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March 2014

Sunday, March 23, 2014

相鉄スト報道で官製ベア礼賛とスト批判のメディア

日本のメディアのおかしさが露出した話題です。久々の春闘ベアラッシュ報道の半面、労働者の権利であるストライキに対しては否定報道のオンパレード。4月からの消費税増税で景気を腰折れさせないためには賃上げが必要と、政府が異例の賃上げ要請しているわけですから、政府の提灯持ちはしても、労働者に寄り添う気はさらさらなしというわけですね。

相鉄のストに関しては、以前取り上げたことがありますが、大手私鉄の仲間入りを果たしたものの、沿線人口の減少が止まらず、持株会社化とリストラで経営立て直しに向かう相鉄の問題点は当時と変わりません。報道ではストが振替輸送の対象外と知って激高する乗客などが取り上げられておりますが、全体としては意外に冷静な受け止めがされ、逆に相鉄労組への同情の声もありますので、報道の偏りぶりが際立ちます。

そもそもスト権は、団結権、団交権と並ぶ労働三権と呼ばれる労働者の権利ですが、それぞれ独立した権利ではなく、労働者単独では会社側と対峙するときに同等とはとても言えない弱者であることが前提です。単独では弱いから仲間を集めて組合を作り、その組合が会社と対峙して交渉を行い、賃金その他の労働者の待遇を決めていくわけですが、それでも対等とは言い難いので、組合はストを通告し、会社側に団体交渉で問題解決を迫るという構図ですから、相互に関連しています。

またストは単なる労働の放棄ではなく、スト期間中は賃金もカットされますので、組合が日当を支給するわけで、組合側にとってはかなりの負担になります。また実施ルールも厳格に決められており、特に今回のように統一ストではなく個別的なストの場合、他社との直通運転や連絡運輸などに関しても取り決めがありますので、会社側のみならず労組側にも大きな負担があります。逆に言えばそこまでしないと団体交渉で会社側から誠意ある回答を引き出すのが難しい場合にストが通告されるといえます。ストを打つ労総側以上に、会社側の対応次第でストは回避可能ですし、昨今はスト決行前に妥結して回避ということが多くなっております。今回のようなスト突入は断交不調で時間切れという構図です。

私の学生時代などはストは年中行事で、ストで学校が休みになると楽しみにしていて、朝起きたら妥結していてガッカリ^_^;なんてことも度々ありました。またどうしても休めない会社では、貸布団を手配して社員を会社に泊めたり、社用車で個別送迎したりして業務に支障が出ないようにしたりもしておりました。震災などの災害で注目される業務継続計画(BCP)ですが、かつては普通にストに備えていました。こういった精神論ではない具体策はむしろ昔の方ができていたのかも。BCPも災害のみならず育児休暇を含む長期休暇の取りやすさという観点から見ると、改めて日本のダメな雇用慣行を思い知らされます。

今の人は昔に比べてストに慣れていないのですから、逆にこういう時こそメディアは正確な情報を伝えるべきかと思いますが、実際は冒頭の通りで、ストを打った労組を悪者にする偏った姿勢です。

あと日本固有の問題として、企業内組合の限界という点もあります。そもそも日本で労働組合と呼ばれているのは、欧米で言えば労使協議会に相当するもので、本来は産業別、職能別に組織された労働組合が、中央交渉で決めた待遇を、個別企業や職域に適用するために設けられる協議機関に過ぎないものです。それに労働三権を付与する日本の労組はそもそも奇形ですが、それが典型的に表れるのが公務員なわけで、労働三権が制限され、政治活動も建前上禁止されています。

故に労組はそもそも会社外の組織であり、組合活動は会社の勤務時間外に会社施設以外の場所で行われるのが普通ですが、日本では会社側が社外勢力との対峙を嫌って認めなかった一方、戦後のGHQの占領政策で、過激化する労働運動を抑え込むために認めた妥協の産物が日本の企業内組合というわけで、企業内にありながら、勤務時間外や会社外での活動など本来は産業別組合だから妥当な制約を課しているわけです。

