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Sunday, May 24, 2015

ジングウ・ファミリア

またしても重大インシデントです。

JR長崎線:わずか93メートルまで…特急同士が衝突寸前 - 毎日新聞
そもそもは下りかもめ19号と上り20号が肥前鹿島駅で列車交換予定だったところ、19号が肥前竜王駅手前で運転士が異音に気付いて緊急停止。異常なしを確認する間に肥前鹿島で交換予定の20号が1駅進んで肥前竜王駅待避線に停止。それを確認した司令員が19号に対して運転再開を指示したものの、19号の停止位置が信号機の真横でしかも停止位置の指令への報告が160mずれていたため、19号の一旦停止を確認してから本線側へポイント転換して通過させる予定が狂い、このような事態になったものです。軌道回路の信号システムの盲点を突くような重大インシデントです。

いろいろな論点がありますが、幹線である重要な長崎本線が肥前山口以西が単線区間になっており、平地の少ない地形もあって複線化も困難ですが、国鉄時代の投資順位の関係もあって、電化はされても複線化は見送られ続け、87年の国鉄分割民営化を迎えます。地方線区でありがちなことですが、民営化後の大規模改良は、本四架橋プロジェクトと坂出、丸亀両市の都市計画の絡みで民営化をまたいで実現したJR四国の高松―多度津間ぐらいのものです。

単線でも使い方如何で生かすことはできますが、そのために所謂1線スルー化という手法が多用されました。元々貨物列車対応で線路用地や有効長に余裕のなる駅構内の土地を利用して、駅本屋側を待避線にして反対側の本線を直線化して通過列車の駅進入時の速度制限をなくそうとしたわけですが、その結果上り列車と下り列車がどちらにも入れる進路構成になっています。必然的に信号とポイントの連動関係は複雑化します。それでも所定ダイヤならば信号現示とポイント転換をパターン化して自動化することもできますが、今回のように緊急停止などで運転整理が必要なケースで、情報の行き違いもあってこうなったわけです。有効長が長かったから衝突には至らなかったものの、きわどいところです。

また肥前鹿島のように元々の特急停車駅では1線スルー化は省かれてますから、19号の緊急停止のない所定ダイヤならば、列車の運行の変更に合わせて手動で進路を構成するようなこともなかったわけです。ヒューマンファクターの入り込む余地が大きくなったわけです。三島会社だけではないんですが、都市間輸送を担う幹線系統で単線区間故に生じる運転取扱い上の面倒な対応は、それだけコストにも跳ね返るわけですから、地方線区でも可能ならば複線化は望ましいところです。再発防止のためには列車選別装置あるいは列車選別機能を内包するATS-Pのような高度な保安装置と首都圏のATOSのような遅延に伴うダイヤ変更で連動関係の変更まで自動化したシステムが欲しいところですが、コスト面でシビアな三島会社では苦しいところ。まして株式上場で全社的にコストダウンの号令がかけられている状況ではなおさらです。何か間違ってますね。

今後は高齢化の影響も視野に入れなければなりませんから、JR九州が必要な人材を継続的に確保し育成できるかどうかも重要です。本来は装置化できるところは装置化していく方が望ましいところですが、逆に地場企業としての求心力を考えたら、本当に苦しいのはJR東日本かもしれません。既に車両や保安装置や饋電システムでメンテナンスフリー化を進めていますが、辛いのは就職先の多い首都圏で求人難の影響を受けやすい上に、現役世代の減少で通勤輸送の比重は下がるかもしれませんが、リタイアした高齢者の移動需要は増えこそすれ減ることは考えにくいところ。運転免許返上なども進むと思われますから、輸送機関としてのニーズの旺盛さは当分続くわけですから、省力化投資にまい進せざるを得ないわけです。そうして生まれた{”走ルンです”^_^;も世代を重ねています。

山手線の次期主力車として量産先行車が登場したE235系ですが、どこがどう新しいのかわかりにくいですね。大きな特徴は従来のシリコン系に代わる次期パワー半導体素子のシリコンカーバイト(炭化ケイ素SiC)素子の採用が挙げられます。シリコン系素子に比べて高耐圧特性に優れていて、高電圧が使える分、抵抗損失が少なく省エネとなる上に発熱が少なくメンテナンスフリーになるわけです。ムーアの法則ではないですが、パワー半導体の分野でもほぼ10年程度で技術革新が行われ世代を重ねる傾向がありますので、それに合わせて新形式を起こすのは合理的といえます。

とはいえ首都圏各線ではE233系が3,000両を超す大所帯となり、置き換える旧国鉄形もほとんど見られなくなりました。一方で特定線区への集中投入が進んだ結果、同一線区所属車の老朽化も同時に進むわけですから、置き換えるときにはまた大量発注が発生するわけです。そしてどうせなら利用客が多い最重要線区の山手線に新車投入すれば、玉突きでE231系500番台をねん出して他線区の輸送改善にもつなげられるわけです。既に1編成が移管された中央総武緩行線への転出が有力でしょう。さらにそこから発生する209系500番台やE231系0番台も、武蔵野線その他への転出と玉突きを繰り返し、北陸新幹線関連で並行在来線切り離し後も残る115系が最終的に淘汰されることになりそうです。

