« August 2015 | Main | October 2015 »

September 2015

Wednesday, September 23, 2015

ガバナンスガバガバ

まずは前エントリーのおさらいです。

日本が中国を撃退!インドネシア鉄道受注の逆転劇|Close Up|ダイヤモンド・オンライン
インドネシア新幹線、「白紙撤回」の裏事情 手痛い失敗から日本は何を学ぶべきか | 鉄道最前線 - 東洋経済オンライン
インドネシアの高速鉄道計画撤回という同じニュースで、経済誌2誌の報道スタンスの違いに驚きます。読み比べてわかるのは、ダイヤモンドが主に日本の関係者への取材で記事を起こしている一方、東洋経済はユドヨノ政権からジョコ政権への政権交代によってインドネシアの政策スタンスが変化したことまで踏み込んでいます。記事の質としての優劣よりも、同じニュース記事に違うスタンスの報道が併存していることに意味があります。

ダイヤモンドの記事のように、日本の関係者が本当に中国に勝ったと総括しているとすれば、申し訳ないけど日本のインフラビジネスは連戦連敗やむなしと言わざるを得ません。重要なのはジョコ大統領が公費投入を否定したことです。速度200~250キロの中速鉄道の本音はコストダウンにあるわけで、よりコスト競争力を問われる中速鉄道で魅力的なソリューションを提案出来て初めて「勝った」と言えるわけで、独りよがりなバンザイ総括しているようでは心許ないところです。

一方ダイヤモンドの記事で意外にも中国の提案の方が事業費は高くつくものの、実現可能性はともかく工期3年で地域開発など周辺事業への関与まで含めた提案だったようで、おそらくAIIBの実績作りの意図もあったのでしょう。その結果あれば便利な高速鉄道事業も、公費を投入せずに実現するというある意味合理的な判断をして高速鉄道に拘らない姿勢にシフトしました。結果的に総事業費の7%を目安とした円借款の増額がオファーされたという形で、日本としては呑みにくい条件変更でもあります。

欧州基準準拠の中国高速鉄道が高くつくのは、軌道中心間隔が広くトンネル断面も大きくなるなどで避けられないところですが、その分列車風対策を日本の新幹線ほど求められず、車体の気密構造も簡素化できるわけですが、日本基準が世界最高と信じ込んでいる日本の関係者にはそれが中国システムの欠点としか映らないというから救われません。逆に速度200~250キロの中速鉄道にシフトした時のコストダウンはドラスティックなものとなるわけで、日本が受注できる可能性はほぼなくなりました。

一方でこんなニュースもあります。

「山手線の兄弟」がタイで勝ち取った"果実" | 鉄道最前線 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
バンコクの高架鉄道第2弾のパープルラインでの車両受注に成功したというニュースです。車両は総合車両製作所(J-TREC)のステンレス車SUSUTINAベースの新車で記事にあるように山手線へ投入予定のE235系の兄弟車という位置づけです。

バンコクでも先行したブルーラインではインフラを日本のゼネコンが受注したものの、車両や信号システムはシーメンスに敗れたのですが、パープルラインではSUSUTINAでコスト競争力を得たJ-TRECの勝利ですが、それだけ鉄道輸出の現場の競争環境の厳しさを示します。似たようなケースでトルコのボスボラス海峡トンネルの完成で外遊中の安倍首相が式典で祝辞を述べたのですが、トンネル工事こそ日本の大成建設が受注し完成させたものの、そこを走るイスタンブール地下鉄の車両は韓国ヒュンダイ車両製という笑えない現実があります。政府がインフラ輸出で旗を振るのは結構なんですが、円借款と抱合せで受注を獲得するインフラ工事に対して、車両や信号など鉄道システム全般に関しては、高コスト体質の克服が課題です。またとかく目立つ高速鉄道よりも、需要が確実な都市交通分野こそ、日本の戦略分野として磨く必要があります。

という訳で、いつもながらの「日本大丈夫か?」ネタですが、驚くべきニュースが意外なところからもたらされました

独VW、米で大気浄化法違反の疑い 48万台対象  :日本経済新聞
コーポレートガバナンス論でROE重視のアメリカ基準と違って企業の社会的責任(CSR)を重視する欧州企業で起きた大規模不正事件で、その後の報道でハンドル操作を伴わないエンジン回転アップを検知してテストと判断して切り替えるという悪意に満ちた制御ソフトウエアが組み込まれていたということで、丁度フランクフルトもターショー期間中ということもあり、VWのダメージは測りしれません。またベンツ、BMW、プジョーシトロエン、ルノーなど他の欧州メーカーにも不審の目が向けられる事態となり、これで終わりとはいきそうにありません。

