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Sunday, October 11, 2015

担ぎ担がれAwayの神輿

米アトランタ市で開催されていたTPP閣僚級会合で「大筋合意」したそうで、早速メディアでは「どう変わる?」といった視点で取り上げられてますが、無責任も甚だしい話です。合意文書もまだまとまっていない段階で、何がどう変わるというのか。まして大部の合意文書を読み下すだけでも大変で、どこにどんな仕掛けがあるかも見えないのが現実です。つまり政府のレクチャーそのまんま。政府発表をそのまま報じる御用メディアではそもそも内容を論評する能力もないでしょうけど。そんな中で私が注目したのがこのニュースです。

TPP、「6カ国・GDP85%」以上で発効可能に:日本経済新聞
交渉参加12カ国中GDP合計が85%以上を占める6カ国以上が2年以内に批准すれば発効するというもの。85%というのは日米どちらかが脱落すれば届かないので、日米両国が批准する前提で、残り4カ国の批准で発効するわけです。漏れ聞こえる交渉経過からすれば、日米当局は共に自国の脱落は想定しておらず、仲間を4カ国だけ集めれば発効し、以後の修正はできないわけです。例えば交渉終盤でおそらく日本が呑みにくいと見て乳製品の完全撤廃を持ち出したニュージーランドを外すことが出来るわけですね。つまり詰めきれていない分野を残して批准プロセスへ見切り発車というわけです。交渉過程での日米の一枚岩ぶりには他国から不満が出ていただけに、強引な合意プロセスと評することができます。

TPPに限らずFTAにはメリットがないと述べてまいりました。なぜかといえば、特に工業製品の関税撤廃を狙う日本の立場から言えば、関税の撤廃で得られるメリットよりも、TPPを含むFTAで独自ルールの原産国認証の手続きにかかるコストの方が高くつきます。農畜産品と違って現物に産地情報が埋め込みにくい工業製品では、認証の仕組み自体が複雑怪奇なものとなり、コストを押し上げます。それ以上に為替変動のリスクの方が遥かに大きいわけで、有利な条件で輸出を伸ばそうというのは、かなり甘い見通しと言わざるを得ません。

それと例えば自動車の関税撤廃は25年後なんですが、そのときトヨタはアップルブランドのクルマを作っているかもしれません。この場合関税撤廃のメリットはトヨタよりアップルが得るわけですね。それぐらい不確実な遠い未来の工業製品の関税撤廃のために農畜産品の譲歩ぶりは、贔屓目に見ても非対称です。早速コメの輸入枠拡大分は同量の国産米を備蓄米に回すなどの価格維持策で対応するという訳で、TPPを口実に新たなバラマキが始まります。ただしこれらの優遇策はISD条項により米企業から提訴を受ける可能性があり、NAFTAなどアメリカが絡む他のFTAの実績で言えば、米企業が他国政府を提訴した場合の勝率はほぼ10割という偏ったものです。

加えて対中国で語る人がいますが、ほとんど無意味です。中国は一帯一路で新たな経済圏を構築しようとしてますから、TPPがどうなろうがあまり関心はありません。実際インドネシアの高速鉄道事業で日本が中国に負けた苦い経験をしたばかりですね。いろいろ言われますが、中国のドル建てGDPは既にアメリカの6割の水準に達しております。経済の減速が言われますが、GDP成長率7%が5%に減速したとして、GDPが2倍になる期間が10年から14年に伸びるだけの話。アメリカの経済成長が高めに見ても均して2%程度ですから、GDPの米中逆転は射程内に入ったと見るべきです。同時にこの中国にとって心地よい経済情勢を維持する観点からも、軍事的に突出した行動は有り得ないと見ることができます。むしろ軍事面ではこっちのニュースが重要です。

