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January 2014

Sunday, January 26, 2014

西武戦線異状あり?

いや浅村の成長と中村の復活で大阪桐蔭コンビ揃い踏みで優勝まっしぐらって、そりゃライオンズの話です。いやまぁそのライオンズも身売りの危機があったことをお忘れでしょうか。そう、サーベラスに身売りを迫られたとかなんとか。ほぼ半年前のエントリーで話題にしました。そのときも株安のタイミングというのは味わい深いですが偶然です。

その後サーベラスとは水面下で折衝が続けられ、合意の見通しが報じられるまでになりました。

道筋見えた、西武の「良い形での上場」 | 企業 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
これはこれでグッドニュースではありますが、一方でこんな報道も。
再送-〔焦点〕サーベラス、対日戦略見直しの動き 西武・国際興業株売却は撤退の布石との見方も | マネーニュース | 最新経済ニュース | Reuters
サーベラスが国際興業にも出資していたというのは驚きですが、その国際興業株を売却していて、西武HDに関しても、持分35%のうち20%を西武側の要請で売却し、上場後残り15%も早期に売却の意向のようです。記事によればサーベラス側はニューヨーク本社が直接交渉しているようで、昨年の騒ぎはどうも本社に手柄を献上したい東京支社の独走だった可能性もあります。とはいえ当時の株価水準から導き出された公開価格が低すぎたことは確かでしょうから、結局株式相場の上昇トレンドが幸いしたというのが実際でしょう。と同時にサーベラスが立て続けに日本企業の大型案件から撤退することの意味は、外国人投資家に支えられてきた昨年11月以来の上げ相場の終わりが見えてきたということでもあると見ます。

元々アベノミクス=Asset Bubble Economicsであるとして、いずれ宴の終わりが来ることを指摘し続けてきましたが、予想以上に早いのかもしれないと思う昨今です。エコノミスト達は様々な経済指標を示して、現状がバブルではないと主張しておりますが、そもそも信用通貨の供給の仕組みである近代銀行システムでは、通貨発行は銀行融資による信用創造であるわけで、融資は融資先名義の口座への残高積み増しで、それを引き出して現金化するか、口座振替や振込で決済することで、交換を媒介し実体経済を動かすわけですから、融資を通じた通貨発行量分だけ見かけ上社会全体の資産が増えるわけです。一種の錯覚であり、ケインズは「貨幣錯覚」とか「貨幣愛」といった言葉を使って本質を指摘しています。

以前マネーサプライと言われたものですが、現在はマネーストックと呼ばれます。要は紙切れや電子データでしかないものが、見かけ上価値を持つわけで、バブル的な要素がそもそも備わっているわけで、今はバブルではないと主張するエコノミストたちは、銀行システムによる通貨発行の仕組みが理解できていないということになります。金融緩和はつまるところ日銀が銀行に対して行う貨幣供給を通じてベースマネーを増やし、それを通じてマネーストックを増やそうということですから、元々バブル化狙いでしかないのは度々指摘しております。

そしてとりあえず目論見通り株価や地価などの資産価格の上昇が認められるわけですから、その意味では大成功ということのようですが、子細に見れば株価が底を打って上昇に転じたのは12年11月で民主党政権時代ですから、アベノミクスのおかげというのは、時系列を無視した議論です。この時何が変わったかと言えば、単純化すればリーマンショックのダメージから抜け出してグローバルな投資家のマインドがポジティブに変化した結果、低金利通貨である日本円が資金調達に使われ外貨に交換されta結果、円安となるわけです。いわゆるリスクオン状態になったわけです。

その結果円安が進み、それと並行して株価も上昇していったものです。ザックリいえばドル円78円→104円で対ドルで25%円が減価した結果、ドル建て表示で割安感の出た日本株に買いが入ったわけで、12,000円→16,000円と33%増ですから、丁度円の減価分の逆数になっているわけで、明らかに連動しているわけです。個別銘柄の値動きはともかく指標としての株価は完全に円安と連動しているだけです。だからアルゼンチン・ペソの下落を引き金に円高になると株価も連動して下落するわけです。

