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December 2014

Wednesday, December 31, 2014

日本銀行とリフレ派となかまたち

参議院議員の山本太郎議員が生活の党に入党し、党名を「生活の党と山本太郎となかまたち」に改め、議員5人で政党要件を満たすことになりました。まるで冗談みたいな党名ですが、党代表ではない個人名を含む党名は公職選挙法上禁止されておらず、地方区選出なので、当人が比例区に立候補しない限り問題ないそうです。次の参院選では比例区候補を立てれば、「山本太郎」や「なかま」の票が有効票になるというきわどい裏ワザですが、政党要件を満たせば政党助成金の交付を受けられるに留まらず、政見放送、比例区立候補、個人献金の税控除などではるかに政治活動がやりやすくなります。なるほど小沢一郎氏は戦い方を心得ているというか、既得権者に嫌がられるわけです。政権の暴走を止める存在になることを期待したいところです。

てなわけで、いろいろあった2014年もあとわずかです。経済は明らかに下り坂です。で、地方創生と称して統一地方選に向けて3.5兆円の補正予算でバラマキが行われます。これGDPを0.7%押し上げるそうですが、日本のGDPが500兆円規模ですから、単純に金額で比率をはじいただけというお粗末。消費税率アップを回避したんだから、本来国債発行額を減らせばよいのですが、使い切るということですね。こんなんじゃ財政再建は永遠に不可能です。

とはいえ沖縄知事選でも衆院選小選挙区でも負けた政権与党の焦りも見逃せません。自民党の議席が伸びなかった原因の一つに、0増5減の定数是正の影響もあります。区割りの変更で候補者を絞れず分裂選挙になるばかりか、有権者も馴染みの候補がいなくなって投票をしなかったために、都市部より投票率が低くなるという珍事が起きています。

なるほど地方に強い自民党にとっては、定数是正はマイナスでしかないわけで、一票の格差是正をやりたがらないわけです。逆にこの辺は今後の野党の攻めどころにもなりますが。沖縄では振興策の減額とあからさまな報復で、小物ぶりを発揮する安倍首相です。特に沖縄は47都道府県中、唯一出生率が高く人口ボーナス期にあるところなので、振興予算よりも基地の縮小によって自律的成長ができる地域です。普天間の国外、県外移設はその意味で合理的なのですが、鳩山政権で腰砕けとなりました。補助金で地方を縛る政策は限界にきており、来年の統一地方選でも造反自治体が出ることは避けられないでしょう。

で、アベノミクスの三本の矢とやらですが、7-9月期のGDP成長率が2期連続のマイナスということで、失速は明らかです。四半期GDPの2期連続マイナスとなりました。消費税増税の影響が言われますが、少し違った視点から見てみます。日銀がインフレ目標で参照するコアCPI(消費者物価指数)は一応プラスでは推移してますが、円安による輸入物価の上昇の寄与が大きかったわけで、だから想定外の原油安で輸入物価が下がるのが困ると日銀は考えたわけですね。しかし物価をGDPデフレーターで見ると、違った景色が見えます。

日本の14年7-9月期GDPデフレーター:前年同期比(表)
見にくくて申し訳ありません。表の中央付近――デフレーター――の文字の直下の数値が、2005年を基準年とする四半期GDPデフレーターの数値です。前期との数値の増減を見ていただきたいんですが、今年の4-6月期に増加したほかはほぼ90前後で横ばいです。GDPデフレーターは名目GDPから実質GDPを求めるために物価の影響を取り除くための指数で、以下の数式で定義されます。
GDPデフレーター=100*名目GDP/実質GDP
つまり名目GDPを実質GDPで割って100を掛けて指数化したものですが、項を入れ替えれば名目GDPをGDPデフレーターで割れば実質GDPが求められるわけですね。日本ではGDP統計の部門別推計値の段階で物価推移を加味した実質の推計値も算出し、部門合算の二次推計値で出た名目と実質の値から逆算されます。つまり誤差範囲を含むので、全体のトレンドに注目するのが正しい見方ですが、異次元緩和に関わらず実質的に物価はほとんど動いておらず、4-6月期の消費税の転嫁分だけが際立つ結果となりました。まGDPデフレーター自体はその算出方法もあって、付加価値の増加にフォーカスした推計なので、元々輸入物価の変動の影響を受けにくいのですが、同時に輸入物価の上昇にも拘らず、上昇分を価格転嫁できていなかったことも意味します。つまり実質的にデフレは続いているということです。異次元緩和の意義が問われますが、当事者からの貴重な証言もあります。
量的・質的金融緩和の論点 「レジーム転換」が効果発揮 岩田規久男 日本銀行副総裁 :日本経済新聞
レジームチェンジの視点からみようとしなければ「予想(期待)に働きかける」という政策効果の波及メカニズムは、その出発点から否定されてしまう。
日本経済新聞に掲載された岩田副総裁の論文で、その一部を引用しました。ここで言う「レジームチェンジ」とは、日銀の政策目標を金利から「予想(期待)に働きかける」ことへ転換することの意と読むことができます。つまり信じなければ否定されるということで、これを科学と呼ぶのは躊躇されます。効果を疑問視するのは信じないからということで、STAP細胞級のトンデモ系のカルト科学です。呆れますね。

