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October 2015

Sunday, October 25, 2015

ハマの斜塔で未来へつづき

VWも霞む企業の不正事件が日本で起きました。横浜市都筑区のマンションの傾斜で発覚した基礎杭の長さ不足ですが、日本固有の多重下請け体制で、販売会社の三井不動産レジデンシャル、施工元請けの三井住友建設、1次下請けの日立ハイテクノロジーズ、2次下請けの旭化成建材と当事者が多くややこしいため、責任問題が有耶無耶になりやすいので注意が必要です。

マンション傾斜:くい施工、確認作業もずさん? - 毎日新聞
さまざまな報道でそもそも元請けの三井住友建設が用意した基礎杭の長さが足りなかったことも報じられており、そもそも設計ミスだったとも言われますし、施主の三井不動産レジデンシャルも、総額2兆円に及ぶ大規模開発で着工前から売り出していたわけで、納期順守のプレッシャーも大きかったと見られます。ちなみに旭化成建材のこの事業での売り上げは80億円ほどです。

時期的には小泉政権の財政再建路線で公共工事が減る中で、大都市部の容積率や高さ制限の緩和で民間の建設工事が盛んだった時期で、例の姉歯問題ともオーバーラップします。当時言われていたのが、建設費の二極化です。公共工事は談合もあり、高値受注の傾向にあった一方、その公共工事の減少で押し出されたゼネコンが民間工事に殺到し、安値受注の傾向が出てきたことです。そのギャップは民間工事が公共工事の半値と言われるぐらい広がりました。あの姉歯事件もそんな背景の中で、大臣認定ソフトのデータ改ざんでコストダウンを狙ったものでした。

加えて納期の縛りが強い点です。特にマンションの場合、着工前から売り出して完成前に完売が当たり前といった風潮もあり、それだけ現場へのプレッシャーも強かったと考えられます。更に元請けの設計の甘さで用意された基礎杭が短いなどの不具合があっても、下請けの現場作業者が指摘できたのかどうか。用意した資材で納期を守れとなれば、面倒なことはスルーされても不思議ではありません。この辺は結果的に損失が出ても利益保証で事後的に事実上損失補填してくれる公共工事とは違います。というわけで、姉歯問題と同様の時代背景を見ておく必要があります。

奇しくも姉歯問題で矢面に立ったのが第1次安倍内閣というのも因果は巡ります。姉歯事件でも結局行為者の処罰と規制の強化で幕引きした結果、原因を作った構造自体は残っているわけですから、時を経てそれが表へ出てしまうことは防ぎようがないわけですね。今回も石井国交相は、旭化成建材の過去10年間の請負工事のデータ改ざんの有無の報告を命じ、一方で規制強化を打ち出しております。この流れだと行為者である旭化成建材の現場責任者の処罰と規制強化だけで終わりそうです。設計ミスの可能性のある三井住友建設も、施主であり、販売の都合で納期を厳しく設定した可能性のある三井不動産レジデンシャルもお咎めなしということですね。

あとマンション特有の問題として、仮に建て替えるとしても、住民の4/5以上の同意という区分所有法の規定があり、建て替え費用の負担がないとしても、仮住まいへの転居というハードルがあり、これだけの大規模マンションですから、解体して建て替えるには3年はかかるわけで、転居を選ぶ人も多いと考えられます。その場合でも三井不動産レジデンシャルは買い取った上で建て替えまでやるのかどうか。その場合の費用負担をどうするかなどは全く見通せません。下手すれば廃墟となって放置される可能性も微レ存。ハマの斜塔出現というわけですね。で、似たような事件はすでに同じ横浜市内で起きていまして、建て替えには至っておりません。

横浜・三ツ沢の傾斜マンション、応急工事へ協議  :日本経済新聞
こちらは住友不動産のマンションで熊谷組が施工です。やはり設計ミスの可能性が指摘されており、都筑区の件と似ています。てなわけで、やはり氷山の一角と見るべきでしょう。本来は国会で取り上げるべきですが、野党の国会召集要請を無視している今の政権にはそもそも解決するつもりはなさそうです。全く性根の腐りきった政権です(怒)。

