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July 2016

Sunday, July 31, 2016

リオでじゃねえだろ!

都知事選当日で投票率が今までよりも高いらしい。関心が高まっているのは結構なんだけど、それだけ無党派層の票が結果あを左右するわけで、そうなると組織票頼みの増田、鳥越両氏の苦戦で小池知事の可能性が高いということになります。その場合ダメージが大きいのは鳥越氏の方ですね。ホント日本の左翼わぁ-_-;。

元々知名度で不利だった増田氏は落選しても都知事選に乗っかって名前を売った分だけ講演料アップでハッピー。弁護士の宇都宮氏を辞退させてまで野党統一候補に拘った結果、宇都宮氏の支持層まで離反というのは、米大統領選の民主党サンダース候補の辞退でやはり若い有権者が離反していることとパラレルですが、違いはサンダース氏が予備選を戦った結果、クリントン氏が主張をかなり修正せざるを得なかったこと。選挙戦は言論を闘わせることで有権者に判断の材料を提供するから意味があるんで、知名度で勝負がつく都知事選の不毛さはどうしようもないところです。

ま、誰が都知事になってもちゃんと都民のために働いてくれれば良いんですが、そもそも五輪霧中の中、競技施設整備の見直しに踏み込んだ舛添前知事が謎のバッシングを受けて辞任したのが今回の選挙なわけで、本来自公は選挙やりたくなかったんだけど、民進、共産両党が世論を煽って追い込んだ結果、掟破りの首相指示で辞任に追い込まれたものでした。その意味で都民のためにリスクを取って働いた舛添知事を辞めさせた以上、民進、共産両党は息のかかった都知事を当選させなければ二重の意味で都民を裏切ったことになります。民進が宇都宮氏に乗っかれば話が早かったんですが、共産が先に支持表明したことを嫌ったんですね。党派性まる出し。ホントしょーもなー。

あとは都知事として働いてもらうことですが、選挙戦で小池氏が対立を煽った都議会自民党は、法人税国税化で反対したにもかかわらず増田氏に乗っかったように変わり身が身上。小池氏も「てへぺろ」で和解となると、都議会野党が頑張らないと都民のために働いてくれいないでしょう。本来改憲派の小池氏が都政に関わることで改憲にタッチできなくなるなら護憲派としては歓迎すべきことですが、都知事選の勢いに乗じて小池新党という声も。中身はおおさか維新のカーボンコピーで、関西に比べて支持率の低い首都圏で改憲勢力を掘り起こしててなことをさせないためにも、都議の働きが重要ですが、舛添前知事のリオ行きを批判しながら都議団でリオ五輪視察がリークされて叩かれて中止じゃ、期待できんわな。リオでじゃねえだろ!

てな前置きとは無関係の北海道の話題です。まずはこれ。

「持続可能な交通体系のあり方」について
「持続可能な交通体系のあり方」について(PPT版)
JR北海道が自助では限界と地元自治体へ協議を訴えるプレスリリースですが、メディアも含めて地元の反応は冷ややか。そもそもJR北海道にお一連の不祥事がコストダウンの行き過ぎによるものなのに、一段のコストダウンを要求されても、死ねと言われてるようなもの。加えて重大な勘違いの可能性も。熊本地震で運休を余儀なくされた南阿蘇鉄道運転再開のニュースです。
南阿蘇鉄道が一部再開 地震で被災、3カ月半ぶり  :日本経済新聞
わずか7㎞ほどで本数も1/3というささやかなものですが、こうして自助の姿勢を示した上で出資者でもある自治体も支援して初めて、国による支援が検討されるという形で、自助、共助、公助の段階を踏むのが交通政策基本法の考え方です。北海道のように自治体がそっぽを向く限り、国の支援は出てこないわけです。この辺移動権という憲法の基本的人権と紐づけされた権利を定義した民主党案の交通基本法の内容を後退させた結果じゃないかと思います。考え方としての自助、共助、公助という部分は条文中に盛り込まれてはいるものの、元々理念法の性格が強いと言われる日本国憲法の規範性の強化という観点からは、憲法と紐づけされた立法というのは重要な視点です。

