退してますね。高速走行ゆえに停車駅近傍で複数列車が団子になるわけですから、元々列車間隔を詰めるのは物理的に難しい上に、自己資金整備で最低限の設備としたことで、こうなったってことでしょう。

地上コイルへの電力供給というシステム上、列車制御は基本的に地上側で行うわけですから、列車本数が増えれば幾何級数的に制御システムが巨大且つ複雑になるということもあるかもしれません。鉄軌道式の鉄道と比べたら技術的にも未成熟ですね。

新幹線買取価格に関するJR東海の言い分は仰る通り言いがかりに過ぎませんね。小泉政権時代の扇国交相が「理解」しちゃったわけで、禍根を残すものです。

とはいえ東電がこけて有力スポンサーを失った大手メディアにとってはJRは上得意客ですから、批判的な報道はできないんでしょうね。

Posted by: 走ルンです | Wednesday, October 23, 2013 at 11:03 PM

JR本州3社への追加負担で思い出したんですが、あの時はJR東日本が法的措置も辞さない構えで強硬に反対していたのに東海は日和ってあっさり容認したんですよね。

JR東海って新幹線買い取りやリニアのルート選定とかのぞみの名古屋飛ばしのように国や自治体の政治力に頼らない独立独歩の気風で鳴らしているようなイメージがあって、毅然とした姿勢に見えると評価する人がマスコミやネット上で結構いますが実際はどうなのかは割り引いて考える必要があると思います。

そしてブログ主さんが以前のエントリでも指摘されていた東海道新幹線大規模改修費用の無税積立を制度化させた話とか、公共事業でない純粋な民間プロジェクトと思われているリニア整備も実際は国が地質調査をし山梨実験線建設の際に公的な融資を受けていたりとか、最近だと高架や途中駅の用地取得で課税免除にしようとする動きがあったりとむしろ巧みに公的な支援を引き出すことに成功している会社だと思います。

JR東海と自民党政権とのパイプを考えると安倍内閣のうちに名古屋以西建設のための補助を引き出したいというのがきっと会社の本音なんでしょうが、すでに有形無形の行政の支援を受けながらさらに、というのは褒められたものでははりませんよね。

Posted by: きさら | Friday, October 25, 2013 at 07:39 PM

追加負担問題では、JR西日本も追加負担を特別損失に計上して法人税を減額する一方、経常利益に影響しないので株主配当は予定通り行うなどの過激な対応を取り、東も追随しましたが、東海だけは異なった対応を取りました。

当時から需要の少ない整備新幹線への鉄道整備基金からの貸付を批判し、東名阪を結ぶ東海道新幹線の増強策を国策とすべしという主張をしていましたから、国と事を構えるのを避けたと見て良いでしょう。

ご指摘のようにむしろ公的支援を引き出す手練手管は相当なものがあります。政権に近すぎるというのもご指摘の通りです。そういえばNHKは報道機関に非ずと豪語した松本会長もJR東海OBです。ホントろくでもないですね。

Posted by: 走ルンです | Saturday, October 26, 2013 at 11:51 PM

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