で、電装品の変更はそれに留まらず従来の電動車2両ユニットごとに制御装置という8M1Cの構成を4M1Cで電動車単独ユニットとなったことです。山手線向けはE231系500番台に合わせた6M5Tの編成構成で10号車だけサハE231-4620をサハE235-4620に改称して組み込んでいます。そのため総合車両製作所で開発した軽量化と強度向上を深度化した雨どい位置の高い新構体と外観が異なります。この新構体採用もありますし、系列の総合車両製作所への発注確保の意味もありますので、川崎重工への発注があるかどうかも見物です。川重はJR九州への売り込みをかけているようですが。

電動車単独ユニットなのにパンタグラフは2両に1基プラス編成1基の予備という構成はE233系に準じています。高等戦術でスベった207系900番台を思い出させます。山手線向けは加速度3.0km/h/sが要求されることもあり、E231系500番台と電動車位置や編成構成を踏襲したわけですが、他線区向けでは単独ユニットを生かした奇数電動車編成もあり得ます。またE233系の狙いの一つだったシステムの冗長性も、電動車1両単位でユニットカットできればより深化することになります。当面山手線向け以外が登場する可能性は低いですが、事故廃車が出た時の代替で新造の可能性はあります。多分それより相鉄都心直通線向けの仮称12000系が先でしょう。さて6M4Tか5M5Tか。

それとM単独ユニット化には、置き換えが遅れている地方線区向け新造車と足回りの共通化という副次効果もあります。更にディーゼル車の置き換え目的のハイブリッド車や烏山線のような非電化支線向けバッテリー車などもSiC素子の新システムへ移行できれば、省エネ効果を高められます。現状リゾートトレイン中心で、やっと仙台の仙石東北ライン向けにまとまった投入というレベルで、メンテナンスが困難で、JR北海道などで推進軸折損事故が多発する液体式ディーゼル車の置き換えが進まない状況に風穴が空く可能性はあります。構造規則で電車よりも検査周期が短いディーゼル車の検査周期延長にめどがつけば、一気に普及もあり得ます。大量の車両を抱えるJR東日本にとっては、車両の置き換えに伴うメンテナンスフリー化は効果絶大です。

あとE235系で密閉式モーターの採用が目新しいところですが、技術的には小田急4000系で採用されたもので、次世代モータ―としてメトロで全面採用されている永久磁石同期モーター(PMSM)は採用されませんでした。誘導モーター(IM)の経済性と鉄道車両向きの特性であるすべり周波数特性の活用が狙いでしょう。

PMSMは元々京葉線向けE331系で直接駆動(DDM)用に試用されましたが、トラブルが多かったようです。IMは固定子コイルの回転磁界による誘導電流が回転子に発生するため、熱が出るため、ブロワ―で強制冷却が必要ですが、そのために粉塵対策でフィルターが必要だったり、騒音源だったりという問題があったのですが、密閉状態で熱交換することでブロワ―を省略し静かなモーター音を実現するものです。この辺千代田線・常磐緩行線でE233-2000とメトロ16000の音を比べれば明らかです。これも新形式を起こしたことを契機に採用されたわけです。

というわけで、今後も10年程度をめどに新形式が登場すると思われますが、その時の車両需給や社会的要請を盛り込んだ新車が登場するわけで、趣味的には目が離せないところです。現状悩ましいのは交直両用車必須の常磐線水戸線系統に残る415系1500番台でしょうか。JR西日本がやったように205系あたりに交直機器を移植して改造するオプションはあり得ます。

それでも急速な高齢化に見舞われる環境変化に対して万全と断言できるわけではありません。何故ならば今後の高齢化は首都圏で集中的に起きることが予想されるからです。その意味で気になる首都圏のニュースです。

都に500億円の負担要請 文科相、新国立競技場整備巡り  :日本経済新聞
迷走が続く新国立劇場ですが、遂に2020年のオリンピックに間に合わないということで、スタンドを仮説に屋根を省略してオリンピック後に屋根とスタンドを作るということですが、それに加えて予算の膨張で都に500憶円の負担を求めるとなりふり構わずの状況です。だーかーらー、無理だよってあれほど言ったのに。やーねーwwwwww。

ここまで泥縄の対応をしても、首都圏の高齢化は2020年以降に急速に進みます。工事の作業員の確保は簡単ではありません。かくして延々と工事が終わらない最悪の未来となり、タイトルのジングウ・ファミリアという新たな観光資源が(笑)。ま、深刻さはフクシマ・ファミリアには及ばないけど。あれ、誰か来たようだ。

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