実は改憲を目指すとされる現政権ですが、例えば理念性の強い9条よりも、国会、内閣、裁判所などの権能を規定した規範法の部分で「原則として」の5文字を入れるだけで骨抜きにされます。そもそも憲法が原則を定めているのは当然だからあえて明記されていないだけで、例外事項は個別法で定義するのが立憲主義憲法のあり方なんで、それを骨抜きにするってことは、国権の最高機関であり立法府である国会の権能を否定することになります。事実上憲法破棄に等しいわけで、絶対乗ってはいけない議論です。

話を戻しますが、JR北海道では一応乗車密度2,000人以上が持続可能なラインと考えていて、札幌都市圏の例えば札沼線のように複線電化で乗客が増えている路線や区間もあるわけで、私企業である以上、こうした増収が見込める分野への選択的投資は欠かせないところですが、一連の安全対策投資の結果、投資の原資をひねり出す余裕もなくなってしまうわけです。みすみす収益機会を逃せば企業としての持続可能性は低下することになります。

あと貨物輸送との関係もJR北海道にとっては重要でして、青函トンネル区間の新幹線と貨物の線路共用で新幹線が140km/hの速度制限を受けているい上に、落下した金属片が三線軌条の信号回路を短絡させるトラブルもあり、メンテナンス上も負担となっていますが、そんな中で貨物撤退論が囁かれていました。

青函トンネル「貨物撤退」はなぜ封印されたか | ローカル線・公共交通 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
記事によると青函トンネルの貨物撤退の議論は国交省によって封じられたと。元々線路を痛める貨物列車の走行に対して旅客会社に支払う線路使用料が割安に設定されている一方、鉄道貨物のシェアそのものは高くないということで、フェリーの新造船投入で代替可能という議論ですが、貨物幹線であるJR貨物の経営の息の根を止める判断はできなかったのでしょう。そもそもJR北海道のトラブルの原因はJR北海道自身による列車の高速化と共に、軸重も重いDF200型ディーゼル機の投入による部分もあります。元々線路規格が低いまま民営化を迎えた北海道の鉄路にとっては負担ですが、今回のJR北海道のプレスリリースでは触れられておりません。

結局JR北海道の問題ははJR貨物をどうするかという問題ともリンクしていて、簡単に解決策を見いだせない状況に陥っております。ただ鉄道貨物の放棄はCO2削減策としてのモーダルシフト政策に反しますし、ドライバー不足のトラック業界の現状からも鉄道貨物の活用の可能性は大きいわけで、簡単には決められません。来られも含めて国が大方針を示す必要がありますが、リニアや整備新幹線と違って票にならないから政権の関心は低いまま。その一方でおそらくJR北海道より経営環境が厳しいと見られるロシアのサハリン州の鉄道がロシアンゲージの1,529㎜に改軌して本土と車両の共通化を図るという大改良をすると言います。領土としての北海道という観点からいえば、現状はあまりに冷たいというか。これじゃ北方四島の領土交渉でロシアが日本の本気度を疑うというものです。

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Sunday, July 24, 2016

アセット・バブル・イグジット

欧州がえらいことになってますが、単発的なテロが重なって体感治安の悪化は避けられないところも、対応が国にによって異なることが注目されます。シャルリ事件の影響もあるとはいえ、パリ同時多発テロでフランス政府が間髪入れず非常事態宣言をして大統領権限を強化し、以後期間延長を繰り返しながら現在に至ります。その一方でミュンヘン銃撃事件で犯人は単独犯でテロ組織との関係を否定したドイツ政府の冷静な対応が目立ちます。もちろん被害の程度の違いはあるんですが、戦前のナチスの台頭を許したドイツでは、慎重さが身についているのでしょう。

そんな観点からトルコのクーデター未遂事件を見ると、ちょっと待てと言いたくなります。トルコでもクーデターの1週間前にイスタンブールの空港のテロ事件などテロが頻発しています。紛争地のシリアやイラクと国境を接している関係でやむを得ないところはありますが、現政権の対応にも問題はあります。

