傾く日
テロ事件やCOP21など、さまざまニュースがありますが、今回は経済です。まずはこれ。
7~9月期実質GDP、年率0.8%減 2期連続マイナス :日本経済新聞元々2期連続マイナスは予想通りですが、これを景気後退とせずに景気回復途上の踊り場とするメディア報道は全く意味不明です。戦時中の大本営発表で大惨敗のミッドウエー海戦報道と見まごうばかりです。内需はマイナスですが、消費はそこそこ健闘したものの、設備投資が想定を下回ったもので、企業の先行き慎重姿勢は明白です。2015年度の内閣府試算(+1.5%程度)を実現するためには10-12月期、16年1-3月期ぞれそれで+4.7%程度が必要というわけで、2期連続のV字回復が必要というほとんど不可能な状況です。それどころか2014年度に続く2年連続マイナス成長の可能性もあり、明らかにアベノミクスは破たんしてます。
にもかかわらずその検証もなしに新三本の矢とかでGDP名目600兆円を目標に掲げる胡散臭さに呆れます。しかも16年度から推計方式の見直しで企業の研究開発費をコストから付加価値に変更するということで、これだけで20兆円下駄を履かせるインチキぶりです。加えて3%の名目成長率はザックリ23年で2倍になります。上記の下駄を履かせた状態では2020年頃には達成可能な数字ではありますが、異次元緩和でも現実の名目値は2%にも届かない状況です。ま、単に目先を変えて誤魔化しているというのが実際でしょう。
流石に近頃リフレ派は静かですが、どうしたんでしょうか。その中でアベノミクスを評価したアメリカのクルーグマン教授は、異次元緩和でも賃金が上がらない日本の現状を見込み違いとして事実上間違いを認めました。クルーグマン教授は元々ケインズ派で、財政出動や金融緩和で完全雇用が実現すれば賃金が上がるというケインズの理論から導き出した見解だったのでしょうが、日本で起きている派遣やパートなどの非正規雇用の拡大と正規雇用の縮小という歪んだ労働市場の現状を知らなかったのでしょう。この点はアメリカでも最近はIT業界の高給と他業種の賃金低迷という二極化が進行していてイエレンFRB議長を悩ませているなど、世界的に進行している現象ではありますが。
ことほど左様に安倍政権の経済政策は出鱈目ばかりなんですが、法人減税を強引に進めていて、賃上げのためという説明がされてますが出鱈目です。アベノミクスの円安効果で最高益を謳歌する経団連加盟の大手企業こそ賃上げが実現しているものの、円安で原材料費の値上がりに苦しむ中小企業はむしろ賃金が下がっているのが現状ですが、法人減税の財源に赤字企業への外形標準課税というのは、最高益を謳歌する大企業の法人税を減らすために赤字の中小企業から税を取るという話で明らかにおかしいですし賃金上昇にもつながりません。携帯料金の値下げ問題にしても、家計の通信費シェアが上昇していることを問題視しているようですが、これもスマホの普及で2台持ちが増えた結果であり、それだけ携帯の利用が深度化したものということで、高市総務相と有識者会議は梯子を外された格好です。アホクサ。
てなこといろいろありますが、きりがないので本題です。
中古マンション価格頭打ちか 不動産市場の変調 :日本経済新聞これ割と重要なニュースなんですが、マンション販売が好調で、既に数字上はバブル越えの高値成約が続いていたんですが、種明かしすれば中国人による投資用の購入が相場を押し上げてきたものが、7月の上海株ショックを受けて資産の整理にシフトしたと見られます。その結果マンションが売られ、中古マンション市場の在庫が積み増す状況となっているわけですね。
投資用というのは賃貸などで運用することを意図したもので、Airbnbなどの民泊と呼ばれるシェアルームも含みます。政府の音頭取りで大阪市や大田区で民泊解禁の条例が成立しましたが、現実はすでにその先へ進んでいるわけです。で、比較的新しい物件が中古市場に在庫として積みあがれば、当然新築マンションの売れ行きに影響が出ます。というわけで、好調なマンション市況の終焉というわけで、2007年のミニバブル崩壊に近い状況になりつつあるというわけですね。
似てるのはそれだけじゃなくて姉歯事件で揺れた建設業界をまたしても傾きマンション事件で大揺れです。しかも予想通りというか、データ改ざん自体は業界全体に蔓延していたことが明るみに出てにっちもさっちも状態。やはり姉歯事件を受けて検査の厳格化で工事が滞って完成不況と言われた2007年とそっくりの展開です。しかも実際の工事は姉歯事件とほぼ同時進行で、発覚が今になっただけですが、奇しくも当時第1次安倍政権の時代。これ偶然ではありません。しかも横浜の傾きマンション事件でも三井住友建設と旭化成建材の対立が出てきて事態は混とんとしてます。
杭打ちミス、設計か施工か 三井住友建設と旭化成建材が対立 :日本経済新聞元々1年以上前に発覚したマンションの傾きですが、売り主の三井不動産レジデンシャルは消極的な対応でぬらりくらりしていたのですが、今年に入って横浜市の検査があって杭が支持層に届いていないことが報告されると、一転全棟建て替えを言い出しましたが、ブランド防衛に動いたと見られます。費用は通常建設会社の負担となりますが、元請けのグループ企業である三井住友建設にかぶせることを回避するためか、通常は表へ出ることはない2次下請けの旭化成建材を住民説明会に引っ張り出すなど謎の行動に出ます。どうも旭化成は嵌められたようです。
