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Sunday, November 22, 2015

放置国家の呆の支配

先週はパリの同時多発テロで大変でしたが、たちまち世界は9.11後の雰囲気に。当時イラク戦争に反対したフランスのオランド大統領の前のめりぶり概要です。一方議会野党の保守派と急進左派はそろってシリア空爆に反対しているという日本ではわかりにくい構図ですが、それ以上に気になるこのニュースです。

対米協力一歩前へ 首相「南シナ海に自衛隊検討」  :日本経済新聞
米中のパワーゲームに日本も混ぜろとでも言いたいのか。南シナ海へ進出したいのか?

中国の岩礁埋め立てと軍事基地化は確かに問題ですが、似たようなことはほかの国もやっていて、中国だけを責めるわけにはいかないのですが、埋め立て地を起点とする領海の主張は明らかな国際法違反なので、アメリカはそこを指摘し、実際にイージス艦を派遣し航行させたわけですが、事前に米中首脳会談前日の9/24に軍事対話の実施を調印し、イージス艦派遣に際して中国と協議を行っていますし、フィリピンやベトナムの領海エリアも事前通告の上航行しており、中国名指しにならないよう配慮しています。言ってみれば大国同士のさや当てのようなもので、大国同士のパワーゲームに過ぎないのですが、日本の政治家でそれを指摘したのは与野党含めて野田聖子だけっておい、他の奴らキンタマついとんのかい?

あともし仮に南シナ海への自衛隊派遣が実現すると、尖閣諸島の守りが手薄になるのは言うまでもありません。リソースは有限なので、むしろ中国にとってはおいしいところ。それ以前に日米防衛ガイドラインで米軍のプレゼンスが後退していることはほとんどメディアも報じませんが、中国公船の挑発は、アメリカと事を構えたくない中国が、アメリカが出てこないと見ているからなんですが、逆に軍の艦船を派遣しないのは、アメリカの顔色を窺ってはいるわけで、アメリカでも日米安保による巻き込まれ論が保守派内でも言われております。日本の独り相撲です。

近代戦争は国の工業力を背景とした総力戦という性格があり、ww1やww2が典型的です。その結果敵国の工業力を破壊することが戦略上求められるわけで、ww1でドイツ飛行船によるロンドン空爆から始まり、ww2の広島と長崎への原爆投下も同様です。かくして近代戦争は戦勝国も含めて参加国のダメージが大きすぎるということで、戦後東西冷戦もあって大国同士は直接戦争しないという暗黙の了解が成立します。その代り周辺国の代理戦争は収まらず、兵器性能が向上し殺傷能力を高めているだけに、紛争当事国の疲弊は尋常ではない状況になります。

という国際社会のコンテクストを踏まえれば、ロシアがウクライナイに干渉しクリミアを併合したのも、そうした軍事大国同士のある種の相場観から導き出されたもの言えます。そしてロシアのシリア空爆は二正面作戦に割けるリソースを持たないロシアのウクライナへの干渉は低下するし、またダーイシュ(イスラム国)という共通の敵を設定することで、ロシアと西側種国の対立も軟化するという連鎖になります。ロシア機撃墜とパリ同時多発テロで関係はさらに補強されます。おそらくクリミア問題は沙汰止みになるでしょう。そんなロシアに「北方領土返せ」と言って取り合ってもらえないのも無理もないところ。善悪を超越した外交の機微に疎い日本の出番はここにもありません。

で、シリア空爆ですが、ダーイシュ支配地域の石油精製施設への攻撃は、敵の工業力の破壊という戦略になりますが、ダーイシュは石油だけではなく、営利誘拐その他の資金源もあり、また「ユーフラテスの三日月」と言われる穀倉地帯を抑えていて、広大な農地への空爆はほとんど意味がありませんし、地上戦で奪回するにしても、戦線が間延びして対応が難しいということもあります。加えて古代イスラム帝国で異教徒に課した人頭税を徴収していると伝えられています。おそらくこの部分はイラクのバース党残党が担っているのでしょうけど、問題は異教徒の範囲でして、イスラム教シーア派や、スンニ派でもイスラム帝国再興という自分たちの大義に協力しない「堕落した」者たちも含まれてるかもしれません。人頭税を払わなければ容赦なく粛清されるという形で、恐怖の統治が行われているとすれば、難を逃れるシリア難民が大量に出ても不思議ではありません。加えて空爆もありますし。

