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Sunday, November 10, 2013

羽田空港新アクセス鉄道の深層

構想自体は昔から存在するけれど、いつしか沙汰止みになった計画の復活です。

羽田空港へ新鉄道路線、JR東日本が検討 休止中の貨物線を軸に:ハフィントンポスト
現在休止中の東海道貨物線田町(札の辻分岐)―東京貨物ターミナル間の線路を活用して都心と羽田空港を結ぶ新ルートということですが、現時点ではJR東日本からの公式発表はありませんので、あくまでも検討段階ということでしょう。何だか田町電車区跡地の新駅構想と同様の気持ち悪さを感じますが、どんな「大人の事情」があるのかについて掘り下げてみるのも悪くないと思い直して取り上げます。

JR東日本は既に東京モノレールを傘下に収めており、羽田空港アクセスルートを一応自前で確保してはいるんですが、ターミナルの浜松町が足場として弱く、以前から新橋または東京駅までの都心延伸を検討していたわけですが、今や国内唯一のアルヴェーグ式低床モノレールで、荷重制限はあるし床は段差があるし、台車部分は車体中央にタイヤハウスがあって背中合わせのロングシートや荷物台を設置して誤魔化しており、輸送力に限界があるのは確かですが、京急の攻勢の前に劣勢であることは否めないところで、仮に東京モノレールの都心延伸が実現しても、輸送力の面で劣勢は変わらないわけですから、投資を躊躇せざるを得ないのが本音でしょう。そこへ2020年の東京オリンピック開催で交通インフラ見直しの機運が高まっており、その流れに乗ろうということで検討が始まったというストーリーは考えられます。

でも釈然としないんですよね。そもそもJR東日本の貨物線活用は、典型は湘南新宿ラインですが、武蔵野線の開業で線路容量に余裕の出た東北貨物線を活用し、初期は赤羽折り返しで東北線高崎線の中電を補完するところから始まって、やはり線路に空きがある山手貨物線を利用して池袋へ延伸し、埼京線の新宿延長を合わせて新宿へ、渋谷へ、恵比寿へと伸ばし、大崎から品鶴線(横須賀線)へ直通という風に、時間をかけてインフラ整備し、需要を見ながら定着させるという手堅すぎる手順を踏んでます。

また現在進行中の相鉄都心プロジェクトでも、西谷―羽沢間の新線整備は相鉄に投げて、JR東日本は羽沢の接続部だけを担当しています。しかも名だたる貨物幹線だけに、工事作業間合いの確保に苦労して工事は遅れに遅れ、2015年4月の開業予定が3年伸びて2018年度中になっています。つまり東北貨物線や山手貨物線の旅客転用の場合と異なり、線路容量に空きが少ない中では、整備にも時間がかかるし、完成しても運行本数が大きく制約されるということは覚悟する必要があるわけです。

それを踏まえて新ルートを見ると、現状天空橋駅付近を地下トンネルで通過する東海道貨物線から分岐して空港内へ地下トンネルで延伸するという前提で見る限り、相当bな難工事が予想されます。貨物列車が運行する地下トンネルでの分岐ですから、地上での線路付け替えの羽沢駅ですら予定通り進まなかった中で、作業間合いの確保はかなり困難が伴いますし、それ以上に空港内への延伸は、軟弱地盤の中、滑走路やターミナルビルその他の空港施設を支障しないことが求められますから、簡単ではありません。2020年の東京オリンピックに間に合わせるのはほぼ不可能でしょう。

蛇足ですが、東京貨物ターミナル―鶴見間は基本計画上の建設線名称は京葉線ですが、国鉄分割民営化で新木場―大井ふ頭(東京タ)間が欠けた状態で移管されたこともあり、東海道貨物線に組み込まれました。その後第三セクターの東京臨海高速鉄道りんかい線2期工事で大井ふ頭への回送線ができたこともあり、結果的に線路がつながり、東海道と千葉方面を結ぶ貨物ルートが形成され、国鉄時代の京葉線の計画路線が実現した形です。

あと都心側のルートも一筋縄ではいきません。旧汐留駅へ通じていた貨物線ですが、分割民営化後も浜松町までは単線でルートが残っていましたが、東海道新幹線を挟んで旅客線とは分断されており、現状のままでは都心へたどり着けません。東海道新幹線を乗り越して、旅客線に合流させるには犬猿の仲のJR東海の協力が欠かせないわけで、意外と高いハードルかもしれません^_^;。また旅客線へ合流させても線路容量に余裕は乏しく、列車設定は支障されます。高高架の二層式で東京まで伸ばして中央線につなげるという手も考えられますが、東北縦貫線の神田駅周辺で環境アセス手続きが難航したように、これも簡単ではありません。地下へ潜らせて横須賀線ルートへ繋げることも考えられますが、やはり難工事は覚悟する必要があります。ただし既存の成田空港アクセスルートとの連携は可能ですので、有力な選択肢ではあります。

