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Sunday, December 22, 2013

猪ノベーションの蹉跌

猪瀬知事辞めちゃいましたね。彼の主張や手法は穴だらけでひどいものだったんですが、辞任に至る経過は納得できない感大です。丁度西松事件や陸山会事件での小沢一郎氏の追い込まれ方と酷似しているという意味で、心情的には応援できない猪瀬氏に対して同情を禁じ得ません。言葉を変えれば「虎の尾踏んじゃったのね」ってことですかね。日本の統治システムには、ホッブズのリヴァイアサンが棲んでいるのか?

住まいの近くに徳洲会系列の病院があり、実際に医療サービスを受けた経験から言えば、過剰検診や過剰投薬といった日本の医療システムの悪しき傾向の対極に位置するもので、各地の医師会と摩擦を起こすのも無理もないところですが、それゆえ患者サイドからは評判がよく、徳洲会系の病院はいつも混んでいる状況ということで、ま、繁盛しているわけですが、待たされるのが玉に傷ではあります。徳洲会自体が既得権益層から見れば許し難い存在なのでしょう。

過剰投薬自体は、ユーザー側の問題もありまして、特に高齢者が健康不安から複数の医療機関で診療を受け、同じ薬を処方されている実態もあり、医療のフリーアクセスという日本の制度が裏目に出ていて、これらはレセプトやカルテの電子化とネット共有で防げる問題でもありますが、医師会の反対で実現できておりません。加えて混合診療も、医師が最先端分野まで把握していなければならず、医師間の競争ではじき出されることを嫌う医師側の事情で実現していないわけですから、医師会が競争抑制カルテル的な存在であることが、医療保険制度にストレスを与えているわけです。世界に誇る日本の皆保険制度はアメリカのオバマケアでも参考にされたものではありますが、それが医療機関の効率性を削いでいることは指摘できます。

というわけで、僻地医療で台頭した徳洲会も東京23区内への進出が悲願だったのですが、医師会の反対もあって実現できておりませんでした。そこへ立ち上がった東電病院売却ですから、徳洲会サイドからの働きかけがあっても不思議ではありません。ただし猪瀬氏が東電の株主総会で東電病院売却を提案した当時は石原都政の時代であり、猪瀬氏がどこまでコミットしていたかは明らかではありません。むしろ政治家としての石原新太郎と徳田虎雄の親密さからいって、石原前知事のコミットが疑われます。

あと未確認情報ですが、東電病院が社員専用となっていた経緯として、立地する新宿区に医療機関が多く、競合があるからということで都から一般診療の認可を得られなかったとする関係者の証言もあるようですが、逆に徳洲会の都区内進出を阻止したい勢力の意向を無視して当時の猪瀬副知事が先走ったことから、トラップが仕掛けられた可能性も否定できません。これらのことから、都議会与党の自民公明両党が、最初から100条委員会の招集へ動かなかったことで、結局真相は闇の中というわけで意図を感じさせます。

皮肉なことに猪瀬知事肝いりの渋谷駅―六本木駅間の都営バス終夜運行が20日に始まりました。当面金曜夜(土曜日未明)にバス1台で70分ヘッドで試験運行ということで、初日の20日は盛況だったようです。猪瀬知事の辞職で次の展開は予想できませんが、タクシー待ちの列も長く伸びていたようですから、この程度の運行頻度でであれば、棲み分けは問題ないのかもしれません。

ただし前エントリーでも指摘したように、終夜バス運行自体の政策目標(アジェンダ)が不明確で、ゴールイメージが描けません。単なる酔客輸送ならば今は景気の波が上向きなのでうまくいっているだけで、景気後退で萎む可能性もあるわけです。終電の混雑緩和には一定の意味があるかもしれませんが、鉄道とバスの連携が取れない日本の縦割り制度の中で成功方程式を構築するのは簡単ではありません。国家戦略特区とやらも官僚の抵抗で骨抜きにされているようですが、過疎地のローカル線問題とも絡めて制度そのものを見直す発想をむしろ邪魔しているかもしれません。アベノミクスの「第三の矢」とやらは結局飛ばない矢でしかないということですかね。

高齢化が進む日本の現状では、社会保障費が毎年1兆円程度膨張し続けているわけですから、消費税を社会保障財源にするということは、今後も消費税を上げ続けなければならないわけで、社会保障改革は待ったなしなんですが、その期待を背負って登場した民主党政権は、本丸の改革の前に消費税増税を決めて政権を降りるという愚かな対応を取りました。国民からは「裏切り者」と罵られ、増税の「成果」は自公政権に乗っ取られ、それでいてこんなデタラメな政権運営に物申すこともできない体たらくです。そもそも消費税を上げるにしても、8%、10%と小刻みに上げることで抵抗感を減らそうとした結果、逆に実務的に税の価格転嫁困難ということになってしまったんですからどうしようもありません。

その結果JR東日本を皮切りに従来10円刻みだった鉄道運賃をICカード乗車券に限り1円刻みとする運賃の認可申請が出そろいました。JR東日本では山手線内及び電車特定区間相互間では10円刻みとなる乗車券運賃を切り上げとしてICカードが安くなる配慮をしているものの、幹線運賃と地交線運賃は四捨五入ということで、ICカードが高くなる区間が生じるなど、問題のある対応をしています。発券や改札機のメンテナンスのコストを考えれば、ICカード乗車券利用が安くなる設定とすべきですし、そのことがICカードの普及を通じてJR自身の合理化にも寄与するわけで、諸外国の都市交通では常識どころかICカード利用が相当有利になる制度設計となっています。

この辺を見直せなかったのは、鉄道営業法の縛りが強固だということなんでしょうけど、目的駅まで有効な乗車券の携帯を旅客に課す現行法はそもそもICカード乗車券を想定していないんですから、制度を変えるか実態に即した解釈の変更で対応すべきところです。ただしこの問題は大都市近郊区間の最短距離特例とも絡んでいて、乗車駅と降車駅の改札間で運賃が一意に決まるシステムを前提としているため、経路検索などでシステムの負荷が大きくなるという問題もあり、ICカード乗車券システムによるコスト削減効果を圧迫しているのかもしれません。欧米の大都市で見られる都市圏の均一運賃やそれに近いゾーン運賃などへの制度変更も、日本のように多数の事業者毎の独立採算性を前提にすると困難になってしまいます。オリンピックで「お・も・て・な・し」を言うのならば、外国人に理解不能なサインシステムと並んで複雑怪奇な運賃制度も見直すことが必要なんじゃないかと思いますが、事業者も規制当局もそういう発想を持ち合わせていないようで残念です。

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