上場の企業な証券―役に立たない私的株式投資術
タイトルが人気コミックに似てる? 気のせいです^_^;。今回は私の株式投資遍歴を披露しましょうということです。ま、元来ものぐさな私ですから、誰かの参考にはなるかもしれませんが、聞き流してください。
書店で平積みされているような投資指南書の類いは、少額投資を余儀なくされる個人投資家にはほとんど役に立ちません。株式市場で売買する際に最小売買単位での取引となりますが、上場企業ではこの所謂単元株の価格が、サラリーマンの小遣いレベルを超えていますから、まず株を買おうと思えば、お金を貯めるしかないわけです。しかし若いうちはお金を貯めることが高いハードルになります。ま、親の遺産とかで既に手元に余剰資金がる人人はこの限りではありませんが。それでも個人投資家としてのあるべきリスクマネジメントは手を抜かない方が良いですが。
リスクマネジメントといっても、資金力に制約のある個人では、そんなに大層なことができるわけではありませんが、最低限、可能な限り安値で買うことと、複数銘柄へ分散投資することは意識すべきでしょう。限られた資金で投資する以上、安値買いは複数銘柄を仕込む意味でも重要ですし、後述する配当利回りでも有利になります。ただしキャピタルゲイン狙いはやめた方が良いです。複数銘柄も、例えば輸出企業と内需企業のように、同じ経済環境で逆の値動きをするものを組み合わせるのがキモです。やはり後述しますが、損益通算できるのが株式投資の利点ですし、保有期間中に配当は受け取れるわけですから、トータルで損しなければ良いぐらいに考えましょう。これは決算がなく時価会計が求められない個人投資家だから可能なんです。
そして買ったら忘れること。日々の値動きに一喜一憂しないことです。値上がりすると金持ちになった気分でつい無駄遣いしがちですが、当然ながら株は売って換金しない限り使えないわけで、中間の値動きは個人株主にとってはあまり意味がありません。値動きを追うのは株を売るときだけで良いんで、売る理由が現金が必要になったからでも、あるいは損切りや利益確定でも同じですが、タイミングを計る意味で値動きを見ることはあります。ただしあまり深追いしないことです。ちょっとしたトピックで大きく値が動くのが上場株式ですから、様子見しすぎて売り時を逃すことは避けなければなりません。その意味で売った後も忘れるのが一番です。
これらのことを踏まえたうえで、個別銘柄を選択することになりますが、その際にあくまでも自分で調べて決めることです。間違っても証券の営業マンや友人知人に聞かないことです。1人でじっくり考えて、自分なりの基準で納得感を高めることが大事です。これは失敗したときでも自己責任として納得感が違ってきますので。よく人に勧められるままに買って値下がりを嘆く人を見かけますが、精神衛生上もよろしくないですね。投資は自己責任を求められる以上、他人のせいというエクスキューズは求めないことです。
その意味でNISAや株式投信は候補から外れます。NISAは1人1口座のみ開設可能で、国税庁の事前審査がありますから、そもそも口座開設に時間がかかる上に、上限年100万円という制約がありますから、複数銘柄の分散投資は難しいですし、そもそも無税ですから損益通算の特例もないわけで、仮に損失が出れば非課税特典は無意味になります。つまり必ず値上がりする銘柄を見つけるしかないわけですが、それは不可能です。むしろ取引履歴を当局に把握されると考えると、NISA以外の口座との口座間取引なんかすれば、下手すれば税務調査を呼び込むことにもなりかねません。個人投資家としてはリスクを負いきれません。
現実的には少額投資でリスク分散になる株式投信の購入ということになりますが、株式投信に限らず日本では投信の信託報酬と販売手数料が割高で、募集で示される標準的な運用利回りもあくまでも目標であって義務はない上に信託報酬や手数料は控除されていませんから、買ってはみたものの、思ったほど利回りが良くないということになります。またNISA口座を開設した金融機関は何かにつけて商品の買い替えを勧めてきます。経済状況が変わったとしてこっちが有利になりましたというセールストークで迫られるとコロッと同意してしまう人が多いですが、商品の入れ換えの度に入る販売手数料狙いですから、結果的に投資家が損します。それもこれもNISA口座なんか作っちゃうから呼び込むことですから、非課税特典に惑わされずに自分なりの投資哲学や相場観を磨く方が重要です。
とはいえサラリーマン投資家という限定をつける限り、株取引に気もそぞろで本業が疎かになるわけにはいきません。本業ではしっかり稼いだ上で、余力で株式投資ということになりますから、その条件を満たす銘柄の第一候補は、必然的に自分の勤めている会社ということになります。何故ならば上場企業一般よりも会社の実情を詳しく知る立場にあるわけですから。そして仮に社員持ち株会があるなら、とりあえず加入することは、株式投資デビューのハードルを劇的に下げます。NISAよりも現実的なアプローチです。
