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まずは前エントリーのおさらいです。
日本が中国を撃退!インドネシア鉄道受注の逆転劇|Close Up|ダイヤモンド・オンライン
インドネシア新幹線、「白紙撤回」の裏事情 手痛い失敗から日本は何を学ぶべきか | 鉄道最前線 - 東洋経済オンラインインドネシアの高速鉄道計画撤回という同じニュースで、経済誌2誌の報道スタンスの違いに驚きます。読み比べてわかるのは、ダイヤモンドが主に日本の関係者への取材で記事を起こしている一方、東洋経済はユドヨノ政権からジョコ政権への政権交代によってインドネシアの政策スタンスが変化したことまで踏み込んでいます。記事の質としての優劣よりも、同じニュース記事に違うスタンスの報道が併存していることに意味があります。
ダイヤモンドの記事のように、日本の関係者が本当に中国に勝ったと総括しているとすれば、申し訳ないけど日本のインフラビジネスは連戦連敗やむなしと言わざるを得ません。重要なのはジョコ大統領が公費投入を否定したことです。速度200~250キロの中速鉄道の本音はコストダウンにあるわけで、よりコスト競争力を問われる中速鉄道で魅力的なソリューションを提案出来て初めて「勝った」と言えるわけで、独りよがりなバンザイ総括しているようでは心許ないところです。
一方ダイヤモンドの記事で意外にも中国の提案の方が事業費は高くつくものの、実現可能性はともかく工期3年で地域開発など周辺事業への関与まで含めた提案だったようで、おそらくAIIBの実績作りの意図もあったのでしょう。その結果あれば便利な高速鉄道事業も、公費を投入せずに実現するというある意味合理的な判断をして高速鉄道に拘らない姿勢にシフトしました。結果的に総事業費の7%を目安とした円借款の増額がオファーされたという形で、日本としては呑みにくい条件変更でもあります。
欧州基準準拠の中国高速鉄道が高くつくのは、軌道中心間隔が広くトンネル断面も大きくなるなどで避けられないところですが、その分列車風対策を日本の新幹線ほど求められず、車体の気密構造も簡素化できるわけですが、日本基準が世界最高と信じ込んでいる日本の関係者にはそれが中国システムの欠点としか映らないというから救われません。逆に速度200~250キロの中速鉄道にシフトした時のコストダウンはドラスティックなものとなるわけで、日本が受注できる可能性はほぼなくなりました。
一方でこんなニュースもあります。
「山手線の兄弟」がタイで勝ち取った"果実" | 鉄道最前線 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイトバンコクの高架鉄道第2弾のパープルラインでの車両受注に成功したというニュースです。車両は総合車両製作所(J-TREC)のステンレス車SUSUTINAベースの新車で記事にあるように山手線へ投入予定のE235系の兄弟車という位置づけです。
バンコクでも先行したブルーラインではインフラを日本のゼネコンが受注したものの、車両や信号システムはシーメンスに敗れたのですが、パープルラインではSUSUTINAでコスト競争力を得たJ-TRECの勝利ですが、それだけ鉄道輸出の現場の競争環境の厳しさを示します。似たようなケースでトルコのボスボラス海峡トンネルの完成で外遊中の安倍首相が式典で祝辞を述べたのですが、トンネル工事こそ日本の大成建設が受注し完成させたものの、そこを走るイスタンブール地下鉄の車両は韓国ヒュンダイ車両製という笑えない現実があります。政府がインフラ輸出で旗を振るのは結構なんですが、円借款と抱合せで受注を獲得するインフラ工事に対して、車両や信号など鉄道システム全般に関しては、高コスト体質の克服が課題です。またとかく目立つ高速鉄道よりも、需要が確実な都市交通分野こそ、日本の戦略分野として磨く必要があります。
という訳で、いつもながらの「日本大丈夫か?」ネタですが、驚くべきニュースが意外なところからもたらされました