さらに企業内組合の団結力を会社の求心力に利用して忠誠心を鼓舞したり、過激な組合をけん制するために穏健な第二組合をでっち上げて組合を無力化したりということが散々行われてきました。で、労組幹部には管理職予備軍の若手が起用され、組合で組織運営を経験することがキャリアパスとなるわけですが、よく考えると、組合の専従者は人事部付の辞令を受けて組合費から給料を受け取るわけで、会社にとっては社員が拠出する組合費を利用して幹部候補社員を育成していたとも言えるわけで、どこまでも会社に都合の良い仕組みでした。それでも高度経済成長で成長の果実を賃上げなどで労働者に配分することができたので、それなりに機能してきたのですが、バブルが崩壊し、生産年齢人口が減少へ転じた90年代を境に、この仕組みは持続できなくなります。

90年代のリストラと採用手控えにゼロ年代の雇用の非正規化で、正規雇用者中心の日本の労組は組織率20%まで低下して存在感が低下しており、今回の官製ベアではまんまと乗せられて存在感をさらに低下させています。労組の名誉のために1つだけ指摘しておきますと、連合傘下の最大単産労組で小売りや外食でバイトやパートも一部ながら組織するUAゼンセン同盟が、小売りや外食の企業トップと会談を重ね、業界で多い非正規労働者の賃上げに奔走したことは評価すべきでしょう。実態は元々賃金水準が低い業界で若年人口の減少で求人難のため、賃上げしないと人が集まらない現実に背中を押された結果とはいえ、地道に成果を上げたとはいえます。

で、相鉄の問題に戻りますが、そもそも日本の制度では持株会社化はガバナンス上問題があることは度々指摘してきました。具体的には会社法で経営に責任を負う取締役の背任などの責任追及が、日本では子会社の取締役までは届かないという問題があります。相鉄の場合持株会社移行時点では一部バス事業を抱える事業持株会社でしたが、結局相鉄HDに残ったバス部門も子会社の相鉄バスに移管され、HD所属の乗務員は相鉄バスへ出向させられているのが現状です。相鉄HDはその結果時純粋持ち株会社となり、事業部門の幹部は訴訟リスクを回避できる体制になりました。その中で相鉄労組は組織を割らずに団結を維持してきたわけで、その努力には敬意を表したいと思います。

バス部門の分社化は相鉄だけの問題ではないのですが、相鉄ではバス部門の大規模リストラとセットで進められている点に特徴があります。相鉄のバス部門は鉄道と連携して駅と沿線の団地を結ぶ路線が中心で、特に旭区で顕著ですが、開発時期が早かったこともあり、人口の高齢化と流出で利用減に歯止めがかからず、事業の縮小を余儀なくされております。今回のストはそういったバス事業への支援の意味があるわけです。

相鉄HD自身は都心直結プロジェクトで沿線価値を高めることに活路を見出そうとしているようですが、横浜市の横やりでJRのみならず東急東横線との直通まで背負い込んで事業費を膨張させてしまった上、頼みのJR直通も貨物幹線の東海道貨物線で工事間合いの確保が進まず、工事が遅れていて計画に狂いが生じております。加えて横浜駅西口の大地主でもある相鉄HDですが、東口の再開発が進んで地盤沈下している現状は簡単に解消せず、相鉄ムービルの東急グループへの転売を余儀なくされるなど、厳しい状況は続きます。

同じようなバス分社でも、例えば京王バスでは分社で雇用条件を見直した一方、既存路線の増発や東急バスの一部路線の移管を受けたり、自治体のコミュニティバスの運行を受託したりして規模拡大を図っているわけで、相鉄の場合とは趣が異なります。新会社の社員定着率が悪いなど是非はありますが、攻めの分社化ではあるわけで、規模縮小一辺倒の相鉄とは異なります。

それと今、先日の宮城交通の夜行高速バス事故で露呈したように、バス乗務員の求人難が深刻化しており、危険なのは旧ツアーバスばかりではないことが明らかになりました。一応乗務体制の基準は満たしていはいたものの、人手不足で勤務体制に無理があったようです。かつては高給取りだったバス乗務員が、今は不人気で人が集まらないという現実があります。大型二種免許所持者でも、」接客で高度なコミュニケーション能力を求められるバス乗務員はきつい仕事と認識されるようになり、震災復興や公共事業でダンプに乗り換えたり、ネット通販の拡大で物流トラックに乗り換えたりする人が増えているそうです。宮城交通の場合、傘下のミヤコ―バスによるJRのBRT運行受託の影響もあるのかもしれません。今のままでは乗務員の確保がネックとなってバス事業が立ち行かなくなる可能性もあり、そういった文脈からバス事業に拘る相鉄労組の姿勢は評価されて良いのではないかと思います。

