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Sunday, January 18, 2015

スイスショックで慌てふためくのは

いや意外でした。経済遊蕩国スイスの乱で世界は慌てています。

スイスフラン、対主要通貨で急伸 無制限介入終了で :為替概況 :為替・金融 :マーケット :日本経済新聞
元々スイスは対ユーロで1スイスフランを1,2ユーロと上限設定した上で無制限介入を宣言していました。当時日本も円高対策として為替介入を繰り返しておりましたが、効果は限定的で、スイスを見習えという声もありましたが、経済規模の違いを無視した議論です。

便宜上現時点の為替相場に基づくドル建て評価ですが、日本のドル建てGDPは約4兆ドルで輸出依存度1割台、対するスイスのドル建てGDPは約6,500億ドルで輸出依存度5割以上です。輸出依存度が高く、しかも対ユーロ圏向けが多いわけですから、対ユーロの為替相場が生命線です。米欧アジアと広範囲に貿易する日本とは違います。加えて輸出依存度は低くても、日本の方が輸出の絶対額は大きいわけで、故に為替介入で少し相場が動いても、影響は世界規模になる分、風当りは強いわけです。スイス国立銀行(SNB)は無制限介入実施に当たってはECBと綿密な打ち合わせをしており、またスイス自身もEU加盟を一応課題としている状況もありますので、日本とスイスでは前提条件が違い過ぎるということです。

蛇足ながら通貨ユーロはあくまでもEUの市場統合を前提として通貨統合を先行させたもので、実際の通貨発行は各加盟国の中央銀行が担い、その代表が集まってECBで共通の金融政策を行うという建て付けで、厳密に言えば各国で発行する通貨ユーロは別物で固定相場となっているという見方も可能で、実際加盟国ごとにインフレ率の違いもありますがTARGET2と呼ばれるクロスボーダー決済システムにより、見かけ上単一通貨となっているという矛盾も抱えており、スイスフランが無制限介入でユーロにペッグすること自体は、この観点からは不自然ではありません。

またこの無制限介入は口先介入の要素もあり、当局の姿勢を示すことで投機的な動きを封じるという面もあります。ですから宣言後暫くは少額の介入に留まっておりました。またマイナス金利政策で資金流入を抑え込むことで併せ技としているなどしているわけですが、長く続ければ介入資金は拡大の一途で外貨準備ばかり膨れ上がるわけですが、このところのユーロ圏経済の軟調によるユーロ安で、SNBの含み損が拡大したことに加え、ECBが量的緩和に踏み込めば更にユーロ安となるという状況下で、政策の継続性を持てなくなったということでしょう。金より堅いと言われるスイスフランの絶対的信用力を失うわけにはいかないというわけですね。小国故にアメリカや日本のような無節操な金融政策はとれないわけです。

ユーロの軟調は原油安、ウクライナ危機、中東イスラム国の脅威などこのところ集中的に起きています。原油安はアメリカのシェールオイルよりも開発費が嵩む一方、埋蔵量は限りがある北海油田のコスト高を直撃しますし、ウクライナ問題での対ロ経済制裁は経済的に重荷ですが長引いてますし、ここへきてギリシャの政情不安でギリシャショック再びという状況にあります。シャルリ・エブド事件がきっかけとなり、対イスラム国軍事行動も踏み込まなければならず、平和の配当はおあずけと、マイナス要因てんこ盛り状態ですから、ECBのQE実施の如何を問わずユーロは下がる局面というわけです。異次元緩和でダメを押した円相場も円高へ反転、所謂リスクオフへと世界はシフトしているわけです。

というわけで、世界中のFX業者は青ざめている現状ですが、スイスにしてみれば経済絶好調でフラン高も許容できる局面ということもあります。元々SNBのインフレ目標は2%ですが、ここのところのインフレ率が12年マイナス0.7%、134年マイナス0.2%と所謂デフレ状態で、14年予測0%、15年もマイナス0.1%を見込む中、14年7-9月期にはGDP成長率年率換算プラス2.7%と力強い成長を続けています。このあたりも日本と大違いです。つまりSNBはこれ以上無制限介入を続ける理由がないわけで、その結果FX業者が何社潰れようが、自国経済と通貨の信認の方が大事というわけです。