今回の出来事は現在のリスクオン相場を終わらせるリスクシナリオとして想定されるものの1つではあります。いわゆる投資マネーの先進国シフトと呼ばれる現象で、高成長を求めて新興国に流れ込んだ投資マネーが先進国へ回帰する流れは既にあったのですが、米QE3の終了でそれが加速されるというものです。もちろん87年の米ブラックマンデーの暴落が日本のバブル景気で打ち消されたように、単純にバブルの終焉を意味するかどうかは現時点では不明ですが、日本がアベノミクス景気で浮かれている間に、世界は激変してしまったと言うべきでしょう。

大きく変わったのは、アメリカの経常赤字が減ったことです。大幅赤字を垂れ流し続けてきたアメリカが、いわゆるシェール革命で大変化しているのです。というのは、シェールガスの生産が活発になった結果、天然ガスの値崩れが起きている一方、戦略物資であるエネルギー資源は輸出禁止されていることもあり、出口が見えない状況にあり、同様の技術でシェール層などに埋蔵されている石油の生産にブームが移行しているのです。シェールガスに関しては、生産は進む一方、消費地へ送るパイプライン整備が追い付かない状況も災いしていて、連日のニューヨーク大寒波では消費量が増えてガス小売り価格が逆に上昇すらしている状況で、当面シェールガス開発は減速せざるを得ない状況です。

いわゆるシェールオイルと日本で呼ばれるものですが、頁岩層のみならず砂岩層に含まれるタイトサンドオイルも含むので、正確にはタイトオイルと呼ぶべきものですが、いずれにしろこのような非伝統的埋蔵エネルギー資源の発掘が進んだ結果、アメリカの原油輸入量が劇的に減少したものです。元を辿れば大量消費と国内産業の劣化で赤字続きだった結果、金本位制を維持できなくなって71年のニクソンショックに至り、米ドルの減価によって原油価格に上昇圧力が働いた結果がオイルショックに繋がるわけですから、アメリカは積年の課題を脱しつつあると言えます。

加えてシェールガスやタイトオイルの開発で設備投資が活発化したに留まらず、これらを原料とするエチレンなどの化成品プラントが国内産の安価な原料が利用可能になり活性化していて、それがオバマ政権が目指していた製造業の復権による輸出拡大路線に乗って拡大してきております。この点は従来相対的に安価だった中東産重質油に依存していた日本の化成品メーカーの比較優位が失われることを意味しますから、二重の意味で日本経済にダメージを与えます。

アメリカの経常赤字縮小は、同時に貿易相手国の経常収支に大きな影響をを与えます。それが顕著に表れるのが新興国と言われていたのですが、実際は貿易規模の問題から中国と日本が受ける影響は巨大です。新興国に関しては、経常赤字国に選択的限界的に影響が表れるけれど、規模の点では大きくないわけで、今回のアルゼンチンショックはそれに当たるわけですが、心理的影響でバブルの終わりとなるイベント性は持ち合わせているわけで、上述の通りリスクシナリオの1つではあるわけです。

ちなみにほかのリスクシナリオは、アメリカ経済の失速とユーロ危機ですが、それぞれ可能性は指摘できます。まず前者はこの報道です。

シェールオイルに新たなリスク:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京
赤の女王シンドロームという新語も出るほど、生産量の急激な落ち込みで無理な生産を強いられており、いずれ矛盾が噴き出す可能性はあります。当面すぐどうこうはあにとしても、リスクが意識され始めたということではあります。後者はEUが進める銀行同盟が中途半端で、いずれ何らかの形でユーロ危機が再燃するというものです。あるいは今回のアルゼンチンショックのような外生的要因がトリガーになる可能性はあります。

皮肉な話なんですが、シェール革命を背景とするアメリカの復活は、凍りついた投資家心理を融解させてリスクオン相場を形成しました。アメリカの復活といっても、政治の混乱による財政の崖問題や雇用の拡大が伴わないなどで力強さに欠けており、それがFRBのQE3へと駆り立てたということになります。これも裏でドルの信認低下による減価を嫌った中国の圧力があったと言われます。尖閣や靖国で角突き合わせる日本の立ち位置の危うさは、この辺の動きを見落としているということでもあります。アメリカは中国と軍事的に争う意思はないのです。

