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Sunday, June 22, 2014

構造改革、規制緩和、経済成長

都議会セクハラ野次問題がクローズアップされております。あからさまな女性蔑視の野次ですから、スルーするわけにはいきませんが、野次を受けた女性議員の過去のタレント時代のことを穿り返してどーたらといった声も聞かれます。残念ですね。本質は性差別問題なのに。

でもそれ以上にひどいのは、歌舞伎町の集団昏睡事件ですね。不思議なことに大手メディアでは伝えられずに、専らネットで炎上という流れですが、明治大学と日本女子大のインカレテニスサークルのコンパで起きた事件ということらしいのですが、その異常さは、昏睡状態で倒れた人の多さ、しかも女性が圧倒的に多いということで、しかも脱糞までしているということで、薬物を盛られたんじゃないかとか言われております。2003年に発覚したスーパーフリー事件を彷彿とさせる事件ですが、当時、現役閣僚から「少子化が叫ばれる中、元気があってよろしい」といった趣旨の発言があって物議をかもしました。女性蔑視の意識レベルは当時とあんまり変わっていないのでしょうか。呆れます。

こういった日本人の人権意識を問われる事件の一方で、大手メディアは集団的自衛権行使を巡る自民公明の協議のような空疎なニュースを流しますが、これ選挙向けの創価学会向けの茶番劇です。公明が連立離脱を最初から封印してるんですから、落としどころを探るだけなんですが、ここに時間をかけることで、創価学会向けに納得感を演出するものです。憲法問題をこんな目くらましでクリアしようとしていて、メディアもそれを後押ししているわけです。

でまあタイトルですが、前エントリーに続く三題噺ですが、こちらはタイトルのフレーズを散りばめた官僚作文ですが、とても芝浜のような名作は生まれません。その駄作っぷりを笑う気になれないのは、決まってしまえばさまざまな影響を及ぼすシャレにならない問題だからです。

そんな中で成長戦略の第一に、法人全減税が挙げられて、代替財源問題で携帯税のようなものまで鳥沙汰されているというんですから、こいつら真面目に考えてないなというのがわかります。そもそも法人税減税が成長戦略になるのはなぜかというのは、法人税減税で先行する欧州各国の事例から、法人全を減税しても税収は増えるという法人全減税のパラドクスが推進派によって語られていることに由来します。法人税減税による税収増は、以下の3つに集約されます。

1) 課税ベースの拡大
2) 個人事業主の法人化
3) 外国企業の国内参入による経済活性化
1)は税制中立という議論で、法人税自体に損失繰り越しや研究開発減税、設備投資減税などや、特定の産業の振興や救済を目的とした租特法による政策減税が数多く設定されていて、課税ベース自体穴だらけですから、法人税減税するなら、代替財源としてここに手を付けるべきなのは当然です。しかしそうすると恩恵を受けてきた企業は場合によっては増税になる場合もあるわけで、特に大手製造業に該当企業が多いと言われますから、経団連を中心に反対論が多く、王道の課税ベース見直しは進まないわけです。

2)の個人事業主の法人化は、俗に法人成りと言われるもので、元々損失繰り越しや身内の専従者雇用などで融通が利く上に、事業承継や資産承継で相続税対策にもなるわけですから、法人税率が下がれば法人化のメリットが大きくなるというわけで、法人が増えて結果的に法人税収は増えますが、個人の所得税とのトレードオフですし、相続税まで加味すれば、果たしてトータルで税収増になるかと言えばかなり怪しいわけです。

で、成長戦略としては3)が本命なわけですが、これは国内市場を外資に開放して、競争をしようって話なんですから、本気か?という疑問が出てきます。そもそもそれ以前に日本の国内市場は様々な参入障壁で閉鎖的になっているわけですから、法人税率が下がったぐらいで外資がこぞって参入するってのは考えにくいですし、第一仮にそうなれば減税を求めているはずの財界ら悲鳴が上がります。というわけで、実に非現実的な成長戦略ということになります。

あとこれもよくある誤解ですが、法人税が下がれば賃金が上がるというのは、あり得ません。何故ならば日本の法人税はあくまでも最終利益にかかるものですが、最終利益は次の数式で定義されています。

総売上-売上原価=営業総利益(粗利)
営業総利益-営業費用=営業利益
営業利益+営業外損益=経常利益
経常利益+特別損益=税引き前利益
本業の利益を表す営業利益に、保有有価証券の配当や資産売却益など営業外の要因で発生する損益を加味したのが経常利益で、更に資産の破棄による除却損や債権の放棄などの非経常的な損益を加味したのが税引き前最終利益となり、ここに所定の税率を乗じて課税されるわけですから、税率が下がって増えるのは、株主配当、役員報酬、資本金組み込みなどの原資となるもので、せいぜい業績連動の一時金(ボーナス)で雀の涙ほどの還元はあり得ますが、人件費自体は営業費用に組み込まれていますから無関係なわけです。むしろ税率が高い方が、税金で持って行かれるくらいなら、従業員へ還元してしまおうということになりますし、逆に税率が下がれば、自分の取り分を増やすために心置きなく人件費を削ることになります。

この議論に関連してよく話題になるのが社会保障保険料の負担問題です。これは利益に関係なくかかってくる固定費ですから、本来法人税以上に企業の経営には重荷になるはずですが、実際は企業会計上人件費に算入されますので、企業のとらえ方は違うわけです。ぶっちゃけ社保完備の正社員は、本来その分の賃金が抑えられているわけで、この面から言えば、本来非正規労働者の方が、社保負担のない分、高賃金になるはずですし、かつては実際そうでした。所謂下請で働く職人さんの方が、概して賃金が多かったのですが、バブル崩壊以降逆転し、現在に至ります。

