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Sunday, October 25, 2015

ハマの斜塔で未来へつづき

VWも霞む企業の不正事件が日本で起きました。横浜市都筑区のマンションの傾斜で発覚した基礎杭の長さ不足ですが、日本固有の多重下請け体制で、販売会社の三井不動産レジデンシャル、施工元請けの三井住友建設、1次下請けの日立ハイテクノロジーズ、2次下請けの旭化成建材と当事者が多くややこしいため、責任問題が有耶無耶になりやすいので注意が必要です。

マンション傾斜:くい施工、確認作業もずさん? - 毎日新聞
さまざまな報道でそもそも元請けの三井住友建設が用意した基礎杭の長さが足りなかったことも報じられており、そもそも設計ミスだったとも言われますし、施主の三井不動産レジデンシャルも、総額2兆円に及ぶ大規模開発で着工前から売り出していたわけで、納期順守のプレッシャーも大きかったと見られます。ちなみに旭化成建材のこの事業での売り上げは80億円ほどです。

時期的には小泉政権の財政再建路線で公共工事が減る中で、大都市部の容積率や高さ制限の緩和で民間の建設工事が盛んだった時期で、例の姉歯問題ともオーバーラップします。当時言われていたのが、建設費の二極化です。公共工事は談合もあり、高値受注の傾向にあった一方、その公共工事の減少で押し出されたゼネコンが民間工事に殺到し、安値受注の傾向が出てきたことです。そのギャップは民間工事が公共工事の半値と言われるぐらい広がりました。あの姉歯事件もそんな背景の中で、大臣認定ソフトのデータ改ざんでコストダウンを狙ったものでした。

加えて納期の縛りが強い点です。特にマンションの場合、着工前から売り出して完成前に完売が当たり前といった風潮もあり、それだけ現場へのプレッシャーも強かったと考えられます。更に元請けの設計の甘さで用意された基礎杭が短いなどの不具合があっても、下請けの現場作業者が指摘できたのかどうか。用意した資材で納期を守れとなれば、面倒なことはスルーされても不思議ではありません。この辺は結果的に損失が出ても利益保証で事後的に事実上損失補填してくれる公共工事とは違います。というわけで、姉歯問題と同様の時代背景を見ておく必要があります。

奇しくも姉歯問題で矢面に立ったのが第1次安倍内閣というのも因果は巡ります。姉歯事件でも結局行為者の処罰と規制の強化で幕引きした結果、原因を作った構造自体は残っているわけですから、時を経てそれが表へ出てしまうことは防ぎようがないわけですね。今回も石井国交相は、旭化成建材の過去10年間の請負工事のデータ改ざんの有無の報告を命じ、一方で規制強化を打ち出しております。この流れだと行為者である旭化成建材の現場責任者の処罰と規制強化だけで終わりそうです。設計ミスの可能性のある三井住友建設も、施主であり、販売の都合で納期を厳しく設定した可能性のある三井不動産レジデンシャルもお咎めなしということですね。

あとマンション特有の問題として、仮に建て替えるとしても、住民の4/5以上の同意という区分所有法の規定があり、建て替え費用の負担がないとしても、仮住まいへの転居というハードルがあり、これだけの大規模マンションですから、解体して建て替えるには3年はかかるわけで、転居を選ぶ人も多いと考えられます。その場合でも三井不動産レジデンシャルは買い取った上で建て替えまでやるのかどうか。その場合の費用負担をどうするかなどは全く見通せません。下手すれば廃墟となって放置される可能性も微レ存。ハマの斜塔出現というわけですね。で、似たような事件はすでに同じ横浜市内で起きていまして、建て替えには至っておりません。

横浜・三ツ沢の傾斜マンション、応急工事へ協議  :日本経済新聞
こちらは住友不動産のマンションで熊谷組が施工です。やはり設計ミスの可能性が指摘されており、都筑区の件と似ています。てなわけで、やはり氷山の一角と見るべきでしょう。本来は国会で取り上げるべきですが、野党の国会召集要請を無視している今の政権にはそもそも解決するつもりはなさそうです。全く性根の腐りきった政権です(怒)。

アベノミクスもそうですが、大胆な金融緩和と機動的な財政種痘の結果、一応データ上の需給ギャップは解消され雇用者も増えていますが、成長率は低迷したままです。つまりデフレは経済停滞の原因ではなかったわけです。むしろ7-9月も4-6月に続いて2期連続マイナス成長の可能性も指摘され、早速日銀に追加緩和のおねだりが金融筋から聞こえますが、おそらく打つ手はなさそうです。仮に欧州流に日銀当座預金の超過準備利息をいじってマイナスにしたとして、効果はほとんど見込めません。米FRBの利上げで円安進行を切に望むというところでしょうか。ただし早くても12月、下手すれば年明けの3月までずれ込む状況です。結局現状はあまり変わらないというところでしょうか。

加えて中国をはじめとする新興国の減速と、それとリンクした原油安の長期化で、サウジをはじめとして産油国の国家ファンドが投資資金を引き揚げ始めている状況ですから、先へ行けば行くほど世界経済は冷えてFRBの利上げの判断が困難になります。そもそも国内要因で見ればアメリカも景気のピークアウトが疑われますので、利上げ不発の可能性も若干あります。その場合は前エントリーで指摘したように円独歩高の可能性もあり得ます。ただ最近のドル円の膠着的な相場状況から見れば、日本の経済プレゼンスの後退でドル円の連動性が高まった可能性もあります。その場合は今後日銀がどう動こうがFRB次第ということになります。それもこれも潜在成長率の低下のなせる業なんで、供給側の構造改革、アベノミクスで言えば第3の矢こそ本丸だったんですが、全く手つかずです。

むしろハイブリッドな世界で指摘した派遣法改悪のようなことをやっちゃうわけです。12年改正法で意図されたジョブ型雇用への転換で、企業が事業を大胆に見直して成長分野へ雇用をシフトさせるという可能性を閉ざしてしまったわけです。結果的に正規雇用は長時間労働が常態化する一方、低賃金の非正規雇用の拡大で、雇用のミスマッチはむしろ拡大しています。雇用者の増加で完全失業率は改善してますが、雇用のミスマッチが解消されなければ、不安定な雇用環境で能力を活かせないから、経済が活性化するはずはありません。また上記のようなゼネコンの多重下請けのような仕組みも、見直されるべきですが、いつまで経っても温存され、問題が起きれば行為者だけが処罰されトカゲの尻尾切りに終わってしまうわけですね。

そういう意味では鉄道でも保線や車両保守で同様の下請け構造が見られます。鉄道事業に飛び火しないことを祈りたいところです。

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