欧米のダーイシュ(イスラム国、以下ISと記す)掃討作戦で、アメリカの空爆に空軍基地を提供するなど協調路線を取る一方、シリア・イラクで欧米が頼みとする勇猛なクルド人に対しては独立志向が強いということでトルコ国内に対立があり、クルド労働者党(PKK)をテロ組織と見做して弾圧しているわけで、ねじれがみられます。クルド人問題はEU加盟を希望するトルコに対するEUの人権問題批判もあり、複雑です。今回のクーデター未遂も、世俗主義の民主国家という現在のトルコの建国の精神に対して、エルドアン大統領がイスラム色を強めていることと共に、クルド人への弾圧も軍が問題視したと言われます。トルコでは政権の独走に軍がクーデターでストップをかけるということが度々起きており、軍自体は民主主義の守護者として国民の信任を得ている存在ではあります。

しかし不可解なことだらけです。

トルコの邦人「爆音、怖い」 軍反乱、抗議の市民が広場に大挙  :日本経済新聞
「エルドアン大統領は現政権への支持を示すため街頭に繰り出すよう国民に呼び掛けており」とあるように、丸腰の国民を武装した軍隊と対峙させて人間の盾にしたわけです。結果的に犠牲者とされる247人のうち160人以上が民間人という結果です。しかも民間人犠牲者を国民の反クーデター感情に訴えて非常事態宣言を正当化しているわけで、無茶苦茶です。こんな報道もあります。
トルコ大統領、軍反乱時に難逃れる 現地報道  :日本経済新聞
「当日の経緯を知る軍OBは「なぜクーデター勢力の戦闘機が(ミサイルを)発射しなかったのかはミステリーだ」とロイター通信に語った。」そうで、クーデター自体が狂言の可能性もあることを示唆します。一方それ以前に軍幹部の世俗派の更迭が相次ぎ、軍内部に不満がたまっていたという事情もあり、軍の組織統率力が低下していたとする見方もあります。クーデターの失敗はその結果だと。しかしそうするとトルコ軍の弱さを世界に晒したことになるわけで、加えて軍に留まらず司法や行政の政権に批判的な勢力を一掃して結果6万人超の拘束・解任で、むしろテロ対策は手薄になると見られています。シリアやイラクで劣勢のISのテロリストの越境でむしろテロを呼び込むとすれば皮肉です。

重要なのはトルコの大統領は選挙で選ばれる公職ではあるものの、トルコ憲法では名誉職で政治的な権能を持たないとされているにも拘らず、イエスマンで固めた現政権はエルドアン大統領の意のままに動いている点です。エルドアン大統領は大統領権限拡大を狙った憲法改正を目指しているそうですが、憲法改正するまでもなくこんなことができてしまうわけです。はて、東アジアの某国に似てないか?安倍政権が目指す憲法への非常事態条項の追加は危険だということと共に、トルコの場合現政権を支える与党は2015年6月の総選挙で過半数に達せず、必ずしも盤石ではありません。衆参双方で与党に2/3を与えた日本大丈夫か?安倍首相の支持層には神道系宗教の成長の家からスピンアウトした日本会議が。うーむ-_-;;。

思えばBREXITの背景に反移民感情があったとされますが、シリア難民の大量流入で離脱に傾いた英国有権者は少なからずいたでしょう。ただし不可解なのが元々EUに加盟してもシェンゲン協定には参加ぜず国境管理を続けていたイギリスがどの程度影響を受けていたかは明らかではありません。むしろ旧植民地を中心としたイギリス連邦の結びつきで多数の移民を迎え、しかも独自文化を尊重し多様性を強みに変えてきたイギリスで反移民というのはどうも残留派の印象操作のプロパガンダだったんじゃないかと疑われます。むしろEUの拡大で主権国家に屋上屋をかけるようなEU委員会の官僚主義に対する反発の方が大きかったんじゃないかと。とするとBREXITは必然だった?