ゼロ年代に横行した正規労働者の非正規化は、こういった状況を踏まえた企業行動の結果だったわけですが、これは同時に正規労働者も非正規化の恐怖に直面することになり、ベアゼロ春闘やサービス残業増加を可能としたわけで、それが巡り巡って物価が下落すれば、マクロ要因のデフレだから、日銀がデフレ退治せよという議論につながるわけですが、実際はかくのごとくミクロの企業行動の結果というわけです。

そして生産年齢人口の減少を背景とした昨今の人手不足で、非正規の賃金がジワジワ上昇に転じると、掌を返したように非正規の正社員化を打ち出す企業が出てくるわけで、企業って優遇しようがしまいが利益を拾いに来る存在だってことです。あえて優遇する必要はありませんし、ミクロの企業行動が経済社会へ与える影響はむしろ大きくなっているわけです。いわゆる経済の外部性とか部分最適による合成の誤謬ってやつで、本来法人企業は特権の塊なのに、見合う社会的責任を果たしていないと見るべきでしょう。

社会保障問題が出てきたところで、やはり成長戦略として打ち出されたGPIFの運用見直しですが、これもスジの悪イ話です。GPIFは公的年金の運用を司る独立ぎょすえ異邦人ですが、その資金は130兆円と大きく、運用見直しでたとえば国内株式の組み込みが5%増えるだけで6.5兆円と東証の1日の出来高を上回る資金量となるわけで、最近冴えない株価対策としてはなるほど政権が飛びつくわけですが、これ90年代の株価PKOと何ら変わりません。政治圧力で株式組み込みをきょすえいした結果、株安で3兆円と言われる損失を出したのに懲りないなというのが第一印象でしたが、今回はさらに以下に列挙するような大きな問題を抱えています。

1) 厚生年金の共済年金統合による被用者年金への一元化
2) 赤字基調の厚生年金基金の9割が代行返上を予定
3) 株式組み込みの時期や規模があらかじめ明示されている
4) パッシブ運用中心からアクティブ運用へシフトしてハイリターンを狙う
5) 投資家視点で運用先企業への議決権をj積極的に行使すると表明されている
大まかにはこんなところです。1)は来年10月に予定される国家公務員共済、地方公務員共済、私学教職員共済の3共済年金を厚生年金へ統合して一元化されることで、必然的に3共済の運用基準をGPIFに揃えざるを得なくなるわけですから、GPIFの運用見直しの影響に下駄を履かせる効果があるわけです。同様に2)の厚生年金本体の資金の一部を自主運用してきた厚年基金も赤字で代行返上へと舵を切っており、当然GPIFの運用見直しに合わせることになります。つまり実際にGPIFが動かす資金量より大きな動きとなるわけです。

3)に関しては、そもそもGPIF自身が自主運用をうたってはおりますが、実際には信託銀行などの民間金融機関に資金を預託して運用させるわけですから、実際の市場取引ではGPIFのラベルでの取引ではないわけですが、これだけ大きな資金を動かせば目立ちますから、市場参加者には直感的にわかってしまいます。そうすると思惑でGPIF資金による買いが見込まれる銘柄にあらかじめ買いを入れて値を釣り上げておいて、実際に買いが入って天井を付けたタイミングで利益確定売りをすれば、濡れ手で粟の儲けになるわけです。つまりGPIFのカモ宣言に等しいわけです。これは4)でも言えますが、リスクが大きい一方、手数料の割高なアクティブ運用へシフトすることで、取扱金融機関は労せずして手数料収入を増やすことになります。

そして5)の議決権行使は、企業を監督する立場でもある国の在り方と矛盾しないかということです。所謂利益相反問題です。もちろんGPIF自身は独立機関ですから、直接的にどうこうはないわけですが、日本のsちゅよう上場企業に公的資金が入って議決権を横死できる状況の危うさは意識しておく必要があります。本来独立行政法人より独立性が高いはずの日本銀行や原子力規制委員会への政治圧力は公然の秘密です。

ついでに申しあげておきますが、原発再稼働が遅れている理由として規制委が厳しすぎるという議論は的外れです。規制庁の事務方は旧保安院からの横滑りで数十人規模で、同種の組織であるアメリカ原子力委員会が4,000人規模であることと比較すれば明らかですが、明らかなマンパワー不足です。元々900ページに及ぶ申請書を査読するだけでも手間で半年程度で認可は無理なんで、形式審査だけでメクラ判を押せというのも無茶ですが、実際九電川内原発1,2号機で申請書に不備が見つかったように、電力会社の態度にはそんな緩んだ姿勢が垣間見えます。というわけで、GPIFを隠れ蓑にした民間上場企業の株式保有による議決権行使が、政府による統制的なものが入り込まない保証はないわけです。

てなことを考えていたら、こんなニュースが飛び込んできました。

北海道でまた脱線 貨物列車、JR江差線駅構内
2014/6/22 7:59 (2014/6/22 9:01):日本経済新聞
20日の小田急21日のJR九州指宿枕崎線に続く3日連続の脱線事故ですが、同様の事故を事故を繰り返しているという意味で、JR北海道の事故は深刻です。原因は現時点では不明ですが、政権肝いりで経営陣を刷新しても問題は解決できないということですね。統制では問題は解決しないということは、改めて声を大にしたいところです。

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