日本銀行とリフレ派となかまたち
参議院議員の山本太郎議員が生活の党に入党し、党名を「生活の党と山本太郎となかまたち」に改め、議員5人で政党要件を満たすことになりました。まるで冗談みたいな党名ですが、党代表ではない個人名を含む党名は公職選挙法上禁止されておらず、地方区選出なので、当人が比例区に立候補しない限り問題ないそうです。次の参院選では比例区候補を立てれば、「山本太郎」や「なかま」の票が有効票になるというきわどい裏ワザですが、政党要件を満たせば政党助成金の交付を受けられるに留まらず、政見放送、比例区立候補、個人献金の税控除などではるかに政治活動がやりやすくなります。なるほど小沢一郎氏は戦い方を心得ているというか、既得権者に嫌がられるわけです。政権の暴走を止める存在になることを期待したいところです。
てなわけで、いろいろあった2014年もあとわずかです。経済は明らかに下り坂です。で、地方創生と称して統一地方選に向けて3.5兆円の補正予算でバラマキが行われます。これGDPを0.7%押し上げるそうですが、日本のGDPが500兆円規模ですから、単純に金額で比率をはじいただけというお粗末。消費税率アップを回避したんだから、本来国債発行額を減らせばよいのですが、使い切るということですね。こんなんじゃ財政再建は永遠に不可能です。
とはいえ沖縄知事選でも衆院選小選挙区でも負けた政権与党の焦りも見逃せません。自民党の議席が伸びなかった原因の一つに、0増5減の定数是正の影響もあります。区割りの変更で候補者を絞れず分裂選挙になるばかりか、有権者も馴染みの候補がいなくなって投票をしなかったために、都市部より投票率が低くなるという珍事が起きています。
なるほど地方に強い自民党にとっては、定数是正はマイナスでしかないわけで、一票の格差是正をやりたがらないわけです。逆にこの辺は今後の野党の攻めどころにもなりますが。沖縄では振興策の減額とあからさまな報復で、小物ぶりを発揮する安倍首相です。特に沖縄は47都道府県中、唯一出生率が高く人口ボーナス期にあるところなので、振興予算よりも基地の縮小によって自律的成長ができる地域です。普天間の国外、県外移設はその意味で合理的なのですが、鳩山政権で腰砕けとなりました。補助金で地方を縛る政策は限界にきており、来年の統一地方選でも造反自治体が出ることは避けられないでしょう。
で、アベノミクスの三本の矢とやらですが、7-9月期のGDP成長率が2期連続のマイナスということで、失速は明らかです。四半期GDPの2期連続マイナスとなりました。消費税増税の影響が言われますが、少し違った視点から見てみます。日銀がインフレ目標で参照するコアCPI(消費者物価指数)は一応プラスでは推移してますが、円安による輸入物価の上昇の寄与が大きかったわけで、だから想定外の原油安で輸入物価が下がるのが困ると日銀は考えたわけですね。しかし物価をGDPデフレーターで見ると、違った景色が見えます。
日本の14年7-9月期GDPデフレーター:前年同期比(表)見にくくて申し訳ありません。表の中央付近――デフレーター――の文字の直下の数値が、2005年を基準年とする四半期GDPデフレーターの数値です。前期との数値の増減を見ていただきたいんですが、今年の4-6月期に増加したほかはほぼ90前後で横ばいです。GDPデフレーターは名目GDPから実質GDPを求めるために物価の影響を取り除くための指数で、以下の数式で定義されます。
GDPデフレーター=100*名目GDP/実質GDPつまり名目GDPを実質GDPで割って100を掛けて指数化したものですが、項を入れ替えれば名目GDPをGDPデフレーターで割れば実質GDPが求められるわけですね。日本ではGDP統計の部門別推計値の段階で物価推移を加味した実質の推計値も算出し、部門合算の二次推計値で出た名目と実質の値から逆算されます。つまり誤差範囲を含むので、全体のトレンドに注目するのが正しい見方ですが、異次元緩和に関わらず実質的に物価はほとんど動いておらず、4-6月期の消費税の転嫁分だけが際立つ結果となりました。まGDPデフレーター自体はその算出方法もあって、付加価値の増加にフォーカスした推計なので、元々輸入物価の変動の影響を受けにくいのですが、同時に輸入物価の上昇にも拘らず、上昇分を価格転嫁できていなかったことも意味します。つまり実質的にデフレは続いているということです。異次元緩和の意義が問われますが、当事者からの貴重な証言もあります。
量的・質的金融緩和の論点 「レジーム転換」が効果発揮 岩田規久男 日本銀行副総裁 :日本経済新聞