アベノミクスもそうですが、大胆な金融緩和と機動的な財政種痘の結果、一応データ上の需給ギャップは解消され雇用者も増えていますが、成長率は低迷したままです。つまりデフレは経済停滞の原因ではなかったわけです。むしろ7-9月も4-6月に続いて2期連続マイナス成長の可能性も指摘され、早速日銀に追加緩和のおねだりが金融筋から聞こえますが、おそらく打つ手はなさそうです。仮に欧州流に日銀当座預金の超過準備利息をいじってマイナスにしたとして、効果はほとんど見込めません。米FRBの利上げで円安進行を切に望むというところでしょうか。ただし早くても12月、下手すれば年明けの3月までずれ込む状況です。結局現状はあまり変わらないというところでしょうか。

加えて中国をはじめとする新興国の減速と、それとリンクした原油安の長期化で、サウジをはじめとして産油国の国家ファンドが投資資金を引き揚げ始めている状況ですから、先へ行けば行くほど世界経済は冷えてFRBの利上げの判断が困難になります。そもそも国内要因で見ればアメリカも景気のピークアウトが疑われますので、利上げ不発の可能性も若干あります。その場合は前エントリーで指摘したように円独歩高の可能性もあり得ます。ただ最近のドル円の膠着的な相場状況から見れば、日本の経済プレゼンスの後退でドル円の連動性が高まった可能性もあります。その場合は今後日銀がどう動こうがFRB次第ということになります。それもこれも潜在成長率の低下のなせる業なんで、供給側の構造改革、アベノミクスで言えば第3の矢こそ本丸だったんですが、全く手つかずです。

むしろハイブリッドな世界で指摘した派遣法改悪のようなことをやっちゃうわけです。12年改正法で意図されたジョブ型雇用への転換で、企業が事業を大胆に見直して成長分野へ雇用をシフトさせるという可能性を閉ざしてしまったわけです。結果的に正規雇用は長時間労働が常態化する一方、低賃金の非正規雇用の拡大で、雇用のミスマッチはむしろ拡大しています。雇用者の増加で完全失業率は改善してますが、雇用のミスマッチが解消されなければ、不安定な雇用環境で能力を活かせないから、経済が活性化するはずはありません。また上記のようなゼネコンの多重下請けのような仕組みも、見直されるべきですが、いつまで経っても温存され、問題が起きれば行為者だけが処罰されトカゲの尻尾切りに終わってしまうわけですね。

そういう意味では鉄道でも保線や車両保守で同様の下請け構造が見られます。鉄道事業に飛び火しないことを祈りたいところです。

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Sunday, October 11, 2015

担ぎ担がれAwayの神輿

米アトランタ市で開催されていたTPP閣僚級会合で「大筋合意」したそうで、早速メディアでは「どう変わる?」といった視点で取り上げられてますが、無責任も甚だしい話です。合意文書もまだまとまっていない段階で、何がどう変わるというのか。まして大部の合意文書を読み下すだけでも大変で、どこにどんな仕掛けがあるかも見えないのが現実です。つまり政府のレクチャーそのまんま。政府発表をそのまま報じる御用メディアではそもそも内容を論評する能力もないでしょうけど。そんな中で私が注目したのがこのニュースです。

TPP、「6カ国・GDP85%」以上で発効可能に:日本経済新聞
交渉参加12カ国中GDP合計が85%以上を占める6カ国以上が2年以内に批准すれば発効するというもの。85%というのは日米どちらかが脱落すれば届かないので、日米両国が批准する前提で、残り4カ国の批准で発効するわけです。漏れ聞こえる交渉経過からすれば、日米当局は共に自国の脱落は想定しておらず、仲間を4カ国だけ集めれば発効し、以後の修正はできないわけです。例えば交渉終盤でおそらく日本が呑みにくいと見て乳製品の完全撤廃を持ち出したニュージーランドを外すことが出来るわけですね。つまり詰めきれていない分野を残して批准プロセスへ見切り発車というわけです。交渉過程での日米の一枚岩ぶりには他国から不満が出ていただけに、強引な合意プロセスと評することができます。