EU自体が今直面している問題として、リーマンショックを受けた金融を巡る問題があります。バブル崩壊後の金融危機で銀行の整理統合が進んだ日本やリーマン後に公的資金で支えられながら再生したアメリカの銀行に対して、欧州では中小銀行が乱立し整理統合が進まない現状があります。EUによる預金保険制度の統一やECBによる銀行監督など金融統合が話し合われてますが、同時にバーゼル委員会の銀行規制強化で資本増強が求められ、破綻処理で民間に負担を分担させるペイルインを盾に公的資金注入ができにくい中で、金融危機時代の日本同様貸し渋り現象が起きているわけで、マイナス金利にまで踏み込んだECBの緩和策はそれを後押しする意図もあるわけです。

ただし実際は相対的に弱いイタリアなど南欧の銀行が緩和環境で淘汰を免れ延命する一方、好調なドイツでは金余りで設備投資が進むからますます格差は拡大するわけです。とはいえドイツ自身の貿易相手国としてのイギリスのプレゼンスの大きさから、メルケル首相はイギリスの立場も理解してEUのユンケル委員長のような強硬意見は言わないわけです。それでも先が見通せない中で投資を抑制する傾向は欧州全体で強まりますから、当分欧州の低迷は避けられないところです。

アジアでは中国の減速が結果的に日台韓やASEAN諸国にも影を落としますから、アジアも足踏みという中で、独りアメリカが気を吐く状況ということになります。実際FRBは量的緩和を終わらせ、利上げにまで踏み込んでいます。アセットバブルから出口へ進んだわけです。それでも利上げは遅々として進まず、むしろ利上げ延期が好感されて株価を押し上げるというヘンテコな状況で一進一退です。このアメリカの好調をどう見るかですが、シェール革命の影響の大きさを見るべきでしょう。

共和党大会で透ける「エネルギー孤立主義」 米州総局 稲井創一 :日本経済新聞
シェール革命でエネルギー自給が可能になれば、アメリカの経常収支が改善する可能性があります。そうするとエネルギー自給体制の中で国内産業を再生して雇用を生み出すというのは結構リアルなシナリオになります。トランプドクトリンも必然か?てなわけで、世界は今までとかなり違った方向へ踏み出しつつあるようです。気候変動バリ協定が空洞化される心配はありますが。

で、日本ですが、これだけ世界が変わっているのに、日本はなぜ変われないのか。一言で言えば変わりたくないんだろうということですかね。アベノミクスの弊害がこれだけ明らかなのに、当面食うに困らない程度の安定はあるから、それを崩したくないってことでしょう。これは同時に大胆な規制緩和にもマイナスに働きますし、例えば憲法改正も難しくしますから、それだけ現状維持圧力というか慣性が強いってことなんでしょう。

世界史的に似た状況は19世紀末の1873年から1996年までのイギリスに見られます。当時のイギリスは産業革命のアドバンスを使い果たし、米独仏の新興工業国の追い上げで窮地にあったのですが、同時に都市中間層の台頭もあり、紆余曲折はあったものの、中間層のヘゲモニーとしての民主政治が確立した時代でもあります。そして世界の労働法規のひな型となったイギリス労働法で労働時間に上限が設けられ、労働者の立場が確立した時代です。イギリスは結局覇権国の地位を失いますが、その一方でゆりかごから墓場までの手厚い社会保障を実現していくわけですが、これ丁度アベノミクスの逆ってことです。むしろこの大不況期にイギリスは経常赤字を拡大したのですが、日本は経常黒字を継続しており、打つ手もあるわけです。てなわけで Asset Bubble EXIT 略してABEXITがテーマになるわけです。