上述のUAゼンセン同盟の地味なパート労働者の待遇改善活動のようなことが、バス事業でも必要ではないかと思います。それが地域の日常の足の維持に資するものとなることを期待して終わりたいと思います。

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Monday, March 17, 2014

原始マネーと電子マネー

太平洋ミクロネシアのヤップ島ではフェイという現役の石貨が使われておりますが、大小さまざまな円盤状の石の真ん中に穴が開いているもので、大きさか30㎝から3m程度まであり、最大のものは重さ5tにもなります。真ん中の穴は棒を差し込んで担げるようにということのようですが、実際は携帯性はほとんどなく、動かすことなく所有者がどんどん変わるという形で流通しているそうです。

そんな風ですから日用品の売買に使われるわけではなく、婚姻などの慶事にやり取りされる儀礼的なもののようですが、島民にとっては重要な価値交換のツールということが言えます。経済史的には古代の贈与経済に類似した形態ですが、お金の原点とも言うべき原始マネーが現役というところに、世界の広さを実感します。

で、面白いのは筏で運搬中に時化に遭って海中に沈んだ石貨があるんですが、クレーン船で釣り上げるわけにもいかず、海底にあるものとして所有権の移転が滞りなく行われているというのですから不思議ですね。これはもはや物理的実体そのものがあると仮定されているだけとも言え、通貨の原点というものをよく示しています。物理的には無価値であっても、社会的に価値が信用として共有されていれば、通貨として機能するってことです。

これ実は先進国も似たようなことやってまして、かつてのブレトンウッズ体制で米ドルが金本位制だった時代、フランス政府の要請で米ニューヨーク連銀の地下金庫に保有する金を払い出すときに、敢えて金を移動させず、払い出しと同時にフランス政府から米ニューヨーク連銀への預託の手続きが取られており、海底の石貨と同じことやってたわけです。ましてニクソンショックで金交換を停止された米ドルです。金本位制ならば金という物理的実体に紐付けされていたものが、単なる紙切れになり、口座決済の場合は古くは紙台帳だったものが電子化され、単なる電気信号になっているわけですから、その物理的実体はますますあいまいです。

というわけで、通貨は社会的に共有された信用とでも定義するしかない存在という意味で、太古の昔とさほど変わっていないということが言えそうです。少なくとも社会の成員の間では価値あるものと見なされているというわけです。もちろん社会制度としては歴史を踏んで洗練されてきており、政府から独立した中央銀行に通貨発行権を集中させるというのが、現時点での世界標準的な制度ですが、政治の圧力に対して中立とは言えず、FRBが資金供給量をほんの少し調整しただけで、世界が混乱する現実を私たちは目の当たりにしているわけです。

そんな欠陥だらけの通貨システムですが、人類が交換を始め、経済を発展させていく上で、重要な役割を担っていることもまた確かです。通貨の機能は大きく3つあり、決済手段、価値尺度、価値保存の3つですが、経済を機能させるためにはいずれも欠かせないものです。

決済機能というのは、通貨と財やサービスとの交換を意味します。代金を支払って品物を受け取るというごく日常的に繰り返される事柄ですが、そのためには支払われる通貨を受け取る側が価値を認める必要があります。その価値というのは、受け取った売り手が買い手に変わって別の売り手から相応の価値のあるものと交換できるという前提が必要です。つまり通貨は物々交換を媒介する存在ということになります。

同時に物々交換だと、各品目ごとの交換レートの関連付けが事実上不可能で、力関係や口上で左右されることになり、スムーズな交換を阻害しますが、通貨を媒介させることで、物の価値を通貨単位で表せるようになり、そのことが交換を促進するわけです。いわゆる交換価値とか価格とか言われるもので、通貨単位で物の価値を表象するのが価値尺度という機能になります。