で、リスクオン相場をアベノミクスとはやし立てて自己陶酔に陥っている日本で、実体経済が蝕まれる結果になっているのですから皮肉です。アメリカの経常赤字縮小に呼応するように日本の経常黒字も縮小しておりますが、この辺はマクロ経済をちゃんと観察していれば一目瞭然なんですけど、閣僚から「思ったほど輸出が伸びない」という発言が出るぐらい政府の認識は呑気で鈍いものです。

貿易赤字は原発停止で化石燃料輸入が増えたからという説明も、数量は増えていないのに原油高と円安で円建て輸入価格が増えただけである一方、輸出は円建てで横ばいですから、実質は減少であるという事実には目を背け、原発再稼働すれば改善するとか、中国の成長鈍化が原因といった話ばかりしているのですから、本当に危ういです。素直に見れば円安で交易条件が悪化して実体経済を弱めているのであって、仮にアルゼンチンショックでリスクオン相場が終われば、最悪のタイミングで4月の消費税率アップを迎えるわけで、堅調だった消費も暗転し、当然円高株安となり、冒頭の西武HDの再上場に黄信号ということも考えておく必要があります。堤家の呪いかも。

冗談はさておきまして、仮に再上場にこぎつけたとしても、サーベラスの株式売却は早い時点で行われると考えられますから、上場後の上値は重い展開となり、場合によっては公開価格を割り込む事態も視野に入れておく必要があるでしょう。というわけで、西武HD株式は手を出さない方が無難です。

で、もう1つ鉄道業界で大型IPOが考えられるのが、東京メトロです。最大のネックだった猪瀬知事が辞めたんで、とりあえず障害はなくなりましたが、現政権では視野に入っていないようです。ま、アベノミクスに浮かれて税収増もあり、それを公共事業に突っ込んで財政再建は後回しというスタンスですから、必要性を感じていないのかもしれませんが、仮に宴が終わって税収が伸びないとなると、どう転ぶかわかりません。ただしこういう状況でのIPOは株式売却益が財政出動の原資に消える可能性を高めますから、国民的にはバッドタイミングの上場ということになります。都知事選の渦中ですから、誰が都知事になるかによっても展開は変わるでしょうけど、注視していきたいところです。

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Monday, January 13, 2014

なにわ無くとも江戸村先五輪ですよ

てことでイノベーションを掲げたイノセントな知事の辞任で降って沸いた都知事選ですが、脱原発を掲げて細川元首相が小泉元首相の支援の下で立候補という話が出て、一気に構図が変わりました。原発問題が都政と関係あるのかという声がありますが、東電の株主にして、最大消費地の自治体つまりユーザー代表の性格も有する東京都が現実的に直面する問題という意味で、ステークホルダーとして深い関わりがあります。

東電問題については、破綻処理を回避した処理スキームの問題は度々指摘しておりますが、現在進行中の経営改革では、発電その他の部門を分社して持株会社化する方向ですが、発送電部門がコア事業として残る形が最終形になりそうです。一応福一事故後に東電内部の有志社員による幻の再建計画に見かけ上沿った形です。首都圏の巨大な送電網の管理だけでも、収益性は確保できます。

むしろ老朽化した発電部門は積極的に分社して外部資本を入れた方が本体の負担が減りますし、国内最大の天然ガスユーザーとして東京ガスよりも輸入量が多くまた東京ガスの大口ユーザーである東電ですから、ガス事業への参入も模索しております。この辺は形ばかりの発送電分離で料金の総括原価方式は維持され多中途半端さと、その中途半端さをそのまま移植したガス事業の参入規制改革など、政府の打ち出す政策が東電を助ける方向にバイアスがかかっており、このままではどう足掻いても電力料金は高くなる方向性ですから、株主である東京都がユーザー代表として関わることで政府の政策にもインパクトを与えられますから、都知事選びは大事です。

てわけで、有力候補と言われる中で、脱原発を掲げる候補として弁護士の宇都宮健児氏と細川元首相の2人が立つわけですが、全原発即廃炉を掲げる共産党の支持を得る宇都宮氏よりも、中道派と見られる細川氏を私は評価します。熊本県知事を務めtましたし、行政の長としての手腕もこなれていると見て良いでしょう。原発を現実的になくすつもりなら、全原発廃炉の主張はむしろ害悪です。