まとめますと、物価上昇を目的とするならば、金融緩和よりも消費税アップの方が効くという冗談のような現実を示します。増税とインフレは別の現象だろうというツッコミが来そうですが、増税もインフレも所得移転という本質は変わりません。インフレ税という言葉があるぐらいで、財政赤字が慢性化した政府が最後にすがるのがインフレです。ですから、巷間言われる4月の消費税アップで経済が失速したというのは、必ずしも正しくありません。汗っかきエントリーで指摘したように、景気拡大期は既に昨年10-12月期に終わっていたと見るべきでしょう。インフレは良くて増税はダメというのは矛盾した話です。

ただし原油安は実体経済にはプラス要因ですから、マイナス成長自体は持ち直す可能性はありますが、リスクオフという円高要因に加え、より重要なのは、シェール革命でアメリカが石油輸入国ではなくなるばかりか、化学工業を中心に製造業の復活も見られますから、アメリカの景気が良くてもそれが日本を含む世界から見て対米輸出の増加につながるというゼロ年代に見られた現象は期待できないということです。原油安の関係で例えば自動車はアメリカ製の燃費の悪い大型車が売れており、逆に日本車はタカタのエアバッグ問題もあって販売を伸ばせないでいるなどもあり、円安とアメリカの景気を頼りにできない状況にあるということも指摘できます。ゼロ年代のように製造業が国内回帰して景気を持ち上げることは期待できません。

少し補足しますが、人口減少、特に現役世代(生産年齢人口)の減少は労働力の減少を意味しますから、今後投入できる労働力は、かなりハイペースで減少します。その貴重な労働力を公共工事で取られることは、民業圧迫になります。既に昔より待遇が悪くなったバスドライバーは離職率が高く、しかも公共工事関連のダンプドライバーが受け皿になっている現状があります。つまり公共事業を拡大すればバスどらーバー不足で運行を維持できなくなるわけで、既に北海道の夕鉄バスではそのための減便まで起きてますし、都市部の事業者も退職者の嘱託採用や臨時雇用で凌いでいる状況ですから、いずれ同様の事態に直面しバス事業そのものが成り立たなくなる日が来ることを覚悟しなければなりません。

加えて高齢化はリタイアによって現役時代の貯蓄を取り崩す局面ですから、これまで貯蓄性向が高く資本集積が顕著だった日本経済の強みが徐々に失われることを意味します。つまり資本の希少性が高まるわけで、民間が設備投資しようとすると金利が上がるという悩ましい局面にあります。表面金利こそ日銀の異次元緩和で抑え込まれていますが、その実態は民間銀行が日銀当座預金に積み上げた残高で国債を買っているわけで、以前指摘したように民間からの資金の付け替えということになります。営利事業から奪った投資資金を公共事業につぎ込んで非効率を拡大しているわけです。人手不足は事業費を膨張させますから、ますますコストパフォーマンスを悪化させます。

それとアメリカではサブプライム層向けのオートローンやプリペイド携帯しか持てなかった低所得層向けの携帯電話契約などの怪しげな動きもあり、早ければ来年中にバブル崩壊の可能性もあります。きっかけが何になるかまではわかりませんが、油断はできません。マイナス成長に陥った日本経済には大きなダメージとなるでしょう。