というわけで、客観的には不確定かつ困難な条件が多数ある中、このニュースがこのタイミングで流れた理由は何なのかという疑問が湧いてきます。一つは上記の京急に対する東モノの劣勢を挽回したいということもあるでしょうし、噂レベルですが、オリンピック関連で押上と泉岳寺を結ぶ短絡線建設構想が動くのではないかという憶測もあります。ただし事業主体に見込まれる東京都があまり乗り気ではありません。ま、ここで新線建設を見込んで負債を増やせば、ささやかな単年度黒字が吹っ飛んで都がメトロを飲み込むという都主導の地下鉄一元化にマイナスですから、よほどの手厚い補助金でもつかない限りないと見ますが、安倍政権で公共事業に前のめりな状況では先が読めませんから、そちらへ補助金が付く前に名乗り出てアピールしようという本心はあるかもしれません。

というのも、震災復興が道半ばの中で、失われた20年で構造不況業種として縮小を余儀なくされてきた建設業だけに、人材と資材の不足から人件費と資材費の高騰に直面しており、そこへ公共事業の大盤振る舞いですから、東北の復興が遅れるに留まらず、公共事業の入札が参加企業不在や予定価格オーバーで不調が続いており、事業費の見直し即ち肥大化が不可避な状況で、先に手を挙げておけということで、浅草線バイパスの実現可能性を狭めることができるという読みがあるんじゃないでしょうか。

羽田空港アクセスでの京急に対する劣性に留まらず、成田スカイアクセス開業後のN'EXの不振もあります。結果的に253系よりも両数の多いE259系の稼働率が低いため、伊豆方面への季節臨に投入されたりして、185系踊り子の置き換え観測が出されましたが、実際は中央線あずさ・かいじに車体傾斜システム搭載の新車を投入してねん出されたE257系で置き換えということになります。朝夕のライナー列車充当を考慮すれば、妥当なところですが、リゾート列車への新車投入は難しいのでしょう。

というわけで、浅草線バイパスが実現すれば、JR東日本は空港アクセス輸送でかなりダメージを受けると考えられますから、それを遅らせ、あわよくば沙汰止みに持ち込みたいと考えても不思議ではありません。そんな微妙な事情が裏にあると見るのは穿ちすぎでしょうか。いずれ公共事業の大盤振る舞いは続かないでしょうから、事業化のチャンスはかなりきわどいタイミングとは言えそうです。

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Comments

東京モノレールは老朽化が気になります。
突貫工事で建設され、海沿いルートによる塩害で経年劣化が進んでいる可能性があります。天空橋〜羽田空港はルートが幾度か変更されているのでその心配はないと思いますが、問題は開業時から軌道桁が交換されていない(昭和島付近を除く)浜松町〜天空橋です。

貨物線はちょうど天空橋〜浜松町を並行して通っているので、モノレール駅に近い場所に仮駅を設置して一時的にモノレールの代替とすることもできそうです。天空橋乗り換えで不便になる分を都心直通でカバーするとか(乗り換え駅が浜松町から天空橋にシフトするイメージ)、もしかしたらJR東日本はそういうことを考えているのかもしれません。

Posted by: yamanotesen | Sunday, December 01, 2013 at 12:09 AM

東京モノレールの老朽化の問題はありますね。しかし貨物線がモノレールの中間駅全てに対応できるかといえば厳しいところで、特に大井競馬場は無理ですね。

逆に高齢化と老朽化の進む八潮二丁目団地の最寄駅を設置できれば、再開発の目もありますが、線路切り替えが粛々と進む高輪新駅でさえ自治体の出方待ちで公式発表がまだという状況ですから、後に禍根を残す可能性のある中間駅設置はないと見ております。

逆に空港連絡の任を解かれれば、モノレールは快速をやめてフィーダー輸送に徹することになるんじゃないでしょうか。軌道桁交換などの長期運休を伴う更新工事はバス代行やりんかい線の活用(天王洲アイル限定になりますが)でという方が現実的な気がします。

いずれにしても懸案を解決して貨物線の転用が実現することが前提です。オリンピック関連で読売新聞がトバシ記事書いてますけど、そう簡単な話ではないでしょう。

Posted by: 走ルンです | Sunday, December 01, 2013 at 05:43 PM

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