。独VW、米で大気浄化法違反の疑い 48万台対象 :日本経済新聞コーポレートガバナンス論でROE重視のアメリカ基準と違って企業の社会的責任(CSR)を重視する欧州企業で起きた大規模不正事件で、その後の報道でハンドル操作を伴わないエンジン回転アップを検知してテストと判断して切り替えるという悪意に満ちた制御ソフトウエアが組み込まれていたということで、丁度フランクフルトもターショー期間中ということもあり、VWのダメージは測りしれません。またベンツ、BMW、プジョーシトロエン、ルノーなど他の欧州メーカーにも不審の目が向けられる事態となり、これで終わりとはいきそうにありません。
というのも、欧州でエコカーの本命視されているディーゼル車の普及は、燃料のディーゼル軽油の品質基準の厳しさが前提になっており、欧州以外の地域の軽油では所定の環境性能を発揮できない可能性があるわけで、ある意味不正の温床が存在するわけですね。対象車は公式には日本には輸入されていませんが、日本の環境基準を満たさないからで、日欧EPA交渉で非関税障壁として欧州から改善が求められています。同様の問題はアメリカとの間でもあるわけで、日本により格段に市場規模が大きく、また燃料噴射量を電子制御で細かく制御する小型クリーンディーゼルだから可能だったわけです。加えて制御技術自体は自動車メーカーの生命線としてブラックボックス化されてますから、簡単には発覚しないわけです。
というわけで、関連性は不明ながら日産・ルノーのゴーンCEOがフランクフルトショーで制御ソフトのオープン化に言及したのも、この手の不正を防ぎようがないことへの危惧ではないかという見方がされるなど、波紋は広がっています。ゴーン氏の真意はともかく、一方でGoogleの自動運転車が現実味を増す中で、同時にハッキングのリスクも議論が始まっています。そういったコンテクストの中で、システムのブラックボックス化はハッキングの回避策にはなりうるけれど、絶対不可能なわけではなく、逆にオープンソースで弱点が見えているからこそ、細かな修正でシステムの脆弱性を克服してきたPCやネットの技術革新を見習わなければ、開発コストが跳ね上がるという問題もあるわけです。
というわけで、いろいろ示唆に富むところですが、例えばドイツがインダストリー4.0と称して進めるIoTも、オープンソースゆえの問題を抱えます。参加企業は自社の技術情報をオープンにする必要がありますが、中小企業kら見れば、自社の優位性を大手企業に晒すという意味で抵抗感が強く、進捗は芳しくないようです。ま、ぶっちゃけドイツのインダストリー4.0はデジタルカンバン方式といえばわかりやすいですが、トヨタの生産システムに参加する系列企業の過酷なコスト環境を拡大する可能性を考えると、運用次第で新たな搾取装置になりかねない危険性を孕みます。
折しも難民受け入れ問題で揺れる欧州で、ドイツの積極姿勢が目立ちますが、かつてトルコ系移民を受け入れて労働市場の二極化を進めた結果、人口分布が歪んで日本同様生産年齢人口の減少に悩むドイツの現状を見るにつけ、単なる人道主義や理想主義で括れない部分があります。逆にドイツへの出稼ぎ機会が減少する東欧圏諸国に反対が多いのもこのような背景があるわけです。
最後に独り言。東芝の不正会計は経営トップの無謀なチャレンジ押し付けがもたらしたもののようですが、特にアナリスト向け会見で米WHの業績に関する質問が集中し、「WHの売上推移は順調」と同じ回答を繰り返す経営陣ですが、確かに燃料棒の納入やメンテナンスなどで買収当時の1.5倍の売上を計上しているものの、それと比例するように東芝本体のWHへの債務保証額も膨らんでいることで、疑念を持たれています。つまりベンダーファイナンスで融資を条件に顧客の電力会社に食い込んで売上を作っている可能性があるわけです。なぜそうするかといえば、元々買収価格が割高で5,000億円規模ののれん代が発生し、毎期の利益から償却している状況ですから、WHは間違っても赤字にできないわけで、逆に赤字になればのれん代が実体がないとみなされて減損処理を求められるわけで、それを回避したいからと説明できます。事実ならば東芝の不正会計は現在進行中ということで、いずれまたボロを出すのは時間の問題でしょう。会社潰すにゃ刃物は要らぬ。馬鹿なトップがいればいいwww
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