ギリシャの政情不安でユーロ圏の方が心配ではないかという見方もありますが、欧州も日本同様原油安は実体経済にプラスですから、直ちに破綻はないと見ます。ユーロの問題は経済問題と言うよりも、日本で言えば地域格差のような政治問題です。ギリシャの緊縮財政がデフレ要因と言われますが、元々ドイツなどよりインフレ率が高かったんですから、通貨統合の結果一物一価に収斂する過程と見ることができます。欧州に関してはロシアの方がリスク要因として大きいと思います。

というわけで、どう見ても明るい展望が開けない新年ですが、そんな年に北陸新幹線と上野東京ラインの開業が控えます。後者はちょっと心配もあります。現在JR東日本アプリにマイ路線として東海道線、横須賀線、京浜東北線、湘南新宿ラインを登録してますが、毎日のように立ち上がります。つまり止まってる^_^;。ここに上野東京ラインを登録したら、端末乗っ取られること間違いありません(爆)。東京メトロ副都心線の東横直通のときのような混乱が予想されますが、半月後に4月の新年度を迎えるきわどいタイミングでの開業となります。ちょっと警戒しといたほうが良さそうですね。


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Sunday, December 21, 2014

さよなら三角処女も逃げ出す空中戦

やや古い記事ですが、こんなのがあります。

羽田国際線拡充 成田存続ルールに綻び(真相深層) 2014/10/3 3:30
通称”成田縛り”と呼ばれる国交省の行政指導ルールです。羽田空港の国際線拡大を受けて、今年春にこっそり決めたもので、羽田国際線就航の条件として、同一国への成田発着便の維持が求められました。法令によらない行政指導ながら、許認可権限を持つ監督官庁に逆らえない民間航空会社は従うしかないわけですが、英国政府からの書簡で思わぬ綻びが露呈します。

全日空(ANA)が3月に就航した羽田―ロンドン線の認可取り消すをちらつかせ、この成田縛り撤回を求めてきたものです。というのも、ANAと個別提携でコードシェアしていたヴァージン航空が成田―ロンドン線からの撤退を決めたことで、話がややこしくなってしまったんですね。元々ANAは成田―ロンドン線を羽田―ロンドン線の就航を機に運休しています。そしてヴァージン自身も羽田就航を希望しながら、自力で羽田と成田の2便を運航するのは無理なところですし、原油高と円安で収支が悪化したこともあり、成田から立地面で有利な羽田へ振り替えて欲しかったのが本音ですが、それが叶わず撤退ということで、英政府が乗り出したということのようです。

羽田の国際化で欧州便は大幅に増便されたものの、搭乗率は下がり、特に成田発着便の不振は顕著です。加えて原油高と、ここのところの円安で、収支が悪化しているわけで、それもこれも成田縛りゆえの供給過剰が問題を引き起こしていると言えます。

ロンドン線に関してはブリティッシュ・エアウェイズ(BA)も羽田枠を取得しながら、成田便との共存を嫌って羽田枠を使っていないということもあり、航空交渉がとん挫して宙に浮いているアメリカ便関連9便枠と共に、利用度の高い羽田発着枠が未利用という異常事態ですが、成田空港を抱える千葉県選出の国会議員からクレームがつくことを恐れて国交省は動きません。かくしてヴァージンの成田―ロンドン線は来年1月をもって廃止となります。

というわけで、やはりというか、政治案件なんですね。アメリカ路線も問題を抱えておりまして、最大手もデルタ航空が成田便の縮小を発表しました。

原油安で絶好調のデルタ 進む日本離れ 米州総局 稲井創一2014/12/17 10:11
最近の原油安で航空会社の収支は全体的には改善に向かっていますが、こと日本に関しては、円安による路線収支の悪化が重荷になっており、また羽田枠が事実上使えない中での判断です。とりあえず減便はないものの、機材の小型化と路線んの短距離化で収支を合わせるもので、大型機材の長距離路線は主に韓国の仁川に振り替えることになります。歴史的遺産として成田枠の以遠権付きの破格の条件は保持しつつ、同一アライアンスのスカイチームに属する大韓航空の拠点でもある仁川の方がデルタにとってはメリット大きいようです。加えて日本と逆にウォン高が追い風で、また熱心な誘致活動もデルタを動かしたようです。