一部で「5千万円で辞めた知事の後釜が1億円の人」というような声がありますが、その5千万円の人も1億円の人も刑事訴追されていないということは事実として指摘しておきます。猪瀬氏に関しては刑事告発されてはいるものの、不起訴処分で検察審査会で起訴相当の判断が2回出て検事役の弁護士による代理起訴に至る可能性はありますが、陸山会事件の顛末でわかる通り、有罪にはならないでしょう。そもそも検察が本気なら捜査情報をリークするはずがありません。これは佐川急便事件の細川氏や陸山会事件の小沢氏も同様です。ただし本人の政治活動は大きく制約されることは間違いありません。事実上の検察の政治介入です。

逆に実際に刑事司法手続きで訴追された鈴木宗男氏は、選挙区の地場の林業会社ヤマリンからの600万円献金で有罪判決を受け実刑を受けてます。猪瀬氏の5千万、細川氏の1億、小沢氏の4億と比べて何とも些末な事件で実刑ですから、検察が本気ならここまでやるということです。まして石川知裕議員は自らの政治資金ではなく陸山会の4億円土地取引当時の秘書だったというだけで。虚偽記載の罪で有罪判決を受けておりますが、小沢氏本人の立件はできないのに変ですよね。云わば一罰百戒による脅しですが日本の刑事司法はこんなんです。

で、笑えるのが維新ですが、石原慎太郎氏が田母神元空自幕僚長支持を公言したために、早々と自主投票となりました。そんな維新のおひざ元の大阪府議会である議案が否決され、反対に回った議員4名が会派離脱して維新は過半数割れで少数与党に転落しました。逆風の絶えない昨今の維新ですが、その議案とは第三セクターの大阪府都市開発(OTK)株式の米投資ファンドへの売却でした。

ローンスターの大阪3セク鉄道会社買収を否決=大阪府議会 | ビジネスニュース | Reuters
OTKと言えば泉北高速鉄道を運営する第一種鉄道事業者ですが、元々は大阪でトラックターミナルを運営する第三セクターだったものが、泉北ニュータウン開発で鉄道構想が持ち上がり、南海j高野線中百舌鳥から分岐して光明池までの区間の鉄道整備が求められ、当初は南海電気鉄道による整備が考えられていたのですが、当時重大事故を重ねて当時の運輸省から業務改善命令を受けていた南海は、ATS整備など安全対策投資で新線建設どころじゃなかったということで、同じ運輸業ということでOTKに白羽の矢が当たり、鉄道事業を定款に加えて建設、運営することになりました。

首都圏で言えば北総鉄道や東葉高速鉄道が三セク方式のニュータウン鉄道ですが、いずれも出資自治体や鉄道事業者の都合で複雑な経緯を経て成立しているのに対し、泉北では既存三セクのOTKに鉄道事業を担わせるというのが独特です。敢えて三セクを新設せず、既存の組織を活用したわけです。ただし鉄道事業の経験のないOTKですから、当初は線路その他の施設一式と車両などの動産を保有した上で、運営は南海電気鉄道に委託するという方法を取りました。面白いのはその後で、駅員など新規採用でプロパーの鉄道事業従事社員を育成し、駅業務から運転業務へと徐々に直営化して、現在は朝ラッシュ時の中百舌鳥通過の区間急行で全区間南海の乗務員が乗務するのを例外として完全な独立鉄道となっています。車両も南海車の廉価版でスタートしながら、現在は独自設計のオリジナル車両を入れており、独立性を高めています。というわけで、とかくお荷物になりがちな自治体出資の第三セクターでありながら、独自の成長路線を歩んでいるのが面白いところです。

そのOTKが今なぜ株式売却かと言えば、維新の政策による民営化の一つ覚えです。OTKに関しては大阪府に年間12,000万円を配当する黒字企業で大阪都構想と絡んだ重要案件でもありました。というのは都構想に欠かせない堺市の懐柔のために、割高運賃の泉北高速鉄道の運賃値下げの意図があったからです。現状はこうです。

 南海難波―中百舌鳥 320円
 中百舌鳥―和泉中央 320円
 南海難波―和泉中央 620円(乗継割引-20円)
地下鉄難波―なかもず 310円(参考)
実は泉北の運賃は南海の運賃と比べても特に高いわけではなく、新設のニュータウン鉄道としてはこなれた運賃と言えます。割高になるのは中百舌鳥で打ち切り合算となるためで、乗継割引で20円値引きされていても、難波―和泉中央間27.1kmが620円となり、南海の通し運賃ならばほぼ等距離の難波―河内長野間27.5kmで540円と比較すると割高感が鮮明になります。

