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September 2014

Sunday, September 14, 2014

腰砕け民主主義

最近意味不明のスパムコメントが大量に来るんですが、ウイルスの媒体になりかねないので、コミュニケーションが成り立たないコメントは原則削除しています。毎日スパムの消し込みで手を取られておりまして、更新が滞っております。

その間にいろいろなニュースが流れましたが、手短に朝日新聞の従軍慰安婦問題での吉田証言報道に関して、誤報と認めたことで集中砲火を浴びてますが、それで慰安婦問題がなかったことにはならないです。河野談話では吉田証言は参照されなかったし、国連人権委員会の調査では幅広く証拠集めをしていて、吉田証言が覆ったぐらいでは見直されることもないんで、この辺国際社会でどう見られているか、いい加減自覚すべきですね。

世界ではイスラム国(IS)を巡るあれやこれやで、アメリカが空爆を決定し、イラク領内に加えシリア領内での空爆も視野に有志連合による多国籍軍を募っています。ISの存在は欧米諸国にとっては頭の痛い問題でして、そもそもはアラブの春の失敗によって失望した若者たちが集まっているわけです。アラブの春で国が変わって安定を手に入れたのはチュニジアのみに留まり、一旦は民主的選挙でムスリム同胞団主導の政権ができたものの、内政の失敗で軍事クーデターとなったのは周知のとおりです。ただエジプトで少数派のキリスト教系のコブト教徒などは軍政を歓迎していたりするんですが、欧米式の多数決による普通選挙では少数派の自分たちが守られないという現実的な問題が立ちはだかります。

それでもいきなり内戦になったリビアやシリアよりはマシなのかもしれません。両国は反米的で周辺国から浮いていたために、周辺国からの反政府勢力への武器や資金の提供があったために、悲惨な状況になっているのですが、丁度アメリカが目障りなフセイン政権を排除するために、大量破壊兵器保有というウソの情報をもとにイラク開戦に至ったことを見倣って同じように泥沼になっているわけで、このあたりの各国の身勝手な対応への失望もまた、ISに若者を惹き付ける要因になっているわけです。

経済のグローバル化で若年失業率が高まっているのはほぼ世界共通で、特に産油国の多い中東各国では、新興国の工業化による需要の高まりから交易条件が改善され大量のマネーを蓄えているのですが、それ故に何でも外国から買った方が安いんで国内産業が育たない所謂オランダ秒状態で、一方で経済の好調を支えに人口は増える一方で、職のない若者が溢れているわけです。彼らが民主化の夢破れた時に、武力で既存秩序を破壊するISになびくのはある意味必然と言えます。

そしてこれは中東の若者に限らないのです。欧州もEUの統合でドイツ以外の国の国内産業は大打撃を受けており、労組が強く簡単に解雇などの雇用調整ができないゆえに、若年失業率は10%以上で高止まりする一方、ギリシャショックを契機に南欧諸国を中心に財政再建で福祉養蚕を削られて国民の不満が高まっています。しかも若年層に矛盾が集中していることに変わりはないわけで、そんな彼らの一部がISにリクルートされているわけです。この辺の事情は国内産業の空洞化と移民受け入れで割りを食っているアメリカや、資源輸出で外貨が稼げるカナダやオーストラリアも同様です。日本の若者もブラック企業問題などで似たような状況はありますが、せいぜいネット炎上やヘイトデモで憂さを晴らすということで、どこまでも内向きです。

アメリカの空爆についてはイラク領内に関しては、一応退陣したマリキ首相の要請ということで、被害国の要請という例外措置としての集団的自衛権行使で理屈が立ったのですが、シリア領内では理屈が立たないので、リクルートされた戦士が帰国してテロを仕掛けるから、自国防衛のための自衛権(断りはないが当然個別的)の発動という超拡大解釈をしているのです。ちなみにイラク、シリア共に日本への軍事的要請はありませんから、日本が集団的自衛権を行使する余地はありません。敢えて言えばアメリカからの要請がある可能性は皆無ではないとしても、日本の自衛隊は専守防衛で盾、アメリカ軍が敵基地攻撃などの鉾という日米安保の役割分担からいってあり得ません。集団的自衛権の議論をするなら、こうした個別具体的な問題で態度を明らかにすべきですが、安倍政権は無関心のようですね。