この辺はアメリカFRBのQEにしろ、日銀のQQEにしろ、経済規模の小さい新興国を中心に不満や批判の声は多いんですが、日本のメディアではほとんど伝えられません。今回先進国とはいえ経済規模は決して大きくないスイスが世界を翻弄したわけですが、ドラギ総裁就任以来、通貨の番人としての強面を脱いだようなECBのQE導入観測が引き金を引いたと見れば、やはり大国のご都合主義と見ることが可能です。またアメリカを中心にタックスヘイブン規制の議論が起きており、マネーロンダリング防止を口実にスイス伝統の銀行の守秘義務に穴をあけられた経緯もあります。経済好調とはいえスイス自身も曲がり角ではあります。

というような、景気の良い話を2014年のGDP成長率がマイナス0.5%見込の日本で展開する悲しさですが、総花的にいろいろやり過ぎるために戦略思考ができないのが日本なんでしょう。ユーロ圏の不調ですが、個別に見るとドイツの強さが際立ちます。現状は主に中国の成長減速と対ロ経済制裁の影響で下押しされている状況ですが、ユーロ安は結局ドイツを助けることになりますから、原油安と相まって、いずれドイツが浮上することは間違いないでしょう。そんなドイツの話題がこちら。

「ノーベル賞はいらない」 ドイツ、産業革命4.0の砦  :日本経済新聞
ドイツが国を挙げて推進中のモノのインターネット(IoT)を活用したインダストリー4.0の中心に位置するブラウン・ホーファー研究所が取り上げられてます。特徴は企業横断的なオープン性で大企業から中小企業までその成果を利用し、またお互いのリソースを提供しあいながら、製造業の復権を高次元で実現しようというものです。日本だったら社外秘でとても出せないような情報までオープン化してお互いのリソースを利用し合い、またネットワークに消費者も組み込んで、ウェブでポチった瞬間にオンリーワンのプロダクツの製造ラインが仮想的に構成されロールアウトして配送されるという究極のマスオーダーメードシステムとなるものです。システム制御をAI化してラインの作業者にはタブレット端末で細かな作業指示を行うというスタイルで、現場の雇用が守られるのが特徴です。経済が逆風でもこのように戦略投資を欠かさないドイツの凄味を感じます。

翻って日本はという話になるんですが、異次元緩和でダメを押した円安でも輸出な伸びません。無理もないんで、ゼロ年代の円安局面で製造の国内回帰が叫ばれたものの、シャープの堺工場やパナソニックの尼崎工場をはじめこの時期に行われた国内投資はことごとく失敗して撤退を余儀なくされています。各社が競ってと言えば聞こえは良いんですが、つまるところ自社の技術を過信して他社連携を疎んじた結果、合成の誤謬と言える過剰投資で大惨敗したわけです。果たして日本でドイツのような戦略投資が可能かといえば、他社との連携がうまくできない日本企業では無理でしょう。これは電機業界だけの問題じゃないんですね。

古くは電力の50hzと60hz問題もそうですが、同じ60hz地域でも電力会社間の連系線は貧弱なまま、太陽光の接続拒否という所謂九電ショックが起きました。太陽光偏重のFIT制度の問題もありますが、元々輻射量が多く太陽光発電の立地に適した九州で出力が過剰になることは予想できたことで、会社間の連係線を強化すれば問題なく受け入れられるわけですし、急いで原発再稼働する必要もないわけです。西日本の60hzエリアだけで仏伊スペイン3国分ぐらいの電力消費量はあるわけですから、欧州でできている国家間の連係線整備よりは遥かにハードルが低いのに、お互いの縄張りの相互不可侵を前提とする幼稚な対応は疑問です。同様に風力適地の多い北海道と本州を結ぶ連系線の強化や、中部地区の50z、60hz地域の周波数変換装置の強化で、電力需要の強い首都圏と中部の一体化を進めるとか、やるべきことは山ほどあります。

鉄道の世界でも、東海道と東北・上越の直通は分割民営化でほぼ完全に目がなくなりました。これは輸送量やシステムの違いなどもありますが、政府がインフラ投資の目玉と位置付ける高速鉄道輸出もJR東日本とJR東海で別々に取り組んでいる状況ですが、こんな事じゃ欧州ビッグ3は言うに及ばず、合併で世界一の規模となる中国北車南車連合の背中は遠いと言うべきでしょう。そればかりかICカード乗車券の共通化も、政府が音頭を取っても結局中途半端なままですし、より問題だと思うのは、同じソニーのFelocaシステムを用いながら、敢えてSuicaと別システムをTOICAに与えて接続拒否をしたJR東海の姿勢はひどいですね。