あと価値の保存ですが、直感的に最も分かりにくい機能です。要は受け取ったお金は直ぐに使わずに貯めることができるということですが、通貨が交換のツールであるという点からすれば、この価値保存は受け取ったお金を直ぐに使わずに将来に備えるという意味になります。つまり目先の我慢を強いることになるわけですが、それを可能にするためには、2つの条件が必要です。

1つはその目先の我慢がその人の当面の生存に影響しないこと、言い換えれば得られる通貨が生存レベルより多いことということになります。もう1つは我慢の結果、将来により大きな満足が得られるということですが、これは今の満足と将来の満足の時間軸を置いての異時点間の価値交換ということになりますが、そのためにはそれを促進するインセンティブが必要になります。それが金利として定義されます。言い換えれば余剰資金を目先の満足のためでなく将来のより大きな満足のために用いるということで、ここにこそ資本主義の基本原理があるわけです。つまり貯蓄が投資に回ってそのリターンで経済が拡大し成長するという循環になるわけです。よく言われる「貯蓄から投資へ」は無意味です。なぜなら実際は貯蓄=投資なんですから。

という点を踏まえて、日本の異次元緩和や米FRBのQE3やECBの緩和策の結果、先進諸国はどこも低金利のわなに陥っているわけですが、これはとりもなおさず資本主義の低体温症とでも言うべき深刻な事態だということが言えます。余剰資金である貯蓄に見合う適切な投資が見当たらず、日本で言えば経済効果が見込めない公共投資で生産性をむしろ下げているというのが実情です。そのため投資資金は新興国へ向かう流れとなるわけですが、こうして見ると、国内産業の空洞化は新興国の台頭でもたらされたのではなく、先進国の国内事情でもたらされたと言えるわけです。

というわけで前置きが長くなりましたが、本題は原始マネーではなく電子マネーの話です。2007年はPASMOスタートの年で、nanacoやwaonなどの流通系電子マネーも産声を上げたことから「電子マネー元年」と言われて早7年ですが、同じFelicaシステムを用いながらシステムが乱立している現状がSONYの戦略不在の結果であると以前指摘いたしました。その後交通系カードに関しては共通化が進んだとはいえ、まだ不完全なままです。

そして消費税絡みで1円単位の運賃が認可され、4月から実行されますが、これも対応がバラバラで、JR東日本は山手線内と電車特定区間に限ってICカード運賃<磁気券運賃としたものの、幹線運賃と地方交通線運賃はJR東海とJR西日本と共通化という縛りがあって、区間によって磁気券の方が安いケースも出ており、JR東日本は地図式運賃表にICと磁気券の価格の大小関係を示す表を掲示して案内するとしておりますが、トラブルが起きそうですね。

以前にも指摘しましたが、ICカード乗車券は鉄道営業規則上は乗車券という扱いで、制度上の制約が多い一方、着映画明示されていないことを理由に振替輸送の対象外とされるなど、便利なようで不便な存在と化しています。で、消費税も5%→8%→10%と2段階で上げられることが、今回の措置を生んでいるわけですが、同じJRでも西日本では磁気券の割引切符が多数存在することで、ICカードの普及が進んでいないことがありますし、JR東海はそもそも電車特定区間運賃がないということで、同じJRで判断が分かれた理由です。とはいえ民営化から早四半世紀を経て、未だに民営化当時の枠組みを維持しなければならないというのも変な話です。無理な相談かもしれませんが、JR東日本には、リーディングカンパニーとして現状を変える大胆な運賃政策を打ち出してほしかったという思いを拭えません。1円単位運賃は結局現状維持の事なかれ主義の結果でしかありません。

ま、具体的には法改正が必要な事柄なんですが、現状の総括原価方式の認可上限運賃制度や運賃計算の根拠となる3年平均のレートベースという計算方法や、明示されていませんが、総括原算出の標準報酬率(2%?)といい、JR旅客会社、大手私鉄、大都市地下鉄などの恣意的グループによるヤードスティック規制など、既にほころびが見える現状を何とかしたいところです。