そしてシリアのアサド政権はロシアと軍事同盟関係にありますから、ウクライナ問題で対立するロシアからは早速シリア領内の空爆は侵略行為と言い始めています。つまりロシアの反対があるから国連安保理に諮らずに有志連合で自国防衛のために戦うという無理繰りな解釈になってしまいます。石油や天然ガスの中東依存度の高い日本ですが、この問題では何一つ主体性を発揮できない現状です。

ISに関しては、以前にも指摘しましたが、承認する国がない以上、国を名乗っても主権国家たり得ないわけですが、支配地域を拡大し、少数派のアラウィ派支配のシリアでも多数派のシーア派支配のイラクでも非主流派のスンニ派住民を懐柔し、油田やダム(水利)や銀行などの社会インフラを押さえていて、外形的には領土、国民、産業を擁する国家の体裁を備えています。油田そのものは生産が続いているようで、産出した原油は密輸ルートで売りさばかれているのでしょう。その結果中東の政情不安で必ず上昇していた石油価格は安定し、むしろ下がってすらいます。市場価格より割安ならば密輸品でも買う国はあるわけで、それが結果的に市場の需給を緩ませて市場価格を押し下げるわけですね。だから日本にとってはあまり痛みのない中東紛争ではあります。

で、主権国家同士の戦争ならば、総力戦として国内の社会インフラの破壊が有効なんですが、イスラエルのガザ空爆のときのように非戦闘員への攻撃は人権問題という意識が共有されてきている現在、この手は使えませんし、まして油田の破壊はIS掃討後の復興にブレーキとなるからできないわけで、空爆によって相手の戦意を喪失させるというのが狙いとなりますが、ISはそれに対して捕虜の公開処刑で対抗するということで全くy堪えていません。

空爆は作戦としても有効性に疑問符が付きますが、結局ISが現状で有効な対空攻撃力を持たないから、自軍の損傷がないということなんでしょう。自国兵の犠牲者が出れば世論が反転して戦争反対になるのは先進国では普通のことになっているので、結局アメリカはこういう形でしかISと対峙できないわけです。おそらくオバマ大統領もその辺は承知の上で、議会の弱腰批判などに背中を押されたと考えられます。つまり何が言いたいかと言えば、出口がないということです。

敢えて出口を求めるとすれば、ISを承認して主権国家とすることで、国際法に基づく和平交渉を行うということになりますが、それが意味するところはISがモンゴル帝国の興隆をなぞる可能性があるということです。チンギスハーンのモンゴル帝国は、儒教思想と高度な官僚制を支配原理としていた中国で、そこへ武人同士の主従関係という単純で革新的な支配原理を持ち込みつつ、官僚制はちゃっかり乗っ取っているわけです。領土、国民、社会インフラを獲得したISに主権国家として対等な立場を与えても、国連憲章どこ吹く風で支配地域を周辺に拡大する動きを抑えられないでしょう。宗教戒律を前面に出した単純な支配原理の方が浸透しやすいのも確かですから。ISが戦線を拡大して周辺国を呑み込むことになれば、欧米が築きあげてきた国際秩序を大きく浸食します。世界史的な変化は辺境から起きるという意味で、ISは相当厄介な存在になりそうです。

という中で、イギリスで注目される動きがあります。スコットランドの独立問題ですが、劣勢とされた独立派がここへきて草の根で支持率を高めており、予断を許さない状況です。実務的には課題山積ですが、イギリスの国土の1/3を占め、人口で8%、GDPで9%のスコットランドですが、イギリスの中では産業集積のある豊かな地域で所得水準も高く、多くの歴史的著名人を輩出する知的水準も高い地域で、j且つ独立すれば北海油田の90%の権益を得て50年間はその恩恵を受けるわけです。一言で言えばサッチャー政権以来新自由主義的な政策で国内産業が衰退したイギリスで、最も割を食った地域でもあり、それ故に労働党の大票田でもあり、ブレア、ブラウン両首相もスコットランド出身です。

しかしそんなスコットランド人の意思が国政に反映されていないと考える人が増え、政府、与党のみならず、大票田を失う労働党まで独立反対に回っています。しかしそのブレア政権で限定的ながら立法権を得たスコットランド議会でスコットランド国民党(SNP)が議会与党となり、キャメロン政権に住民投票を呑ませたわけです。いろいろな解説がされてますが、少なくともスコットランドの独立運動には愛国的な要素は見られず、日本で喩えれば一票の格差問題が近いでしょうかね。2009年総選挙での民主党の地滑り的勝利の時でさえ、地方区では自民が議席を確保したように、明らかに不公正な状態が放置されていて、野田政権での三党合意で格差是正と定数削減が約束されたにも拘らず放置されています。こういう点を踏まえると、民主主義とコモンセンスの国であるイギリスでのこの動きは注目されます。