レジームチェンジの視点からみようとしなければ「予想(期待)に働きかける」という政策効果の波及メカニズムは、その出発点から否定されてしまう。日本経済新聞に掲載された岩田副総裁の論文で、その一部を引用しました。ここで言う「レジームチェンジ」とは、日銀の政策目標を金利から「予想(期待)に働きかける」ことへ転換することの意と読むことができます。つまり信じなければ否定されるということで、これを科学と呼ぶのは躊躇されます。効果を疑問視するのは信じないからということで、STAP細胞級のトンデモ系のカルト科学です。呆れますね。
まとめますと、物価上昇を目的とするならば、金融緩和よりも消費税アップの方が効くという冗談のような現実を示します。増税とインフレは別の現象だろうというツッコミが来そうですが、増税もインフレも所得移転という本質は変わりません。インフレ税という言葉があるぐらいで、財政赤字が慢性化した政府が最後にすがるのがインフレです。ですから、巷間言われる4月の消費税アップで経済が失速したというのは、必ずしも正しくありません。汗っかきエントリーで指摘したように、景気拡大期は既に昨年10-12月期に終わっていたと見るべきでしょう。インフレは良くて増税はダメというのは矛盾した話です。
ただし原油安は実体経済にはプラス要因ですから、マイナス成長自体は持ち直す可能性はありますが、リスクオフという円高要因に加え、より重要なのは、シェール革命でアメリカが石油輸入国ではなくなるばかりか、化学工業を中心に製造業の復活も見られますから、アメリカの景気が良くてもそれが日本を含む世界から見て対米輸出の増加につながるというゼロ年代に見られた現象は期待できないということです。原油安の関係で例えば自動車はアメリカ製の燃費の悪い大型車が売れており、逆に日本車はタカタのエアバッグ問題もあって販売を伸ばせないでいるなどもあり、円安とアメリカの景気を頼りにできない状況にあるということも指摘できます。ゼロ年代のように製造業が国内回帰して景気を持ち上げることは期待できません。
少し補足しますが、人口減少、特に現役世代(生産年齢人口)の減少は労働力の減少を意味しますから、今後投入できる労働力は、かなりハイペースで減少します。その貴重な労働力を公共工事で取られることは、民業圧迫になります。既に昔より待遇が悪くなったバスドライバーは離職率が高く、しかも公共工事関連のダンプドライバーが受け皿になっている現状があります。つまり公共事業を拡大すればバスどらーバー不足で運行を維持できなくなるわけで、既に北海道の夕鉄バスではそのための減便まで起きてますし、都市部の事業者も退職者の嘱託採用や臨時雇用で凌いでいる状況ですから、いずれ同様の事態に直面しバス事業そのものが成り立たなくなる日が来ることを覚悟しなければなりません。
加えて高齢化はリタイアによって現役時代の貯蓄を取り崩す局面ですから、これまで貯蓄性向が高く資本集積が顕著だった日本経済の強みが徐々に失われることを意味します。つまり資本の希少性が高まるわけで、民間が設備投資しようとすると金利が上がるという悩ましい局面にあります。表面金利こそ日銀の異次元緩和で抑え込まれていますが、その実態は民間銀行が日銀当座預金に積み上げた残高で国債を買っているわけで、以前指摘したように民間からの資金の付け替えということになります。営利事業から奪った投資資金を公共事業につぎ込んで非効率を拡大しているわけです。人手不足は事業費を膨張させますから、ますますコストパフォーマンスを悪化させます。
それとアメリカではサブプライム層向けのオートローンやプリペイド携帯しか持てなかった低所得層向けの携帯電話契約などの怪しげな動きもあり、早ければ来年中にバブル崩壊の可能性もあります。きっかけが何になるかまではわかりませんが、油断はできません。マイナス成長に陥った日本経済には大きなダメージとなるでしょう。
ギリシャの政情不安でユーロ圏の方が心配ではないかという見方もありますが、欧州も日本同様原油安は実体経済にプラスですから、直ちに破綻はないと見ます。ユーロの問題は経済問題と言うよりも、日本で言えば地域格差のような政治問題です。ギリシャの緊縮財政がデフレ要因と言われますが、元々ドイツなどよりインフレ率が高かったんですから、通貨統合の結果一物一価に収斂する過程と見ることができます。欧州に関してはロシアの方がリスク要因として大きいと思います。
というわけで、どう見ても明るい展望が開けない新年ですが、そんな年に北陸新幹線と上野東京ラインの開業が控えます。後者はちょっと心配もあります。現在JR東日本アプリにマイ路線として東海道線、横須賀線、京浜東北線、湘南新宿ラインを登録してますが、毎日のように立ち上がります。つまり止まってる^_^;。ここに上野東京ラインを登録したら、端末乗っ取られること間違いありません(爆)。東京メトロ副都心線の東横直通のときのような混乱が予想されますが、半月後に4月の新年度を迎えるきわどいタイミングでの開業となります。ちょっと警戒しといたほうが良さそうですね。
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