Undoしたい大草原wwwの小さな森
いやもうあまりにも面白いので、新国立競技場のネタ続けます。まずは当事者のインタビュー記事です。
新国立、安藤氏「頼まれたのはデザイン案の選定まで」 :日本経済新聞
【新国立競技場】森喜朗氏「生牡蠣がドロッと垂れたみたい」(発言詳報)今回のキーマン2人が揃いも揃って他人事コメント。意訳すれば「ボク悪くないもん」というわけです。ザハ案を強く推したのは安藤氏であることは、様々な証言から明らかであり、今回の一件で安藤氏の名声は地に落ちたと言えます。コストを無視したデザイン選定はあり得ません。
また2019年のラグビーW杯を新スタジアムのこけら落としにしようとした森元首相は元々ザハ案が嫌いだったとのたまう始末。ノミの心臓サメの脳みそと言われる御仁だけに、無い知恵を絞っての釈明は、それ故に本質をついているところもあります。例えば責任は文部科学省にありという部分。実際の事業主体は(独法)日本スポーツ振興センター(JSC)ですが、こういう大きな公共インフラを手掛けたことはなく、不慣れだったことを指摘しています。確かにそうでしょう。
あとザハ案が嫌いだったという発言ですが、巨大キールアーチ構造の施工の困難さを指摘していることはあまり報じられておりません。橋なら船で運べるけど、陸上の大径間アーチは現地組み立てを余儀なくされ、形状が複雑だから大変だし、櫓を組んで仮受けする必要もあるなど、安藤氏よりよほど構造設計に詳しかったりします。さすが土建族。北陸新幹線を巡る談合事件が報じられてますが、関与は?
そもそもコスト感覚が希薄だったのではないかと思われます。求められている機能は国際大会の開ける陸上競技場であって、サッカー国際試合用の8万人収容のスタンドも、コンサート会場として音漏れ防止や全天候型のための開閉式屋根などは必ずしも求められていないわけで、むしろサブグラウンドがないなどがアスリートから指摘されている始末。事業の目的を忘れて盛り過ぎということで、この部分はデザイン案に関わらずコストを押し上げる要因になっています。
事業費の膨張も、具体化と共にジワジワとで、本来は1,000億円程度だったはずが、震災復興や円安の影響で資材費が値上がりし、人手不足による人件費高騰もあって1,300億円に見直された経緯もあります。つまり文科省やJSCが事業費膨張の理由として説明しているこの部分は、1,300億円に盛り込まれているはずで、その後の膨張は、設計の具体化や施工希望のゼネコンの意見などによるわけで、入札もされていないわけです。
しかもゼネコンの意見は日本の公共事業で慣例化している事後的な予算の増額が含意されていると見るべきで、2,520億円で終わりという話ではないと考えられます。杜撰すぎるプロジェクトの進行でこうなったわけですから、安藤氏や森氏を含む当プロジェクトに関わったメンバーは更迭し、新しいメンバーでプロジェクトをやり直すべきです。一応プロジェクトマネジメントに経験豊富な国交省が関与するようですから、少しはマシな展開になるかもしれません。とはいえ都に負担を求めたりToTo収益金など別サイフに付け替えるだけで誤魔化す可能性もありますから、引き続き国民の監視は必要です。
そして白紙見直しとなったわけですが、安保法制の強行採決で支持率が低下したことから、目晦ましとの指摘がある一方、最終選考に残ったザハ案以外の2案でも概算で事業費が減らないということで、白紙見直ししか手がないということもあります。コンペのやり直しなども言われますが、今回の件で国際的に信用を失ったプロジェクトに応募してくれる得る奇特な建築家が現れるかどうか。実際ザハ・ハディド・アーキテクツが公式にコストアップがデザインのせいではないとのコメントを出しています。
また別の論点として旧国立競技場の残存基礎や地下鉄大江戸線を含む地下埋葬物の支障問題も指摘されていますが、なぜか関連する資料は公開されておりません。そもそもこれでまともなデザインコンペができるわけがないですし、工事が始まれば地雷のように立ちはだかる可能性があります。再コンペやるならこの点の情報公開も必要でしょう。
ま、というわけで、鉄分少な目の今回のエントリーですが、大規模公共工事はまかり間違えばとんでもないことになるという教訓を得ることはできます。事業費査定が甘い中央リニアに幸あれ。
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