社員持ち株会には様々なメリットがあります。何より1口1万円とかで給料天引きで毎月拠出できますから、強制貯蓄と一緒であまり意識せずに始められる点。たいていの会社では安定株ぬ水対策と共に財形貯蓄代わりの社員向け福利厚生も兼ねて補助を出します。1万円に対して50円といった水準ですが、投資として見れば成果に下駄を履かせるわけですから有利です。少額投資という観点からも、個人の投資デビューに向いてますし、多数の社員が拠出してリアルに単元株を買える金額が揃うから、効率も良いですし、何より株価の変動を加味すれば、毎月の定額拠出は有利な買い方です。
所謂ドルコスト平均法という方法で、金投資などの投資信託では普通に行われる方法ですが、それ自体では特段のリターンを生まない金を、毎月一定額購入することで、価格が高いときは少ししか買えず、下がれば多く買えるわけですから、トータルの購入単価を期間中の相場平均より下げられるわけです。株式投資ではほぼ社員持ち株会でしか認められていない手法ですが、できるだけ安値で買うという意味で有利です。
加えてもっと重大なのは、ほぼ唯一の合法的インサイダー取引でもあるという点です。勤めている会社が成長軌道に乗っていて、株式が将来確実に値上がりする状況ならば、それが仕事の励みにもなりますし、多少の嫌なことも我慢できるわけです。逆にインサイダー故に知る会社の成長性に疑問を感じたら、とっとと辞めて転職しましょう。持ち株会の拠出金はその時点での時価按分の金額が戻りますが、仮に目減りしていても、泥船に乗り続けるよりはマシです。云わば人生の損切りです。
これは言い方を変えると、本業と株式投資がリンクしてくるわけで、社員でありながら投資家の視点で相対化、客観化して見られるようになるわけで、どう転んでも大きな人生の糧になります。かくいう私も、勤めていた会社の株式上場と東証二部から一部への指定替えで株価が化けてくれたおかげで、小金を得ることができました。ある意味ラッキーだったんですが、一度転職してますし、かなり意図的に会社を選んだ結果でもあります。その結果逆に我慢が利かなくなって辞めちゃいましたが^_^;、後悔はありません。私はハッピーリタイアと呼んでおります。
新卒採用で社会人デビューしてみると、大卒がまだ少なかった時代に、幹部候補生ともてはやされる一方、高卒でたたき上げの年下先輩社員に苛められ、上司からは高い達成度を求められという状況で、社員でありながら投資家の視点を持つことの重要性は身に染みております。と同時に、同期入社の中での出世競争に明け暮れ、足の引っ張り合いみたいなことをする無意味さも知ることになります。その意味でサラリーマンの目標を出世に置くのではなく、上記のハッピーリタイアに置くことで、見える景色が変わるということは体験的に申し上げられます。その意味で持ち株会のない会社でも個人で自社株を購入するのが、株式投資のはじめの1歩になると考えます。
退職後いくつかの仕事を転々としながら、虎の子の株式売却益にはできるだけ手を付けないために、敢えて個人向け国債や株式を買うということをやってみたわけですが、その結果わかったことが、上述の株式配当利回りの重要性です。ぶっちゃけ10年債利回りが0.5%とかって環境で、株式配当利回りが1.2%ほどで回っている事実に直面するわけです。もちろn異常な低金利環境ゆえということは言えますが、通常株式の配当利回りよりも国債利回りの方が上回るものです。
何故ならば株式は企業の将来の成長性を織り込んで価格形成されますから、取得価格比での配当利回りは低下せざるを得ません。それもこれもバブル崩壊以来低調な日本の株式市場ゆえではありますが、それでも企業の成長が実現すれば株価はさらに上がり、所謂キャピタルゲインが実現する結果、株式投資にうまみが出るわけです。またこれは銀行預金や国債など元本保証がある金融資産がインフレで実質目減りする一方、インフレをヘッジすることを意味します。株式投資の最大のメリットですが、同時に会社が破たんすれば紙屑になるリスクと裏腹ではあります。
そういうわけで、国債金利と株式配当の利回りの逆転は、逆にデフレゆえと考えることもできます。そうすると株式投資はデフレすらヘッジするということは言えるかもしれません。ここで言うデフレは、マクロ経済現象としてのデフレーションではなく、日本が現実に直面している物価下落傾向を指しますが、念のため。またここから類推されるのは、この関係が逆転しない限り、日銀の異次元緩和で目標とされるインフレ期待の醸成は無理ということも言えます。アベノミクスのインチキぶりも見えるわけです。景気浮揚のために株価を押し上げるのは無意味です。
そんな中で注目するニュースはこちらです。
JR九州、上場へ 株売却益を整備新幹線に 国交省検討、16年度までに
2014/7/8 2:06日本経済新聞 電子版
