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Sunday, June 26, 2016

英国EU離脱騒動の後始末

ポンド飛び出し案の定進んだ円高ですが、過剰反応ですね。事前の世論調査では拮抗しつつも残留派やや優勢だったことから、離脱の結果がサプライズになったわけですが、元々調査サンプルが偏ってたんでしょう。日本の参院選も共産党を含む野党統一候補擁立が進んだことから、従来の票読みノウハウが通用するかどうか微妙です。ま、嫌でも2週間後には結果が出ますが。ドル円で一時99円まで進んだ円高も、週明けを待たずに102円台まで戻しています。金融的な混乱は一時的なもので、どっかの首相がサミットでぶち上げたリーマン級危機には程遠いと言えます。

そもそも今回のイギリスの国民投票ですが、元々EU離脱を主張するイギリス独立党の議席が増えないよう、2015年総選挙のマニフェストで、EUとの条件交渉を行ったうえで国民投票を行うことを約束したもので、残留派のキャメロン首相の狙いはガス抜きと残留派勝利による政権の安定にあったんですが、前ロンドン市長のボリス・ジョンソン氏がそこへ付け込んで離脱派を盛り上げて、キャメロン首相追い落としを狙ったものです。

キャメロン首相の後継にはオズボーン財務相が控えており、このままではジョンソン氏の出番は無いと見られ、勝負に出たもので、権力闘争の側面もあります。離脱に票を投じた有権者は、緊縮財政で福祉が切り捨てられる一方、EUの規制で不利益を被るなどで、とにかく現状を変えたかったということですね。ジョンソン氏はそれを見抜いて離脱派のムーブメントに乗っかったわけで、政治家としての勘の良さを感じさせます。イギリスのトランプみたいに言われますが、はるかに教養人です。憲法改正に取りつかれた安倍晋三を止められない日本の政治家は論外ですが。

というわけで、元々キャメロン首相の政権基盤固めが逆に利用され裏目に出たわけですが、国民投票そのものには法的拘束力はないわけで、不都合な結果を受けて「新しい判断」^_^;なんて言わずに辞任表明は潔いところ。ま、事態の収拾の困難さを考えたら「続けます」とは言えないでしょうけど。経緯からすれば後継者最短距離はジョンソン氏ということになりますが、保守党内での評判が芳しくない。この点はトランプそっくりですが^_^;。

EU憲章では加盟国からEU委員会に離脱の通告を受けてから2年間は現状が維持されます。その間に通商や規制などの協議を行って個別協定を結んで、スイスやノルウェーなどのような準加盟国的なポジションに落ち着くわけですが、交渉は困難を伴います。だからEU側からはイギリスの準備が整わないうちに早期通告して協議に入るよう促している一方、当のイギリスは首相交代でひと悶着、外交を巡る手続きですから下院の同意を取り付けるのにもハードルがあるわけで、当然すぐには対応できません。民主政治の手続き論ですから、イギリス側はいくらでも待たせることができます。下院の議論如何では解散総選挙の可能性もあり、それだけ通告は遅れます。

てなわけで、日本のメディアではその辺の手続き論には触れずに直ちに対EU輸出関税が適用されるようなミスリードが見られましたが、ホントちゃんと取材しろよな(怒)。仮に交渉が決裂して関税が課される事態になったとしても、ポンド安で相殺される可能性が高いわけで、日本企業なども急いで独仏などへ拠点を移す必要はありません。日立の鉄道事業も当面はイギリスの高速車両受注ですから影響はないです。ま、大陸の新規案件には手を上げにくい状況ではありますが、規模縮小のEUにどれだけ投資案件が出るか。むしろイギリスに抜けられて痛いのはEUの方だということは冷静に見るべきです。

「英なきEU」に課題山積 経済や安保、地盤沈下  :日本経済新聞
GDPでも人口でもEUの1割以上を占めるイギリスの離脱は、EUの存在感を低下させますし、拠出金がなくなればその分EU委員会の予算規模が縮小しますし、それを回避するために加盟国の拠出金の増額というのはやりにくいでしょう。特にEUの勝ち組と目されてきたドイツのダメージは大きくなります。その一方で加盟国には健全財政を求めてばかりという不満もあり、優等生のドイツに負担を片寄せするとか、さらに進んで財政統合を行うとかといった議論はますます停滞を余儀なくされます。

一方のイギリスは中国と接近しており、オイルマネー由来のユーロダラー市場を先導したようにIMF-SDRの構成通貨となった人民元のオフショア市場の先導を狙っています。ある意味アメリカの同盟国としては異例の動きですが、逆にアジア地域でアメリカが出遅れているからチャンスと見ているフシがあります。例のパナマ文書流出はそんなイギリスへのアメリカのけん制と見ると、何だかきな臭くなりますが、金融資本主義時代の帝国主義競争という側面はあります。憲法解釈を変えてまで集団的自衛権行使に踏み込み、軍備を増強するアジア某国の世紀を超えた周回遅れっぷりは笑うしかないのか。

てなわけで、暫くは大きな動きはないと思いますが、金融政策には影響も。

米の追加利上げ遠のく FRB、英EU離脱で市場安定最優先  :日本経済新聞
6月の利上げ観測を先送りした米FRBはこれでますます動きにくくなりました。FRBの利上げを織り込んで動かなかった日銀とECBは追加緩和の圧力にさらされることになりますが、日銀に関しては三菱東京UFJ銀行の離反もあって、マイナス金利の深掘りはやりにくいところ。そもそも危機でも何でもなかった2014年のハロウイン緩和のような余計なことをするから打つ手がなくなってきており、動くに動けないのが実情です。

で、政府による為替介入も選挙絡みで話題になってますが、これも無理。ポンド安でドル高が予想される中で円売りドル買い介入なんかしたら、アメリカの仕返しが怖いことに。多分パナマ文書以上のスキャンダルが暴かれて政権が吹っ飛びますぜ。どうする安倍さん。

あとロンドンやスコットランドの独立によるEU単独加盟や国民投票のやり直し請願などのノイズもありますが、現実的には離脱協議の中で例外扱いの可能性はあります。特にロンドンを失うことのダメージをEUもわかってますし。しかしロンドンは王族が入るときにロンドン市長の同意が必要ってぐらい強い自治権を持っていますし、成文憲法のないイギリスの融通無碍さからいって中国じゃないけれど一国二制度は問題になりません。実際タックスヘイブンとされる英国領の多くは、独自の法律を持っていてイギリス法の適用外だったりしますし、かくも複雑なイギリスの統治システムからすれば、何とかなる問題にも見えます。

こういった地方の自治権の強さはイギリスの強みでもあるわけで、地方創生とか言って国が予算をばらまくどっかの国とは大違い。そもそも首相の電話1本で知事の頸が飛ぶなんてあり得ません。いっそ2020年五輪をロンドンに譲ってイギリスの新たな挑戦を後押ししたら?

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