というわけで、今や日本は黙っていても向こうから来てくれる国ではなくなっているわけですが、政府も航空関係者もその認識が乏しいようで、大丈夫かいなというのが正直な感想です。もちろん羽田と成田の棲み分け問題は簡単ではありませんが、そういったドメスティックな事情に引き摺られて世界から見放されることをどう考えているのでしょうか。空港の棲み分け問題は基本的には着陸料で差をつけるなどで航空会社に自由に選ばせるのが望ましいので、現状のように成田縛りのような不透明なルールで結局盛況の羽田線も枠が埋まらないというのは、国家的損失です。

で、最近の航空関連ではやはりスカイマーク(SKY)の話題が多いのですが、JALとANAの二股提携というけったいな話になっております。SKYとしては資本関係を求めないJALとの提携を望んでいるのですが、やはり与党筋からのクレームを恐れてANAも提携協議に加わるというわかりにくい話になっています。SKYの羽田枠36便の座席の2割を提携先に買い取ってもらってコードシェア便にすれば、とりあえずSKYは確実な収入が得られるわけですが、JALとの提携も元を質せばANAとの協議が資本提携を含むことを嫌ったという経緯があり、36便をJALとANAで取り合うわけですから、すんなりまとまるわけがないですし、むしろANAの立場はSKYが潰れてくれれば国内線枠の再配分でおいしい思いができるということもあるでしょう。交渉を長引かせてSKYの体力を奪うことを狙ってくるはずです。というわけでSKYもなりふり構わなくなってきました。

スカイマーク、鳥取・米子路線の撤退検討 収益改善狙う 2014/12/19 2:00日本経済新聞 電子版
結局追いつめられれば路線の撤退を促すだけで、解決には向かわないわけです。ま、競合のない米子で路線を維持できないSKYも、新規就航のご祝儀で搭乗率が高いうちは良いけれど、それを維持できないというのは、企業として何かが足りないのかもしれません。もちろん地元の支援もないということもあるでしょうけど、支援を得られるような形で地元に根付くことができていないという評価も可能なんで、この辺は微妙です。その間にもエアバスは訴訟手続きに向かいます。
エアバス、訴訟準備通知 スカイマークの契約巡り 2014/12/20付
これ直ちに訴訟に向かうという意味ではありませんが、SKYの対応を見極めつつ、手続きは粛々と進めているという状況です。元々大手との提携を示唆したのはエアバスですから、提携交渉で実を示さなければいつでも追い込むよということなわけで、SKYを潰れるに任せているとも取れる政府の対応には疑問符が付きます。

ここでデルタが仁川に魅力を感じ成田の路線縮小へ向かっていることと、羽田の昼間の国際線枠の配分で日米航空交渉が宙に浮いている状況を思い出しましょう。JALとANAには申し訳ないけど、デルタと提携できればいちばん収まりが良いんですよね。元々外資規制でデルタの資本参加は制限されますが、コードシェアの個別提携ならば問題ありません。それによってデルタの国内線接続が可能になれば、デルタの同意を得て日米航空交渉を動かすことも可能でしょう。国交省は羽田の国際線枠をさらに増やす計画もあり、将来の増便に含みを持たせることで、デルタを懐柔することを考えてみてはどうかと思います。デルタの以遠権は成田に残し、国際線間の乗り継ぎ拠点は成田としておけば、デルタと提携関係の欧州エアラインを引き付けることも可能でしょう。

口を開けば成長戦略という政府ですが、足許のこうした問題を解決に導くことこそ成長戦略であって、企業の御用聞きになって法人税減税や派遣法改悪をしても、富が国民全体に行き渡ることはありません。その意味でJALの救済や羽田の国際化、コンバージョン方式による空港民営化に道筋をつけた民主党政権の方が、地味にちゃんと仕事したと思います。ホント選挙なんかやってる場合か。

とはいえ今回の選挙では敢えて民主党には投票しませんでした。というのも、稲盛氏を三顧の礼で迎えてまで取り組んだJAL救済も、政権を失ったら見殺し状態とは情けないです。こういう問題で政府に論戦を仕掛けることは、国民の共感を呼び覚ますことはもちろん、再建を成し遂げた稲盛氏に対しても非礼です。尖閣問題で冷静な対応を呼びかけた前中国大使の丹羽氏に対しても、結局守ることができなかったりですから、仮に政権に返り咲いたとして、協力してくれる民間人が現れるかというのはちゃんと考えてほしいです。

