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Sunday, October 19, 2014

公共交通多重化の意味とは

2週にわたって週末に台風が上陸という事態に対して、興味深い動きが見られました。台風18号では6日(月)夜半早朝に首都圏直撃ということで、JR東日本と私鉄各社は早々に大幅な間引き運転を決めたものの、運行は確保しました。一方19号では三連休最終日の13日(月)夕方の直撃ということで、JR西日本は16時以降の全面運休を前日に発表という異例の措置を取りました。

JR西、台風で初の全線予告運休 48万人に影響
2014/10/13 22:29
ネット上でも賛否が分かれておりますが、私は大英断だと思います。予報で相当な被害が見込まれる中で、三連休最終日の夕刻というタイミングでもあり、不要不急の外出を抑制することで混乱を抑えたという意味で、適切な判断だったと評価できます。利用者は発表を受けて予定の前倒しや外出の取りやめなど、各々の判断で対応できたわけで、結果的に混乱を防ぎ、翌15日は朝からほぼ平常通りの運行を確保しました。実は地味ですが、最後の点がとても重要です。

6日の首都圏では休み明けの朝の通勤ラッシュを直撃するということで、完全に止めるのは難しいから、間引き運転で対応したわけですが、昼に台風が抜けた後も、現場点検や車両、要員のやり繰りがありますから、平常運航まではある程度タイムラグがあります。首都圏各社はそれを承知で運行停止にはしなかったのですが、連休最終日夕刻という状況ならば、全面運休して翌日朝に影響を引きずらないという判断をJR西日本はしたわけです。

そのほか台風18号の直撃で東海道本線由比―興津間で土砂崩れが起きて運休を余儀なくされました。当初1か月以上かかると言われた復旧工事をJR東海は20日復旧を予告し、さらに前倒しで16日に復旧しました。さすがに重要幹線ですが、過去にも1982年台風10号直撃で富士川鉄橋下り線が流失して復旧に1か月を要しました。このときは復旧を急ぐために富士―富士川間で上り線を利用した単線運行の仮復旧ということまで行われました。

面白いのは当初指導式と呼ばれる代用閉そくで復旧したんですが、この場合指定の腕章を着用した指導員が添乗することで列車運行が許可されるという仕組みで、いわば人が通票代わりに両駅間を往復するわけですが、それですと下り列車と上り列車を交互にしか走らrせられないということで、どこから手当てしたか知りませんが、通票閉そく器を両駅に設置してタブレット交換を行いました。

両駅で打ち合わせて方向てこを同じ方向へ入れることで、発駅側でタブレットを1個だけ取り出せTる仕組みです。タブレットはキャリアと呼ばれる金属リンクに取り付けた皮袋に収めて列車の乗務員に渡し、それを携行して運行し、着駅で渡すわけです。そして交換待ちの逆方向の列車があればそちらの乗務員に渡して指導式と同様に機織り運行が可能ですが、同一方向に2列車を走らせる場合は、着駅で受け取ったタブレットを通票閉そく器に戻し、改めて方向てこを同期させ発駅側の通票閉そく器からタブレットを取り出すことで、安全に同一方向へ列車を走らせられるわけです。

ただしタブレット交換は人手を要しますし、ローカル線と違って長大編成列車の多い東海道線では、タブレットのやり取りにかかる時間もばかにならないわけで、そのためにホーム上を駅員がキャリア担いで自転車で疾走するという珍風景も見られました。それでは列車をさばききれないということで、単線自動閉そくまで導入されました。ここまではあくまでも仮復旧の過程の話で、下り線が復旧したのちは元に戻されています。鉄橋の流失ですから、復旧工事は水が引くのを待つ必要があったわけで、その一方重要幹線をいち早く運行再開しなければならない中での現場の苦労でした。

今回もJR東海の素早い復旧自体は評価できますが、忘れがちなのが復旧費用の問題です。簡単に言えば東海道線は重要幹線であると同時に高採算路線でもあり、復旧費用のねん出が容易という事情もあります。この辺は土砂崩れで復旧を断念して廃止されたJR東日本の岩泉線やBRTで仮復旧した気仙沼線や大船渡線、洪水で壊滅的打撃を受けて今でもバス代行が続き、復旧のめどが立たない只見線などが費用の手当てで苦労しています。名松線の家城―伊勢奥津間は自治体の治山治水事業の進捗を見て復旧が決まっていますが、JR東海でもローカル線では自治体の対応を見ているわけです。

名松線の復旧に関してですが、家城までの区間は近鉄線がほぼ並行していて、2時間ヘッドの名松線に対して毎時2本以上で運行しており、近鉄駅に接着するフィーダーバスに役割を譲る選択もあり得ましたが、私鉄に対して割安な通学定期運賃の問題もあって最初から選択肢にならなかったようです。この地域のローカルバスの惨状もあり、心理的に抵抗はあるかもしれませんが、少子化で通学生自体が減っていく中、いずれ存廃問題に直面することは避けて通れないのではと危惧します。

現実問題として過疎地の公共交通は壊滅的に淘汰が進んでいるわけですが、交通政策基本法や地域公共交通活性化再生法などの法整備はされていても、この流れ自体は変えられそうにないです。とにかく人口は当面減り続けるわけで、その中で都市に人口が集中する一方、衰退して限界集落化するところも出てきます。

行政効率を考えれば都市への人口集中は望ましいことではありますが、その結果限界集落化する地域をどうするかは、考えておく必要があります。幸い人工知能を搭載した Google car のようなものがアメリカで公道実車テスト中ですが、この手のパーソナルモビリティは過疎地や離島でこそ有効なツールかと思います。その意味で都市の狭い路地を念頭に前後型2シーターの日本のメーカーの提案はちょっと違うかなと思います。渋滞を考慮すべき都市交通用としても、全長を短くできて道路専有面積を少なくできるという意味で Google car のような横2シーターの方が合理的です。まして高齢者が介助者と同乗するならなおさらですね。