例えば認可運賃は基本賃率のみを定め、運賃区界や具体的な運賃額を殉難に決められるようにするだけでも、いろいろなことができます。現行の運賃水準では存続が困難な地方ローカル線、例えば廃止が決まった岩泉線などは、龍泉洞観光ツアー付帯の体験乗車主体という実態から、高めの特別運賃を収受するとか、大都市圏でも混雑緩和のための設備投資が必要な線区や区間に運賃を上乗せするとかしつつ、全社で基本賃率を上回らないようにするという形で運賃に柔軟性を持たせることができれば、積極的な輸送改善がやりやすくなります。現状は人口減少による自然減が頼りですから、改善が進まないわけです。

で、ヤードスティック規制も意味があるのかどうか。むしろ同じ地域の輸送を分担する複数の事業者で共通運賃を制度化する方が、より効率化のインセンティブが働くのではないかと思います。ヤードスティック規制は同一グループの事業者の平均値をベースに優秀な事業者には超過利潤を認め、平均以下の落ちこぼれ事業者を締め付ける制度ですが、グルーピングが恣意的で、特に落ちこぼれ事業者の改善は期待薄ですので、むしろ欧州などで一般化している運輸連合方式を制度化して客観基準でプール精算する方が合理的です。特に首都圏はICカード乗車券の普及が進んでおり、いわゆるビッグデータが得られるわけですから、事業者間の収益配分は昔より容易なはずです。東京都も地下鉄一元化よりも共通運賃の制度化こそ取り組んで欲しいですね。

とまあ電子マネーと言いつつ鉄ちゃんの性でIC乗車券に偏った話になっておりますが、そもそもFelicaも世界標準になりそこなっており、GoogleはNFC規格を決済システムに導入しFelica外し?と言える動きをしています。NFC自体は決済に留まらずWihiやBluetoothと並ぶデバイス間通信も想定しているようですが、SONYが迷走している間に事態は動いているわけです。

あとSNSやGPSと連動して特定の場所に反応するチェックインシステムやゲームなどの有償ポイント交換などの疑似決済システムは多数提案されており、未だにデファクトスタンダードが確定していない状況ですが、下手するとFelicaシステムがガラパゴス化なんて事態もあり得ます。何しろ日本国内ですらシステムの統一ができていないんですから。

で、もう1つ、最近話題となった電子マネーといえばビットコインですが、ICカードなどはあくまでも現金をチャージして使うもので、一部ポストペイのものもありますが、そちらは簡易クレジットカードといった性格ですが、いずれもリアルマネーと紐付けされた決済システムですが、ビットコインやそうした紐付けがなく、ネットの公開鍵と対応する秘密鍵を組み合わせた暗号技術によって生み出された通貨という意味で特殊です。日銀の黒田総裁は「「通貨に非ず」と明言し、政府もそれを追認している格好ですが、冒頭の原始マネーのことを思い出していただきたいんですが、ぶつっり的実体としての価値はどうあれ、社会的に信用を共有されていれば通貨としての要件は備えていると言えるので、「通貨に非ず」は正しくないということになります。

というか、政府にとっては困った存在なんですが、ビットコインはP2Pテクノロジーを用いて有志メンバーによってブロックチェーンと呼ばれる取引記録が維持管理される仕組みです。そしてメンバーには暗号式を解いて、それを他のメンバー全員が追認することでビットコインが与えられる仕組みで、これをマイニング(発掘)と称して、システムの維持を動機付けるとともに、マイニングが進むごとに暗号式の難易度が上がり、且つ上限が定められていることで、金に似た希少性を持たせているという意味で、金のような存在という意味で「通貨に非ず」ということなんでしょうけど、金は事実上通貨として機能していることはご存じのとおりで、少なくとも価値尺度としての機能は疑いの余地はないところです。いわゆる金貨は少数派で決済機能は限定的ですし、金利も付きませんが、化学的に安定していて酸などで解けないなど保存性の良さから「有事の金」という言われ方もしたりします。そういう点から言えば、ビットコインは国境を越えた決済手段として、高額な為替手数料が不要という特性を持ち、且つ金融機関の営業日や営業時間にも制約されないなどの特長があり、決済に特化した通貨という意味では究極の電子マネーと言えます。

とはいえ大手取引所のマウントゴックスが破綻し多ではないかと言われますが、あくまでも破綻したのはマウントゴックスであってビットコインではないということは押さえておくべきです。このマウントゴックスがずさんな会社だというのは以前から噂されていて、特にシステムの弱さからハッキングは起こるべくして起きたというべきでしょう。こんな報道があります。