TPPに限らずFTAにはメリットがないと述べてまいりました。なぜかといえば、特に工業製品の関税撤廃を狙う日本の立場から言えば、関税の撤廃で得られるメリットよりも、TPPを含むFTAで独自ルールの原産国認証の手続きにかかるコストの方が高くつきます。農畜産品と違って現物に産地情報が埋め込みにくい工業製品では、認証の仕組み自体が複雑怪奇なものとなり、コストを押し上げます。それ以上に為替変動のリスクの方が遥かに大きいわけで、有利な条件で輸出を伸ばそうというのは、かなり甘い見通しと言わざるを得ません。

それと例えば自動車の関税撤廃は25年後なんですが、そのときトヨタはアップルブランドのクルマを作っているかもしれません。この場合関税撤廃のメリットはトヨタよりアップルが得るわけですね。それぐらい不確実な遠い未来の工業製品の関税撤廃のために農畜産品の譲歩ぶりは、贔屓目に見ても非対称です。早速コメの輸入枠拡大分は同量の国産米を備蓄米に回すなどの価格維持策で対応するという訳で、TPPを口実に新たなバラマキが始まります。ただしこれらの優遇策はISD条項により米企業から提訴を受ける可能性があり、NAFTAなどアメリカが絡む他のFTAの実績で言えば、米企業が他国政府を提訴した場合の勝率はほぼ10割という偏ったものです。

加えて対中国で語る人がいますが、ほとんど無意味です。中国は一帯一路で新たな経済圏を構築しようとしてますから、TPPがどうなろうがあまり関心はありません。実際インドネシアの高速鉄道事業で日本が中国に負けた苦い経験をしたばかりですね。いろいろ言われますが、中国のドル建てGDPは既にアメリカの6割の水準に達しております。経済の減速が言われますが、GDP成長率7%が5%に減速したとして、GDPが2倍になる期間が10年から14年に伸びるだけの話。アメリカの経済成長が高めに見ても均して2%程度ですから、GDPの米中逆転は射程内に入ったと見るべきです。同時にこの中国にとって心地よい経済情勢を維持する観点からも、軍事的に突出した行動は有り得ないと見ることができます。むしろ軍事面ではこっちのニュースが重要です。

ロシア、シリアに巡航ミサイル発射 米と亀裂拡大:日本経済新聞
米ロの亀裂という他人事のような報道は日本の記者クラブメディアの限界ですね。問題はカスピ海上の艦船から発射した巡航ミサイルが500km離れたシリアのイスラム国(IS)の拠点11箇所を射抜いているということ。ソビエト崩壊後、国力半減のロシアに西側へ対抗する能力は既になく、特にハイテク兵器の性能差は決定的だったわけですが、確実に追いついてきたということです。ロシアの経済力でそれが可能だということは、况んや中国をやです。今は旧式のソ連製兵器が主力の中国でも装備の近代化は進んでますから、いずれ追いつくのは時間の問題です。兵器面での性能差がなくなれば、勝敗を決するのはランチェスター法則に則り兵力差に収斂しますから、そうなると日米合同軍でも中国に太刀打ち出来なくなるということです。実際アメリカはミサイル攻撃に対する沖縄の米軍基地の脆弱性を気にして海兵隊の主力をグアムに移転します。辺野古の基地は日本政府が残ってくれと言うからとか。安保もTPPもアメリカに軸足を置く日本の外交政策はかなりヤバいということは言えそうです。

