集団的自慰権
いやまったく、集団オナニーみたいな集団的自衛権の論戦はアホらしさ大爆発です。政府提出の安保法制が憲法に抵触するのは明らかですが、「自衛権を主権国家の自然権で個別的も集団的もない」というのがバカバカしい。主権国家はそもそも相互承認に基づくクリティカルな存在であるという基本が理解できていないから、反対派を説得できるわけがない。だから言葉を弄して煙に巻くしかないにしても、政治家がここまで劣化していたのは、国民として責任感じなきゃならないのか。
乗っ取られる主権国家のエントリーで述べましたが、そもそも主権国家は他の主権国家から承認されて初めて主権国家たりうる存在であり、複数の主権国家間の力の均衡で平和が保たれるのですが、ウエストファリア条約を起点とする主権国家同士を規定する国際法は改定を重ねられ、現在に至ります。ですから主権国家に自衛権が自然権として備わっているというのは、それ自体は間違いではないんですが、相互承認の原則に従って相手国の主権を尊重することが含意されており、それを侵害する行為としての侵略戦争を禁止し、万が一の侵略戦争への備えとしての自衛権なんですね。
で、ここまでは個別的自衛権の話で、複数の主権国家を前提とする限り自明ですが、集団的自衛権はこれほど自明ではありません。集団安全保障を司る国際連合の存在を前提とし、侵略戦争に対しては国連安保理決議を経て組成される国連軍が対処することになっていますが、時間がかかりますから、その間に被害国が侵略行為を受け続けることに対して、近隣国が被害国の要請を受けて軍事介入し支援することを指します。
ただし侵略行為自体はそれほど目に見える形で起きるわけではなく、元々火種があって一触即発状態だったりすれば、些細なきっかけで軍事衝突が起きた場合、厳格に加害国と被害国を分けられるわけではなく、最終的には安保理決議でその評価が下るわけですから、場合によっては加害国に与したと見られるリスクもあります。リアルな集団的自衛権行使は、高度な政治判断に基づく見込で動く賭けでもあるわけで、憲法との整合性は取りようがないのが現状です。個人的には集団的自衛権の行使自体はあり得るという立場ですが、あくまでも憲法の理念に対する例外規定となるわけで、個別具体法で具体的な事例を定義する以外にあり得ません。というわけで、今回の安保法制は筋が悪すぎるという評価になります。
例えば具体例として南シナ海の中国の岩礁埋立事案ですが、満潮時に海面下へ没する岩礁に領有権はありませんから、それを足場にした埋立地はあくまでも公海上の埋立地であって、領有権を主張できずEEZの起点にもならないという国際ルールの遵守を中国に求めたもので、アメリカは公海の航行の自由を迫ったものです。この辺中国も国際法を理解できていないようですが、一触即発とばかりに騒ぎ立てる日本のメディアもどうかしてます。日本では報じられてませんが、先日の日米防衛ガイドラインの発表は、事前にアメリカが中国に説明しており、中国に対するものではなく、むしろ日本の軍国化を抑えるものとしています。所謂ビンの蓋論ですね。
で、南シナ海のややこしさに無自覚なのもどうかと思います。多数の島が浮かぶ南シナ海は沿岸国が自国の都合で勝手に無人島に旗を立てている状況があり、中国の行動だけが問題ではないんです。現状では領海が入り組み、EEZの線引きも困難なモザイクの海なんです。しかも歴史的に日本もコミットしています。南沙諸島では戦前日本が領有を宣言し日本企業が燐鉱石の採取をしていた島があります。そのため台湾の高雄市の行政区分に属す形になっていたのですが、戦後日華平和条約で日本は台湾と共に領有権を放棄してます。これ台湾へ敗走した中華民国との平和条約で、当時の台北政府は一応中国を代表する主権国家で且つ戦勝国として国連安保理常任理事国でしたが、サンフランシスコ講和条約の当事国からは除外され、個別条約で処理したもので、これは当時のアメリカ政府の助言に従ったものです。
しかし70年代に日中が接近し平和条約が締結されると、台湾側から日本と国交断絶が宣言され、1952年締結の平和条約はこの時点で無効とされました。ただしその後北京の共産党政府が1つの中国として国連に加盟し、台湾問題は中国の内政問題とする国連決議が可決され、台湾は主権国家の地位を失ったわけですが、中国側から見れば仮にも主権国家時代の国民政府が交わした条約なので、その効力が北京政府に継承されると解釈する余地はあります。中国の南シナ海進出のきっかけは、案外日本の戦後処理が起点かも(小声)。というわけで、こんなややこしい南シナ海に日本の自衛隊を派遣するような火に油を注ぐ行為をアメリカがやるわけないです。