そのシリア難民をドイツを中心にEUが積極的に植え入れる姿勢を見せていることは、人頭税の減少につながりますからダーイシュにとって面白くないわけで、また空爆への報復の意味も含めて、ロシア民間機やパリの劇場など、攻めやすいところを攻めているという意味で、ダーイシュのテロは戦略的です。殺害された実行犯の1人にシリアの偽造パスポートを持たせたのも、欧州の難民排斥の世論の刺激を狙ったものでしょう。

元々主権国家ならざるダーイシュとの闘いは非対称戦なわけで、ダーイシュは堕落したエジプトの官吏を篭絡したり、若年失業率が高止まりしている欧州で不満を抱く若者をリクルートするなど、ダーイシュ側のリソースをあまり消費せずに犯行に至ったわけです。それを支えるのがSNSなどのネットインフラですが、PS4やⅩboxなどのゲーム機のオンラインゲームのチャット機能を使った情報交換が行われていたという報道もあります。仮に通信を傍受してもネットゲームを楽しんでいるようにしか見えないわけで、犯行を事前に察知することは困難です。

というわけで、パリのテロは背景に先進国の所得格差の拡大があるわけで、結局ここを何とかしないとテロリストに付け込まれるわけです。空爆で解決できる可能性は皆無です。それでもロシアを含む大国同士で共通の敵を作ることで、格差問題のような厄介な国内問題を逸らすことはできるわけで、リベラルなはずのオランド大統領の過剰反応を見ると、暗澹たる気分になります。資本主義社会では所得格差の拡大は不可避で、対策の必要性を指摘したピケティの母国でもあるんですが。国内の格差問題という意味では、日本にとっても対岸の火事とは言えません。

その後の報道で実行犯の若者の実態も明らかになっておりますが、移民でフランス語が不自由でファストフード店ぐらいしか勤務先がなく職業的スキルを身につけるチャンスすらないといった中で、簡単にリクルートされているわけです。元々敬虔なムスリムでも何でもない若者が、イスラムの大義を教条的に吹き込まれればどうなるかということですね。このことの深刻さは、日本で言えば根拠不明の「日本の伝統」にコロッと騙され不満のはけ口を在日韓国人などへのヘイトスピーチで紛らすネトウヨやウソ八百の大阪都構想再びとやりたい放題の橋下シンパみたいなものとでもいえば腑に落ちるところでしょうか。99%役に立たなくても一般教養が重要なのは、簡単に騙されないことと言えます。大阪の人、民度が問われますぞ。

フランスと言えばこんなニュースも。

フランス北東部の高速列車脱線、10人死亡  :日本経済新聞
テロの翌日ということで、テロも疑われたようですが、単なるオーバースピードということでした。不可解なのは高速新線と在来線の連絡船部分で元々速度制限されていたはずですし、保安装置は働かなかったのかなどの疑問はありますが、続報がないので判断がつきません.。報道の通りならかなりお粗末ですが。

ただ日本でも気になるニュースがありました。

「自家用車タクシー」特区で解禁 交通網弱い地域中心、高齢者・訪日客の足に :日本経済新聞
所謂白タク解禁ですが、過疎地の交通に利用って、そもそも過疎地ではマイカーのトラフィック自体が少ないわけですから、ライドシェアが解決策になるわけがありません。むしろ現行の道路運送法78条、79条で自家用自動車の有償運送が定義されており、実際過疎地の乗合バス廃止代替などで活用されています。日本でライドシェアが解禁されていないのは、鉄道やバスなどの公共交通の役割が大きいことと、とマイカーのトラフィックが輻輳する都市部ではタクシーとの利害調整が必要なことに加え、安全輸送が担保できないとか白タクその他の雲助行為の懸念があることなどなどの理由が大きいでしょう。また多くの都市圏でタクシーの台数制限撤廃で過当競争となり安全輸送が脅かされる事態となって、逆に台数制限が課されているのが現状です。おそらくuberを意識した特区構想でしょうけど、現行法がどういう状況なのかを無視して何でもかんでも特区で規制緩和とは法治国家があきれます。

法の支配を価値観として中国に対抗心を燃やす安倍首相ですが、放置国家の呆の支配が実態です。

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