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Sunday, July 27, 2014

ANAと鶴の条件闘争

7/14付の日経新聞紙面でJR東日本の羽田空港連絡線の計画概要が明らかになりました。日経単独の社長インタビューで明らかになったもので、翌日他紙が追跡しています。オリジナルの日経記事は会員限定扱いですので、ちづ掲載の朝日新聞の記事にリンクを張ります。

新線「羽田―都心」、開通目標は2025年前後 JR東:2014年7月16日06時27分 朝日新聞デジタル
総事業費3,000億円で2025年前後の開業を目指すということで、また東京貨物ターミナルから地下トンネルで東海道線田町付近とりんかい線大井町付近に接続し、東京へ18分、新宿へ23分ということで、具体化されています。また東海道新幹線をどうやって超えるのかも、地下トンネルで答えが出ました。おそらく田町電車区移転の跡地に地下から地上へのスロープとと合流点が作られるということですね。ということで、駅設置は無理そうですから、新駅(ケイキュウカッコカリ^_^;)は山手、京浜東北のみと見てよいでしょう。新宿方面もりんかい線大井町への接着ですから、空港の玄関口兼リニアのターミナルとして注目を集める品川をかすってスルーする計画ということになります。

一方でりんかい線車庫線を利用した千葉方面へも列車設定が示唆されており、りんかい線から京葉線へ直通すれば、東京ディズニーランド最寄りの舞浜へ直通できますし、運輸政策審議会の答申で示唆された西船橋の京葉総武連絡線の整備が可能ならば、成田空港との直結も視野に入るわけで、成田スカイアクセスの開業で劣勢の成田空港連絡輸送のテコ入れにもなるということですが、当然今回の事業費には含まれません。とはいえ鉄道用地に余裕のある西船橋の連絡線設置は、それなりにリアリティのある計画ではあります。

JR東日本の本気が見える計画発表ですが、人手不足による人件費上昇が見込まれる中で、事業の遅れや事業費の膨張は避けられないところです。とはいえ羽田と成田を1時間で結ぶ都心直結線(都営浅草線バイパス)の計画が動き出す前に事業化することで、ライバルの動きを封じようという思惑もあります。都心直結線の事業費は4,000億円と言われ、事業主体と見込まれる東京都が、地下鉄統合との絡みもあって必ずしも乗り気ではないだけに、その東京都による都市計画決定に持ち込めれば、都心直結線の事業着手を封じ込めることになるわけです。その意味で東京都は微妙な対応になっているわけです。

その一方で品川周辺で都市計画に関する気になる動きもあります。

京急がめぐらす、品川再開発の深謀遠慮 羽田―品川10分も夢じゃない?:東洋経済オンライン
以前にも取り上げました京急品川駅の地上化と品川駅高輪口の再開発ですが、今のところ都市計画決定には至らないものの、地上化に合わせて京急品川駅の構内4線化を目指すというもの。加えて八ツ山橋踏切の解消も目指していて、こちらは新馬場まで来ている高架橋を北進させて北品川駅を高架化し、併せて八ツ山橋のSカーブを直線化しようというもので、これによるスピードアップを見込むというものですが、八ツ山橋の上を通る高高架から地上への下り連続勾配ができるわけで、速度制限が課される可能性もないとは言えません。東横線の副都心線直通で代官山からの連続勾配で速度制限がかかっているのですが、高低差は小さいものの並行する国道15号の勾配を見る限り、首を傾げます。

ただ都市計画決定の手続きは先に進むでしょうから、問題はJRの新駅や羽田空港連絡線と都心直結線などほかの計画との整合性で調整に手間取ることは間違いないでしょう。これはJRの計画も同様なんですが、同時に京急の品川駅地上化計画自体が、JRの新駅構想の元となる田町電車区の海側への移転とそれに伴う東海道上り線と京浜東北線、山手線の線路移設で用地を生み出すことが前提となるわけで、特に品川駅構内の山手線電留線の移転がなければ、京急品川駅の地上化計画は成り立たないわけですから、意外ですがJR東日本がカギを握っていることになります。

