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Sunday, November 09, 2014

さらばスーパー特急

アメリカ中間選挙で与党民主党の歴史的大敗ということで、アメリカが決められない政治になるとか、日本への影響はといった報道が多い中、注目したのはこの記事です。

かつての救世主・民主大敗 GMの胸の内
米州総局・杉本貴司
2014/11/7 9:39:日本経済新聞
リーマンショック後事実上破たん状態にあったGMを救済したのがオバマ政権率いる与党民主党だったのですが、そのGMはミシガン州の労組不要法導入を後押しし、排除されるとしてそれに反対する全米自動車労連(UAW)を支持基盤とする民主党を支持しなかったわけです。結果的に民主党はオバマのおひざ元で議席を失いました。政府の救済により税金で支援を受け、整理解雇や賃金抑制で労働者に犠牲を強いて、復活すれば知らん顔というわけです。

元々GM自身自動車販売をかさ上げする目的で残価設定型ローンに注力し、ローン債権を拡大してきたことが災いしての破たんだったのですが、FRBの量的緩和(QE)のおかげで、バブルの疑いもあるアメリカの景気上昇を追い風に、またしてもサブプライムオートローンに注力していつか来た道をひた走ります。経営破たんのツケは国民と労働者に転嫁しての復活劇は、結局懲りずに同じ過ちを繰り返すのでしょうか。

というわけで、以前こんなエントリーでJALとの対比を試みましたが、JALは日本の民主党政権の成果とされたことへの反発で、自民党に目の敵にされていることもあり、今は二度と国の支援を受けない強固な財務体質を維持することに重点を置いています。国と企業はこれぐらいの緊張関係にある方がうまく行くということか(苦笑)。

話を戻しますが、私の見立てではオバマ大統領が目指したのは、おそらくリーダー型ではなく、様々な矛盾と対立を抱えるアメリカで、合意形成を重視するファシリテーター型大統領だったのではないかということです。ファシリテーターは基本的にコンテンツに対しては中立が望ましいわけで、GMのケースでは破たんすれば百万人規模の雇用が失われるならば、経営支援は雇用者の利益にも適うというロジックでまとまる話なわけです。その意味ではGM経営陣の対応は裏切りに近いわけですが。

そういうわけで、確かにオバマが唱えたChangeはならず、またOne Americaもむしろ遠ざかったという意味で、保守、リベラル双方から叩かれているのが現状です。また辞任した閣僚の多くが辞任後にオバマ批判をしているところから見ると、議会の民主党院内会派とさえも距離を置いていたのではないかと見ることができます。つまり中間選挙の結果は、今までと変わらず実はアメリカに何の変化ももたらさないということです。

ただし面白いのは野党である共和党の変化なんですが、右傾化が進んでいた共和党で、Tea Partyなどの極端な保守派はむしろ政府の足を引っ張るばかりで役に立たないと有権者に見放され、それがオバマの二期目をもたらしたということで、議会内ではむしろ民主、共和両院内会派に融和の動きが見える点です。ただしこれはオール議会とホワイトハウスの対立という別の構図となる可能性もありますが、アメリカの政治に一石を投じたのかもしれません。オバマの評価は退任後まで見ないとわからないですね。

もう少し続けますが、ぶっちゃけ世界への影響力という点で、オバマ大統領よりもイエレンFRB議長の方が影響力が大きいのもまた現実でして、イエレンの一言一句見逃すまいと世界中が注目しています。当のイエレン議長は「金融政策は国内向けのもの」であり、海外市場への影響は推し量らない姿勢です。意訳すると「こっちは勝手にやるから自己責任で対応してね♥」ということで、かえって何やらかすかわからないという意味で注目されるわけです(苦笑)。国家元首の大統領より市場のご神託を告げる呪術師のような中銀総裁相当の金融当局トップが事実上上位という現実の変化は計り知れません。そういや日本でもアベノミクスよりクロダバズーカが話題に^_^;。

というわけで、変わりゆく世界の変わらない政治こそが、最大の変化ではないかという皮肉なテーマに行きつきます。鉄道分野では来春に予定される北陸新幹線の開業に関わる話題として、ほくほく線の160km/h営業運転の終了が、鉄道趣味的にビッグニュースに関わる話題ということで、やっと本題です^_^;。まずはJR東日本の公式発表からです。

北陸新幹線 長野~金沢間開業に伴う運行計画の概要について(PDF)
関連して北越急行のプレスリリースです。
特急はくたかの廃止について(PDF)
ほくほく線自身は国鉄末期の特定地方交通線対策に派生して未成線の三セク引受けが可能になったことで建設が決まった路線ですが、首都圏と北陸を結ぶショートカット線を意識して、特に国鉄時代には貨物通過線との認識が強かったこともあり、ルートを巡って二転三転した経緯があり、またその間に国鉄が民営化されJRが発足し、当初貨物通過線を意識した路線が新幹線連絡の特急ルートとして、当初から高速運転を意図した設計となりました。そして当初こそトンネル進入時の気圧変動を緩和するため140km/hでしたが、150㎞/hから160㎞/hへとスピードアップを図り、現在に至ります。北越急行でははくたかに代わってローカル列車用HK100形による最高速110km/hで越後湯沢―直江津間をおおむね1時間で結ぶ超快速の運行を予定しています。
「超快速列車」の愛称名募集(PDF)
最高速がダウンしても現行はくたかに近い所要時間を目指すということで、はくたかの上下列車の行き違い運転停車で生じる時間ロスがなくなるなどと説明されてますが、具体的なダイヤはまだ検討中のようですが、はくたか利用者の多くが直江津で下車している状況から、上越妙高(脇野田から改称予定)から乗り継ぎのある北陸新幹線利用に対して優位性を保てるという考え方のようです。加えて保有する特急車両681-2000/683-8000「スノーラビット」はJR西日本に買い取ってもらい、特急がなくなって線路保守負担も軽くなり、また過去の黒字を積み立てた剰余金約92億円(2013年3月末現在)もあり、また高度な雪対策で運休が少ないことが評価されてローカル列車の線内利用自体も増えていることから、稼ぎ頭のはくたかを奪われても当面安泰と見通しています。直江津周辺にはそれなりに企業集積があってビジネスラインとして安定した利用が見込めるのは確かです。まあだけど鉄ちゃん的には在来線でほぼ唯一、トンネルで耳ツンが体験できるのですから、まだの方はお早めに(笑)。