で、入札が2013年に行われ、米投資ファンドのローンスターが落札し、2位の南海電気鉄道と60億円もの差をつけました。ややこしいのはOTKが物流事業と鉄道事業を両輪とする事業で、両者の収益性に差があり、ネット通販の普及で好調な物流事業と、手堅いとはいえ収益性に劣る鉄道事業ということで、当初分割して民営化を検討したものの、鉄道単独では経営が厳しいということで、一体での民営化となった経緯があります。その結果、利に敏い米投資ファンドが入札して混乱しているわけです。で、元々保守色の強い維新の議員団に抵抗感が生じ、造反へとつながったわけです。

ローンスターは破綻した東京相和銀行の事業を継承した東京スター銀行の再生を成功させたほか、ゴルフ場やレジャー施設など多数の案件を手掛けて実績を積んでおり、外資だからと警戒するような存在ではないと思いますが、鉄道事業の経験はおそらくない点で、民営化の狙いとされていた運賃値下げで大差の2位となった南海と差がつきました。南海は乗継割引を80円増やして100円引きとし、難波―和泉中央間540円とするとしているのに対し、ローンスターの提示したのは乗継割引10円追加のみです。

これは当然でして、元々南海高野線の支線形態で直通運転も頻繁に行われている南海との統合ならば、管理、保守、運転すべての部門で重複を排除して合理化できますから、値引きの原資を得やすい上に、市営地下鉄のなかもず延長で大阪へ向かう乗客が抜かれる状況に対する戦略価格という意味もありますが、ローンスターの場合、泉北線の一方的な割引追加に留まりますし、中百舌鳥から先は南海でも地下鉄でも関係ありませんから、経営の観点から大幅値引きは難しいわけです。

入札に当たってはこういったことも考慮されるはずですが、松井府知事の判断は株式売却価格を優先しました。そりゃ12,000万円もの税外収入と引き換えですし、大阪府以外の株主の意向も無視できませんから、高値で売りたかったのでしょうけど、その結果乗客の負担の軽減は中途半端では、有権者の理解は得られないでしょう。でもおそらく松井府知事は少しでも株式売却価格を高くしたかったのでしょう。

考えられるのは、大阪市の地下鉄民営化との連動です。どういうことかと言えば、大阪市の橋下市長がこんな表明をしました。

なにわ筋線の府市検討を正式表明 都心部に複数の駅設置  :日本経済新聞
ここで地下鉄民営化による株式売却益の投入を示唆しているのですが、府市共同事業ですから、大阪府も資金の当てが必要です。つまりOTKの株式売却をより高値でという思惑があったのでしょう。結果ヤブヘビとなったわけです。ま、仮に全てうまくいっても、事業費の1/3を負担するJR西日本と南海電気鉄道は、事業費次第の半身の姿勢ですし、一方で震災以来の人件費や資材費の高騰に加えて、景気対策と東京オリンピック絡みの公共事業積み増しもありますから、事業費の膨張は避けられないでしょう。

というわけで、タイトルのような状況というわけです。お粗末さまです。m(_ _)m

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Sunday, January 05, 2014

装置とニッチの間

3日、有楽町火災による東海道新幹線をはじめ鉄道の混乱が見られました。結果的には昼前後に復旧したものの、混乱は終日続きました。そこに鉄道の抱える現代的な問題が垣間見えたという意味で、記録に留めたいと思います。一応記録の意味でリンク貼っときます。

有楽町で火災、東海道新幹線ほぼ全線運転見合わせ  :日本経済新聞
出火は6時35分頃で、新幹線高架橋脇の店舗が密集した場所で、計4棟を消失し、9時間後に鎮火ですから、消火に手間取ったと言えます。権利関係の複雑な土地で、再開発協議も不調続きで進まず、線路脇に古い建物が残っていたところです。そのために消防車が入れず、消火活動が難航しました。そのためか線路上からの放水の必要から、新幹線の饋電停止を余儀なくされました。交流25kvでAT饋電方式ですから、60kv饋電でトランスで半分に降圧し架線電圧30kvとして電圧降下を見込んでいるわけで、そんなところで放水すればショートする恐れがあるわけですから、やむを得ない事情です。