報道によれば落選して代表を辞任した海江田氏に代わる代表選びで、自主再建派と野党再編派の対立が言われていますが、残念ながら現状の民主党の実力では自主再建も野党再編を仕掛けることも無理です。09年総選挙に至ったプロセスを思い出してほしいんですが、政府の様々な政策に対して、国会論戦を通じて問題点を暴き出し野党の役割に徹することこそが近道と知るべきです。

当然現政権が推し進める公共事業の大盤振る舞いや整備新幹線の建設前倒し、それに関連したJR九州の株式上場など、おかしいということを言うべきですし、逆に都知事の交代で進めやすくなった東京メトロの民営化を後押しするなど、政権時代の積み残しとして頑張ってほしいところです。

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Sunday, December 14, 2014

汗っかきと油売り

日本が選挙で大騒ぎしている間に、世界は様変わりしています。原油安がアメリカの信用収縮を引き起こすという流れですが、2012年のQE3を始点に始まった世界規模のリスクオン相場が終焉を迎えた模様です。

米で原油安・株安が加速 NY株、終値315ドル安:日本経済新聞
先日OPECが価格維持のための減産を見送った結果、原油価格は60ドル割れとなり、サウジなど埋蔵量が豊富で開発が早かった=固定費負担が少ない地域と違って、技術革新で掘削設備の初期投資が嵩む米シェールオイル(厳密にはタイトオイルですが、便宜的にこう呼びます)の優位性が損なわれているわけですが、逆に初期投資が大きいだけに簡単に減産できず、むしろ生産を続けて資金回収に走らざるを得ない状況にあります。シェールオイルの損益分岐点は1バレル50-80ドルですから、既に赤字操業の油井もありますが、シェール革命を担う企業が中小企業であり、銀行や投資家から資金を集めていて、既に金融筋は資金回収に動き始めたということで、ダウ工業株が石油関連中心に売り込まれて相場を押し下げました。

今回の原油安は長引くと見られております。理由は新興国の成長減速があります。中国の成長鈍化に留まらず、原油安自体がブラジルやロシアなどの資源国に打撃になります。またFRBのQE3終了やウクライナ問題での対ロ経済制裁や、イスラム国の台頭に伴う混乱(トルコなど)と、国ごとに事情は違いますが、QE3 の緩和マネーがシェール革命に沸くアメリカへ還流される流れがあった中での原油安ですから、余剰資金は株式から債券へ、特に安全資産の国債へという流れになります。所謂リスクオフが始まったわけですね。

通常ならば日米金利差が縮まって円買いドル売りとなり、円高となる局面ですが、日銀の異次元緩和が効いているようで、極端な戻りにはなっておりませんが、円安の動きが止まると見ることはできます。特に直近の動きが急だっただけに、為替が安定すればそれはそれで良しとすべきでしょう。世界は汗っかきよりも油売りに微笑んでいます。

原油安自体は輸入国にとってはグッドニュースですが、こうした負の連鎖がなぜ生じるかといえば、そもそもOPECの価格支配力の低下があります。かつて世界の石油生産量の5割に及んだOPECですが、80年代北海油田の操業開始でシェアが低下したときに、シェアを維持するために増産してやはり原油価格が急低下したんですが、この時のショックで旧ソビエトの石油収入が激減し、東西冷戦終結のダメを押しました。

その後サウジを中心に意図的な増産や減産で原油価格を操作してきたOPECですが、減産して価格を釣り上げてもロシアやメキシコなどの非OPEC産油国を利するだけだったり、OPEC加盟国のインドネシアが資本蓄積が進んで国内消費市場が成長局面になり、結果的に国内消費量が増えて産油国から脱落し、OPEC脱退という具合にシェアを落とし続け、現在世界の石油生産量の1/3まで後退しています。

国別生産量もサウジアラビアがロシアの台頭でトップの座を譲り、加えてアメリカのシェール革命でアメリカがロシアを抜いてトップに立ち、石油輸入国ではなくなりました。当然国際石油市場の需給に変化が出るわけです。そもそもリーマンショックで原油価格が高騰したことがシェール革命に追い風だったわけですが、革命の進捗と共に需給が緩み、今の事態を呼び込んだわけです。だから原油安はメデタイと手放しでは言えないわけです。グローバル資本主義体制は閉鎖系ですから、開放系を前提とする従来の経済理論では説明のつかないことが度々起こります。1バレル40ドルあたりが底値と見られますが、しばらくは値下がりが続くと見られます。

