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Sunday, December 27, 2015

レジ袋と新聞紙

消費税の軽減税率を巡る自民と公明の協議アホらしさに声も出ません。ある意味安保法制以上に日本の民主主義が壊れた、あるいは最初から欠陥品だったかもと思い知ります。

そもそも日本の消費税制度は欠陥だらけで、税率の変更を大騒ぎしてやってますが、EU加盟各国はこともなげに税率も変えるし軽減税率も導入されてます。ただし低所得者対策としてはあまり効果がなく、むしろ線引きの曖昧さもあって運用面で混乱したり新たな利権を生んだりとマイナス面も指摘され、見直す議論もあるわけですが、遅れて導入する日本では、少なくとも現政権では一顧だにされていません。

それどころか、来年の参院選のことしか頭にないようで、財務省案のマイナンバーカードでを使って還付する案を「軽減税率の有難みが感じられない」と却下するあたり、本音はここですね。もちろんマイナンバーカードのセキュリティ真似など財務省案は問題だらけですが、軽減税率よりも還付の方が、低所得者対策としての効果は高いわけで、現在も住民税非課税世帯に1人当たり6,000円の還付は行われております。これは各自治体の課税台帳から抽出して該当する世帯へ通知し、申請させるという形で、現行の制度インフラの範囲で実行可能です。難点は申請率が低いことですが、低所得を恥じて申請を躊躇する世帯が多いということでしょう。

これは民主党が主張する所得税の給付付き税額控除と組み合わせて全世帯を対象とすれば解決します。その際所得税の基礎控除38万円+扶養控除や青色申告控除の65万円、合計103万円の基礎控除相当額の還付とすれば、女性の社会進出を阻む103万円の壁と言われる扶養控除制度の見直しが同時にできるわけで、課税所得のある世帯は還付の代わりに税金を控除するわけですから、この部分の予算の手当ては不要です。自公の軽減税率を巡る議論のスジの悪さは呆れます。

新聞報道では公明党の強硬姿勢に官邸が鶴の一声で決着というストーリーが語られてますが、実は軽減税率を制度として確立したいのは財務省というあたりは、あまり言及されません。地味ですが2021年からのインボイス導入が決まったことが最大の肝です。というか、従来日本の消費税制度はインボイス導入をしなかったために矛盾に満ちた制度だったということは指摘できます。

インボイスというのは税額票と訳されているようですが、取引毎に発行される税額を明示した伝票で、事業者はそれに基づいて預かり消費税から仕入れにかかった消費税額を算出して控除する仕組みです。その結果インボイスが金券の役割を果たすことになり、一連の取引の連鎖の中で、課税事業者にしか認められないインボイスの発行ができない非課税事業者が排除され、結果的に事業者同士の相互チェック体制が出来上がるわけです。

加えて税率の異なるものが混入しても問題ないので、複数税率の併存が可能で、この結果軽減税率が可能になるほか、税率の変更が容易になることになります。これは昨年4月の5%から8%への税率アップのときに政府が音頭を取って価格転嫁を促し、店頭の商品の値札が一斉に取り換えられましたが、事業者は取引時点の税率で明示された税額だけで例えば5%で仕入れた商品を8%で販売しても、実際の納税額は両者の差額だけですから、本体価格への影響が出ないわけです。またインボイスで税額が明示されますから、価格交渉で売り手と買い手の関係もフラットになるので、現状のように買い手側の一方的な値下げ要求はしにくくなるわけです。欧州で税率変更をこともなげにできるのはこのためです。

こう考えると財務省がインボイスの導入に拘った理由も明らかですが、総額から税額を逆算する現状の扱いとは全く異なった扱いとなり、周知期間を含めて長い準備期間が必要なわけですから、17年4月の導入はさすがに無理ということで揉めたわけです。結果は当面のみなし課税の容認などで着地したわけです。しかも当初中小企業だけとされたみなし課税を大企業にも認めることになりましたから、所謂新たな益税問題が出てきたわけで、21年のインボイス導入までにひと悶着ありそうです。