ロシア、シリアに巡航ミサイル発射 米と亀裂拡大:日本経済新聞
米ロの亀裂という他人事のような報道は日本の記者クラブメディアの限界ですね。問題はカスピ海上の艦船から発射した巡航ミサイルが500km離れたシリアのイスラム国(IS)の拠点11箇所を射抜いているということ。ソビエト崩壊後、国力半減のロシアに西側へ対抗する能力は既になく、特にハイテク兵器の性能差は決定的だったわけですが、確実に追いついてきたということです。ロシアの経済力でそれが可能だということは、况んや中国をやです。今は旧式のソ連製兵器が主力の中国でも装備の近代化は進んでますから、いずれ追いつくのは時間の問題です。兵器面での性能差がなくなれば、勝敗を決するのはランチェスター法則に則り兵力差に収斂しますから、そうなると日米合同軍でも中国に太刀打ち出来なくなるということです。実際アメリカはミサイル攻撃に対する沖縄の米軍基地の脆弱性を気にして海兵隊の主力をグアムに移転します。辺野古の基地は日本政府が残ってくれと言うからとか。安保もTPPもアメリカに軸足を置く日本の外交政策はかなりヤバいということは言えそうです。

あ、繰り返しておきますが、前エントリーで表明したように、私は護憲でも平和主義でもありません。地政学的リアリズムの観点からこういう見方が導き出せるということを述べております。つーわけで、以前にも指摘しましたが、そもそもアメリカへの手土産でTPP阻止で選挙戦を戦った安倍政権ですが、いつの間にかTPPが成長戦略の目玉になっています。それどころか国連総会出席で訪米してもオバマ大統領とは会えず、それどころかロシアのプーチン大統領にまで足元を見られて相手にされなくなって焦っているのが滑稽です。Awayの神輿に乗ってチョーシこいて挙句の果てですね。

てなわけで、最近言われなくなったアベノミクス関連で申し上げれば、第一の矢の大胆な金融政策の成果が曖昧になりつつあります。8月には遂にコアCPIがマイナス0.1%になりました。日銀は原油安を原因としてますが、エネルギー価格を除いたコアコアCPIでもプラス0.8%で物価目標の2%には程遠い状況です。これGDPデフレーターで見れば一目瞭然なんですが、結局2014年4月の消費税増税に伴う上昇を除けばほぼ横ばいで、増税前には増税の影響を除いて2%と言われておりましたが、それもどこへやら、おそらく来年4月の消費税再増税で数字を整えることになりそうです。

とはいえ2度に亘る消費税増税の影響で国内消費は冷え込みますから、緩和の出口どころか追加緩和を求められる状況になります。しかし国債が市場から消え、株価ETFやREITなどのリスク資産も増やすのは難しいですから、手があるとすれば日銀当座預金口座に銀行が預けている超過準備の利息をゼロ乃至マイナスにするぐらいでしょうか。とはいえ設備投資も減って融資先を見いだせない銀行は打つ手なし。新興国減速で海外事業も縮小傾向。あとは社債発行や企業M&A融資などへ資金を突っ込むしかないでしょう。結局回り回って株価は上がるかもしれませんが、債権がわりの長期保有主体で株式の流動性が低下すると、短期資金が入って株価のボラティリティが高まるという矛盾した状況になります。

一方で米FRBの利上げ問題がありますが、年内利上げを謳いながら9月利上げが見送られました。おそらく年内利上げは間違いないでしょうけど、世界規模で進むリスクオフで世界の経済成長が鈍化する中、利上げの先送りは利上げそのものの判断をますます難しくします。幸い米国内の金融規制強化の効果でバブルの発生は抑えられておりますが、新興国の減速でドル資金の還流は利上げの有無に関わらず起こり、カネ余りの日本市場へ流入ということで、円高へ振れるようになります。元々リスクオフ相場は円高要因ですが、ドル円ではあまり動きが見られませんが、新興国通貨の下落でドルと円が同時に上がっているだけで、FRBが利上げ断念となれば、円独歩高もありえます。さてアベノミクスは何処へ。

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