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March 2016

Sunday, March 27, 2016

開花、花冷え、花粉症

お彼岸と共に桜の開花の報せと思えば、花冷えで冬の寒さ。昨日王子に出かけて、飛鳥山の桜も咲いていたものの、あの寒さで花見客は果たして居るのかどうか。花見も命がけです。寒さにもかかわらず花粉は飛びまくりですが、私は今まで悩まされたことがなく幸運でしたが、ここへきて鼻水とくしゃみが止まらず、すわ花粉症デビューなのかただの風邪かもわからず紋々としております。

てなことはさておき、課題を抱えて北海道新幹線が開業しました。今までの新幹線と違って、貨物との併用区間があり、最高速140km/hに制限されていて、最速4時間2分で4時間の壁を越えられず、集客に苦労しています。1番列車こそ完売だったとはいえ、予約状況は乗車率25%程度で当面赤字は避けられない状況で、在来線すべてが赤字で今でも毎年400億円の赤字を出し続けるJR北海道にとっては重荷です。この辺は以前から警告してたんですけどね。

北海道では新幹線の開業を歓迎する声がある一方、ジャガイモや玉ねぎなどの農産品輸送で生命線となる青函トンネルの貨物列車にしわ寄せを心配する声もあります。それ以上に在来線の縮小均衡が道民にとっては関心事でしょう。以前から申し上げてますが、JRにローカル輸送からの撤退を認める代わりに、地元自治体やバス事業者による肩代わりを促す意味でオープンアクセス制を導入すべきではないかと思います。バス事業者自身が乗務員の確保に苦慮する状況で、鉄道を軸にバスでフィーダー輸送を担う形で路線網を再編できれば、地域の利便性を高められる可能性があります。こういうことが新幹線以上に重要ではないでしょうか。

そんな中でこんなニュースが日経の1面トップに。

首相、サミット前に経済対策 財政出動で国際協調  :日本経済新聞
巷では消費税増税延期に絡めて衆参同時選挙という漢族もありますが、今回はちょっと違います。というのは、前回の法改正で景気条項が削除されており、再延期のためには先に法改正をする必要がありますから、夏の衆参同時選挙後ではタイムスケジュールがタイトになるわけですし、また前回は野党の中に消費税に対するスタンスの違いがあって、分断に使えたけれど、今回は野党共闘の動きの中で、消費税延期でまとまる可能性が高いということもあります。

てなわけで、消費税延期のためのマジックワードが「国際協調」。5月の伊勢志摩サミットを睨んでその前に補正予算を組んで財政出動で国際協調をアピールし、流れを作ろうということです。補正の内容自体は相変わらずのプレミアム商品券や老朽インフラの補修などで代り映えなし。これも繰り返してますが、人口減少下の固定資本投資は将来の負担増を招くので慎重にすべきです。

で、サミットの結果如何で「国際協調」のために消費税延期を打ち出すというシナリオです。どこまでも誤魔化しだらけのレトリックですが、メディアが突っ込まないからこういうことが言えるわけです。でも実際の世界の日本を見る目は別のところにあります。イエレンFRB議長のこの証言に注目です。

米、追加利上げ見送り 「年内は2回どまり」示唆  :日本経済新聞
、「海外経済にはリスクが残っていると指摘。そのうえで「中国の減速に驚きはないが、日本が15年10~12月期にマイナス成長に陥ったのはやや驚いた」と述べたんです。利上げに動く米FRBにとっては、海外リスクは中国よりも日本なんですよね。中国の減速は構造改革を公言して実行している結果なので、予想できるけれど、マイナス金利にまで踏み込んだ日本の景気が減速していることの方が驚きなんですね。またグローバルなマネーの流れにも変化が見られます。
ドル安加速、マネーの流れ急変 日本株に売り圧力  :日本経済新聞
やや錯綜してますが、追加利下げが遠のいたことでドル安となり連動して原油価格が上昇したわけです。盛んに言われた米利上げで金利差からドル高円安になるというシナリオは実現せず、逆の流れになっています。

結果的に利上げによるドル高で苦しめられてきた米製造業に追い風となる一方、円やユーロは反転上昇しており、マイナス金利にまで踏み込んで成果が出ないどころか、むしろ各国間の金利下げ緩和競争の結果、ゼロサムゲームになって無効化していると見るべきでしょう。尚、原油安の反転もドル安の連動で、結果的に採算の苦しくなったシェール関連が息を吹き返しますから、値上がりトレンドにはなりません。日本から見れば円高が原油高を相殺しますから、国民生活への波及は軽微ですが、円安で最高益更新を続けた日本のグローバル企業は利益の下方修正を余儀なくされます。元々円安誘導の意図があった異次元緩和ですが、2月のG20では懸念が共有されてます。