それと世界規模で見ればFelicaシステムは、Google walletでもApplePayでも採用されず、実態としてローカル規格に甘んじています。特にApplePayはクレジットカードと紐付されたユニークなシステムで、後発ながら世界を席巻するポテンシャルを秘めております。これが世界標準になったら、一定数存在するApple嫌いも渋々iPhon買うかも。Felicaを最初から世界標準にする気なら、日本国内で同じFelicaシステムを用いた複数のICカードを生んでしまったことで、カードや端末のコストも上がり、結局初期投資の壁で中小私鉄には波及せず、それどころかJR東日本首都圏でも、久留里線と烏山線は未導入のままです。むしろ今なら車両にwihiアクセスポイント搭載してアプリでチェックイン、チェックアウトで乗車記録を蓄積するというようなシステムを作った方が安上がりかもしれません。

ついでに自動車。トヨタが水素FCVのミライという車を発売しました。そうしないと水素ステーションの整備が進まないということで、赤字覚悟の発売です。しかも関連特許の無償公開まで決めたのですが、これはHEVで結局他社がついてこなかったことが反省点のようです。ホンダが頑張って対抗車種を投入したものの、結局トヨタの特許に抵触しないように苦労したわけで、日産のように最初からトヨタからシステムを買って対応した方が賢かったということです。FCVでGは同じ轍を踏むまいとしているわけですが、へvとFCV美共通して言えるのは、高度な摺合せ技術を要するということで、トヨタのような自動車メーカーの強みを意識したものなんでしょう。尚、現時点では水素供給源は化石燃料で、水素生成時にCO2を排出しますし、水素自体が危険物で取扱い上の制約もあるなど課題は多数あります。この辺リニアのネガティブ情報もそうですが、新しい物には良いことしか語られないという点、かつての原発を彷彿させるものがあります。

けれどクルマを巡る環境はだいぶ変わってきており、特に自動運転車がここまで進化すると、クルマの概念自体に変化が出る可能性があります。正直申し上げますと、トヨタのミライよりはアメリカで公道テストが始まったGuogleCarの方に未来の可能性を感じてしまいます。完全自動運転は法制度の問題もあって時間がかかるかもしれませんが、地域限定の無人タクシーシステムだったら案外早いと見ます。既に人口減少でバス運転士の不足で減便が始まっている現状ですし、また例えばラウンドアバウト交差点のような交通信号のない道路システムを前提に特定の都市エリアを自動運転車専用とすることで、交通信号がなく、それ故ダンゴ運転がなくなり渋滞が解消し、道路の生産性も上がるといような使い方も可能です。ま、それは同時に自動車のコモディティ化で、ファントゥドライブを捨てることでもあり、自動車メーカーから見れば踏み込みたくない領域でしょうけど、それぐらいの変化を見据えないと、生き残れないんじゃないでしょうか。いやはや、新年早々重いテーマばかりで恐縮です。


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Comments

毎度楽しく読ませていただいております。
誤字指摘を二点、「上y法」「陽ybな対応」前のほうは情報ですね。

ApplePayについては微妙なところですね。
本来、NFCで調整取れるところをあえて自社規格のみに限定してるあたりかなり嫌われています。
もともとアメリカではスーパーでのデビット払い時についでに現金をもらう仕組みがあるように、対面販売に使う電子マネーに対する需要は必ずしも旺盛ではないのではないでしょうか。
アップルが嫌われるのは欧州とは逆、自社商品への客の囲い込みが強烈だからであってあれが彼らの持ち味である一定以上の普及は見込めないのではないかと考えます。

Posted by: 幻月 | Wednesday, February 04, 2015 at 01:57 PM

誤字脱字ご指摘感謝いたします。

老眼が進んだせいか、誤字チェックが甘くなっているようです。気をつけます。

ApplePayに関しては、確かに囲い込みが強烈なAppleの企業体質が一番の壁なんでしょう。私自身この歳までApple製品と全く無縁のデジタルライフを送ったことが密かな自慢でもありますので、ApplePayの普及は本心困るんですが^_^;。

アメリカで普及するデビットカードは逆に日本ではほとんど忘れ去られてますけど、スーパーのレジがATM代わりになるわけで、セブン銀やイオン銀のようなビジネスモデルが生まれなかったでしょうし、世界標準の道は一筋縄ではいきませんね。

Posted by: 走ルンです | Thursday, February 05, 2015 at 12:24 AM

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