人手不足の陰でひっそり進む信用収縮
最近いろんなニュースがあって、追い切れていませんが、佐世保の事件は周りの大人たちの対応次第で防げた事件のようですね。この分野あまり詳しくないので深入りしませんが。
あとパレスチナ問題。そもそもパレスチナは主権国家ではなく、イスラエル領内の自治区であり、自治政府で支配的なファタハは、穏健派として欧米からの支援を得ている一方、汚職体質で十分な統治能力を持たないということで、特に飛び地となっているガザ地区を中心に、医師や弁護士など中流知識層が自治政府の手の届かない行政サービスを肩代わりする活動を行ってきたのがハマスで、NPOのような存在なんですが、手続き上は単なる任意団体にすぎません。そしてその活動の従事者の中には対イスラエル強硬派がいて、ときどき武力攻撃を仕掛けてくるわけで、定義上テロ組織ということになりますが、実態からすれば違和感のある表現ではあります。主権国家になれないのはアメリカが認めないからで、他国がそれに従っているという構図です。ファタハの腐敗ぶりも、エジプトのムバラク政権やアフガンのカルザイ政権、イラクのマリキ政権etc....西側諸国が支援するとなまじ経済力があるから腐敗が防げないのかも。
というわけで、イスラエルがやっていることは、国内の反政府分子をハイテク装備の軍隊で制圧するということであり、この点いかなる言い訳も通用しません。同じことを中国政府がチベットやウイグルでやれば人権問題として攻撃される、そういった性格の問題だということは押さえておきましょう。
しかしアメリカはイスラエル擁護の姿勢を崩さず、日欧各国もそれに引きずられているのですが、その原因はウォール街の金融界に多いと言われるユダヤ系アメリカ人のロビー活動に負うところ大ということです。有名人ではバーナンキ前FRB議長がいますが、バーナンキ氏自身がそういうロビー活動をしているという意味ではありませんので念のため。
一方ハマスは中東のカタールが後ろ盾となっていて、ハマスがロケット砲などの兵器を調達できるのも、資金支援があればこそですが、カタール自身は反米というわけではなく、むしろ米FRBのQE(量的金融緩和)の恩恵を得て原油高で潤沢な資金を得ている立場です。つまりウォール街と産油国という現在のグローバル資本主義体制下で勝ち組と言える両者がそれぞれ敵対関係にあるイスラエルとハマスを支援しているわけですが、さりとて両者は対立関係にあるわけではなく、東西冷戦時代によく言われた代理戦争ではないところが何とも摩訶不思議というか、アメリカフィルターで世界を見ている日本のメディアにはワケワカメなんですね。強いて言えば先進各国中銀が揃って量的緩和に踏み込んでいるから、余剰マネーがこういうところへ回るわけで、パレスチナ人を救うには金融引き締めが効果的ということは指摘できます。
さらに言えば元々ハマスと浅からぬ関係のあったエジプトのムスリム同胞団が、アラブの春で政権の座に就き、その後軍事クーデターで地位を失い粛清にあっている中で、有力な支援者を失ったハマスの先鋭化は避けられないところではあります。さらにややこしいのは、中東ムスリム圏で唯一のNATO加盟国であるトルコもハマス支持の立場にあり、移民政策でアラブ系やトルコ系住民の増えた欧州諸国も今回はさすがにイスラエルを非難し、さらに米軍が駐留するアラブきっての親米国サウジアラビアまでイスラエル非難ということで、むしろアメリカが孤立する構図になっています。やはりアメリカの影響力は確実に低下しているということですね。アメリカ中心の世界観から抜け出せない日本のメディアのガラパゴスっぷりはしょーもないところです。
国際問題に限らず、日本のメディアのダメっぷりを示すのが、前エントリー関連のこんなニュースです。
JR東日本、羽田新路線を東京五輪までに部分開業する計画検討 フジテレビ系(FNN) 7月30日(水)12時47分配信:YニュースJR東日本の羽田空港新線は東京貨物ターミナルから分岐する計画ということで、現時点でルートも決まっていないのに、2020年に間に合わせるために途中駅までの暫定開業って、なに寝言をという話です。
既に貨物幹線として多数の貨物列車が設定されている貨物線とは別ルートが示唆されているわけで、線路容量の問題や地下深くのシールドトンネルへの接続や駅設備の施工の困難さなど、取材した記者の知識不足が明らかです。ゆえの他のメディアは追跡しませんでした。おそらく五輪に間に合わせろ、何か奥の手あるだろうとしつこく聞いて言質取ったとでも思ったのでしょう。アホ!