マウント・ゴックス、既存の決済システムに依存 | ロイター | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
マウントゴックス社が大手銀行のネットバンキングのシステムに依存しながら取引所をうんえいしてきたこと、その大手行3行中2行は日本のメガバンクで、欧米の大銀行は当局の規制強化を睨んで手を出さなかった中で、しかもマウントゴックスは金融庁にいちいち合法か否かの照会をしていたということですから、ずさんな運営を日本の金融当局が認めていたということで、こうなると政府の「通貨に非ず」という見解は責任取らずに逃げているということを意味します。

希少性を担保にネット上の決済システムに特化したビットコインですが、当然リアルマネーとの紐付けは、信用の裏付けとして重要なんですが、その重要な取引所が簡単にハッキングされるようなお粗末な存在で尚且つ日本の当局が消極的ながらお墨付きを与えていたという点は問題です。しかも顧客の預かり資産の分別管理すら行われていなかった疑いがあるというのは致命的で、少なくともこれを放置したとすれば金融庁の責任は主といえます。ま、よくわからないものに対する事なかれ主義の果てなんでしょうけど、日本の官僚機構の劣化は極まれりというところでしょうか。ま、ハッキングされたことで、ビットコインに価値があることが証明されたとは言えますが(笑)。

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Sunday, March 09, 2014

私情の失敗アベノミソッカス

久々の更新ですが、ウクライナ問題で欧米とロシアの対立が起きて、ロシアにいい顔したい日本の立場が微妙になっています。安倍政権の外交力が問われる場面ですが、残念ながら現状はミソッカス状態です。

そもそも不思議なのは、経済的に破綻状態と言えるウクライナを巡るロシアとEUのせめぎ合いに何の意味があるのかということです。シリアの場合は曲がりなりにも石油権益のある資源国ですし、ムスリムの少数派アラウィ派による少数派統治で政情不安定で、それゆえイスラエルの強硬派を刺激する結果、パレスチナ和平にも影響するなどの状況があるわけで、国際政治上重要であることは明らかですが、ロシアがら供給されている天然ガスの代金も滞り、値引きしてもらっている状況で、国内に有力な産業があるわけでもない農業国で、チェルノブイリを抱えるなどで、仮に将来EUに加盟するとしても第二のギリシャになりかねないし、そもそもそのギリシャショックで厳しくなった加盟条件をクリアできるとも思えません。

加えて今回の政変劇はいろいろ問題含みです。失脚したヤヌコビッチ大統領が問題のあるリーダーであることは間違いないですが、収監から解放されたティモシェンコ元首相も大概です。そもそも自陣営だけでは単独過半数も取れず、反共ナチ礼賛の極右勢力の助けで政権を得た人物です。今回の政変でも極右勢力の陰がちらついています。そもそも欧州各国では流石に勢力を維持できない極右勢力が、政情不安のウクライナを狙い撃ちしたとも言われいています。シリア内戦でも反政府勢力にアルカイダ系が紛れ込んでいることで、アメリカが軍事行動を自重したとも言われますが、ウクライナでも厄介な政治勢力に味方する可能性があるということですね。

で、シリア関連でアメリカが軍事介入をしなかったことでロシアに足許を見られているという分析がありますが、シリアの化学兵器廃棄プロセス自体は以前からアメリカが提案しロシアが拒否する流れで来ていたわけですから、結果的にロシアの提案で実現し、不十分ながら和平プロセスが前進したのですから、アメリカ側から見ても悪くない展開です。

むしろこうしたプロセスで米ロ両国リーダーが当事者として関与した下地があればこそ、ウクライナ問題での電話会談でのやり取りも可能だったんでしょう。北方領土問題でロシアの顔色を伺う日本のリーダーとは大違いです。オバマ大統領との電話会談でも日米両政府の公式見解に食い違いがありますが、要するに安倍首相は一方的に聞き役に回っただけと見ることができます。そもそも靖国参拝で信用が地に落ちているわけですし、だからプーチン大統領に直接電話せずに谷内国家安全保障局長のロシア派遣でお茶を濁すしかないわけです。これで北方領土交渉をプーチンとやるつもりという冗談のような話です。嗚呼ミソッカス。