京急品川駅に関しては、2020年の東京五輪には間に合わせたいでしょうから、結局JR東日本の意図に乗っかる必要があります。とはいえJR新駅関連の再開発事業では、地上に京急本社がある都営地下鉄との共同使用駅の泉岳寺の利用客が増加することが見込まれており、計画は明示されておりませんが、京急本社の建て替え高層化などの芽も出てくるわけで、京急はこれだけでも十分すぎる恩恵を受けます。やっぱケイキュウカッコカリか(笑)。

とはいえ品川地区の再開発ブームがややバブル的と言えるのは、品川プリンスなど西武系ホテルの建て替えが見込まれていることが過大評価されている側面は否めないところです。しかし当の西武HDは、当面仕掛かり中の旧赤坂プリンス跡地の所謂紀尾井町プロジェクトにリソースを集中するとしており、高輪地区の再開発は最速でも五輪後の2020年以降であり、おそらく2027年のリニア開業に間に合えば良い程度の位置づけでしょう。

そのリニア計画も、工事が始まってみないと本当に2027年に開業できるのかどうかはわかりませんから、現時点では具体的な見通しを打ち出せないのが実際です。というわけで西武HDの25日(金)終値2,200円ということで、売り出し価格こそ超えてはいるものの、サーベラスの希望した当初売り出し予定価格の2,400円には及ばず、そのサーベラスとは10月までの販売制限契約を締結して株価が下支えされている状況でこれですから、過剰期待は見られず株式市場は意外にも冷静です。逆に10月以降も相場を維持できるかどうかで、西武HDの行く末は大きく変わります。

そもそも品川地区が注目されるのは、東京五輪が絡んでいるわけですけど、こうして見ると2020年時点で実現できているのはJR新駅ぐらいで京急品川駅は微妙というところでしょう。オリンピック観戦で増える訪日外国人の受け皿は確かに心許ないところです。基本的に地理不案内なオリンピック観戦客の輸送は、現時点ではバスが頼りというのが現実的なところですが、そのバスもドライバー不足で、既にインバウンド輸送でバス手配が間に合わない現実があります。その意味で鉄道に一定割合の役割分担を期待せざるを得ないのですが、ここで課題になるのが羽田と成田の役割分担が複雑化している現実です。

元々品川は羽田の国際化を前提に、東京の表玄関になるという期待があるわけですが、現実には発着枠の配分が恣意的に歪められていることもあり、今のままでは十分機能するとは言えないところです。それもこれも民主党政権下で再生を果たしたJALに対して、自公へのロビーイングを強化したANAの攻勢によるんですが、その結果公共財である発着枠が有効利用されていないという現実に突き当たります。

国際線の発着枠に関しては、各国との航空協定に基づいて配分されるわけですが、1日1便であれば、JALとANAの双方への均等配分はできないわけですが、敢えて均等配分する方法は2通りあります。1つはJALがワンワールド、ANAがスターアライアンスと参加するアライアンスが異なることを利用して、国内で仮にANAへ配分した場合、カウンターとなる当該国エアラインをワンワールド陣営に割り振ることで、国際アライアンス間の均衡を図る方法と、もう1つは1便を出発と到着に分けて、到着便を深夜早朝枠に逃がすことで出発便2便を2社に割り振る方法で、これだと同じ国に昼間2便の出発便が確保されるわけですから、利用客の利便性は増します。加えてカウンターの外国エアラインも同様に配分すれば、更に利便性が増すわけで、公益の最大化を考慮するならば、こうした形の配分が望ましいわけです。