というのも、欧州でエコカーの本命視されているディーゼル車の普及は、燃料のディーゼル軽油の品質基準の厳しさが前提になっており、欧州以外の地域の軽油では所定の環境性能を発揮できない可能性があるわけで、ある意味不正の温床が存在するわけですね。対象車は公式には日本には輸入されていませんが、日本の環境基準を満たさないからで、日欧EPA交渉で非関税障壁として欧州から改善が求められています。同様の問題はアメリカとの間でもあるわけで、日本により格段に市場規模が大きく、また燃料噴射量を電子制御で細かく制御する小型クリーンディーゼルだから可能だったわけです。加えて制御技術自体は自動車メーカーの生命線としてブラックボックス化されてますから、簡単には発覚しないわけです。

というわけで、関連性は不明ながら日産・ルノーのゴーンCEOがフランクフルトショーで制御ソフトのオープン化に言及したのも、この手の不正を防ぎようがないことへの危惧ではないかという見方がされるなど、波紋は広がっています。ゴーン氏の真意はともかく、一方でGoogleの自動運転車が現実味を増す中で、同時にハッキングのリスクも議論が始まっています。そういったコンテクストの中で、システムのブラックボックス化はハッキングの回避策にはなりうるけれど、絶対不可能なわけではなく、逆にオープンソースで弱点が見えているからこそ、細かな修正でシステムの脆弱性を克服してきたPCやネットの技術革新を見習わなければ、開発コストが跳ね上がるという問題もあるわけです。

というわけで、いろいろ示唆に富むところですが、例えばドイツがインダストリー4.0と称して進めるIoTも、オープンソースゆえの問題を抱えます。参加企業は自社の技術情報をオープンにする必要がありますが、中小企業kら見れば、自社の優位性を大手企業に晒すという意味で抵抗感が強く、進捗は芳しくないようです。ま、ぶっちゃけドイツのインダストリー4.0はデジタルカンバン方式といえばわかりやすいですが、トヨタの生産システムに参加する系列企業の過酷なコスト環境を拡大する可能性を考えると、運用次第で新たな搾取装置になりかねない危険性を孕みます。

折しも難民受け入れ問題で揺れる欧州で、ドイツの積極姿勢が目立ちますが、かつてトルコ系移民を受け入れて労働市場の二極化を進めた結果、人口分布が歪んで日本同様生産年齢人口の減少に悩むドイツの現状を見るにつけ、単なる人道主義や理想主義で括れない部分があります。逆にドイツへの出稼ぎ機会が減少する東欧圏諸国に反対が多いのもこのような背景があるわけです。

最後に独り言。東芝の不正会計は経営トップの無謀なチャレンジ押し付けがもたらしたもののようですが、特にアナリスト向け会見で米WHの業績に関する質問が集中し、「WHの売上推移は順調」と同じ回答を繰り返す経営陣ですが、確かに燃料棒の納入やメンテナンスなどで買収当時の1.5倍の売上を計上しているものの、それと比例するように東芝本体のWHへの債務保証額も膨らんでいることで、疑念を持たれています。つまりベンダーファイナンスで融資を条件に顧客の電力会社に食い込んで売上を作っている可能性があるわけです。なぜそうするかといえば、元々買収価格が割高で5,000億円規模ののれん代が発生し、毎期の利益から償却している状況ですから、WHは間違っても赤字にできないわけで、逆に赤字になればのれん代が実体がないとみなされて減損処理を求められるわけで、それを回避したいからと説明できます。事実ならば東芝の不正会計は現在進行中ということで、いずれまたボロを出すのは時間の問題でしょう。会社潰すにゃ刃物は要らぬ。馬鹿なトップがいればいいwww