一応品川で折り返しは可能とはいえ、大井埠頭の車両基地からの出庫線が東京方面にしか出られない構造ですから、車両が出せないわけで、しかも始発直後で出庫待ちの車両が軒並み足止めとなるなど、不運でした。線路閉鎖かけて手旗信号で誘導というのも、そのための要員手配が必要で、現実的な対応とは言えません。そうなると上り列車の品川到着を待つしかないけれど、普段は折り返し列車の無い品川では車内清掃や座席転換を行う要員が常駐しているわけではありません。長距離を走る新幹線ですから、車内整備なしに折り返しは無理です。食堂車を廃止し車内販売オンリーとした供食体制ゆえにごみの処理だけでも半端な量ではないわけで、短時間で対応できなかったこと自体は責められません。

いろいろな論点がありますが、ここで注目したいのは、振替輸送のSuicaの扱いとも共通する非常事態への対応に関する考察です。今や巨大システムとなりながら、大量輸送をこなす新幹線や都市鉄道ですが、正常運行している限り顕在化しない問題ながら、非常対応でマンパワーを要する状況への対応がうまくいかないということになります。なまじ自動化され装置化されたためにうまくいかないわけです。

度々指摘しておりますが、東海道新幹線の輸送能力の巨大さを見ておきます。700系ファミリー16連の編成定員は1,300人ほどですが、これは大型旅客機4機分相当になります。今回「リニアがあれば」という声もありましたが、リニアL0系の編成定員は700人ほどで700系の約半分、且つ毎時5本の運行が想定されているわけですから、現行新幹線ののぞみやひかりなど速達系列車だけで見ても約1/4の能力しかないわけです。

北陸新幹線ルートでも、おそらく速達系のかがやきは毎時1本程度で且つ12連で編成定員900人強。更に金沢で接続するサンダーバードは在来線サイズで9連で500人ほどですから、東海道新幹線の代替機能はかなり制限されたものと言えます。いわゆる多重化の議論のまやかしは明らかなんで、代替ルートで救済される旅客は一部に留まり、大多数は復旧を待つか旅行を中止するかの選択を迫られることに変わりはありません。

1編成1,300人定員の列車が毎時10本以上ですから、その輸送量ボリュームの大きさがわかります。通常ならば東京駅の6本の着発線で捌くわけですが、品川駅にそれだけのキャパシティはないわけですから、品川折り返しが毎時2本程度に制限されるのも当然の話です。つまり正常ダイヤが維持されている前提で輸送力が供給されているわけですから、今回のようなトラブルがあれば、動かすにしてもかなりの制限がかからざるを得ません。

そしてそこへ旅客が集まるわけですから、品川駅はたちまち人であふれてしまいます。そうなるとその整理にもマンパワーを奪われますが、列車の遅延や運休で人は増える一方ですから、混乱は拡大するわけです。品川駅のターミナル容量も、今回のような事態を想定していなかったわけです。とはいえ今回のようなことは10年に1度ぐらいの椿事でしょうから、そのために普段は使わない無駄なスペースを用意しておくとか人員を過剰に抱えておくというのは、民営化されたJRとして選択できない対策でしょう。

つまり正常運転を前提としたシステムというわけで、航空やバスのように着陸待ちや渋滞を前提とせざるを得ない交通機関とは、システムの前提が異なるわけです。鉄道が異常時の対応がうまくないのは、ある程度仕方がないところがあります。実際国鉄民営化後四半世紀の歩みは、省力化の歴史でもありました。国鉄時代に余剰人員を抱えていたこともあり、数年新規採用を手控えて、減価償却資金は車両の置き換えや信号システムの改良などで省力化に回し、装置産業化して労働生産性を高める方向へひた走ってきたわけです。

この点はJR東海に留まらず各社共通ですが、JR東海は300系以来号車単位で座席定員を揃えて、国鉄時代の100系で採用された食堂車をなくし、ビュッフェや売店もなくして、車内販売オンリーの供食体制としたわけですが、その結果、いわゆるお弁当はパッケージがゴミになるわけで、それが今回ネックとなったように、正常に動いていれば問題にならないことが非常時対応を難しくしてしまう構図となります。俗な言い方ですが、効率化のためのサービスの画一化の弊害が出たということが言えます。

