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Monday, November 04, 2013

嗚呼ふけいざい

民主党政権で閣議決定されながら廃案となった交通基本法ですが、自公政権でこんな形で法案提出に向けた動きがあります。

交通政策基本法案、地域活性化や災害対応に重点 国交省骨子 :日本経済新聞
民主党政権時代に閣議決定されながら震災や原発事故の混乱で廃案となった交通基本法と名称は似ていますが、中身はかなり違うようです。交通基本法が憲法の基本的人権の概念の拡張としての移動の自由の保証として、国、自治体、交通事業者の役割を定義するという趣旨に対し、今回の法案は地域活性化や災害対策に重点を置くということで、言うまでもなく国土強靭化のバラマキ政策の実現に重点が置かれているという意味で、似て非なる法案です。

具体的には多重化、ミッシングリンク解消、災害復旧の迅速化、地域興し支援などが考えられますが、何のことはない、国土法の焼き直しと見た方が良いようです。当然採算性はあまり考慮されていないわけで、土建屋は喜ぶでしょうけど、交通事業者にとってプラスになるかどうかは微妙です。むしろJRなどは事業着手への圧力が増す可能性もあり、例えば北陸新幹線大阪延伸などでJR西日本が矢面に立つなどは考えられます。

個別事業については災害に強くなるとか地域が元気になるとか、あらん限りの美辞麗句を並べて事業を推進できるという意味では、一番の受益者は、事業誘致を手柄にできる国会議員かもしれない、そんな法案になりそうです。消費税上げてもこんなことに使われるんじゃ、財政再建も遠のきます。特定機密保護法に隠れてトンデモな法が通るというシナリオは意識しておく必要があります。

原発関連でも動きが出てきてます。東電の分社化です。

東電分社化求める 自民、汚染水対策急ぐ  :日本経済新聞
これは1日に衆院で可決した電気事業法改正案で発送電分離が盛り込まれたことと紛らわしいんですが、ある意味どさくさ紛れで、福一の除染と汚染水処理と廃炉作業を東電本体から切り離して、福一のトラブルを抱えた状態で柏崎刈羽の再稼働準備に批判が出ている状況をかわし、且つ国費投入を決めたとはいえ東電本体へ直接ではなく分社化部門へ国費を入れることで、根強い破綻処理の議論をかわそうとするものです。安倍政権になってから、この手の国民をだますレトリックが多数見られますが、メディアは沈黙したままです。

他にも気になる動きがあるんですが、前エントリーでも取り上げたみずほ銀行の反社取引問題です。これも散々報道されており、みずほの旧三行対立などまで根掘り葉掘り報道されましたが、冷静に見ると該当する取引は230件計2億円ほど、1件当たり87万円という、メガバンク絡みの経済事件としては、言い方は悪いですがショボい事件です。不正取引で米英当局から追い込まれているJPモルガン・チェースの不正事件とは比べるべくもないところです。それだけ邦銀はクリーンなんでしょうか。

これもいろいろ言われておりますが、発覚したのは氷山の一角で実態はこんなもんじゃなく何倍もあるという見方もありますが、私は別のことに注目しております。金融庁の検査マニュアル改定という微妙な時期に発覚したという意味で、特異な事件に見えるからです。

検査マニュアル自体は、前身の金融監督庁時代から何度も改定されていますが、そもそも90年代の金融危機を受けて行われた財金分離で旧大蔵省から分離した金融庁の検査マニュアルは、銀行に不良債権処理を促し財務の健全化を迫るという基本スタンスは変わらなかったのが、今回は積極的な融資を促す方向へシフトするものですが、その中で反社取引という膿みを出す必要があったということです。

そもそもかつてはろくな審査もなく開設できた銀行口座が、最近は本人確認などかなり厳格化しています。暴対条例の全国施行で暴力団への利益供与が刑事罰の対象となったわけですから当然の変化ではありますが、それ以前に開設された口座には遡及しませんし、口座開設後に組員や構成員になれば防ぎようがないですし、そもそも昨今は切った張ったの武闘派よりも、経済事件に絡む経済ヤクザが主流となり、株式会社など堅気を装ったフロント企業としてステルス化しているわけで、銀行といえども情報把握は困難で、結局情報を持っているのは警察だけですから、何かグレーな要素を見つけて警察に相談するなどして取得した情報ということになります。

今回のみずほ銀行の事件は、関連会社のオリコの提携ローンで、事前審査はオリコが行う仕組みで、資金はみずほが出しオリコが信用保証するというものです。仮に反社取引などローンを停止すべき事案が発覚した場合は、直ちにオリコに通知して代位弁済させるというもので、みずほ本体は傷まない仕組みです。もちろん関連会社で持分法適用会社のオリコの損失は連結業績に反映されるわけではありますが、早い時点で通知していれば、オリコの信用情報が更新されて以後実行されなかったローンがあると考えれば、結局損切りを遅らせて損失を拡大したことになりますから、みずほ銀行が免責されるわけではありません。

この構図は経産省所轄の地方信用保証協会の連帯保証と同じで、窓口の銀行はいざとなれば信用保証協会に代位弁済を求められるため、ろくな審査もしないで貸し出して1割相当を焦げ付かせた前科と酷似します。これらのかなりの部分は反社取引に流れたと言われておりますが、損失は国民負担に付け回されました。また経営の苦しい中小企業の融資を付け替えて破綻後に代位弁済を実行した事例も多く、中小企業対策と銘打って実際は銀行救済という風に、すり替えられた過去があります。