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, September 06, 2015

70年後の敗け戦、Javaビーンズは苦かった

新国立競技場に続いてエンブレム問題でも炎上した東京五輪ですが、この件は大会組織委に全面的に問題があります。

ベルギーの劇場のロゴに似ているというデザイナーのオリビエ・ドビ氏の提訴ですが、組織委の対応の拙さを指摘できます。というのは、五輪エンブレム自体はIOCの指針に従って商標登録されたもので、大会スポンサーが排他的独占的に使用することができるものということで、TV放映権と並んで重要なスポンサーフィー獲得のツールなんですが、選考されたアートディレクター佐野氏の案も、当初案は類似の商標が存在するということで、佐野氏の許諾を得ながら改変した結果、ベルギーの劇場ロゴに似てしまったという意味で、多分偶然似ただけだとは思います。

問題をわかりにくくしているのは、ベルギーの劇場はロゴを商標登録していなかったのに対し、デザイナーのドビ氏が著作権侵害で提訴したというのがミソです。つまり異なった権利関係の非対称な争い事なんですが、組織委が認識していなかった可能性があります。

元々文字をベースに図案化したデザインがある程度似てしまうのは避けられないですけど、ビジネス上の権利関係として存在する商標権に対して、著作権はより広い範囲をカバーしています。商標権は出願して審査を経て登録されて権利が発生するのに対し、著作権は著作物全般に備わっていて、特段の出願や登録などの手続きは要りません。公開された著作物として認識されていて、著作者が自分の著作物であることを証明できれば権利を主張できるんですから、登録された商標の範囲だけを見て重複がないと判断したところに問題があります。

もちろん世界中に多数の著作物が氾濫しているわけですから、その全てを照合するのは不可能ですし、またパロディーや本歌取りなど、既にある著作物を敢えて模倣して表現されたものも著作物と認められますから、単に似ているだけでパクリだ模倣だとは言えませんが、その場合元著作物に対するリスペクトがあるはずで、だからこそ成り立つ表現手法でもあります。逆に元著作物を悪意をもって改変したり意味解釈を逆転させるなどの場合は、ある種人格否定にもつながるわけで、著作権には人格権的な性格もあるわけです。

今回の場合、ドビ氏がプロのデザイナーだったわけですから、偶然にせよ似てしまったエンブレムに対して提訴するのは、デザイナーとしてのアイデンティティの問題でもあるわけで、本来は直接話を聞いて解決策を探るべきだったのですが、商標権を獲得したことで組織委が自らの正当性を言い立てて謂わば門前払いのような対応をしてしまったことでこじれたと見ることができます。政府は知財立国を掲げTPP交渉でも著作権の強化でアメリカに同調しているわけですが、こんなことで躓いていて大丈夫かいと言いたくなります。とかくいろんなところの劣化が目につく近頃の日本です。

で、本題はこれです。

インドネシア、高速鉄道導入せず 日中両案不採用  :日本経済新聞
報道では日中で痛み分けといったニュアンスで報じられていますが、元々日本政府肝いりで、JR東海も大乗り気で早くからセールスを展開してきたわけで、そこへ中国が後から参入してきたわけです。ある意味中国にとってはダメ元。むしろ日中のセールス合戦でコスト意識に目覚めたインドネシア政府の冷静さが際立ちます。

「時速200~250キロ程度の中速鉄道」というのが笑えます。世界では高速鉄道といえば300㎞/hクラスが標準になってきており、その意味で260㎞/hの日本の整備新幹線は中途半端な存在です。260㎞/hの根拠は全国新幹線網整備法の定義によりますが、それを見直さないまま新規着工を拡大して建設を進めてきた結果、世界の趨勢と異なった基準が温存されてしまったわけです。

例えば複線の線路中心間隔は日本が4.3mに対し、TGVやICEの新線区間では5m超で列車風の影響を軽減してますし、トンネル断面は日本が62m^2に対しTGV100m^2ICE92m^2で、離合の際の2両分断面積比率は日本38%TGV18%ICE22%と見劣りします。もちろんTGV基準だと山岳地帯の多い日本では「建設費が高騰することは避けられませんが、一方最急勾配は日本15パーミルTGV35パーミルICE40パーミルでトンネルを避けたルート選定をしているとも言えます。ICE基準なら中央リニアも鉄軌道式に変更可能ではあるわけですね。

日本でも九州新幹線や北陸新幹線では一部区間で35パーミルを認めたりしてますが、あくまでも事業費の圧縮のためですが、そのために新しい整備新幹線区間が東海道を含む既存新幹線より遅いという冗談のようなことになっています。東海道新幹線285㎞/h、山陽新幹線300㎞/h、東北新幹線(宇都宮―盛岡)320㎞/hですが、いずれも自己保有故に減価償却資金で細かな改良を施し、またカモノハシルックの先頭形状で空力特性を工夫しながらクリアしたものですが、同じE5系で盛岡以北は260㎞/hに制限されるのは、主として絨曲線の制約によります。