あ、繰り返しておきますが、前エントリーで表明したように、私は護憲でも平和主義でもありません。地政学的リアリズムの観点からこういう見方が導き出せるということを述べております。つーわけで、以前にも指摘しましたが、そもそもアメリカへの手土産でTPP阻止で選挙戦を戦った安倍政権ですが、いつの間にかTPPが成長戦略の目玉になっています。それどころか国連総会出席で訪米してもオバマ大統領とは会えず、それどころかロシアのプーチン大統領にまで足元を見られて相手にされなくなって焦っているのが滑稽です。Awayの神輿に乗ってチョーシこいて挙句の果てですね。

てなわけで、最近言われなくなったアベノミクス関連で申し上げれば、第一の矢の大胆な金融政策の成果が曖昧になりつつあります。8月には遂にコアCPIがマイナス0.1%になりました。日銀は原油安を原因としてますが、エネルギー価格を除いたコアコアCPIでもプラス0.8%で物価目標の2%には程遠い状況です。これGDPデフレーターで見れば一目瞭然なんですが、結局2014年4月の消費税増税に伴う上昇を除けばほぼ横ばいで、増税前には増税の影響を除いて2%と言われておりましたが、それもどこへやら、おそらく来年4月の消費税再増税で数字を整えることになりそうです。

とはいえ2度に亘る消費税増税の影響で国内消費は冷え込みますから、緩和の出口どころか追加緩和を求められる状況になります。しかし国債が市場から消え、株価ETFやREITなどのリスク資産も増やすのは難しいですから、手があるとすれば日銀当座預金口座に銀行が預けている超過準備の利息をゼロ乃至マイナスにするぐらいでしょうか。とはいえ設備投資も減って融資先を見いだせない銀行は打つ手なし。新興国減速で海外事業も縮小傾向。あとは社債発行や企業M&A融資などへ資金を突っ込むしかないでしょう。結局回り回って株価は上がるかもしれませんが、債権がわりの長期保有主体で株式の流動性が低下すると、短期資金が入って株価のボラティリティが高まるという矛盾した状況になります。

一方で米FRBの利上げ問題がありますが、年内利上げを謳いながら9月利上げが見送られました。おそらく年内利上げは間違いないでしょうけど、世界規模で進むリスクオフで世界の経済成長が鈍化する中、利上げの先送りは利上げそのものの判断をますます難しくします。幸い米国内の金融規制強化の効果でバブルの発生は抑えられておりますが、新興国の減速でドル資金の還流は利上げの有無に関わらず起こり、カネ余りの日本市場へ流入ということで、円高へ振れるようになります。元々リスクオフ相場は円高要因ですが、ドル円ではあまり動きが見られませんが、新興国通貨の下落でドルと円が同時に上がっているだけで、FRBが利上げ断念となれば、円独歩高もありえます。さてアベノミクスは何処へ。

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Sunday, October 04, 2015

ハイブリッドな世界

米中首脳会談で見せた南シナ海での中国の強気といい、ロシア軍のシリア空爆といい、いよいよパクスアメリカーナの終わりが見えてきました。当のアメリカですが、軍事費削減は保守とリベラルとを問わない課題と認識されています。世界平和のためにアメリカの兵士が傷つくことを認めないという世論が優勢です。

てな状況で安保法案を強行採決した日本の対応はいつもながら世界が見えていないなあとため息が出ます。腰が引けたアメリカの肩代わりをするわけですから、日本にとって何のプラスもありません。もちろんアメリカの軍事プレゼンスの後退は、世界レベルで地政学的な緊張をもたらすことは間違いないですが、だから日本が代わりに出て行くってのは、いかにもなドシロート発想ですね。実際は南シナ海問題で中国と対立するASEAN諸国も、米中の軍事バランスを睨みながら立ち位置を確保するハイブリッド戦略に舵を切っています。アメリカべったりはほぼ日本だけです。

