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Sunday, June 08, 2014

酔っ払い、財布、芝浜

新喜劇の次は、江戸人情噺ってわけじゃないですが、三題噺風にとりとめもなく進めます。

魚河岸で仕入れた魚を天秤棒担いで売る生業の酒好きの主人公が、魚河岸が開く前の浜で拾った財布に大金ということで、浮かれて家へ帰って仲間を呼んで酒盛りを始めという噺ですが、その舞台となった芝浜の場所は、JR田町駅の浜松町寄りの線路沿いにある本芝公園あたりと言われます。

一方で田町―品川間の新駅計画がやっとJR東日本から公式発表されました。2012年のNHKニュース報道時点では大人の事情でいろいろありましたが、JR東日本の公式発表で始動することになります。で、駅名として「芝浜」を推す声があるのですが、上記のように位置はずれています。近隣のランドマーク何かないかと見れば、京浜急行本社があります(笑)。ということでケイキュウカッコカリとでもしておきましょう^_^;。

ついでの与太話ですが、開発用地ねん出のために線路移設が進む田町電車区ですが、屋根がスロープ状の変わった建屋が電車の車窓から確認できます。これ実は京浜急行線の遺構です。とはいえ私鉄の京急ではなく、戦前。京浜工業地帯の開発で混雑する京浜線(現京浜東北線)の混雑緩和のために、線路容量に余裕のある列車線を利用した急行運転が計画され、田町電車区内に乗り越し渡り線を設置することになり、スロープ付の高架橋が建設されましたが、戦時体制突入で工事休止となり、高架下をブロック壁で仕切ったものです。つまり幻の京浜急行線計画の名残りです。

以前のエントリーでも指摘しましたが、JR東日本になってからの新駅は、基本的に請願駅でしたから、設置費用は自治体や開発主体の負担となる一方、駅名は地元や開発主体の意向を尊重してきました。例えば上越新幹線の本庄早稲田駅は、早大キャンパスの存在をアピールしたい地元自治体が要望したものですし、越谷レークタウンは湿地帯に人造湖を造成して水抜きし、水辺の開発地域を生み出す開発計画を盛り込んだ駅名です。南武線の西府駅は、最寄りの都立西府高校が通学生の利便から要望したものを自治体が取り上げて実現したもので、シンプルに地名のみとなりました。

今回は開発主体がJR東日本自身であり、都からおそらく容積率緩和などの条件が示され、また国家戦略特区として進出企業の法人税軽減などの特例適用で外国企業の進出を狙うということのようで、JR東日本の単独事業となったと考えらえれます。ということは、駅名に関しては、JR東日本がフリーハンドで決められるということです。ですから、宣伝効果を狙って公募するか、あるいは進出企業にネーミングライツを売るかといったことも考えられます。いずれにしても都内の単独の開発事業としては最後の大物ということで、注目されます。ま、公募はE電の恐怖があるかもしれませんが(笑)。

しかしオリンピックを睨んだりリニア開業をにらんだりということで、ちょっと過熱気味というところでしょうか。ケイキュウカッコカリ(笑)も、一応2020年の街びらきをゴールに設定しているようですが、羽田の国際化との連動を喧伝されるのは、ちょっと違うんじゃないでしょうか。羽田に降り立った外国人客が京急にしろモノレールにしろ、ケイキュウカッコカリ(笑)へ向かうには乗り換えが必要ですし、JR東日本が表明した東海道貨物線を利用した羽田空港アクセス線も、ケイキュウカッコカリ(笑)には入りませんし、そもそも2020年には間に合いません。

むしろ重要なのは品川駅の改良です。特に京急とJRの連絡口の段差や特に羽田空港からっ到着する上りホームからJRへの乗り換えの不便さの解消が課題ですが、現時点んで具体化された計画は公表されておりません。そんな中でフライング的なこんな報道があります。