G20での「外圧」にいら立つ日銀  :日本経済新聞
これは議長国の中国の意向を踏まえたもので、日本へのけん制の意図はありますが、他の参加国も懸念を共有したことが日本にとっては想定外だったかもしれませんが、世界からはそう見られているということです。イングランド銀行のカーニー総裁の「マイナス金利を各国が導入すれば、効果が相殺されてゼロサムゲームになる」との発言にマイナス金利に対する世界の見方が集約されてます。あえて日本に釘を刺した形です。

それどころか世界では今回の円高で日本政府が為替介入に踏み込むんじゃないかという疑心暗鬼すらありました。流石にドル高に苦しんでいるアメリカ政府が容認するはずもなく、政府サイドは打つ手なしなんですが、政府、日銀の別動隊と言えるGPIF、共済年金、ゆうちょ銀行、かんぽ生命などが外債や外国株式への投資を増やしており、結果的に円高になると正体不明のドル買いが日本から入る状況を覆面介入と見做されていたりで、世界の懸念は根拠がないわけではありません。

あと財政出動が国際貢献になるというぶっ飛んだ理屈ですが、欧米で財政再建のための緊縮財政に国民が嫌気を見せている点を捉えてのアピールだと思いますが、とんだ勘違いです。EU憲章で加盟国は財政健全化の義務を負いますが、ドイツ以外の特に南欧地域の各国では緊縮財政に対する反発から極端なf右派政党が台頭したり、アメリカでも財政法で財政赤字の上限が決められていて、オバマケアをはじめとする社会保障の充実で出費がかさむ中で、共和党が多数派の議会が度々上限額の改正法成立を否決したりした所謂フィスカルクリフ問題に直面しています。

アメリカではとりあえず国防費の削減では一致しておりますが、社会保障に関しては共和党を中心に反対論が根強く、また共和党自身も茶会党やトランプ氏のような極端な主張が国民に喝采される状況で、むしろ財政出動を主張するのはリベラル派の方ですが、これとてオバマケアの政策評価をはじめ不満が募り、結果大胆な再分配を主張するサンダース候補の人気につながっています。民主党の方は最終的にはクリントン候補で一本化されるでしょうけど、予備選の論戦を通じてクリントン候補も主張を修正させられており、国際社会の財政出動の機運を最も喜ぶのはアメリカのリベラル派と考えて良いでしょう。

ですからアメリカのリベラル派の論客であるスティグリッツ氏やクルーグマン氏が安倍政権に対して財政出動をレクチャーしても、それは彼らの立場から当然の話で、歳出が歳入を大幅に上回る赤字予算を20年以上続けて財政を悪化させている日本の現状に対する対策にはなりえないことは注意が必要です。スティグリッツ氏はTPP反対まで踏み込んでますが、例によって日本のメディアはだんまりですが。

5月に発表される1-3月期のGDP速報値はマイナスの予想が優勢ですが、さすがに政府もこれはやばいと感じ始めたのでしょう。ま、後の祭りですが。金融緩和に過度に依存してまともな経済政策を何も行っていないんですから当然の結果ですが、いよいよ誤魔化しきれなくなってきたわけです。テクニカルな話が続きますが、昨年7-9月のGDPが速報値でマイナス0.8%から改定値でプラス1.0%に大幅に上振れした件も、政府発表では在庫の速報値に集計ミスがあったとされてますが、未確認情報で16年度末までに実施とされる研究開発費をコストから付加価値へ付け替える操作をしたのではないかと言われております。裏はとれておりませんが、金額にして20兆円に及ぶ費用の付け替えで4%相当の押し上げ効果がありますから、大幅上方修正の理由としてはあり得ます。とすれば消費税が8%になった2015年4-6月以来、マイナス成長がトレンドとして続いていることになり、むしろ肌感覚の実体経済に合致します。

そして2016年1-3月期には微妙な上振れ要因があります。四半期GDP成長率は前期比を4倍して年率換算されますが、厳密には1-3月は90日、4-6月は91日、7-9月と10-12月は92日と日数が異なりますから、補正しているけです。これを季節補正と言います。しかし今年はうるう年で1-3月が91日と1日多いんですが、うるう年関連の補正は行われません。たった1日と侮るなかれ、こんなニュースがあります。