一応私の立場を明らかにしておきますが、私は護憲、平和の立場をとりません。アメリカの軍事プレゼンス後退の当然の帰結として、日本も国連などから軍事的な協力を求められる機会は増えるでしょうし、それをすべて無視するというのも非現実的ではあります。ただし自衛隊の海外派兵には憲法9条の制約があるわけで、現政権が憲法の解釈変更に踏み込む閣議決定をした時点で、どういう法理論で対応するのかは注目しておりました。そして国会論戦で明らかになったのは、あまりにいい加減な姿勢でした。という訳で、今回の安保法案は強行採決も含めて法手続き上の重大な瑕疵があるという点で容認できないという立場です。

集団的自衛権に関しては、今回の安保法案で可能とされる事柄はほぼ個別的自衛権の範疇に入ります。海外派兵に関しては、結局国連PKO活動への参加など、集団安全保障の枠組みの問題であって、集団的自衛権とは別の話です。その観点から解釈変更で自衛隊を海外派遣できる可能性に絞って考えれば、憲法9条2項の戦力不保持を、軍隊への指揮権を持たないとすることぐらいでしょう。

現実の自衛隊は一応専守防衛の縛りの中で、指揮権は形式上内閣に付与されておりますが。都道府県の要請を受けてという条件が付けられています。海外派兵する場合は国連の要請を受けて国会の承認の後に派遣を決めるという形で指揮権を制限し、且つ派遣期間中は国連に指揮権を委ねるという形にするというところでしょうか。その場合派遣される自衛隊員の身分を保護する意味で自衛隊を軍法を持った正規軍とする必要があり、そうでなければ民間人と看做され営利誘拐の対象にすらなりかねませんから、むしろ攻撃のターゲットにされる危険もあるわけです。当然PKO部隊にとってはお荷物になるわけですが、解釈変更で望むにはハードルが高すぎます。やはり憲法改正を考えざるを得ません。時間がかかるから解釈でってのは危険すぎます。

で、忘れられているのが南スーダンPKOなんですが、2011年に当時の民主党政権が参加を決めたものの、戦後復興支援だったものが、現地の国内情勢は悪化の一途で、そんな中で韓国軍への弾薬の提供が明らかになるなど、現実が先行している現状です。今回の安保法案成立で、駆けつけ警護が解禁されるそうですが、南スーダンPKOの参加国では中国が千人規模の部隊を派遣しており、駆けつけ警護の対象は中国軍?あれ、仮想敵国ぢゃなかったんかい。

本来は期限終了を待って一旦撤収し、法を整えてから再度出直しでしょうけど、国会論戦のドサクサの中、8月末の期限を来年2月末まで延長されました。なろほど国会でも盛んに「切れ間のない対応」を言っていたのはこれかい。これがホントのスーダン的自衛権。



























































































































































あと安保法案の陰に隠れて派遣法改正が成立。しかも猶予期間殆どなしに施行されました。なぜそんなに急ぐのかといえば、12年改正法で3年を超える違法派遣を派遣先企業の常用雇用とみなすというみなし正社員制度を潰したかったってことですね。12年改正法が目指したのは、専門性が高く価格交渉力のある26業種を除く派遣労働を増やさないことです。これはILO181号条約で日本限定で常用雇用代替禁止が盛り込まれているように、日本の雇用慣行から、専門職以外の派遣雇用に歯止めが必要との認識で盛り込まれたものですが、それが今年10月1日から適用されることを経済界が回避を求めていたものです。違法派遣で裁判になれば勝てる見込みがないからです。

逆に言えば経営側はそんな法律守る気さらさらなしわけですが、日本の労働市場の特殊性であるメンバーシップ型雇用、いわゆる正社員の雇用の問題点として、雇用調整がしにくいことに関わります。メンバーシップ型雇用では、仕事の分担や達成度など職務の範囲は曖昧で、状況に応じて融通無碍で対応力が高いと言われますが、逆に言えば残業で仕事量が調整される体制でもあるわけで、雇用の安定の一方、使用者側の人事権が肥大化し、辞令1枚で人員配置を変えられるわけですが、90年代以降の過剰生産の調整過程で雇用調整に整理解雇が使えないということで、所謂肩叩きや追い出し部屋などが問題になり、訴訟にもなって会社側がことごとく敗訴といった事態になり、事実上雇用の安定は失われたわけです。