品川エリア再開発 京急線品川駅を2階建てから地平化する計画
フジテレビ系(FNN) 6月4日(水)6時26分配信
他のメディアが追跡していないところを見ると、未確定の未公開情報を裏も取らずにフライング報道のようですが、実際は何も決まっていないと見るべきでしょう。

狙いはJRと京急を同一平面にすることで、東西自由通路を整備し、併せて国道15号拡幅と西口駅前広場整備、更にぺテストリアンデッキで国道西側のホテル群まで繋ごうということのようです。で、おそらくJR山手線の電留線の用地を借りてハツ山橋から下りこう配で地上に下ろし、JR山手線ホームの隣に持って来るということなんでしょうけど、様々な難点があります。尚、プリンスホテル他のホテルの建て替え計画はオリンピック後の予定ですから、ホテル側にとっても、投資のタイミングが合っていないということは言えます。

一つは八ツ山橋の京急踏切が解消できないことです。また泉岳寺へ向かう線路へどう繋げるのも、結構悩ましいところです。加えて都心直結線と呼ばれる浅草線バイパスの泉岳寺駅が、現在駅直下の大深度地下になる構想もありますが、そうなると現在線からのアプローチは無理なんで、北品川込みで地下化の方がすっきりしますが、当然事業費も膨らみますし、2027年のリニア品川駅の計画とも抵触しますし、そもそも都心直結線の計画自体が具体化しておりません。

都心直結線に関しては4,000億円と言われる事業費負担を東京都が渋っているということもあり、また仮に具体化しても、実現は2020年には間に合いませんから、現時点で品川駅をいじれないわけで、現状のまま調整に時間を費やすことになりそうです。その流れから言っても、ケイキュウカッコカリ(しつこい^_^;)は独立事業としての性格が強くなるというわけです。

それと再三指摘しておりますが、そもそもリニアはできるのか、という疑問は拭えません。

リニア新幹線「地下水、残土対策を」 環境相意見書 2014/6/5 19:11:日本経済新聞
前のエントリーで指摘したようにヘリウムの供給源であるアメリカのシェール革命とウクライナ問題の余波で冷却用ヘリウムの供給が危ぶまれている状況ですし、加えて環境アセスメント書で指摘された地下水と残土の問題ですが、JR東海も国交省もスルーして工事実施計画作成と認可へ向かっているようですが、かなり大きな火種です。対策を打てば事業費が膨張することも考えられます。

というわけで、ケイキュウカッコカリ(またかい)を含めて、様々なプロジェクトが集中する品川高輪地区ですが、期待先行の感が強いですね。特に国家戦略特区指定で法人税減免というのは、羽田空港へのアクセスの良さと共に外国企業の誘致が狙いのようですが、上記のように不便な乗り換えを強いるわけですし、また法人税を下げたぐらいで、人口減少で国内市場が縮みゆく日本へ進出する奇特な外国企業が現れるとも思えず、テナント募集は結構苦戦するのではないかと思います。

加えて建設労働者の不足問題も深刻です。JR東日本は既に2014年度予定の東北縦貫線が1年遅れ、ですし、相鉄直通計画も2015年度から18年度に3年遅れとなっています。公式発表では前者は震災の影響、後者は府羽沢貨物駅の工事間合い確保がネックということですが、前者は震災復興で人手を取られたことが影響していることは間違いありませんし、線路切り替えやポイント設置など短時間で実施するためには人手を大動員しなければなりませんから、やはり人手不足の間接的影響と見てよいでしょう。

ってことはケイキュウカッコカリ(もういいよ)もオリンピック前に間に合うかどうかは微妙です。まして品川駅改良や都心直結線やリニアなどの巨大プロジェクトが予定通り進むと考えるのは甘いんじゃないかと思います。80年代のバブル景気で都営大江戸線の開業がベタ遅れとなり、事業費も膨らんでミニ地下鉄なのに建設費はフルサイズ並みになった轍を踏む可能性は指摘しておきます。

というわけで、2020東京五輪という大金入りの財布を拾ったばっかりに、浮かれて酔っぱらって醒めて夢となるって、そのまんま芝浜のオチやん。

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