スーパー・コンビニとも増収 2月、うるう年や総菜好調で  :日本経済新聞
うるう年の1-3月期GDPjは上振れして当然なんですが、マイナス予想とマイナス成長トレンドは続いているわけです。で、慌てて補正予算で財政出動となりますが、アベノミクスは順当としてきたこれまでの政府発表と整合性が取れないので、世界経済の停滞リスクを強調して国際協調というわけですね。G7で参加国の足並みをそろえられるかは微妙ですが。

てなわけで、開花しても花冷えでしかも花粉飛びまくりの春のような日本経済の現状です。

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Sunday, March 13, 2016

強靭化に背を向けるサプライチェーン

確定申告を終えてほっと一息の週末です。この時期更新が遅れますが、しがない個人事業主ゆえご容赦を。

ま、しかし税務署へ行ってみればパソコン並べて電子申告という今までと違った光景で、過去に電子申告した場合は16桁の整理番号が郵送で告知されており、それで個人認証して事実上納税者を番号で管理しており、マイナンバーを先取りしているのですが、そうすると次回からのマイナンバー紐づけの意味があるのか?という疑問がわきます。国税の範囲内での識別番号と省庁横断且つ民間利用も想定されるマイナンバーではセキュリティの脆弱性に大きな違いがあります。国税と年金に限定すべきでしょう。

ま、しかし電子申告がここまで定着すれば、むしろ給与天引きの被用者の納税でも、年末調整を廃止して個人による確定申告を義務付ける方が合理的です。その分間接部門で付加価値を生まない企業の人事部の仕事を減らせるわけで、その分マーケティングや研究開発にリソースを振り向けられるようになりますが、メンバーシップ型雇用で過大な人事権を企業が握る日本の雇用慣行では無理っぽいところ。結局働かない正社員が威張る日本の企業風土は変わりそうもないですね。

また確定申告は個人として国家権力と対峙する場面でもあり、納税者としての自覚を得る意味で重要です。私事になりますが、顧客のリストラで売り上げダダ下がりの一方、円安で仕入れが上がって、固定費はそのままというい収益構造で所得大幅ダウンですが、図らずも税の還付がありました。納税はある意味こういう時のバッファの意味もあるわけで、納税は国民の義務ではなく権利であると実感します。

てなことはいいんですが、東日本大震災から5年となり、メディアは特集を組むなどしてますが、25兆円もの財政資金を投入しながら道半ば。しかも内14兆円はインフラ投資に回り、巨大防潮堤が飛び飛びに作られてつながらないという変なことも起きているわけです。これ単純な話で、防潮堤の建設は被災地でも賛否が分かれており、むしろ海が見えずに避難が遅れるということが震災時にも実際に起きているわけで、工事が進まない中で、反対者のいない無人地帯だけ工事が進んだわけで、要は救うべき人がいないところばかり作られているということで、何のための復興事業なのか、本当にひどい話です。

またサプライチェーンの寸断も漸く解消されたものの、被災地立地企業の売り上げは震災前の水準に戻っていません。元々が過疎地で人も戻らない中ではやむを得ないところですが、風力やバイオマスなどの再生可能エネルギーなど新産業を興すことができていないわけで、ただ土建屋だけが潤ったという状況です。尤もそのサプライチェーンに変調が見られる昨今の日本ではあります。

過去エントリーを見ていて目に留まったのが中越沖地震のときの自動車メーカー横断の危機管理です。工場のみならず従業員の自宅も被災して工場再開のめどが立たない中で、自動車各社はラインを止めて人を応援に出して短期間に工場を再開させたわけで、危機管理のお手本のような出来事でした。災害の規模が違うとはいえ東日本大震災ではその教訓は残念ながら生きませんでした。そして自然災害もないのにラインが止まった最近のニュースがこれですね。

トヨタ、車両工場の全ライン6日間停止 愛知製鋼事故受け  :日本経済新聞
系列の愛知製鋼の爆発事故で特殊鋼部品の供給に不足が生じるためのやむを得ない措置ですが、中越沖地震のときのリケンとどこが違うかというと、系列会社で、しかも配合の僅かな差で品質が変わる特殊鋼は秘密のレシピで簡単に系列外のメーカーに肩代わりさせられないという事情があったからですが、巨大化したサプライチェーンでいわば急所と言えるところでの事故でお気の毒ではありますが、危機管理の観点からは2007年の中越沖地震当時より後退したと評価せざるを得ません。