インボイスに関しては経済界の反対が強く、曰く「事務処理負担増で中小企業に負担になる」というのですが、よく考えたら大量のインボイスを管理しなければならない大企業の方が負担が大きいわけで、中小企業向けにはインボイス導入をIT化のテコにすることは考えられますし、必要ならばシステム導入の補助制度を設けて初期投資の負担を和らげることは考えられますが、大企業ほど確立した基幹システムの改修が大変なことになりますから、実は大企業が中小企業をダシにして反対している可能d性があります。しかし複数税率を運用する以上、インボイス導入は避けては通れません。

消費税は最終消費者が負担する仕組みですから、今回議論されている食料品に関して、軽減税率を適用するときに、極論すれば小売り段階だけ税率を下げれば良いわけです。なぜならば仕入れ段階で10%課税された商品でも、小売り売上時点で8%課税しても、当該小売事業者が納める税額は売上にかかる8%相当の税額から仕入れにかかる10%相当の税額を控除した差額だけで済むわけですから、インボイスで対応する限り問題は起きません。この意味って大きいんですが、説明するとややこしくなります。

例えばペットボトル入りの水で言えば原価に占める内容物の率は4%程度であとは容器代ですが、容器代は10%課税になるわけですね。そう、食品といっても容器や梱包材のダンボールやスーパーのトレーやレジ袋といった包材類は10%課税になりますので、流通段階での消費税の計算はかなり煩雑なものになります。公明党が当初主張していた区分経理方式が非現実的なのは言うに及ばず、当面可能な帳簿方式による簡便法やみなし課税制度も、実態としては相当な混乱をもたらすこと間違いありません。おそらく現場の混乱はマイナンバー以上でしょう。何となればマイナンバーはバックレても処罰はないですが、納税に関わる虚偽申告や脱税行為は重罪です。

というわけで、線引きにあいまいな部分があることも含めて、恩恵を受けるはずの食品業界や飲食・小売り業界は頭を抱えてます。帳簿方式を前提としてPOSやバックオフィスシステムを構築してきたものをかなり変更しなければならないし、当面の簡便法への適応をし過ぎると21年のインボイス導入が難しくなるわけで、2度にわたってシステムの大変革を求められるわけです。いやこれ、軽減税率導入で国民に感謝されると考えてろアホな議員たちは救いようがないです。Suica甘いかどころじゃないパンドラの箱です。

そんな中で喜んでるのが新聞業界。何でも報道の公共性に鑑み、軽減税率導入を求めていたのが認められたということで、基本的に宅配が軽減税率適用になるようです。これ人口減少とネットの普及で新聞宅配は部数を減らし続けており、巻き返しを狙ったんでしょうけど、そのために政府にすり寄って報道の魂を抜かれ質の低下した新聞を取る意味が失われます。ホントこのところ新聞は政府をヨイショするばかりで、クリティカルな報道は見られません。恥を知れ(怒)。

あ、でも軽減税率ならレジ袋の代わりにはなるか(笑)。

おまけ。

北海道新幹線、「青函」が阻む3時間台(真相深層)  :日本経済新聞
ただでさえ赤字にあえいで安全運航に支障が出ているJR北海道に赤字の新幹線誕生とか、悪い冗談。さらに。
ザハ氏側、類似性を調査 新国立、隈氏のデザイン案 :日本経済新聞
おいでよパクザハの森(神宮外苑)へ。結局再コンペは予想通り大成グループで決まり、ザハ氏からパクり疑惑を指摘され。ま、機能面からスタンドの形態は決まりますし、その機能の絞り込みが不十分な上、おそらくザハ案でもスタンド工事受注を見込んで鉄鋼など資材の調達を始めていた可能性のある大成建設の意向もあったのでしょう。工期を考えれば妥当とはいえ、透明性があるとは言い難いところです。今の政権こんなんばっかし。

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