てことで日本ですが、8日の7-9月GDP改定値が下方修正と話題になりました。ま、修正幅は小さく、大勢に影響はないんですが、同時に4-6月期はマイナス6.7%と若干の上方修正もありました。均せばトレンドは変わっていないということです。注目すべきは昨年10-12月期が前期比マイナス1.6%だったわけで、2012年11月以来の景気上昇局面は終わっていたと見るのが素直な見方でしょう。今年に入って1-3月期は消費税増税による駆け込み需要が盛り上がったために、既にピークアウトして下降トレンドに入ったことを見逃したということですね。で、4-6月期に反動減の後、回復軌道に乗るのではなく、隠れていた下降トレンドが顕在化したってことですね。QE3の終了を待たずに失速したアベノミクスは幻です。景気回復期待で与党へ投票した皆さん、残念でした。

で、選挙報道に占拠された^_^;日本のメディアですが、ペルーのリマではCOP20開催中です。今回アメリカと中国が努力ほくひょうではありますが、自主的に削減目標を出してきたという意味で、合意の期待もありますが、会議は紛糾し、延長して続いています。先進国と途上国の対立は相変わらずですが、2大排出大国が削減に舵を切ったことは前進ではあります。

COP20、共同議長案に途上国反発 被害軽減策求める:日本経済新聞
米中両国共にCO2排出量の多い石炭火力のリプレースに主眼があります。アメリカはシェール革命で激安になったガス火力へのリプレースは国内資源へのシフトの意味もあり、経済的負担が低いですし、中国の場合は深刻な大気汚染対策の意味合いもあり、いずれも大国の都合と言ってしまえば身も蓋もない状況で、具体的な補償を求める島嶼国などの反発を抑えられない状況です。しかし自主目標すら打ち出せない日本よりはマシではあります。そんな日本では石炭火力の新設すら計画される一方、こんなニュースは世界からどう見られるか。
「再エネ」最大限導入へ、問われる国の本気度 | 企業戦略 | 東洋経済オンライン
所謂九電ショックですが、論点はいろいろありますが、記事にない視点としては、太陽光の定格出力の合計がピーク需要量を超えると言いますが、太陽光の特性としてピーク出力でも定格出力の7-8割ですし、また立地によってピーク自体がずれるので、定格出力の合計にさほどの意味はありません。逆に一部でトラブルが発生して発電が止まっても、原発のような大規模な影響は出ないわけで、将に分散電源のメリットなわけで、それを理解せずに接続拒否はいただけません。原発のような集中電源とは需給調整の考え方自体が違うわけです。おそらく認めてしまえば原発再稼働が遠のくという判断でしょうけど、再エネ率2%の段階でこれでは、本気度が疑われます。というわけで、COP20の報道が極端に少ないのですが、まさかだから選挙をぶつけたか?

少し気候変動から離れますが、製造業の今を象徴するニュース2本並べます。

考える工場 ドイツから新産業革命 製造業ネクスト(1):日本経済新聞
ニッポン次世代工場、コンパクトラインのすごみ 日経ものづくり編集委員 木崎健太郎
ドイツと日本の次世代製造業の姿が対照的に異なります。ドイツはInternet of Things(IoT)を工場のライン編成まで含めて人工知能(AI)で自律的に調整し、需要変動に柔軟に対応しようというもので、前提として複数部品を集成したモジュールを組み合わせて最終製品をロールアウトさせるというもので、異業種も含めて世界中の多数の工場が連携し、製造ラインを形成するというも大胆なものです。実現すれば世界規模の全自動工場となるわけですが、同時に世界中に工場が立地し、需要に対して供給力が過剰であることを利用して、需要の変化に素早く対応する、つまり世界中の工場を稼働させたり休ませたりして最適化するという壮大な発想です。そのために機械同士をネットで繋いで、人を介在させないわけです。

