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Saturday, November 23, 2013

温暖化ガス削減目標で政権後退

何つーか政権も変だけど、メディアも変な昨今です。例えばコメの減反廃止報道ですが、正確には廃止されるのはコメ農家の戸別所得補償制度に紐付けされた減反の地域割り当て制度であって、元々民主党政権で実現した戸別所得補償制度を批判し続けた自公両党の政権復帰に伴うものに過ぎません。加えて財源は飼料用米作付などへの補助金へ転用し、コメの作付を減らさずに主食米の値崩れを防ぐというもので、減反の目的であるコメ価格維持政策は継続どころか強化されます。ぶっちゃけ何も変わっていません。

一方2011年に試験上場されたコメ先物取引が2年の期限を迎えますが、農協が無視し、組合員に暗に圧力をかけてガン無視して店晒しされた結果、見るべき実績をあげられずにいます。元々自民党が難癖つけて認めてこなかった試験上場が民主党政権下で実現し、コメの価格形成に一石を投じられるか注目されておりましたが不発でした。機能すればコメの価格指標となり、コメ農家の作付計画に反映され、例えば小規模農家が自前で作付するか大規模農家へ貸し出すかといった判断ができますから、自然に農地集約が可能でリスクヘッジにもなるのですが、農協の政治力の前に無力でした。コメが安くなれば農協の手数料収入が減るということで、農協にとっては死活問題でしょうけど、民間企業に過ぎない農協のために税金使ってコメの価格維持を行うことのどこが改革なんだってことです。

減反継続は農業専門紙では報じられている事実ですが、新聞テレビなどの大手メディアが揃いも揃って「減反廃止」というミスリードをやらかしているってことは、メディアがアホなのか政権のメディアコントロールが機能しているのか。何れにしても現在国会審議中の特定秘密保護法の成立如何に拘らず、日本には報道の自由は実体として存在しないってことですね。国民の知る権利は風前の灯火です。

てなヤケクソトークはさておき、ワルシャワで国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP19)開催中ですが、京都議定書を離脱し、2020年の削減目標を大幅下方修正した日本に批判が集まっています。その一方で京都議定書の目標年2008-2012年の平均値で日本は目標を達成しました。

温室ガス8・2%削減/日本、京都議定書を達成/原発事故後は増加 : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース)
前半リーマンショックがあって経済が停滞したことに助けられたのですが、2011年の震災以降は増えています。とはいえ原発事故で原発が止まって火力発電に切り替わったからという説明は事実に反します。石油やLNGなどの輸入量は原発事故後も量としては増えていません。金額が増えているのは価格上昇と円安の影響で2012年の輸入量の2010年比+0.6%に対して金額は+46%ですから、原発停止とCO2排出量の増加は無関係です。

増えている理由は震災復興や公共事業の増加による重機やトラックの稼働率アップと、低調だった国内製造業の回復が影響していると見るべきでしょう。それでも鉱工業生産指数(基準年2010年)で95程度での推移ですから、基準年がリーマン後で稼働率の低い状態での数値であることを加味すれば、低位安定ではあります。余談ですが設備投資減税が無駄と言える根拠でもあります。11年12年の排出量増加は震災復興の影響と見るべきでしょう。

また原発停止による石油やガスの輸入増が貿易赤字の原因とされておりますが、上記のように輸入量は増えていないのに、円安で金額が膨らんだわけですが、輸出金額は横ばいです。これは輸出数量が減っていることを意味します。つまり貿易赤字の原因は輸出の減少ということになります。つまりアベノミクスで国富が流出しているということになります。地域別に見れば中国向けが大幅減なわけですから、尖閣問題で悪化した日中関係に原因があると考えられます。とすると、対策は中国と和解することです。

で、日本が示した新目標のあまりの後退ぶりに世界中から落胆や非難の声が寄せられておりますが、政府の対応は「原発止まったんだからしょーがないじゃん」というもの。というか、そもそも原発のCO2削減効果そのものに疑義があるんです。原発は発電工程だけを見ればCO2を排出しませんが、前工程でも後工程でもCO2を排出します。具体的に見ていきましょう。

まず発電プラント自体が安全性を考慮して頑丈な鉄とコンクリートの塊ですから、原材料の鉄やセメントの製造工程から、砂利などの骨材調達で運搬が発生し、建設工程で重機が動きトラックが動くわけです。特に地震国である日本では尚更ということになります。また人口の疎らない地方の更に不便な場所に建設されますから、道路や埠頭などの付帯設備建設もあります。