生産設備の調整を経て生産体制を整えた後も、企業は正社員を増やさず調整しやすい派遣社員の雇用に切り替えてきた流れを逆転させたくないというわけですが、その結果リーマンショック後の派遣切りでも明らかなように、派遣社員の不安定さを露呈しました。当時も派遣期間3年の縛りはあったのですが、自動更新が認められていたので、実際は派遣社員はいつまでたっても派遣社員のままである一方、リーマンショックのようなリセッションの時には真っ先に切られる存在ということですね。それを踏まえて派遣期間3年の縛りに実効性を持たせることは当然のことですね。

同時に派遣労働は所謂労働市場のミスマッチの解消のための雇用の流動化に資する利点もあるということで、完全に禁止するのではなく、常用雇用への橋渡しを意識したのが12年改正法のキモだったわけです。派遣雇用に関しては、3年の期限は雇用者に対してではなく職務に対して課された制限で、常用雇用が難しい新規事業の立ち上げなどで派遣雇用者を活用することを想定し、3年経てば常用雇用が可能なはずということで、その職務を常用雇用化するというもので、その際同じ雇用者である必要はありません。

あくまでも職務単位ですから、例えば派遣雇用者が自己都合で2年後に退職した場合、代わりに派遣される派遣社員の派遣期間は残存期間の1年になるわけですし、例えば3年経って常用雇用化されても、雇用者が常用雇用を希望しない場合は、例えば派遣先企業の常用雇用者が職務を引き継いでも良いわけで、明確にジョブ型雇用が指向されていたわけです。ジョブ型雇用が広がれば、雇用の流動化が促進され、成長分野への労働力の移動がスムーズになりますし、一方で同一労働同一賃金も実現しやすくなります。また新規事業の立ち上げならば、3年経っても常用雇用が無理ならば、その事業からの撤退こそが正解なわけで、その場合は当然ですが常用雇用への移行義務はありません。

それが今回の改正法では専門26業種も含めて、3年毎に人を入れ替えることで派遣労働を固定化するわけですから、改悪以外の何物でもありません。ジョブ型雇用の前提も成り立たず、一方で正社員のメンバーシップ型雇用と併存するハイブリッド型になりますから、よく言われる同一労働同一賃金の条件も整わず、ただ雇用者間の競争にさらされて賃金が低位平準化されるだけです。これによってもたらされるのは雇用の流動化ではなく雇用の忌避でしょう。全員ではないですが、親世代の蓄財を相続して働かないで生きられる現役世代は確実に一定数存在しますから、ただでさえ生産年齢人口が減少している中で、労働力率が低下するという笑えない状況になるわけです。これで経済成長できると考える今の日本のリーダーたちの近視眼は救いようがありません。

もう一つ地方創生問題。その源流の平成の大合併の舞台裏が日経紙面に。

地方分権改革、合併迫る 交付税削減は邪道だった:日本経済新聞
「知事の権限が強くなるのは好ましくない」「市町村にも権限委譲しろ」「人口が少ない市町村に合併を勧告しろ」と与党議員の大合唱に押し切られて、市町村が望まない平成の大合併が決まったということですね。利益誘導型政治の成れの果てで人口の少ない地方自治体を合併に駆り立てても、人口は増えないから問題は解決せず、「地方創生」の掛け声で壮大なバラマキで各市町村がプレミアム商品券を発行し、売り出しの列に並ぶのは仕事をリタイアした高齢者世代。彼らはきっと次の選挙でも与党に表をくれるということか。