一方日本ではセル方式による製造ラインのコンパクト化です。セルでアルミ鋳造から削正、組み立てまで一貫して作業ができ、少量生産に向くという触れ込みですが、要は固定費の削減で少量生産に対応しようとするもので、正直コストダウン発送が目立ちます。いすれも自動化により雇用が機械に置き換えられるという意味で製造業の雇用創出能力は大きく失われます。人は主にマーケティングを担当する形となり、求められるスキルが変わるということになります。気になるのはドイツ式がグローバルな余剰生産能力を前提として、付加価値を生み出そうとある意味攻めているのに対して、日本方式は利益確保のためのコストダウン発想が強い気がします。どこかグローバル経済の現実をつかみ損ねている気がするのは気のせいでしょうか。

この辺気候変動問題にも通じる袋小路感を拭えません。ま、それはそれとして、気候変動問題では現状手つかずの交通分野での排出削減問題では、鉄道王国の日本に出番はあると思います。ただし難しいのは、交通は需要のマネジメントが難しいという問題があります。例えば新幹線のような高速鉄道ですが、単体のエネルギー効率は高いものの、需要との見合いは難しいところで、元々需要の強いところでしか事業化できないとか、原理的にスピードアップは可能ですが、その分電力消費も高まり、結果的にエネルギー効率を下げる場合もあるなどもあり、例えば欧州では300㎞/h超の高速域の営業運転は足踏みしており、むしろ都市間輸送よりも都市近郊輸送の高速化(200-250㎞/h程度)への取り組みが見られます。日本のもいつまでもフル規格新幹線ではなく、ほくほく線方式のスーパー特急を見直した方が良いのではないかと思います。気候変動を含む環境問題は、グローバル経済で数少ないフロンティアでもあります。

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Sunday, December 07, 2014

ラインのひみつ

いやLINEぢゃなくてラインのひみつです。来年3月の上野東京ライン開業ですが、駅貼りポスターでの告知も始まり、東京近郊区間路線図に紫ライン(上野東京ライン?)の入ったニューバージョンがリリースされるなど、準備が着々と進められています。

ただ素朴な疑問ですが、上野東京ライン自体は東北本線に属する東京―上野間の線増(列車線復活)なので、起点側から東京上野ラインが正しいのでは?という疑問があります。まぁ愛称としての線区名称ですからどちらでも良いんですが、最近ライン好いている東武鉄道の影響説を披露いたします。

東武鉄道がとうきょうスカイツリーの開業に合わせて業平橋駅をとうきょうスカイツリー駅に改称し、併せて伊勢崎線、日光線の近距離区間(浅草/押上ー久喜/南栗橋)をスカイツリーラインと呼ぶようになりました。伊勢崎線も日光線も一部を除いて久喜と南栗橋で運転系統を分割してますから、実態に合わせたということでしょうけど、東武らしからぬ感はありました。

少し先行して京成が北総ルートの成田空港アクセス線を成田スカイアクセスと命名したのに刺激されたのかもしれませんが、こちらは第二種鉄道事業区間となる京成高砂―成田空港間で、正式線区名称は成田空港線で、運賃の異なる京成本線(上野―空港第2ビル/東成田)と2ルートを案内するという目的の違いがありますが、東武の場合線区名称として案内表示や放送まで他社線からのそれも含めて徹底されているところに、そこはかとなく「違和感を醸します。

そして野田線をアーバンパークラインと命名し、スカイツリーラインと同様に徹底案内した結果、違和感大爆発(笑)で地元からも不評が聞こえるようになり、そんな地元民の抵抗の表れか、スカ線、アーパー線などと略されるようになりました。E電でこけたことのある(笑)JR東日本はそれを見逃さなかったのです。東京上野ライン、略して東上線と呼ばれる恐怖(笑)から、上野東京ラインになりました[嘘]。東上線は恐怖なのか(笑)。というわけでネタでした^_^;。

東京近郊区間にさらに羽田空港アクセス線が書き込まれるのでしょうけど、紫ラインを分岐させるのか、別のラインカラーの線が加えられるのか、興味は尽きません。その羽田空港を巡る話題としてスカイマーク(SKY)の羽田発着枠を巡る問題は既に指摘してますが、選挙で微妙なことになっています。