で、東海道新幹線は盛土にバラストで微調整がしやすいので、古くて窮屈な規格ながらスピードアップが実現できたわけですが、山陽、東北に関してはコンクr-ト路盤にスラブ道床でかっちり作ってあるから改良にもお金がかかるというジレンマがあります。整備新幹線区間も同様ですが、それでも自社保有なら減価償却資金の範囲内で改良の原資を得ながら時間をかけて改良できますが、利益をリース料で召し上げられる整備新幹線区間では、改良費用はねん出できないわけです。しかもリース料は新規着工の整備費用に回されますから、開業区間の改良には使えない現状です。本来は地価が低く用地買収費が低い一方需要の薄くなる整備区間こそ、どうせ作るなら高規格で整備してスピードアップ効果を最大化すべきなんですが、日本でやっているのはその逆というわけです。

こうして特殊な進化を遂げた日本の新幹線技術を輸出しようとすると、いろいろなことが障害になるわけですが、その障害を乗り越えて実現した台湾新幹線は大成功と捉えられておりますが、実は赤字体質がら脱却できず、身売りを余儀なくされています。一応台湾政府が引き取って台湾鉄道が運営することになるようですが、300㎞ほどの区間で6,000円程度の運賃料金では、採算が取れないのも無理もないところかもしれません。とはいえ台湾の国民所得から言えばこの程度の価格設定でないと利用されない可能性もあるわけです。欧州規格の線路に日本規格の保安装置と車両を入れて適合させることに手間取ったというハンデはあるものの、日本の新幹線技術の高コスト体質が浮き彫りになります。

で、思い出していただきたいんですが、ロンドンオリンピックの観客輸送で活躍したJavellin(Class395)が日本の日立製で、ロンドン南郊の高速新線を225㎞/hで走る近郊輸送用車両で、日常の通勤輸送をこなしていることです。かつて日本国鉄が構想して実現しなかった通勤新幹線を具現化したものです。インドネシアが求めているのはこういった輸送システムではないでしょうか。

通勤新幹線は東京からおおむね100㎞圏の主要都市(小田原、甲府、高崎、宇都宮、水戸)までを新幹線規格に準拠した新線を建設し、最高速160㎞/hとして弾丸列車計画の用地先行取得で助けられた東海道新幹線と違って用地買収を容易にしようという構想です。隠れた目的としては新幹線網を全国展開するときには、用地買収難で建設の難しい東京近郊の通勤新幹線に本来の新幹線を乗り入れさせることで全体の事業費を圧縮する狙いもありました。旧国鉄にしては珍しい戦略発想だったんですが、政治家にとっては票にならない魅力のない事業と見られたのでしょう。こうした過去の選択が日本の今を縛っているわけです。

JR東海大乗り気で政府の後押しで進めたインドネシア高速鉄道ですが、日本にとっては技術の空白領域と言える中速鉄道に計画変更されたことで、日本の出番はなくなったと評価すべきでしょう。高機能高価格を狙ってことごとく市場を失った日本の家電業界と何と似たことか。「日本の新幹線技術は世界一だから売れるはず」という根拠のない高すぎる自己評価から離れて、コスト面も含めた身の丈の評価で世界に臨み、対話を通じてプロジェクトを実現するというような、地道な取り組みをするしかありません。

以下若干の蛇足。戦後70年談話であれこれがありましたが、気になったのが「子や孫にまで謝罪を続けさせるわけにいきません」というくだり。中国も韓国も別に謝罪は求めてないわけで、過去を直視しつつも未来志向の相互関係を求めているわけですが、度々日本のリーダー層から歴史の改ざんにあたる発言があって相手を怒らせて頭下げざるを得ない状況を作っているわけで、五輪エンブレム問題しかり、インドネシア高速鉄道しかり、相手の真意やニーズを無視して自己流をゴリ押しする夜郎自大な日本から早く卒業すべきです。廉価なロブスター種のコーヒー豆の産地の出来事ですが、Javaビーンズは殊の外苦かったようですね。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« August 2015 | Main | October 2015 »