燃料のウランも元素としてはありふれたものですが、放射性がありますから、どこでも掘れるわけではなく、例えば国内では岡山県の人形峠が有望と言われて調査の結果採算が合わないとなって放置され、今でも周辺は立ち入り禁止ですし、その影響かどうかはわかりませんが、空間線量も他地域より多く検出されています。必然的に輸入に頼らざるを得ないわけですから、長旅でCO2を出しますし、また燃料へ加工するためには遠心分離器にかけて濃縮し、ペレットと称する固形体に成型し、ジルコニウムという金属の鞘に納めて燃料棒に加工するわけですから、掘削、輸送、加工の各工程でCO2を排出します。

ただしこれら前工程は、現存する原子炉で保有する燃料棒を使って発電する限りにおいては無視できますが、後工程は時差を置いてのしかかってきますので、長い目で見れば逆効果の可能性は指摘しておきます。端的には使用済み核燃料の冷却ですが、水を動かすポンプの動力源が火力発電由来の電力だったら、それだけで発電工程の排出ゼロ効果を減殺します。ここから言えることは、本気で原発再稼働を目指すなら、電力の自然エネルギー転換はかなり頑張らなければならないということです。その意味では不安定な太陽光発電依存ばかりが注目されているのは危ういところです。

京都議定書でも森林の吸収効果を大きく見積もっていますが、現状は活かしきれていません。森林を吸収源としてカウントするFSC森林認証という制度がありますが、木の生長に合わせて間伐や下草がりをして、地面に太陽光を届かせることが求められますが、間伐もされずに放置された日本の多くの森林は要件を満たしません。ささやかながら一部で認証を受ける森林が出てきていますが、間伐材原料のパルプ紙でパンフレットを作って環境アピールをするといった取り組みが一部企業でなされていますが、もっと踏み込んで木質バイオマスの資源化というところまで考えるべきでしょう。

具体的には暖房用に木質ペレットストーブを用い、調理用に木炭コンロ等を使い、木質バイオマス発電で電力を得るといったことを積み重ねていくわけです。間伐で森林認証を得て排出権を取得して火力発電をする電力会社に売って、間伐で発生した木材を燃料で活用すれば、ルール上CO2排出ゼロとなりますから、吸収分の排出権は完全な付加価値となりますし、間伐材を集成材に加工して建材にすれば、コンクリートの建造物よりもCO2排出が少なくなります。

そして重要なのは国産であるということです。国内調達ならば貿易収支を悪化させることなく、また輸送工程でのCO2排出も抑えられますし、何より地方に雇用を生み出す新産業になり得るという点も魅力です。おさらいすれば、木質バイオマスで発電すれば、発電工程の排出量はがゼロ評価されるに留まらず、FSC森林認証による排出権取得によって、見かけ上排出量がマイナスになるということで、太陽光や風力でもできない芸当ですし、森林認証自体日本の主張が元になってますし、利用しない手はありません。翻って原発再稼働の既成事実づくりにCO2削減を利用しようという政治的小細工は何も生み出しません。

2013年以降の議定書離脱で、京都メカニズムと呼ばれる海外からの排出権クレジット取得が難しくなります。達成した1次目標でもおもに東欧圏から排出権を取得してきましたが、背景として旧社会主義国では旧式の非効率な火力発電所が現役という現実があります。それを最新式の省エネプラントに置き換えるだけでクレジットが発生するわけですが、日本の近くに宝の山がありますね。言うまでもなく中国ですが、2013年以降の議定書離脱を決めた日本では、これを利用しにくくなっています。ある意味自業自得ですが、国内削減の比重が高くなるから、2005年比3.8%減という大甘な目標しか打ち出せず、批判の嵐となっています。議定書離脱は民主党政権下の話ですが、日本の政治家も官僚も問題の本質を理解していないですね。

本来ならば議定書の枠組みに留まって、排出が増えているにも拘らずルールが定まっていない運輸部門の削減ルールの策定に関わっていくべきでした。その中で都市鉄道や貨物鉄道の近代化など、特にアジア地域で日本が関われるプロジェクトは多数あると思われますが、排出権クレジットを梃子に優位なビジネスを展開できる可能性はあると思います。まぁ離脱しちゃった以上死んだ子の齢を数えるようなものです。高コスト体質の中、欧州や韓国と競り合って事業化するハードルは高いと思いますが、後の祭りと気づく日は来るでしょうか。

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