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Sunday, February 01, 2015

愛死す愛知るダァ一緒

シリア日本人人質事件が最悪の結膜を迎えました。いろいろ考えさせられる事件です。

そもそも湯川氏は8月、後藤氏は11月に身柄を拘束されていました。テロ組織による営利誘拐ですから、当然身代金要求のためのコンタクトはあったわけで、日本政府も把握していたはずです。秘密裡に交渉が行われたのでしょうけど、この段階で取り戻すことはできなかったわけです。だからイスラム国側は身代金目的から政治的駆け引きのカードとして人質の位置づけを変えたというのが、ここまでの流れと見て良いでしょう。

おそらく日本政府は、アメリカの「テロ組織とは交渉しない」というドクトリンを字義通り解釈して対応したと思われますが、その結果状況を悪化させたわけで、人質交換でヨルダン政府を巻き込んだわけで、ヨルダンはサウジアラビアと共にイスラム国掃討の空爆に参加する有志連合に属していて、その足並を乱れさせる狙いがあるのでしょう。これも行き来のあるトルコではなくヨルダンに対策本部を置いたことを逆手に取っているわけで、完全に翻弄されています。

で、アメリカの態度ですが、「テロ組織と交渉しない」というのは、相手が主権国家ではない、つまり対等ではないことが含意されているわけで、その非対称性を公式に表明することで、相手に立場を与えないことが狙いで、人質解放のために秘密交渉まで認めないとは言っていないわけですから、日本が主権国家として人質となった邦人の救出に主体的に努力することを封じるものではありません。またイギリスもそうですが、人質の所在が分かれば特殊部隊を送り込んで強引に奪回するオプションを含みます。その場合、当然相手との秘密交渉で時間稼ぎが必要になるわけですから、公式見解とは裏腹に秘密交渉は行っているわけですね。

ですから特殊部隊を持たず、このオプションのない日本が、アメリカと同じスタンスを表明しても問題は解決しないわけです。というわけで、国家安全保障会議(日本版NSC)を立ち上げたものの、仕組みを作ってもスキルがないわけで、それを暴露してしまったという意味でも大失態というわけです。

この辺のプロセスは現時点では公開できないでしょうけど、施行された特定秘密保護法の下では、事後的な検証も叶わないわけです。今回の失敗も、プロセスが共有されれば、同様の事案でもっとうまくやれるわけですから、その可能性を閉ざす特定秘密保護法は、結果的に日本のインテリジェンス能力を奪うことになることを危惧します。

そもそもイスラム国なる存在を日本政府はどう捉えているのか、政治家の勇ましい発言を聞くと不安になります。相手はテロリストであり主権国家じゃない、このシンプルな原理を理解できていないんじゃないかと危惧します。だからこの非常時にイスラム国という呼称がどうか?アメリカ流にISILとすべきとか、そこまでポチアピールかい-_-;。

ま、確かに呼称の混乱はあるんですが、アラビア語のダウラ・アル・イスラミーアの日本語訳です。日本語で「イラクとシャームのイスラム国」を意味する旧称のイニシャルから、ダーイシュとも呼ばれますが、こちらは良からぬ意味の単語に似ているということで、蔑称のニュアンスがあるようです。これを英語訳した略称がISISですが、シャームというのがシリアおよび地中海東岸地域を指し、レバントとも呼ばれることからISILとも呼ばれます。ただしレバントという単語は複数の概念を表す単語で、訳語として不適切とする専門家もいます。ただいずれの呼称を用いるにしろ出典はほぼ同じで指し示すものも同じなんで、拘らないで良いでしょう。

で、そもそもイスラム国の台頭の背景を考えると、度重なるアメリカの中東政策の失敗に行きつきます。イラク戦争でフセイン政権を排除した結果の混乱であるとともに、チュニジアで始まったアラブの春の挫折、というよりもサウジアラビアやカタールなどで強権的に抑え込んでしまったことで、失望した若者がイスラム国に集まっている現実があります。同様に欧米の格差拡大やイスラムヘイトなどの風潮もあります。それ以上に問題だと思うのが、シリアのアサド政権を排除しようとする周辺国の動きです。