こんな話をするのも、そもそも論として公共交通が成り立つためには相応の需要がなければならないわけで、移動の需要は個別性があるわけですが、都市部ではある程度類型的に集約が可能なのに対して、地方の過疎地では無理な話になるわけですね。ですが究極の救世主として自動運転パーソナルモビリティの可能性は指摘できます。それも含めて個別輸送機に対して公共交通が選ばれるためには何らなのアドバンスが必要なわけで、それが提供できないところまで公共交通でカバーすることが正しいのかという問いかけが必要なのではないかということです。

長くなりましたが、ここまで考えないと、公共交通のボトムラインが見えてこないということです。自転車、バイク、マイカーなどの個別輸送機に対して、公共交通は選択されるためのアドバンスが必要なわけです。それは、スピード、快適性、定時制、利用しやすさなどがありますが、量の評価も必要です。マイカー依存では渋滞で破たん確実な都市交通などをイメージすればわかりやすいでしょう。

例えば当ブログでも取り上げている鎌ヶ谷観光の「生活バスちばにう」ですが、北総線の並行ルートで競合関係にあるバスを走らせて何の意味があるのかという疑問がネット上でもときどき見かけます。量的な評価では鉄道にバスが敵うわけがないのですが、ほぼ半額という運賃水準によって、鉄道の高運賃を嫌って最初からマイカーを選択していた人のいくばくかが利用すれば、その分渋滞が減ってマイカー利用者も含めて地域全体の満足度は上がるわけですし、ほかの手段がなくて渋々北総線を利用していた層のみならず、外出をためらっていた層まで掘り起こせれば、地域活性化にもつながるわけですから、輸送量そのものは微々たるものでも、地域に与えるインパクトはそれなりに期待できます。こういう視点こそが重要ではないでしょうか。

その意味では上記の名松線のケースなど、通学定期運賃の問題がなければ、鉄道は近鉄に集約してフィーダーバスを充実させる方向性もあり得るわけでどちらが良いかはその地域に根差した視点で評価するしかありません。気仙沼線BRTなどの評価も同様です。地域のリソースを生かしながら全体の満足度を高めることこそが問われるわけです。

で、タイトルにある公共交通の多重化という点で、例えば北陸新幹線や中央リニアが語られることが多いんですが、これらの議論は東海道新幹線の代替輸送路という点でしか見ていないという点で狭い見方です。3.11で被災した東北新幹線が在来線に先行して復旧したように、採算性の高いインフラは復旧費用も捻出しやすいわけで、被災のリスク軽減と共に、早期復旧によって影響を最小化するということもまた重要です。その意味では新幹線のような高速鉄道で複数ルートを整備して需要を分散すれば、個別路線の採算性を低下させてかえって復旧を遅らせるということも考えるべきでしょう。

まぁ東海道新幹線に限っては、日本有数の人口密集地を走っているわけですから、中央リニアが開業しても、想定される輸送力から言ってリニアへの移行分はのぞみの半分程度として、その分待避の減るひかり、こだまを充実させて100㎞-200㎞程度の中距離客を掘り起こそうという算段をしていると思われます。実はJR東海にとってこだまは悩みの種でして、現行ののぞみ中心ダイヤでは各駅での待避による長時間停車で利用しにくい列車になっているわけです。だから三島や掛川で新在接続をアピールし企画キップを売ったりしてますが、利用はさっぱりで、新東名の開通もあって、静岡では不便な新幹線はあまり利用されていないのが実態です。当ブログでは中央リニアは財務圏で疑問を指摘してますが、東海道新幹線で中距離客を掘り起こせれば、リニア単体で赤字でもなんとかなるという見立てなんでしょう。

あと東海道新幹線の設備更新のための長期運休に関しては、当のJR東海自身が技術開発で長期運休なしに更新工事が可能という見解を示しておりますから、この面でも多重化の議論は的外れです。もう一つJR東海の見立てでリニア開業で航空需要の取り込みを期待しているのでしょうけど、これは大阪まで伸びて初めて出てくる話ですが、実際東京―大阪間の航空の撤退まで進むかといえば疑問です。むしろ多重化を言うならば、鉄道と航空の双方が機能する方が、災害時の対応を含めて重要です。

それと来春開業が迫る北陸新幹線ですが、こちらは元々多重化は方便だったと言って良いでしょう。最高速260㎞/hで東海道より迂回ルートで、大阪まで開業しても4時間以上かかる上に運賃料金も高いですから、最初から選択肢にはならないわけです。地域で見ても例えば新潟県上越市は企業の事業所が集積誌ビジネス利用が見込まれるところですが、現状の越後湯沢乗り継ぎの上越新幹線とほくほく線利用に対して、上越妙高停車のはくたか利用だと時間短縮効果がほとんどない上に乗車距離が伸びて運賃料金は高くなるということで、高額の負担金を請求されて効果は見えないということで、泉田知事が異例の上越妙高全列車停車要求となったわけです。

もちろん無理な要求ですが、整備新幹線の費用負担に加えて切り離される並行在来線の受け皿三セクへの出資など少なからぬ負担を強いられ、またやはり三セクのほくほく線のドル箱のはくたかを奪われて、ローカル輸送だけで採算を取らなければならないなど少なからぬ地域の負担を強いられているなどの矛盾を指摘したかったのでしょう。北陸新幹線の整備が地域にとって最善であったのか、開業後も否応なくその答えを求められるわけです。

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