というわけで、アメリカの狙いは主に中東の紛争解決に日本の自衛隊を派遣することにありそうですが、逆に言えばアメリカの中東へのコミットは低下するということでもあります。何しろシェール革命でアメリカ自身は化石燃料の中東依存度を下げているわけですから。アメリカ流の軍事オフショアリング(海外下請け)というのが問題の本質です。ある意味ホルムズ海峡機雷掃海はアメリカの意向には沿っていますが、封鎖で最もダメージを受けるのはイランですから、非現実的です。加えて日本はおよそ半年分の石油戦略備蓄がありますし、そもそも石油火力は少なく、石炭とガスが中心です。つまり中東が原因で電力供給のボトルネックは生じません。
むしろ石油ショックを契機に中東依存が見直され原子力発電を強化した歴史があります。中東ガーな人たちの歴史知らずはどうしようもないですね。もう少し言えば、80年代に気候変動問題がクローズアップされ、化石燃料依存からの脱却のための原子力推進が言われたのであって、この面からも原発問題は安全保障問題と直結しているわけです。80年代はソビエトのペレストロイカで東西融和が現実味を帯び、冷戦終結を見越して欧州中心に冷戦後の国際秩序を模索する動きがあって、その中で温暖化ガスとしてのCO2削減が政治テーマに昇格してきたものです。
ww2でも日本が南方へ戦線を拡大したのは、資源確保が目的だったわけで、途上国の工業化が進めば資源争奪圧力が高まることは容易に想像できます。実際新興国の台頭が進んだゼロ年代に石油価格が上昇したわけですし、ロシアやブラジルや中東産油国などの交易条件が改善されたわけで、逆に先進国の交易条件は相対的に悪化しました。その中で先進国が競争力を持つ分野として環境分野が注目されたわけです。
特に欧州では核戦争に代わる地政学リスクと認識され、意欲的な削減目標が立てられたわけですね。それを理解しない日米両国は、せいぜい原発推進の口実ぐらいの認識しかななったわけです。その意味で2009年のCOP15コペンハーゲン会議では、日本の鳩山首相とアメリカのオバマ大統領が意欲的な姿勢を見せ、ポスト京都議定書の締結に期待がありましたが、より多くの援助を引き出そうとする中国がぶち壊したわけです。その中国も政権が変わり「新常態」と呼ぶ安定成長への移行を模索する中で、環境問題でアメリカと歩調を合わせるまでになりました。
一方の日本はフクシマの事故を口実に目標を取り合下げました。それでいて再生可能エネルギーへの移行は進まないどころか、削減目標の積算根拠となった電力構成で太陽光を7%(6,400万kwh相当)としました。これは認可済みの太陽光発電事業事の総出力8,000万kwhから稼働率を加味すれば、これ以上の認可はしないことを意味します。FITには問題ありますが、適切な減額評価を盛り込むことで、むしろ技術革新を促すべきですが、それを放棄してどうするつもりでしょうか。官製ガラパゴスまっしぐらです。
欧州では太陽光のピーク出力による余剰電力を利用して、水を電気分解して水素を作って貯蔵、運搬して、必要な時に燃料電池で電力に戻すという計画が始動しています。日本ではトヨタのFCVが売り出されたものの、現状は化石燃料由来の水素を利用しますから、CO2排出削減にはつながりません。むしろ貯蔵、運搬、充填の各過程でエネルギー消費を伴う=CO2排出増ということになります。燃料電池の用途としては欧州流が本来の狙いです。ここにもガラパゴスの芽が^_^;。
で、五輪関連で環状2号線整備で会場となる湾岸地域へのFCVバス輸送を東京都が打ち出してます。トヨタと日野の共同開発したFCVバスの採用を狙っているのでしょうけど、輸送力の面で連接バスとなると、国産メーカーはお手上げになります。従来国内に需要がなかったために連接バスの技術は日本には存在しないためです。鉄道の連接車と違って上下方向の可動幅も大きくなりますし、特にノンステップタイプで主流のリアエンジンタイプだと後ろから押す形となり、事故時の座屈現象の回避が難しいので、今から開発を始めて2020年にはまず間に合いません。輸入バスにトヨタのFCV搭載がせいぜいでしょうか。しかも五輪後の転用まで考えると、実現可能性はかなり低くなります。新国立競技場を迷走させる国も国ですが、都も人のこと言えません。
しかしそんなあれこれのある中で、中央区がこんな計画をぶち上げてます。
銀座-有明の地下鉄構想、事業費は2000億円 中央区試算 :日本経済新聞東京都がFCVバスを走らせようとしているルートに地下鉄をというのです。しかもゆりかもめや大江戸線のような中途j半端なものではないものというのですが。事業費2,000億円で13万人/日ですが、江東区が提案し東京都が検討路線に取り上げた8号線延伸(豊洲―住吉)が事業費900億円―1,200億円で20万人/日ですから、ほとんど実現可能性はありません。事業主体は第三セクターで運賃を高めという想定ですが、今後の高齢化の進捗を睨むと人件費上昇による事業費上振れと需要の下振れの可能性も視野に入れると、やめとけということですね。
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