ただ世界では独立に反対の言論が多いですが、これはEU加盟国内でもベルギーのフランドル地方やスペインのカタルーニャ地方など複数の国で独立運動があり、スコットランドの結果如何ではかなり影響が出るということのようですが、そもそもEU憲章で補完性原理が謳われ、加盟国の主権国家としての権利は制限される方向性なんですから、この動きを仮にEUの意思として抑え込むということになれば、EU統合の理念自体が疑われます。

一方国連安保理常任理事国にして核保有国でもあるイギリスの外交的地位は間違いなく後退しますし、SNPは域内の核配備も認めず、NATOへの加入もないということになると、ロシアとの関係も微妙になるなどいろいろナイーブな問題があることは確かです。またロシアのクリミア併合問題で住民投票を口実とした点でロシアを非難すれば欧米は自らダブルスタンダードを認めることになるわけです。もちろん独立が否決される可能性もありますが、ここに至ってはどう転んでもスコットランドの自治権拡大は認めざるを得ず、キャメロン政権の退陣に至る可能性もあるなど、事後処理は困難を極めます。それでもイギリス伝統のコモンセンスが紆余曲折を経ながらでも落としどころを見出すことができるならば、民主主義の復権に一役買う可能性はあります。

SNPは独立後北欧的な高福祉国家を目指すとしており、富裕層や企業関係者が警戒しているんですが、90年代以降の1人当たりGDP成長率でトップはスウェーデンなど北欧勢であり、イギリスもアメリカも及ばないということをご存じないようです。しかもスウェーデンは先進国で法人税減税を先んじた国でもあり、課税ベース拡大による税率ダウンという正攻法を用い、世界標準を示した国です。その結果欧州諸国が追随し、多数の租税特例で課税ベースが穴だらけの日本とアメリカが取り残されているというのが、法人税の現状です。どちらも財界のロビー活動が活発で、課税ベースが拡大できないという点で共通しています。

加えて言えばスコットランドが目指すとする北欧型の高福祉国家は国が小さいから可能という議論はよく耳にしますが、ならば可能なレベルまで国を小さくするというのはアリではないかということですね。日本でも安倍政権が地方創生を打ち出していますが、国主導でやれば非効率なバラマキ政策に堕するのは確実なんで、その意味では理念的には民主党が打ち出した地域主権の考え方の方が、より現場に近いところでの意思決定という意味で望ましいのですが、残念ながら日本の地方自治体は国に補助金をおねだりするしか能のない代物だったため、民主党政権も言われるままに消費税の地方配分を増やした程度で終わってしまいました。

また地方への権限移譲も、阿久根や大阪や武雄のようなプチ独裁者を生み出しただけという点で、まさに腰砕け状態です。そんな中で首都圏の腰砕け事例をご紹介します。

鉄道運賃の値下げをめぐって敵と味方が大混戦に
専決処分を行った前白井市長に2363万円の賠償命令:ダイヤモンドオンライン
これ北総線の高運賃を地方自治体の財政負担で時限的に値下げしようということで、千葉県が音頭を取ったはいいけれど、値下げを求める市民派市長fが県の要請に従って財政負担を盛り込んだ予算を市議会に諮るも同じ市民派の市議たちに反対されて孤立し立往生。結果的に専決処分で通したら、市に損害を与えたかどで市民は市議から訴訟を仕掛けられ賠償命令を受けるという地獄のような話です。日本の地方自治の現状は、残念ながらこんなレベルで自立は程遠いということです。

一方同じ立場の印西市は、補助金期限の終了と共に地元のバス会社に運行を委託する形で「生活バスちばにう」を走らせ、新鎌ヶ谷駅と千葉ニュータウン中央駅を直行で大人300円のバスの運行を始めました。同区間の北総線の運賃は560円ですから、かなり割安な運賃設定です。今のところ平日毎時1-2本、休日毎時1本程度で、新鎌ヶ谷駅では新京成の踏切を超えた南口発着など、既存事業者の既得権に阻まれてはいるものの、とりあえず採算ラインには乗っているようです。新鎌ヶ谷まで出れば、新京成線や東武野田線(アーバンパークライン)など割安ルートで都心へアクセスできるということで、北総線に敢えて競合することで北総線の高運賃の是正を狙おうということですね。住民主導のこの動きはちょっと注目したいところです。くれぐれも腰砕けになりませんように。

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