とはいえアベノミクスの本質はダメノミクスであり、出口でのリバウンドのショックは考慮する必要はあります。例えば今の日本でいきなり利上げができるかと言えば答えはNoです。まずは伸びきった日銀のバランスシートを徐々に縮小するしかありません。具体的には物価目標を取り下げた上で、保有国債は満期まで保有して償還させるわけですが、保有国債の期限も伸びて平均7年になってますから、保有水準を下げるだけで少なくとも7年以上かかるわけです。しかも高値で買い取っていてマイナス金利債もありますから、発券銀行の特権である通貨発行益の多くが失われ、経常経費を差し引いた剰余金の政府上納も減るわけで、その分財政に負担を与えます。結局金融政策は時間軸での資金の移転に過ぎないわけで、将来世代の負担増になるという意味では赤字国債による財政出動と大差ないわけです。

ただし国債償還による自然減もさらに時間をかけないと財政を通じた経済下押しJは避けられないわけで、実際には国債買い入れ額を徐々に減らしながら、日銀の保有国債全体でマイナス金利にならない範囲で対応するぐらいしかできません。急に買い入れをなくせばそのことによる国債暴落が起きかねませんので。てことは現状維持を言いながら徐々に買い入れ額を減らすぐらいしか方法がないわけで、その分出口に要する期間は伸びることになります。

また注意すべきは日銀当座預金の銀行勘定ですが、すべてマイナス金利が適用されているわけではなく、当座預金の名が示す通り、法定準備金相当額は金利なし、法定分を超えた超過準備のうちマイナス金利実施日の今年2月16日時点の当座預金残高の超過分に限定的にマイナス金利が適用されます。ですから銀行は以後の当座預金増加分にマイナス金利がかかるわけですから、預金を増やさないようにする一方、新発国債までマイナスの現状ではプラス0.1%の部分の預金準備を死守しようとします。事実上の不胎化というわけですね。この状況で国債が暴落して年利0.1%以上の利回りが見込まれると取り崩しが始まるわけで、ベースマネーの減少が早く進んで市場が収拾がつかなくなる事態もあり得ます。準備預金マネーが地雷になるわけで国債買い入れを減らすだけでも慎重にしなければなりません。現実的には10年20年と長い時間をかけざるを得ない。わけです。

ヘリコプターマネー導入の議論で期待が膨らんだのか、BREXIT後の円高が反転してドル円は一時107円まで戻しましたが、60年償還ルールのある日本では導入は不可能です。というよりも、赤字国債の借換債発行が制度化されていて、それが財政赤字の歯止めを失わせた現実があり、実質ヘリマネと変わらないということで、追加策としては不可能という意味ですが、それだけ後始末は困難を極めます。ある意味上記の経常黒字の継続が財政赤字の許容度を高めている可能性があり、困った問題です。

てことで参院選でアベノミクス継続を訴えて勝利した与党陣営ですが、早速秋の臨時国会で大規模な財政出動を打ち出すとしております。課題は財源で、10兆円20兆円といった数字が飛び交っているものの、既に税収の上振れ分やマイナス金利で浮いた国債金利見込み額も使い切り、真水となる剰余金は1兆円がいいとこ。残りは建設国債や財投で水増しとなりそうです。しかし建設国債は使途がインフラ建設に限られる一方、人手不足で執行が滞っている現状ではあまり増やせません。見方を変えれば建設コストの見直しで人件費を高く設定することで、間接的に賃上げにつなげるという経路は考えられますが、不足している建設職人は養成に10年はかかり実際建設現場では高齢の職人ばかりという状況では賃上げは彼らの懐を潤すだけで若年層の雇用増にはつながりません。

加えて先進国で公共インフラがかなり整っている日本のような国では、追加的なインフラ整備は収益逓減の法則で経済効果が低下する一方、固定資本の増加は維持費に相当する固定資本減耗の増加でそれ自体が財政を圧迫しますから、国全体で見た生産性を下げるだけです。あと財投活用は結局民間資金を吸い上げるだけですから、民間の設備投資の代替で低収益の投資が行われるわけで、これも成長の足を引っ張るだけで無意味です。