シリアは国土の東半分に首都を始め油田や産業集積などが集中していて、西は砂漠地帯です。とはいえ[ユーフラテスの三日月」と言われる穀倉地帯を含んでいて、イスラム国はその気になれば自給自足で凌ぐ能力があると見るべきでしょう。こうなったのは自由シリア軍などの反政府勢力と対峙するために、シリア正規軍がダマスカス周辺に集められ、守りを固めている状況があります。いわば内戦による権力の空白に居ついたということです。

そして自由シリア軍などの反政府勢力は、アサド政権を排除したいサウジなどの周辺国が兵器や資金を提供して後押ししているわけです。つまり実態は現地調達の傭兵組織のようなものですが、訓練されたシリア正規軍に比べれば弱い存在で士気も低いですから、イスラム国は専ら強い正規軍ではなく反政府勢力を攻撃して兵器や資金を奪い、状況によって兵士のリクルートまでしているわけです。

つまり周辺国が支援する反政府軍に支援すればするほど、その能力はイスラム国の手に落ちるという形で台頭してきたわけです。イラク戦争のようにアメリカが手を出さなくても、原油高で資金を手にした周辺国がアメリカに倣って気に入らない隣国の政権を排除しようとした結果が現在というわけです。ザックリ整理すれば、民主政治の失敗がテロリストを生むと言って良いでしょう。

日本政府が集団的自衛権を行使してイスラム国掃討作戦の有志連合に加わるとすれば、こういった一連の失敗の尻拭いをすることを意味します。それは同時に日本がのっぴきならない当事者になり、泥沼にはまるわけで、日本人がテロの標的として狙われ続けることを意味します。テロで犠牲者を出した現状ですが、手を出すべきではないですね。以前にも指摘しましたが、日本などの先進国ができる最も効果的な対策は、QEを止めて金融を引き締め、産油国経由でテロリストに流れる資金を止めることでしょう。

ことほど左様に現政権の外交政策は出鱈目ですが、内政でも迷走は続きます。

スカイマーク、民事再生法申請へ ファンドが当面の資金  :日本経済新聞
スカイマーク15%減便 新社長会見、共同運航の協議継続  :日本経済新聞
以前のエントリーで予想したSKYの破たんが現実になりました。投資ファンドのインテグラルが手を差し伸べて、運航停止は免れたものの、元を質せば国交省がJALとの提携を認めずANAとの協議を押し込んだ結果です。そしてANAとの提携交渉が早速難航し、西久保前社長が「うちをつぶす気か」と切れたと言います。

そりゃANAにしてみればSKYが破たんして羽田の36便の発着枠が再配分されるのがベストシナリオですから、想定通りです。ANAにししても資本参加を望んでいたとはいえ、20%以上保有すれば持ち分法適用会社としてANAの発着枠にカウントされて再配分となれば痛し痒しですから、SKYには破たんして欲しかったと見るべきでしょう。腐りきってます。

しかし捨てる神あれば拾う神ありで、インテグラルが救済に乗り出したわけです。代表者の佐山展生氏といえば、村上ファンドの買収騒動で揺れた阪神の救済で、阪急の代理人を務めた人物です。人口減少とJRの攻勢で守勢にある関西私鉄ですが、合従連衡は起こらず停滞に甘んじる中で、経営統合を実現できたことは評価されます。あ、私自身はこの経営統合がうまく行くか懐疑的でしたし、統合効果があるかと問われればNoと答えたいところではありますが。

で、エアバスの大型機材の導入を独断専行で決めて、今日の経営危機を招いた西久保社長の解任やA330の運行停止でB737だけの運航へ戻し、大手2社の寡占市場へ独自のポジションを模索する原点回帰を決めたりも、おそらく佐山氏の意向が働いているのでしょう。継続企業の前提(Going concern)を重視し、企業の公益性を考えれば、ワンマン社長は早晩行き詰まる典型というところでしょうか。

加えて言えばイエスマンに囲まれた宰相の独断は国を危うくすると敷衍して言えるのではないでしょうか。そんなアホな政府を頂く日本ですが、民間に優れた人物がいることは救いと言えるかもしれません。

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