そういう中で、成長戦略として設備投資を促進する政権の意向を反映して融資後押しを狙う新金融検査マニュアルの実行を迫られて暗に銀行に融資の見直しを迫るという隠れたメッセージではないかと推測されます。いつまでも国債投資や信用保証ローンに頼るなということですね。

それはそれで結構なことなんですが、実際には企業の設備投資は低調です。それもそのはずで、日本企業特に製造業は、バブル期の過剰投資の解消道半ばで、とても新規の設備投資を行う環境にありませんし、また過剰投資の副産物として固定資本減耗が拡大しているという点にも注意が必要です。

固定資本減耗は企業会計の減価償却費と同義ですが、約500兆円規模の日本で、この固定資本減耗が107兆円と2割を超える水準です。通常は減価償却費を設備の更新投資に振り向けることで、資産規模を維持しながら生産を継続できるわけで、さらに成長するためには減価償却費を超える水準の設備増強投資を行うことになりますが、増強部分については需要の裏付けがあるとは限りませんから、経営による慎重な見極めが必要になります。

しかしそもそも設備水準が過剰な場合はどうなるかといえば、設備を除却することでフリーキャッシュフローを得られます。つまり古い設備を廃棄することで、新たな収益部門への投資に回す原資が得られるわけですから、設備投資に前向きな企業であっても、銀行融資に頼る必要性は乏しいわけで、いかに金融庁が検査マニュアルで尻叩いたところで、企業はお金を借りてくれないわけです。同時に固定資本減耗がこれだけ高水準であれば、その分雇用者報酬も企業の営業余剰も圧迫されるわけですから、それ自体が経済を圧迫する要因にもなります。そこへ追加的に設備投資を求めれば、雇用者報酬も営業余剰もさらに圧迫されて窮乏化するわけで、これこそがアベノミクスのなれの果てです。これこそ安倍政権最大のレトリックです。

そして黒田日銀の質的量的緩和(QQE)で国債を大量購入し国債市場から銀行を締め出そうとしているわけですから、銀行は出口がない状態にあるわけです。そうでなくても長く続く量的緩和で長期金利が低下している状況では、長短金利差が縮小して銀行の利ざやを圧迫しているわけですから、行政が強権的に融資を後押ししても実現可能性は低いわけですが、にらみを利かせるネタとしてはみずほ事件はうってつけだったと言えるのではないでしょうか。

という具合に旧ソ連も真っ青な強権的な政権運営とは裏腹に、国民を騙すテクニックは確実に高めている政治家たちですが、そんな中で園遊会での山本太郎議員による天皇陛下への手紙の手渡しという椿事が起きました。それに対する与野党議員のリアクションがバカバカしくて笑えます。特に憲法問題を盾に天皇の政治利用とする声が多いのには驚きです。

山本議員の行動は非常識でばかげてますが、法律的には禁止事項ではありません。帝国憲法では国家元首にして主権者と定義されていた天皇は、日本国憲法では決められた国事行為を行うのみで公権力っから切り離されているわけですから、元々政治的な権限も権能も持ち合わせていないはずです。「売名行為」を言うならば4月28日の「主権回復の日」とやらの政治性の強いイベントに天皇を担ぎ出したことはどうなるんだということも問われますし、そもそも園遊会に議員を呼ぶなという話にもなりかねません。

ま、お行儀が悪いと批判することはできますが、それで終わらせてれば良いものを、請願法を持ち出して天皇への請願は内閣に提出すべきところを直接手渡したと言い出したあたりで迷走が始まります。請願法は手続法に過ぎませんし、そもそも今回の手紙を請願とするならば、日本国憲法第16条で国民の請願権の保証が謳われていて、請願を理由とする差別は禁止されているわけですから、そもそも山本議員を処罰できませんし、天皇が受け取ったとしても手続き上の瑕疵として内閣へ回付されれば、内閣はその請願に誠意を以て答える義務が生じるんですがねぇ(笑)。

というわけで、元々憲法なんざ守る気もないからきちんと読み込んでいない政治家が共産党を含む与野党に溢れかえっている現状を顕にしたという意味で、山本議員はいい仕事をしたのかもしれません。脇が甘いのはいただけませんが。

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Comments

交通政策基本法の条文、読んだんですか?

Posted by: しょくぱん | Tuesday, December 24, 2013 at 03:22 PM

民主党が提出した法案と、今回成立した法案で、見た限りそう大きな差は見えないんですが。あなたが批判している点がどのようなものかわかりません。

Posted by: しょくぱん | Tuesday, December 24, 2013 at 03:28 PM

第三条2項、所謂国土強靭化条項が余分です。

法の趣旨は憲法が定める基本的人権の理念の拡張として、国民等の自立した日常生活や社会生活の確保にあるわけで、そのために国、地方、交通事業者の役割を定め、連携して目的を実現するのであって、あえて災害対応を謳う必要性はありません。

千年に一度の災害に備える無駄なインフラ整備の口実にされかねません。法の本来の趣旨はそれを予定していないというのが、立憲主義憲法下の「基本法」の立ち位置だと思いますが。

Posted by: 走ルンです | Wednesday, December 25, 2013 at 09:51 PM

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