開花、花冷え、花粉症
お彼岸と共に桜の開花の報せと思えば、花冷えで冬の寒さ。昨日王子に出かけて、飛鳥山の桜も咲いていたものの、あの寒さで花見客は果たして居るのかどうか。花見も命がけです。寒さにもかかわらず花粉は飛びまくりですが、私は今まで悩まされたことがなく幸運でしたが、ここへきて鼻水とくしゃみが止まらず、すわ花粉症デビューなのかただの風邪かもわからず紋々としております。
てなことはさておき、課題を抱えて北海道新幹線が開業しました。今までの新幹線と違って、貨物との併用区間があり、最高速140km/hに制限されていて、最速4時間2分で4時間の壁を越えられず、集客に苦労しています。1番列車こそ完売だったとはいえ、予約状況は乗車率25%程度で当面赤字は避けられない状況で、在来線すべてが赤字で今でも毎年400億円の赤字を出し続けるJR北海道にとっては重荷です。この辺は以前から警告してたんですけどね。
北海道では新幹線の開業を歓迎する声がある一方、ジャガイモや玉ねぎなどの農産品輸送で生命線となる青函トンネルの貨物列車にしわ寄せを心配する声もあります。それ以上に在来線の縮小均衡が道民にとっては関心事でしょう。以前から申し上げてますが、JRにローカル輸送からの撤退を認める代わりに、地元自治体やバス事業者による肩代わりを促す意味でオープンアクセス制を導入すべきではないかと思います。バス事業者自身が乗務員の確保に苦慮する状況で、鉄道を軸にバスでフィーダー輸送を担う形で路線網を再編できれば、地域の利便性を高められる可能性があります。こういうことが新幹線以上に重要ではないでしょうか。
そんな中でこんなニュースが日経の1面トップに。
首相、サミット前に経済対策 財政出動で国際協調 :日本経済新聞巷では消費税増税延期に絡めて衆参同時選挙という漢族もありますが、今回はちょっと違います。というのは、前回の法改正で景気条項が削除されており、再延期のためには先に法改正をする必要がありますから、夏の衆参同時選挙後ではタイムスケジュールがタイトになるわけですし、また前回は野党の中に消費税に対するスタンスの違いがあって、分断に使えたけれど、今回は野党共闘の動きの中で、消費税延期でまとまる可能性が高いということもあります。
てなわけで、消費税延期のためのマジックワードが「国際協調」。5月の伊勢志摩サミットを睨んでその前に補正予算を組んで財政出動で国際協調をアピールし、流れを作ろうということです。補正の内容自体は相変わらずのプレミアム商品券や老朽インフラの補修などで代り映えなし。これも繰り返してますが、人口減少下の固定資本投資は将来の負担増を招くので慎重にすべきです。
で、サミットの結果如何で「国際協調」のために消費税延期を打ち出すというシナリオです。どこまでも誤魔化しだらけのレトリックですが、メディアが突っ込まないからこういうことが言えるわけです。でも実際の世界の日本を見る目は別のところにあります。イエレンFRB議長のこの証言に注目です。
米、追加利上げ見送り 「年内は2回どまり」示唆 :日本経済新聞、「海外経済にはリスクが残っていると指摘。そのうえで「中国の減速に驚きはないが、日本が15年10~12月期にマイナス成長に陥ったのはやや驚いた」と述べたんです。利上げに動く米FRBにとっては、海外リスクは中国よりも日本なんですよね。中国の減速は構造改革を公言して実行している結果なので、予想できるけれど、マイナス金利にまで踏み込んだ日本の景気が減速していることの方が驚きなんですね。またグローバルなマネーの流れにも変化が見られます。
ドル安加速、マネーの流れ急変 日本株に売り圧力 :日本経済新聞やや錯綜してますが、追加利下げが遠のいたことでドル安となり連動して原油価格が上昇したわけです。盛んに言われた米利上げで金利差からドル高円安になるというシナリオは実現せず、逆の流れになっています。
結果的に利上げによるドル高で苦しめられてきた米製造業に追い風となる一方、円やユーロは反転上昇しており、マイナス金利にまで踏み込んで成果が出ないどころか、むしろ各国間の金利下げ緩和競争の結果、ゼロサムゲームになって無効化していると見るべきでしょう。尚、原油安の反転もドル安の連動で、結果的に採算の苦しくなったシェール関連が息を吹き返しますから、値上がりトレンドにはなりません。日本から見れば円高が原油高を相殺しますから、国民生活への波及は軽微ですが、円安で最高益更新を続けた日本のグローバル企業は利益の下方修正を余儀なくされます。元々円安誘導の意図があった異次元緩和ですが、2月のG20では懸念が共有されてます。