JALとの提携に横やりで暗雲漂うスカイマーク再建|inside Enterprise|ダイヤモンド・オンライン
SKYの資金繰りは相当苦しいし、コードシェア2月スタートを希望しており、逆算すると年内には結論を得る必要がありますが、国交省は選挙期間中は判断しないとしています。下手打ってANAが反発したりして揉めれば選挙にも影響するということでしょう。そうこうしている間にもSKYの資金繰りは日々悪化していて、最悪倒産もあり得ます。ま、そうすれば羽田の国内線36便枠が再配分されるわけですが、またぞろ傾斜配分ってことになるのは目に見えてます。

ロビー活動してパーティー券買ってくれる企業ばかり優遇して利用者は置き去りです。ホント無意味な選挙はやめてほしいです。またそういった政治判断ではなく、利用者の利便性を重視してほしいのですが、現政権の下では国交省は楯突くことはできないようです。一応内閣はラインの上位にありますから。

とすると一部経済評論家が言う「安倍首相は増税を既定路線とする財務省と闘っているんだ」というのが意味不明になります。財務省も国交省のように黙らせれば良いんですから。まして現状は2012年の増税法案が有効ですから、増税延期を織り込んだ新法を国会で成立させる必要がありますから、選挙してる暇に改正法をまとめて国会に提出する必要があります。もちろん法案作成に協力しないという形で官僚がサボタージュしてるんでしょうけど、増税の延期だけなら該当箇所の修正だけですから、議員立法でもできるはずです。内閣も与党も仕事する気ないっつーこってすわ。

そんな安倍政権が本気でやった仕事が特定秘密保護法の強行採決ってシャレにならないですね。しかもその効果にも疑問がもたれています。そもそも自衛隊イージスシステム情報漏えいや尖閣ビデオ流出、公安の国内イスラム教徒個人情報漏えいなどがきっかけですが、いずれも日本の官僚機構の情報管理の甘さが原因なのに、特定秘密情報を取得した民間人を罰するという建て付けの法律で、何が特定秘密かは明かされないというもので、実際にダメージの大きい政府中枢からの情報漏えいは防げません。むしろ秘密情報が希少で高く売れる状況は不正の温床にもなります。尚、集団的自衛権行使に関しては、現時点では法的に無効ですが、形式的にでも法制化されれば、集団的自衛権の行使の判断自体を特定秘密にすることで、国会への開示すら免れるわけです。憲法を無力化したという意味で、ナチスドイツの全権委任法に匹敵する悪法です。

一方で忘れられている気候変動枠組み条約締約国会議COP20がペルーで開催されてますが、日本では原発停止を口実にCO2排出増を放置し、2013年以降の京都議定書延長を拒否して離脱してしまいました。その間にアメリカのシェール革命や中国をはじめとする新興国の成長鈍化もあり、皮肉なことにCOP14で議論をぶち壊した中国とアメリカが歩み寄って独自に削減目標を出すという事態に至り、日本は取り残されています。正確に言えば日本に倣って議定書から離脱したロシアやカナダも同様ですが、ここへきてOPECによる逆オイルショックが世界を揺さぶります。

OPEC、価格支配力に陰り 原油安長期化も
2014/11/28 1:41日本経済新聞 電子版
80年代にシェア維持を目的とした同様の動きがありましたが、今回はアメリカのシェール革命潰しだろうとか、ロシアやカナダなどの非OPEC産油国へのけん制などと言われますが、ぶっちゃけリーマンショック以来の需要低迷を止めたかったというのが本音でしょう。ドル高局面ですからドルベースでの減収は緩和されるということもあります。シェール潰しは、そもそもアメリカのシェール革命が採掘技術の革新によるもので、過去に開発費の負担はあったものの新規開発が進めば開発費負担も逓減するわけですから、1バレル40ドル程度までは持ちこたえるとされています。

最も影響を被るのがロシア、メキシコ、カナダなどの非OPEC産油国ということで、ウクライナ問題を抱えるロシアは特にダメージが大きいと見られますが、むしろルーブル安と共にオランダ病克服のきっかけになるかもしれません。そんな中で円安の影響と長期契約による高値掴みで原油安の恩恵をあまり感じられないのが日本です。しかもミザリーハロウインの黒田バズーカで円安が加速中というから笑えません。当の黒田総裁はインフレ目標2%の達成に原油安がブレーキになると危惧しての追加緩和というわけですから、全く余計なことをしでかしたわけです。財務省出身の黒田氏は国民を見てませんね。アベノミクスは間違いなく日本の衰退を速めています。

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