また問題はそれに留まらず、ドイツやアメリカで進むiioTが日本の少なくともトヨタでは無理という現実を突きつけた出来事でもあります。ドイツのインダストリー4.0では、参加企業の技術やマンパワーなどの情報を開示して、適宜開示されたリソースを組み合わせて個別にラインを形成するわけですが、トラブルが起きればその部分を迂回する別ルートの形成まで自動化されていますから、今回のトヨタのようなトラブルがあっても、その時点での最善の迂回ルートが簡単にできるわけですが、秘密のレシピを含む愛知製鋼のようなサプライヤーがあると成り立たない仕組みです。

また作業者個々人の専用タブレットに作業指示を送信する仕組みですが、これがドイツ語に留まらず多言語をサポートしており、作業者の熟練度に応じた簡略から詳細にわたる表現のバリエーションも用意されるなどしており、なるほどこの仕組みならシリア難民も受け入れられるわけです。移民や難民の受け入れはこれだけで議論すべき問題ではありませんが、日本政府も移民受け入れを検討しているとかですが、受け入れ側の企業に全くこういった準備の気配すらない状況では実現は無理でしょう。人口減少の中で人手不足はますます深刻になります。

ただ注意が必要なのは、人口減少を補おうとして少子化対策を行うことは意味がありません。なぜならば元々高齢化によって現役世代の負担が増している状況で、出生率が奇跡的に上がって子供が増えれば、育児にマンパワーを取られますから、人手不足はより深刻になるわけです。高齢者の増加は当面続き、ピークアウトは2050年以降ですから、それまでは少子化対策は控えるべきです。ただし国民の権利としての出産と育児の環境整備は、少子化とは無関係に必要なことですから、今話題の保育所問題などは解決を模索する必要があります。

高齢化に関連して高齢者バッシングの風潮もありますが、年金で優遇されているなどの近視眼的な議論で意味がありません。高齢者の扶養はどのみち必要なことで、年金制度も保険料と積立金だけで成り立っているのではなく、財政負担もあるわけです。制度の存続だけを考えれば、財政負担を増やすことで対応は可能なんで、主に保守派が言う支給削減も、リベラル派が言うGPIFの損失問題も、実は本質的には些末な問題です。

そしてもっとマクロの視点で見れば、高齢化の進捗は現役世代の縮小のみならず、所謂ライフサイクル仮説による貯蓄の取り崩しの方が大きな問題です。老後資金のために貯蓄に励む現役世代は、リタイア後にその老後資金を取り崩すわけです。年金も超長期の貯蓄と見做せますから、マクロ的には含めで考えても問題ありません。そして生産=所得=消費+投資(貯蓄と等価)の等式にあるように平均年齢が低く貯蓄過剰だったかつての日本は投資資金が潤沢で、労働力の供給と共に資本の厚みでも優位にあったわけですから、高齢化はこれが逆転することを意味します。

つまり消費と投資の関係が逆転し、投資が細くなることを意味します。所謂資本の劣化が起きるわけです。その状況で現役世代が減少して生産が減れば所得が減り、消費は一定水準を維持しますから、行きつく先はビンボーまっしぐらなわけです。貿易収支の赤字転落もこのメカニズムによります。回避策は労働力の減少を補って余りある生産性向上ですが、製造業ではIoT抜きにはあり得ない話です。てなわけでトヨタの未来は大丈夫か?

もう1つの回避策は海外直接投資による外需の取り込みですが、これは曲がりなりにも日本企業は対応しており、貿易収支の赤字を所得収支の黒字で完全にカバーできています。尚、原発停止で原油や天然ガスの輸入増で貿易赤字に転落したとおっしゃる皆さんは、マクロ経済を知らない無知をさらけ出していると言えます。そもそも最大でも4兆円の輸入増で10兆円を超える貿易赤字を説明できないです。

それと震災復興でも触れた公共インフラの問題も注意が必要です。無人地帯の防潮堤のような経済的価値のない投資を行う余力は今の日本にはありません。公共インフラに限りませんが、固定資本は企業会計の減価償却に相当する維持費が必要です。マクロ経済指標では固定資本減耗と呼び、単年度主義の公会計では減価償却は制度化されていませんが、マクロ指標としての固定資本減耗は計上されます。これは私たちが払う税金が原資ですから、公的インフラが増えれば増えるほど国民負担は増えるということを忘れちゃいけません。

ちょっと気になるのは、維持費の観点からは軌道系システムは当面逆風になるということで、少なくとも新規投資は慎重であるべきです。報道では北陸新幹線の延伸ルートが話題で、とあるブログで国益で判断せよと指摘されてますが、整備新幹線は元々地方とJRの同意という形で国益をスルーする仕組みなので何寝言言ってんだって話ですね。むやみに固定資本を増やさないという観点からいえば、事業に着手しないのが一番国益に適うということは指摘しておきます。

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