インフラ投資を是とする議論は、結局ストックの増加に意味があるのですが、そのストックの収益性が低下することを防ぐ手立てはないわけです。逆に社会保障に関しては高齢化による財政の圧迫から給付を見直せのような議論はフローしか見ていないのですが、例えば年金制度は制度ストックとしての意味合いがあるわけで、収支のデコボコはあっても持続可能であれば機能するわけで、そのためには保険料の原資となる雇用者所得が安定していることが大事なわけです。その意味でGPIFのリスク投資は避けるべきですが、いくら得した損したという議論は相手の議論の土俵に乗るだけです。制度の安定性を図って未納をなくすことが重要。将来の保険料の原資を増やす意味で最低賃金の上昇などで後押しすることが重要です。最低賃金問題は目先の景気への直接的な効果をうたうならばフローの議論の範疇を抜けられず、ちょっと違うというべきです。

また気になるのがこれだけ若者の貧困が言われているのに、廉価な公営住宅が不足している点。一方で人口減少の結果としての空き家の増加という現象があるわけですが、民間住宅ストックを活用した公営住宅の充実という形で、低稼働の民間ストックを活用して低所得層の生活支援を行うというようなストック面で国民生活を支える仕組みがあって良いのですが、一方で住宅ローン減税など持ち家を後押しして住宅ストックを増やして空き家問題を深刻化させるというバカなことを止めるべきです。結果的に住宅ストックの稼働率が上がって生産性を改善できます。

そんなこんなでまとまりつかないけど最後にこれ。

ナリタ・ハネダを経由しない訪日客が急増する?:日経ビジネスオンライン
あまり知られていませんが、富士ドリームエアラインズ(FDA)が好調です。発着枠の制限が厳しい成田・羽田に対してがら空きで着陸料も格安どころか補助金もらえるところすらある地方空港を活用し、エンブラエルの80人乗りクラスのリージョナルジェット機を用い、パイロット養成も自前。お陰で同型機を使うJALのパイロット養成まで受託収益の柱の1つにし、小型で燃費が良く80人乗りで搭乗率を高く維持できる一方LCCのように安売りはしないから利益率が高いというわけです。加えて国際チャーター便への参入を目指しているとか。バス2台分程度の定員ならばツアーの募集のハードルも下がり、外国人観光客を直接地方空港へ送り込むことも計画中ということです。

日本全国に立派な地方空港があり、それを小型のリージョナルジェット機で結べば、新幹線よりもはるかに小さな需要でも成り立つわけで、しかも国際チャーター便で直接外国人を地方へ送り込むといった新幹線にはできない芸当もできるわけです。並行在来線切り離しを含めて地方財政の重荷になる整備新幹線よりもこれだろって話です。立派だけど赤字を垂れ流す地方空港の収支改善にもなり、活性化にもつながるわけです。FDAに限らず例えば北海道庁は新幹線に期待するより北海道エアライン(HAC)を支援する方が良いのではないかと。その上でJR北海道の路線維持は市町村を巻き込んで模索するということですね。これ交通政策基本法の趣旨にも合致します。

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Sunday, July 10, 2016

託す幣分

カミングアウトしますが、租税回避もマネーロンダリングもやったことがあります。

租税回避といっても、単に確定申告して税の還付を受けただけですが^_^;。これ納税者の合法的な権利です。

最近はふるさと納税で還付を受ける人が増えているようですが、これも合法です。ただし問題のある制度ですが。任意の自治体に寄付をして確定申告すると、2,000円の自己負担を除いて税の還付を受けられる制度ですが、ふるさと納税の返礼品を巡って競争が過熱している状況で、流石に総務省も注意をしてます。主に大都市の自治体が税源を奪われ、対抗して返礼品を出すなどして泥沼状態ですが、限られた税源のパイの奪い合いを制度化したのは第1次安倍政権でした。ホントろくでもない。

で、当時総務相だった増田氏の都知事選出馬だそうですが、これに関与したんだよね。

都知事、法人住民税の一部国税化「とんでもない話」  :日本経済新聞
所謂地方創生予算の財源として都道府県税の法人事業税と市町村税の法人住民税の一部国税化したわけですが、都道府県では東京都が唯一の地方交付税不交付団体ですし、特別区住民税は都が徴税してますから、東京都が狙い撃ちされた形です。猪瀬知事バッシングはこれが原因とも言われてますが、都税の一部国税化を推進した都民から見れば裏切者です。まさか選ばないよね>都民の皆さん。