ただ航空関連はこのところ話題が多く、8/1には春秋航空日本が就航し、LCC新規参入となりました。パイロット不足は相変わらずで、今後楽天出資のエアアジアのリベンジもあり、まだまだ目が離せないところです。そんな中でのこんなニュースです。
エアバス、納入解約通告 スカイマークに違約金要求へ 2014/7/29 13:49:日本経済新聞LCCの就航で運賃設定が中途半端となり、利用が伸びない一方、円安で燃油代の上昇の影響を受けて、発注済みのA380の引き取りができなくなったのですが、既に6機中2機は完は間近で莫大なキャンセル料が発生するということで、スカイマーク自身の存続にかかわる事態となっております。契約に解約条件が明示されていないなど、スカイマーク側の手落ちがあり、燃油調達に関連した為替予約もしていなかったなど、業界の素人の弱点てんこ盛りです。
そもそもスカイマークは従来機材をリースで調達していたのですが、A380はリセールバリューがないということで、リース会社が引き受けを拒み、直接購入を余儀なくされたようですが、保有機材がリースであるがゆえに、担保差し入れができないから銀行融資も受けられず八方塞がりということです。身の丈に合わないリスクテイクというわけで、同情の余地はありません。エアバスは代金の確実な回収のために大手の出資受け入れを提案しましたが、スカイチーム所属で日本の国内線の提携相手が空白なデルタが名乗りを上げる可能性はあります。そうすると日米航空協定の前進も期待できますが、西久保社長が頑張っている状況ですから、このままではスカイマークは倒産し、LCCのパイロット供給源となるシナリオがあり得ます。エアアジアの再参入も案外早そう^_^;。
迎え撃つ鉄道側は、JR東海が東海道新幹線のぞみでN700Aで最高速285km/hにスピードアップを打ち出しました。一方JR東日本は整備sン幹線区間の最高速260km/hのスピードアップの可能性に関して研究すると表明しましたが、具体的にどうなるかは言及されておりません。旧くて低規格の東海道新幹線でスピードアップが実現し、新しくて東海道新幹線よりは高規格なはずの整備新幹線がスピードアップできないのはなぜかということですね。
これも散々述べてきましたが、1つは東海道新幹線の収益性の高さになります。加えて新幹線買い取りで自社物件となったことで、毎年の減価償却資金が内部留保されているので、車両の更新や線路の細かな改良に回せる資金が豊富ということもあります。加えて借り入れの際の担保価値も絶大で、よほど経営者がぼんくらじゃない限り、資金繰りに詰まる可能性は皆無ということです。
あとハード面では盛土にバラスト道床という、保守麺では手のかかる不利な条件が、むしろ細かな改良が柔軟に可能という意味で、東北新幹線などのコンクリート路盤にスラブ軌道より取り組みやすいという点もあります。逆にガッシリ作られているがら設計速度の260km/hを超えるのが困難なのが整備新幹線です。加えて利益部分はリース料として召し上げられ、自社物件ではないから担保価値もなく、減価償却による内部留保も生まないですから、スピードアップのための改良の費用をねん出する手段がないわけです。それでもJR東の本の事業規模ならば、追加費用の水準次第ではある程度の負担は可能かもしれないということで、突っ込まれる前に調べておこうというところです。
この辺は過去にも整備しても進化せんと述べたように、中途半端なものの整備を急ぐよりも、時間はかかっても将来のスピードアップの余地を持ったハードにすることの必要性を指摘しました。特にこれから整備される区間は東海道新幹線のような収益性は見込めないんですからなおさらです。しかし実際に政府がやろうとしていることは、JR九州の株式上場で株式売却益を整備新幹線の財源にしようという方向ですから、バカバカしすぎます。これも前々エントリーで指摘したところです。
で、やっとタイトルの件なんですが、気になるのは人手不足が今後ますます深刻になる点で、いくら財源を手当てできても、事業費自体が膨張を余儀なくされるわけですから、整備促進をうたっても実現しないと見るべきです。残るは死屍累々の政府債務の山ということになります。そして公開されている日銀の2013年3月期決算資料を見ていて、もっと恐ろしいことに気付いちゃったんです。
第129回事業年度(平成25年度)決算等について細かいところは省きます。注目していただきたいのは、資産の部の国債残高の期首期末の比較欄です。それによると国債残高は1年で+73兆円で、内長期国債が63兆円で、つまり異次元緩和で大量の国債を買い取り、しかも売却にしろ償還待ちにしろ現金化しやすい短期国債より、根雪のように年度をまたいで残る長期国債を膨らませている点です。しかも負債・純資産の部で日銀当座預金+70兆円、日銀券+3兆円ということで、国債買い取りの資金は圧倒的に市中銀行が口座を持つ日銀当座預金でほとんどが賄われている点です。
つまり、日銀が市場から国債を買い取った資金のほぼ全てが日銀当座預金にブタ積みされていて融資に回っていないということです。しかも市場を通じて日銀に国債を売ったのは銀行だけではなく、証券、生損保、GPIFなどの国債保有機関や商社などもいるわけですから、国債買い取い額の大半を占めるとはいえ、銀行が日銀に売った正味の金額よりもおそらく日銀当座預金の増加分が多いということです。つまり銀行が企業や個人から集めた預金の一部が超過準備として0.1%の利息が付く日銀当座預金に吸収され、相当額の融資の縮小、つまり信用収縮が起きているということです。早い話国債消化のために民間資金が吸い上げられているわけで、営利部門から政府部門への資金シフトを意味します。そりゃ民間設備投資が伸びないわけです。
そして行き着く先は経済に政府が強く関与する統制経済へと向かうということで、そうなると出口は戦前の国家総動員体制のように戦争へ向かうか、ソビエトのように崩壊するかという究極のディストピアです。生産年齢人口の減少で人手不足が目立ちますが、仮に規制が起きてそれが解消できても、今度は信用収縮による経済の低迷に直面するわけで、にっちもさっちもどうにもブルドッグ状態ですね。
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