というわけで、ウクライナ情勢はいずれ着地点が明らかになると思いますが、いわゆる新興国の政治リスクというのは、ある程度一般化しておく必要がありそうです。中進国のジレンマと呼ばれる状況ですが、政治的に不安定だったり、安定していても腐敗していたりで、先進国になり切れないで停滞するというのは、過去にも多くの国が陥りました。典型的なのがアルゼンチンですが、畜産大国として繁栄を謳歌したものの、イギリスの凋落とアメリカの台頭の中で政治の腐敗で産業構造の見直しができず、工業化で後れを取ります。先日のアルゼンチンショックのように、今や真っ先に経済が変調する国になりました。

尤も新興国は国によって状況が異なりますので注意が必要です。中進国のジレンマでよく中国が引き合いに出されますが、その中国が今国を挙げて政治の腐敗一掃に取り組んでいることは、あまり報じられません。中国当局は日本で考えられている以上に、現状では成長が続かないことを認識しています。円安になっても日本の輸出が伸びず、貿易黒字が定着し、直近では経常赤字に転落した日本ですが、メディアで報じられるのは、中国の経済変調が原因というものですが、よくもまあ大嘘をと思います。確かに対中貿易が縮小傾向にあるのですが、同じ時期に米欧韓各国は対中貿易を拡大しています。早い話が尖閣問題で縮小に転じた対日貿易の穴を埋めているので、特にドイツの躍進ぶりは目を見張ります。

そもそも中国は人口大国で、内需が巨大な上、工業化で中間所得層の台頭が顕著に見られます。ところが中国に進出する多くの日本企業が賃金の上昇を憂いているのですから、そもそも工業化の意味を理解していないと言わざるを得ません。工業化は国民の所得の向上を通じて消費市場が拡大することで成長するのであって、やっと中国がその段階に差し掛かったところでドイツなどに市場を明け渡すということをやっているわけです。

生産年齢人口の減少が続く日本にとって、中国の工業化の果実を取り込めないのは、みすみす成長機会を逃すことになるのですがね。ま、国内でも消費税率アップで108/105でインフレ率近似で2.85%が確定しているのに、業績好調な大企業でもベースアップ2,000円台で1%程度の攻防って、賃上げ率がインフレ率に追いついていないのに得意顔って違うだろって話ですが、自国民の従業員に対してもこの態度ですから、グローバル経済で日本企業が生き残るのは困難と言うべきでしょう。

あまり言われませんがTPPの交渉不調も、アメリカの日本に対する厳しい見方を助長しています。安倍政権ではいわゆる重点五項目と称して、関税撤廃の例外扱いを勝ち取ろうとしていたわけですが、アメリカが求めたのは関税と共に非関税障壁の撤廃まで睨んでいるのですから、交渉がまとまるわけがありません。それどころか関税撤廃はアメリカ以外の交渉参加国からも求められております。言ってみれば浮いた存在になっていて合意を遠ざけていると見られているわけです。それにそもそも消費税率アップは輸出還付金と併せ技で非関税障壁となりますので、消費税率アップとTPP交渉参加は相反する政策ですが、政府にその認識はなさそうです。だから交渉参加なんかやめとけと言ってたのに。

で、長くなりましたが取り上げたいニュースはこちらです。

JR北海道社長に島田氏 総務・営業畑 グループ会社から復帰  :日本経済新聞
結局JR北海道はトップ人事をいじるだけで、当面現状維持となりました。しかもトップに指名された島田氏は労務管理のエキスパートで、労組への締め付けで嫌われて関連会社に出された人物です。これでJR北海道が課あける問題を解決できると考えているとすれば、政府はあまりに浅はかです。問題は人口減少で運賃収入が減っている一方で、それ以上にコスト削減にまい進した結果、削るべきでないコストまで削ってしまったわけで、それを補う資本増強や上下分離などの支援策なしにはいずれ立ち行かなくなります。これ福島の汚染水漏れを「アンダーコントロール」と言ってのけたのと同じで、気休めにもならないし、むしろ状況は悪化すると断言できます。

リーダーの私情の失敗は明らかです。市場の失敗は売り手と買い手の情報格差に由来する情報の非対称が原因ですが、私情の失敗はリーダーの思い込みの視野狭窄による情報の非対称ってことですね。

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