旭化成建材がデータ改ざんしたのは事実ですが、現場責任者は杭は支持層に届いていると主張し、旭化成は三井住友建設に再調査を申し入れてますが三井住友はそれを認めないという態度で膠着しています。全棟建て替えも管理組合全体で4/5、各棟で2/3以上の賛成という高いハードルを越えられずに補修だけで終わってあいまいな決着となる可能性もあります。そうなると真相は藪の中。問題は未解決のままとなります。
件の現場責任者も元々は3次下請けの社員で工事期間中旭化成建材に出向していた身分ということで、現在も全国の現場を渡り歩いている状況ですが、これはゼロ年代のミニバブル期の建設業界の状況からこうなったということは言えます。当時公共工事は圧縮傾向の一方、容積率緩和などで民間工事は盛んでしたが、工事費には大きな開きがあり、民間は公共の半分という極端なケースすらありました。その中で建設会社はリストラに勤しみます。高給取りだけど工事期間以外は仕事がない技術者を社外へ出し、社内に技術者がいない状況で、現場の監督業務まで下請けへ丸投げし、社員は現場から上がってくるデータを取り込んでパソコンとにらめっこという状況になります。いつしか現場では期日までにデータを元請けへ上げることが仕事というずれた状況になったわけです。
しかも若年人口の減少もあって技術者自身の高齢化は進み、若手の補充がないから技術は伝承されず尻すぼみどころか、今回のように現場の技術者に責任転嫁するような建設会社には協力する技術者がいなくなる可能性もあります。ある意味三井住友建設は虎の尾を踏んだわけです。さて、こうしてじり貧状態で、震災復興も半ば、五輪特需や国土強靭化などでリソースの枯渇は目に見えております。その意味ではマンションブームの終焉は微妙な時期の出来事という皮肉な結果ですが。
これかつて国鉄末期に赤字を理由に採用手控えの結果、今になって40代の中堅社員が不足し技術の伝承に支障するJR各社と同じ過ちとも言えます。逆にJRも今が正念場ということですが、残念なニュースあれこれが。
電柱折れ一時運転見合わせ JR横浜線、工事中に :日本経済新聞4月にも山手線・京浜東北線の神田駅付近で架線柱が傾いて止まりましたが、今回は横浜線の鴨井駅付近で工事中の架線柱が折れたということで、架線周りのトラブルは復旧に時間がかかるだけに繰り返してほしくなかったのですが、保守作業員の確保も含めt下請けに依存する傾向が強まっており、対策は難しいところですが、解決策というべき未来にも問題が。
。JR東、最新技術に誤算 山手線新型車両トラブル :日本経済新聞INTEROS(インテロス)という新システムで各種センサーで荷重や線路や架線の状態を監視し、制御に反映させるシステムを搭載したものの、物見高い鉄ちゃん達の集中乗車でシステムが破たんしほろ苦い営業デビューとなりました。試運転中に死重搭載を定員の40%相当でしか行わなかったなどが指摘されてますが、おそらくコンピュータでのシミュレーションでは問題なかったから省略したのでしょう。最近では自動車メーカーの新車開発でも同様のことは行われておりますが、いくらなんでも場合によっては定員の3倍超の荷重すらかかる通勤電車でなめてかかったと言われても仕方ないところ。その辺を突っ込むベテランが開発チームにいなかった可能性はあります。
最後のおまけ。
東芝、情報開示後ろ向き 米原発子会社1156億円減損発表 :日本経済新聞以前から指摘されてきたWHののれん代減損問題ですが、やっと減損処理は認めたものの、本体の連結決算には反映させず、情報開示が不十分と批判を浴びています。安倍政権肝いりのコーポレートガバナンスコードもどこ吹く風。そういえば東芝も知る人ぞ知る三井グループ。似ちゃうのかなぁ。
| Permalink | 0
「ニュース」カテゴリの記事
- 韓流ふてほど(2024.12.08)
- オールドメディアの不作為(2024.11.23)
- 高圧経済のワナ(2024.11.16)
- 年収の壁のウソ(2024.11.02)
- もう一つの高齢化問題(2024.10.27)
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 韓流ふてほど(2024.12.08)
- さては民民たま浮かれ(2024.11.30)
- オールドメディアの不作為(2024.11.23)
- 高圧経済のワナ(2024.11.16)
- インフレ下の政治混乱(2024.11.09)
「鉄道」カテゴリの記事
- 韓流ふてほど(2024.12.08)
- さては民民たま浮かれ(2024.11.30)
- オールドメディアの不作為(2024.11.23)
- 高圧経済のワナ(2024.11.16)
- インフレ下の政治混乱(2024.11.09)
「JR」カテゴリの記事
- 韓流ふてほど(2024.12.08)
- オールドメディアの不作為(2024.11.23)
- 高圧経済のワナ(2024.11.16)
- 年収の壁のウソ(2024.11.02)
- もう一つの高齢化問題(2024.10.27)
「鉄道事故」カテゴリの記事
- オールドメディアの不作為(2024.11.23)
- 地方は創生できない(2024.10.05)
- いしばしをたたいてわたる(2024.09.28)
- 赤字3Kの掟?(2024.09.21)
- JRの掟?(2024.09.15)
「都市交通」カテゴリの記事
- さては民民たま浮かれ(2024.11.30)
- 高圧経済のワナ(2024.11.16)
- インフレ下の政治混乱(2024.11.09)
- 年収の壁のウソ(2024.11.02)
- 三つ子の赤字(2024.10.12)
Comments