しかし実際は北米路線を除く16便枠をANA11便JAL5便と極端な傾斜配分としたに留まらず、航空協定に基づく外国エアラインもスターアライアンスへの傾斜としていて、徹底的にJALを追い込もうとしたとしか考えられない対応をしています。実務を担ったのは国土交通省の官僚でしょうけど、ここまであからさまな政治介入は、ANAとスターアライアンス加盟エアラインを利するだけの利用者不在です。

国際アライアンスでの均等配分という意味では、旧ノースウエストを引き継いだ米デルタへの配慮が悩みですが、そのデルタは成田の25便をそっくり羽田に移す以外の話には乗らないとしており、日米航空協定がとん挫するという椿事となっております。デルタにとっては、ノースウエスト時代から成田に駐機場や整備施設を作り、以遠権で成田からアジアへの乗り継ぎでネットワークを構築するハブ機能を持たせてきた成田から離れることは考えていないし、実際先行して配分された羽田深夜早朝枠で2便を苛酷ほしたものの、搭乗率が伸びずに苦戦している現状です。つまり以遠権のない羽田路線を持て余しているわけで、羽田への配分は以遠権を含む成田の権利の全面移行以外あり得ないというのが言い分です。

あと噂レベルの話ですが、デルタの羽田乗り継ぎの国内線パートナーとして意中のスターフライヤーをANAが強引に系列下したことへの不信感もあるようです。深夜早朝枠の不振はデルタに留まらず、JALのパートナーのアメリカン航空は1便枠を確保しながら休止に追い込まれています。北米路線固有の問題として、時差から羽田の深夜早朝枠発着便はアメリカでも深夜早朝枠となって使い勝手が悪いという事情もあります。とすれば無理して着陸料の高い羽田の発着枠を取りに行く意味もないということです。かくして深夜早朝枠1便を含む9便分の空き枠があり、JALは余剰機材で繁忙期の臨時便を飛ばしています。国際線枠を大量に得たANAは臨時便を飛ばす余力がなく、実利を取っているのはJALだったりします。またANA傘下で経営不振のスターフライヤーですが、デルタの国内線パートナーになっていれば経営も安定したでしょうに。アホな政治家はただ市場を歪めただけです。

というわけで、五輪観戦でも北米からの訪日客は成田に降り立つわけですが、湾岸地域に集まる競技会場へのアクセスは鉄道では難しいという状況ですから、基本的にはN'EXで東京へ向かい、環状2号(マッカーサー道路)で湾岸地域へのシャトルバス走らせるというあたりが現実的な対応になりそうです。

あと羽田の都心上空通過で発着枠を増やす検討もされてますが、増えるのはアジア路線中心でしょうから、結局成田と五輪会場間の輸送の課題は残るわけです。せめて増枠分ぐらいは均等配分してほしいところですが、そのためにはもう1回政権交代でも起きなければ無理かもしれません。ロビイストの口利きで公共財の配分が歪められれば、結局そのツケは国民が払うんですからね。ありのままのアナ鶴^_^;。

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Comments

この話題が出てからいつも思うですが、浜松町辺りの空き地から地下に潜って新橋で横須賀接着じゃダメなんですかねぇ。まぁ、田町~浜松町の間が単線にはなりますが・・・。

Posted by: Shimono | Monday, July 28, 2014 at 02:03 PM

コメントありがとうございます。

確かに横須賀線へつなげられれば、都心直結線への直接的なけん制にはなるでしょうけど、問題は単線区間が生じること以外にも、浜松町付近の地形が結構複雑ですし、横須賀線の地下トンネルが深い位置にあること、それと既存のシールドトンネルへの接続はかなり困難だろうということもあります。地下水位も高そうですし。

あと本文では触れませんでしたけど、新宿ルートは大田区が計画する蒲蒲線も封じることになるということもありますね。ま、蒲蒲線は軌間の異なる東急と京急をどう繋ぐかという難題もあるわけで、実現可能性は高くないでしょうけど。

Posted by: 走ルンです | Monday, July 28, 2014 at 10:57 PM

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