これは新幹線に限らず、都市近郊路線も同様で、首都圏のように重層的なネットワークが形成されているところでは、どこかで止まっても迂回路を見つけやすく、影響を緩和できますが、時間距離的に最適解を求める乗客の行動の結果の路線選択ですから、その最適解が利用できずに迂回ルートへ流れれば、その結果乗客の満足度は下がるに留まらず、迂回路として振替輸送を担う路線も、混雑によって遅れが出て、混雑と共にプロパー乗客の満足度まで下げるという形で、満足度低下のスパイラルが発生するわけです。正常運行している状況が最高のサービスで、異常時にはサービス後退を余儀なくされるのが鉄道というか、特に装置産業化にまい進し続けた都市間輸送と都市近郊輸送で顕著な、鉄道特有の構造問題と見るべきでしょう。

装置産業ですから、設備稼働率次第で経営が左右されるわけですから、年間通して需要が切れない東海道新幹線の効率の良さは際立ちます。逆にそれだけ利用が集中する一方、ハードの供給上方硬直性があるため、サービスをできるだけ画一化してマンパワーの無駄を省くことで利益を最大化することになります。これ自体はJR東海の経営判断としてやむを得ないところですが、そこからこぼれ落ちるニッチな需要には対応できないことになります。逆に需要の上方硬直性を心配するほど需要が旺盛ではない東北や北陸向けにグランクラスのようなハイグレードサービスを準備するJR東日本と判断が分かれたわけです。ハード的にサービスの硬直性が避けられないならば、料金制度で多様化しようということです。この辺春ダイヤで登場する651系転用のスワローあかぎで、JRとして初めて欧州流のオープン指定席制度が採用されるなど、結構攻めてます。

航空やバスでも装置産業的な部分はありますが、航空であれば空港の混雑で着陸できずに旋回待機で1時間待ちなどザラですから、それを見越したフライトプランを立てますし、仮に何らかの理由で目的地に到着できない場合でも、必要に応じて後続便への振り替えや接続便の変更や場合によっては宿泊手配など旅客本位に行います。逆にこの辺をフォローしないと割り切ることでLCCが成り立つわけで、サービスの多様性でニッチな需要を掘り起こすことに貪欲です。

この点は高速バスでも同様で、いわゆるツアーバスとの一本化でサービスの多様性は高まりました。特に夜行運行で宿泊費をかけずに安く移動して目的地での滞在時間を有効利用するという需要は確実にあるわけですが、あいにくマスマーケットではないし、季節波動も大きく、装置化の進んだ鉄道では乗客満足度の高いサービスは難しいという現実があります。あけぼのの廃止発表で某自民幹事長まで批判の声を上げていますが、実際の夜行需要は季節性の強いニッチな需要であって、1台30-40人程度のバスだから対応できるとも言えます。

季節波動を前提にオンシーズンの稼働車両確保のためにオフシーズンに集中保守をするというのは、最近は鉄道でも取り入れられておりますが、震災復興特例で先行した貸切事業者の車両借上げによる増車が認められるようになり、新高速バス規制でも踏襲されています。そうして予約の入込み状況を見ながら機動的に増車できるようになっており、大量輸送に強みを持つ鉄道の出番はないと見るべきでしょう。この辺は効率性を追求する装置産業と、見過ごされがちなニッチな需要を掘り起こすニッチ産業の違いということで、棲み分けによる役割分担と考えれば良いんで、大物政治家が強面で凄むような問題ではないです。

ややまとまりがないですが、私がリニアを無駄と断じる理由もこういうことです。効率化を追求した大規模装置産業で輸送市場を独占できると考えること自体が間違いで、需要側の旅客の意識は大きく変わり、様々な選択肢の中から自分だけの最適解を求めるようになってきています。早いだけが能じゃないですし、元雄重大な問題として、リニアの開業で稼ぎ頭の東海道新幹線の稼働率低下が避けられないわけです。リニアの輸送力の低さもあって、リニア単独で採算が取れないことを山田前社長も認めております。装置産業化された鉄道で過剰設備は経営を圧迫するのは道理です。かくて国鉄の二の舞というわけです。

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