返礼品に関しては自治体の地場産業振興の狙いがあると言われますが、真に付加価値のある商品ならば実質2,000円でディスカウント販売する必要はないわけで、むしろ地方の零細な供給力を浪費することになりますから、中長期には地域の衰退を助長します。今すぐやめるべきです。加えて高額納税者にとっては事実上の租税回避行動となるわけで、なるほどパナマ文書で日本人の名前Tが少ないのは、海外の租税回避地を使う必要がないからとも言えます。課税当局から見れば、確定申告による合法的な租税回避は当局の税源の捕捉を助けるので問題はないわけですが。

てことで、パナマ文書の流出で大騒ぎしていますが、海外のオフショア利用も外形的には合法的な租税回避ではありますが、問題は情報の秘密性、匿名性にある点が報道ではあいまいです。例えばスイスのように銀行の守秘義務を法律で規定し、海外の富裕層の資金を集めるとか、ケイマンやバージンなど英国自治領や王族領や中南米諸国に見られる非居住者による匿名ペーパーカンパニー設立やシンガポールなど極端に法人税が低い地域など、いろいろな類型がありますが、これらを多重に組み合わせることで、海外流出資金の真の所有者がわからなくなる結果、本来の居住地や源泉地の課税当局から税源が流出すること、そして麻薬組織やテロ組織などのマネーロンダリングに利用されていることなど、様々な問題を抱えるわけです。

またヘッジファンドの一部などの私募ファンドには本人確認が緩いものもあり、場合によっては個人では買えないなどでオフショアのペーパーカンパニーが利用されるケースもあり、パナマ文書にも載っているようで、運用益を課税当局に申告し納税する限りにおいては合法ですが、申告漏れもありそうなので、日本の国税庁がどこまで迫れるかは見物です。元々投資信託(ファンド)は富裕層向けに資金を預って運用するサービスということで、匿名投資組合のような形態から始まりました。資金を託して貨幣を増やすという意味でタイトルのような当て字を考えましたが、タックスヘイブンを租税回避地とするよりも実態を表していると思います。

ちなみに日本でもかつて長期信用銀行発行のワリコーなどの割引債は無記名だったこともあり、企業幹部や政治家が活用してましたが、リクルート事件関連で当時の金鞠自民党幹事長が利用していたことが問題視され、見直されました。また銀行預金や郵便貯金の口座開設も本人確認がされておらず、架空名義口座が少なからずあると言われます。これらも法改正で新規口座に関しては本人確認が義務付けられましたが、過去分までは遡及されませんから、振り込め詐欺などの温床になっていると言われます。

あ、マネーロンダリングですが、近所の宇賀福神社ってとこで、お金を洗うと3倍になって返ってくるってことで、全国から人が集まってきます。通称銭洗弁天と呼ばれてます。ご利益はむにゃむにゃ^_^;。ちなみに北条執権時代の鎌倉ではそもそも銅銭の流通量自体が多くはなかったので、マネーロンダリングができる人は限られていたとか。今と同じだわwwwww。

パナマ文書の流出を契機にOECDを中心に国際的な監視体制ができつつありますが、これで問題が解決すると考えるのは早計です。アメリカは自国民の資金の海外流出に対しては厳しい対応をしていますが、国内のデラウエア州などは手つかずで、外国資本の流入は制限なしですから、新たな不平等条約になりそうです。スイスやルクセンブルグなどはアメリカの圧力に屈し、パナマ文書流出で英領バージンなどのタックスヘイブンとしての地位は低下するかもしれませんが、元々法人税率の低いアイルランドなどが取って代わるだけと見られています。BREXITでロンドンの肩代わりも狙える立ち位置の優位もあります。