というわけで、この国のリーダーたちは問題解決の意思も能力も持たないことは明らかです。その結果こんなところに影響が。

JR北海道が合理化策 赤字事業、抜本見直し:日本経済新聞
結局地域の人口減少と高齢化で鉄道利用刃先ぼソルばかりで、結局駅や路線の廃止、ローカル列車の縮小しか手立てがないわけです。2016年には老朽ディーゼル車の代替車を投入予定ですが、ローカル列車の縮小は代替費圧縮にもなるという情けないもの。ま、現状を包み隠さずとなればこれ以外の言いようはないわけですが。

代替車はJR東日本のハイブリッドディーゼル車派生の電気式ディーゼル車が予定されてます。JR東日本のハイブリッド第1号キハE200「こうみ」から当初はキハ40系列改造のリゾート列車代替から仙石東北ラインのEV-E210で量産化される一方、ACCUMの愛称を持つ烏山線EV-E301という派生車も。蓄電池駆動車ですが、東北線宇都宮―宝積寺間は架線終電で電車モードで走り、非電化の烏山線内は蓄電池駆動モードで走りますが、リチウムイオンバッテリーの蓄電量を60%に制限して安全性と長寿命化を図っているので、非電化区間の走りはかなりぬるく、それでもキハ40系列並みではあるというわけでしょう。

その点「こうみ」は勾配区間でも力強く走ります。発進は電車同様静かでスムーズですが、すぐにディーゼル発電でパワーアシストされますから、バッテリーを労わりながら走れるわけですね。蛇足ですがディーゼルエンジンの排気ブレーキ機能が抑速制動に好都合という点も指摘できます。圧縮比の高いディーゼルエンジンを生かした状態で燃料噴射を止めると、回転抵抗で圧縮熱が発生し、ラジエターで大気中に熱放散されますから、電気車の抵抗発電ブレーキと機能的には同じです。

仙石東北ラインのHV-E210がバッテリー駆動ではなくハイブリッドディーゼル車になったのは、結局交流電化の東北線ではパワー走行が欠かせないし、交流区間では交直変換しないと蓄電できないわけですから、コストアップになる。ならばディーゼルでという判断だったのでしょう。更にバッテリーも省略して電気式ディーゼル車にすれば、電車並みのメンテナンスフリーを実現できる可能性があるわけで、そうなると全検6年重検3年のディーゼル車の検査周期を電車並みに全検8年重検4年に伸ばせる可能性もあり、メンテナンス費用の圧縮は福音になります。JR北海道もおそらくその点を期待しているでしょう。こういうのを技術革新とかイノベーションと呼ぶわけで、裏付けのないコスト削減はむしろ事業の弱体化をもたらします。

あと余談ですが、JR東日本のキハE200に始まるハイブリッド車の革新性ですが、コストや充放電特性を考えればニッケル水素電池を使ってコスト削減と制動時の回生電流を最大限蓄電する手も有り得ましたが、エネルギー比重の優位で軽量化を重視したものと考えられます。加えて上記の排気ブレーキの活用で勾配区間での安定した制動力の確保も可能ということもあります。

加えてディーゼルエンジンもコモンレール式のクリーンディーゼルエンジンですが、これはVWの排ガステスト不正でミソつけてますが^_^;、自動車の場合と比べて負荷変動そのものは小さく、またハイブリッドシステムで専らパワーアシスト中心の使い方ですので、クリーンディーゼルエンジンの使い方としてはより理想的な使い方です。実際VWもクリーンディーゼルだけで勝負というよりは、ライバルのトヨタに遅れているハイブリッドシステムとクリーンディーゼルを組み合わせたディーゼルハイブリッド車を着地点と考えていたようですが、当面プレミアム付きで高く売れるクリーンディーゼル車を売りたかったってことでしょう。ある意味JR東日本のハイブリッドシステムは先取りしているという見方も可能です。

てことでハイブリッドもいろいろです。

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