JR九州社長「鉄道事業、16年度黒字めざす」 上場へ収益改善 2014/7/10 13:30日本経済新聞 電子版頭クラクラしてきますが、そもそも本業赤字で、九州新幹線開業後も黒字転換できていない上に、その頼みの九州新幹線が自社保有ではなくリースという条件で、上場審査を通ると考えているのでしょうか。また上場企業となれば、経営安定基金の存在が問題になります。何故ならば株主の立場から言えば、基金の運用で本業の赤字補てんをするならば、本業から撤退して基金の運用で株主配当せよという話になります。上場企業は株主のものという基本からすれば当然です。にもかかわらずJR九州は基金の存続に期待し、政府は政府で株式売却益を整備新幹線早期完成のために財源としてアテにしているというのは、会社も政府も株主を食い物にすることしか考えていないとしか言いようがありません。政府肝いりとはいえ、簡単に審査を通すようなら東証の権威に傷がつきます。
その一方で東京都の横やりでストップしている東京メトロの上場はさっぱり動く気配はありませんが、都知事も変わったことだし、こちらの方が早いと思いますが、升添知事に頭下げたくないでしょうかね。
あと日本郵政の上場問題も五里霧中です。小泉改革であれほど大騒ぎした郵政改革ですが、政治に翻弄されて漂流しています。政府は早期上場を言いますが、問題は屋台骨を支えるゆうちょ銀行とかんぽ生命の金融2社の扱いです。改革法でjは持株会社の日本郵政上場後速やかに金融2社も上場させ経営から切り離すことが謳われておりますが、屋台骨を失う郵政にとっては金融2社の上場を遅らせてモラトリアム期間を長くしたいのが本音。一方の金融2社特にゆうちょ銀は、住宅ローンや企業融資など新分野参入を希望するも、単独上場が参入条件になりますが、日本郵政サイドでは官邸の政治力で何とかという思惑のようです。これも東証は認めちゃアカンよね。
一方で大阪では府出資のOTK売却が決着し、泉北高速鉄道は南海電気鉄道が買い取ることになりました。主張に同意してはおりませんが、大阪維新の会の実行力は見習うべきものはあります。同時に政府出資の特別会社ばかりでなく、自治体出資の第三セクターの民営化というのも、地味ながら重要です。首都圏で言えば、曲がりなりにも単年度黒字に転換した北総鉄道や、デフレのおかげで超優良企業としてロケットスタートできたつくばエクスプレスなどは、いつまでも三セクのままで良いというもんでもないでしょうし、特に高運賃で訴訟騒ぎまで起き、住民自主運行バス「ちばにう」まで登場した北総鉄道に関しては、高運賃対策とセットで民営化の道筋を考える段階に来たのではないかと思います。
その一方で、GPIFの株式陶酔拡大など、なりふり構わない政府の株価浮揚対策にもかかわらず、上値が重い展開の東京市場ですが、そろそろ天井かもしれません。すぐに暴落はないかもしれませんが、売り時を意識する局面と見た方が良さそうです。
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Comments
JR九州の上場は、閑散路線の末端の存廃もさることながら災害復旧の対応が悪くなる懸念がありますね。近年では豊肥本線は1年ちょっとで復旧できましたが、本州3社みたく完全民営化すると株価が優先で、沿線自治体は私企業の路線に補助金を出しづらいですから遅くなるでしょうし、ただでさえいつも台風の通り道の九州で近年は気候変動で熱帯化してどこでもゲリラ豪雨に襲われそうなのに拙速に上場して在来線ネットワークを維持できると思えない。
ご指摘の通りメトロの上場を急いだ方がいいでしょうね。メトロはローカル線問題が存在しないのはもちろん、東京という圧倒的に鉄道事業者が有利な立地で商売をしながら都と国が100%出資するままで駅ナカや不動産など副業をしていますが、これが大きく民業圧迫につながるしこれ以上多角経営を拡大するならこちらこそ完全民営化を急ぐべきでは。鉄道以外でも、東京や全国の1等地に膨大な資産があって準国営状態でどんどん副業にのめりこんでいる郵政もJR九州より上場を急いだ方がいいと思います。
Posted by: きさら | Tuesday, September 09, 2014 10:50 PM
遅レス申し訳ありません。
JR九州に関しては、災害復旧に留まらずキップのネット販売強化で駅のみどりの窓口を縮小するなど、サービス低下の可能性のあるものまで発表されていて、逆に本業を弱くする可能性も心配ですね。そもそも株式売却益を整備新幹線の財源にするというのは論外です。
本来は民営化で事業収益から納税することでフローの面と、株式売却益や余剰の事業用地の売却などでストック面と、双方で財政の健全化に寄与すべきところですが、NTT株もJT株も売却益はどこかへ消えてます。JR関連は事業仕分けで鉄道・運輸機構から一部国庫へ返納されただけです。
郵政に関しては微妙ですね。やはり金融2社を切り離せば黒字のめどは立っていないので、上場のメリットはほとんどないでしょう。確かに一等地に不動産を抱えてますが、鉄道と違って本業とのシナジーもほとんどないですし。むしろ信書便法による保護が仇で不動産業に専念できないわけでもありますし。
Posted by: 走ルンです | Thursday, September 11, 2014 12:41 AM