G20での「外圧」にいら立つ日銀 :日本経済新聞これは議長国の中国の意向を踏まえたもので、日本へのけん制の意図はありますが、他の参加国も懸念を共有したことが日本にとっては想定外だったかもしれませんが、世界からはそう見られているということです。イングランド銀行のカーニー総裁の「マイナス金利を各国が導入すれば、効果が相殺されてゼロサムゲームになる」との発言にマイナス金利に対する世界の見方が集約されてます。あえて日本に釘を刺した形です。
それどころか世界では今回の円高で日本政府が為替介入に踏み込むんじゃないかという疑心暗鬼すらありました。流石にドル高に苦しんでいるアメリカ政府が容認するはずもなく、政府サイドは打つ手なしなんですが、政府、日銀の別動隊と言えるGPIF、共済年金、ゆうちょ銀行、かんぽ生命などが外債や外国株式への投資を増やしており、結果的に円高になると正体不明のドル買いが日本から入る状況を覆面介入と見做されていたりで、世界の懸念は根拠がないわけではありません。
あと財政出動が国際貢献になるというぶっ飛んだ理屈ですが、欧米で財政再建のための緊縮財政に国民が嫌気を見せている点を捉えてのアピールだと思いますが、とんだ勘違いです。EU憲章で加盟国は財政健全化の義務を負いますが、ドイツ以外の特に南欧地域の各国では緊縮財政に対する反発から極端なf右派政党が台頭したり、アメリカでも財政法で財政赤字の上限が決められていて、オバマケアをはじめとする社会保障の充実で出費がかさむ中で、共和党が多数派の議会が度々上限額の改正法成立を否決したりした所謂フィスカルクリフ問題に直面しています。
アメリカではとりあえず国防費の削減では一致しておりますが、社会保障に関しては共和党を中心に反対論が根強く、また共和党自身も茶会党やトランプ氏のような極端な主張が国民に喝采される状況で、むしろ財政出動を主張するのはリベラル派の方ですが、これとてオバマケアの政策評価をはじめ不満が募り、結果大胆な再分配を主張するサンダース候補の人気につながっています。民主党の方は最終的にはクリントン候補で一本化されるでしょうけど、予備選の論戦を通じてクリントン候補も主張を修正させられており、国際社会の財政出動の機運を最も喜ぶのはアメリカのリベラル派と考えて良いでしょう。
ですからアメリカのリベラル派の論客であるスティグリッツ氏やクルーグマン氏が安倍政権に対して財政出動をレクチャーしても、それは彼らの立場から当然の話で、歳出が歳入を大幅に上回る赤字予算を20年以上続けて財政を悪化させている日本の現状に対する対策にはなりえないことは注意が必要です。スティグリッツ氏はTPP反対まで踏み込んでますが、例によって日本のメディアはだんまりですが。
5月に発表される1-3月期のGDP速報値はマイナスの予想が優勢ですが、さすがに政府もこれはやばいと感じ始めたのでしょう。ま、後の祭りですが。金融緩和に過度に依存してまともな経済政策を何も行っていないんですから当然の結果ですが、いよいよ誤魔化しきれなくなってきたわけです。テクニカルな話が続きますが、昨年7-9月のGDPが速報値でマイナス0.8%から改定値でプラス1.0%に大幅に上振れした件も、政府発表では在庫の速報値に集計ミスがあったとされてますが、未確認情報で16年度末までに実施とされる研究開発費をコストから付加価値へ付け替える操作をしたのではないかと言われております。裏はとれておりませんが、金額にして20兆円に及ぶ費用の付け替えで4%相当の押し上げ効果がありますから、大幅上方修正の理由としてはあり得ます。とすれば消費税が8%になった2015年4-6月以来、マイナス成長がトレンドとして続いていることになり、むしろ肌感覚の実体経済に合致します。
そして2016年1-3月期には微妙な上振れ要因があります。四半期GDP成長率は前期比を4倍して年率換算されますが、厳密には1-3月は90日、4-6月は91日、7-9月と10-12月は92日と日数が異なりますから、補正しているけです。これを季節補正と言います。しかし今年はうるう年で1-3月が91日と1日多いんですが、うるう年関連の補正は行われません。たった1日と侮るなかれ、こんなニュースがあります。
スーパー・コンビニとも増収 2月、うるう年や総菜好調で :日本経済新聞うるう年の1-3月期GDPjは上振れして当然なんですが、マイナス予想とマイナス成長トレンドは続いているわけです。で、慌てて補正予算で財政出動となりますが、アベノミクスは順当としてきたこれまでの政府発表と整合性が取れないので、世界経済の停滞リスクを強調して国際協調というわけですね。G7で参加国の足並みをそろえられるかは微妙ですが。
てなわけで、開花しても花冷えでしかも花粉飛びまくりの春のような日本経済の現状です。
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