ほくほく線の160㎞/h運転ですが、元々整備新幹線計画がJRに引き継がれ、所謂三線五区間に予算がついたことから始まります。退職区間は以下の通りです。

九州新幹線 八代―西鹿児島(スーパー特急)
北陸新幹線 高崎―長野(軽井沢―長野間ミニ新幹線*)
北陸新幹線 黒部―富山(スーパー特急)
北陸新幹線 石動―金沢(スーパー特急)
東北新幹線 盛岡―新青森(沼宮内―八戸間フル規格、他はミニ新幹線)
* 長野五輪関連でフル規格化検討
このうち高崎―長野間は後にフル規格化され、予算の傾斜配分と相まって、ほくほく線開業の1年後に開業となり、北陸へ行かないから長野新幹線という路線呼称で話題になりました。今回の延長開業で呼称は北陸新幹線に統一されるようですが、JR西日本が事業主体となる残り二区間は、新幹線規格の路盤に暫定的に在来線用の狭軌(1,067mm)の線路を敷いて160㎞/h程度の最高速で走らせる計画でした。

JR西日本の681系はそれを見越して高速運転対応が採られていて、後のほくほく線の高速運転に生かされました。尤も単線トンネル通過時の気圧変動で窓ガラスの剥離まで起こすハプニングがあって、上述のように暫定的に140㎞/hでスタートし、後に新幹線に準じたドアの簡易機密構造に改造されて段階的に速度向上しましたが、それでも気圧変化の影響を避けるために、トンネル入り口では130㎞/hで進入し再加速と言った速度制御を余儀なくされてます。

加えてそれまでの非常制動距離600mの規制が撤廃され、安全運行のために高速運転良しを現示する緑2灯(GG)信号の導入と、運転パターンを車上で生成するATS-Pの導入などの保安装置の改良、整備で高速運転が実現し、整備区間でも160㎞/h運転とすることで北陸新幹線のメインルートとなる予定でもありました。当時同様にスーパー特急方式で計画されていた九州新幹線鹿児島ルートも、JR九州がそれを見越して787系特急車を投入しました。こちらは走行安定性を重視して、ステンレス車体の783系から敢えて普通鋼で重量を持たせ、電動車比率を高めて動力性能を確保するという異なった思想の車両を投入しました。当時はスーパー特急方式を大真面目に考えていたわけです。

一方で新幹線と縁のないJR四国が2000系で制御付振り子車両を採用しました。基本は自然振り子ですから、線路に与える負担は大きいのですが、軽量化と低重心化で、線路の新増設や改良によらないスピードアップをめざし、他社もそれを追随します。ただしその分本来必要な線路改良などの地上側の改善を遅らせたこととか、その後より簡便な車体傾斜システムが実用化されたこともあり、JR四国、JR北海道、JR東日本と後継車種は車体傾斜方式に向かっています。この辺は以前のエントリーでも取り上げました。

長々とつづけましたが、ほくほく線の160㎞/h運転の終了は、このスーパー特急の終焉でもあるということです。その後政治の圧力もあって整備新幹線はフル規格に化け、新規着工も相次ぎ、鉄道・運輸機構に引き継がれた鉄道整備基金も底をつく中、整備新幹線の開業区間の将来のリース料を担保にした借り入れを起こし、それでも足りずにリース料収入をそのまま事業費に流用などまさに何でもアリ状態でフル規格新幹線が整備されますが、地方の底上げの観点からは、地方都市間の輸送需要では過大なフル規格新幹線ではなく、スーパー特急に準じた丁度ほくほく線のような高速ショートカット線を用いることで、高速道路が整備されても自動車より優位なスピードを実現する方が、結果的に地方の底上げになりますし、貴重な鉄道投資の原資を有効活用することにもなるというのは繰り返し述べてきたところです。加えてこの速度息の鉄道の実績が少な過ぎて、新幹線でカバーできない地域の鉄道の衰退を招くことも危惧されます。

全国新幹線網整備法が施行されて40年を超えますが、国鉄改革時のどさくさで生き残った整備新幹線の呪縛からそろそろ抜け出すことを考えるべきでしょう。整備計画を超えて工事実施計画まで策定されながら、オイルショックによる公共事業見直しと成田空港の開港遅れが重なって事業が中止された成田新幹線が、現在京成スカイアクセス線として160㎞/h運転で形を変えて実現し、JR東日本のN'EXを窮地に追い込んでいます。この手のプロジェクトを積み重ねることが、結果的に鉄道の競争力を高め、将来へつなぐことになります。ちなみに成田新幹線計画は、京葉線の東京駅アクセスや北総線並行道路の形でもハードが活用されており、また成田空港アクセス路として期待のかかる北総道路の計画もあります。オイルショックという外生的要因はあったものの、過去の決定に拘らずに最適解を見い出すことに、もっと柔軟になるべきではないかということです。

そうでなくても人口減少が確実な近未来。おそらく2020年の東京五輪後のリセッションは厳しいものになるでしょう。それを回避する知恵は大事です。

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