尤もロンドンの機能の代替は簡単ではありません。EU離脱が金融にはマイナスの見方が強いですが、EUで検討が始まった金融取引税、所謂トービン税が導入されれば、国境を超える金融取引に課税されますが、EU域内との金融取引は課税されるとしても、域外資金のとりあえずのプール先、例えばオイルマネーやアジアマネーにとっては使い勝手が良くなる可能性があり、新たなタックスヘイブンになる可能性があります。現状のように租税条約は2国間条約に留まる限り、制度の差分を利用した租税回避はなくならず、結局国連やWTOのような国際機関で強制力のある一般ルールを定めるしかないですが、まずアメリカが従うかどうか。WTOもインドの緊急セーフガード発動でアメリカが見捨てて、TPPのような多国間FTAに重点をシフトしました。結局公平公正よりも国益重視という大国のエゴです。そのアメリカもアップル、アマゾン、グーグル、スターバックスなどの課税逃れを許しているのですが。

EUの立場の弱さは、域内に富裕層を多数抱えていて、タックスヘイブンを利用して税源が国外へ漏れ出てしまう現実を止められないことです。欧州版付加価値税や炭素税や上記の金融取引税など新たな税源を模索しているわけですが、それをあざ笑うように海外へ漏出してしまうことを止められません。ある意味欧州が気候変動を含む環境問題に熱心なのは、税源の模索の結果でもあるんですが、結局他国が追随しなければ資金流出を助長してしまうというジレンマを抱えています。イギリスの離脱問題で結局優位に立てない理由もその辺にあります。

日本の消費税の手本となった欧州の付加価値税も、アメリカからは輸出戻し税が事実上の輸出補助金であり隠れ関税ではないかという批判がされていたわけですが、EU域内では既に電子書籍など有料デジタルコンテンツへの課税で、サーバー立地国の課税当局がユーザーの居住国の税率で課税してデータ交換を行うシステムがスタートしており、いずれ輸出戻し税の廃止まで踏み込むことも視野に入れてます。加えて日本では10%増税時に導入とされた軽減税率の廃止も検討されているということで、日本はここでも周回遅れですが、EUが先行して世界を変えるという意欲的な姿勢はむしろアメリカやイギリスを利することになっています。例えば日本がEUに寄り添えば、状況は変わる可能性はありますが、日本は自国の国益ではなくアメリカ追随路線一辺倒です。

消費税を前提に考えれば、スウェーデンのように所得税や法人税も付加価値税型にするという方法があります。法人税ならば人件費を含む付加価値(企業会計上粗利益相当)を税源とするわけで、二重課税は税額控除で対応し、課税ベースが拡大されますから税率は下げられます。よく言われる「スウェーデンは高福祉国だけど法人税を下げた」というのはこういう仕組みなんで、同じことを日本でやろうとすれば経済界から反対の大合唱間違いありません。実際民主党政権時代に法人減税の財源に市税特別措置の見直しを打ち出したら大反対されました。大企業は租税特別措置を最大限利用していたので、最大税率で納税しているところはないわけです。個人の所得税も給付付き税額控除と組み合わせて、低所得なら還付が受けられるという形で社会保障と一体化することが考えられます。こういった議論を深めることが本来の税と社会保障の一体改革です。

てなことで、税の徴収に苦しむ主権国家ですが、タックスヘイブン以上にタックスイーター問題が頭痛いところ。上記の地方創生予算もそうですが、いろいろありますが、ここではこれを取り上げます。

JR九州、10月上場へ 鉄道の黒字化へ執念  :日本経済新聞
上場基準を満たすために旧国鉄債務に上乗せされて国民負担が決まっている経営安定基金を上場時に国庫返納すべきところ、取り崩して資産の減損処理に使い、以後の減価償却費の圧縮を狙ったもの。本業の赤字体質を黒字化のために減価償却の前倒しをして益出ししているわけです。もちろn数字上のテクニックに過ぎず、以後の黒字転換を保証するものではありませんが、目先の上場基準クリアのために国民負担ってのは許すべきではありません。経営トップが安倍人脈ということで、政治銘柄ですね。郵政の二の舞がいいとこでしょう。

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