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Sunday, July 10, 2016

託す幣分

カミングアウトしますが、租税回避もマネーロンダリングもやったことがあります。

租税回避といっても、単に確定申告して税の還付を受けただけですが^_^;。これ納税者の合法的な権利です。

最近はふるさと納税で還付を受ける人が増えているようですが、これも合法です。ただし問題のある制度ですが。任意の自治体に寄付をして確定申告すると、2,000円の自己負担を除いて税の還付を受けられる制度ですが、ふるさと納税の返礼品を巡って競争が過熱している状況で、流石に総務省も注意をしてます。主に大都市の自治体が税源を奪われ、対抗して返礼品を出すなどして泥沼状態ですが、限られた税源のパイの奪い合いを制度化したのは第1次安倍政権でした。ホントろくでもない。

で、当時総務相だった増田氏の都知事選出馬だそうですが、これに関与したんだよね。

都知事、法人住民税の一部国税化「とんでもない話」  :日本経済新聞
所謂地方創生予算の財源として都道府県税の法人事業税と市町村税の法人住民税の一部国税化したわけですが、都道府県では東京都が唯一の地方交付税不交付団体ですし、特別区住民税は都が徴税してますから、東京都が狙い撃ちされた形です。猪瀬知事バッシングはこれが原因とも言われてますが、都税の一部国税化を推進した都民から見れば裏切者です。まさか選ばないよね>都民の皆さん。

返礼品に関しては自治体の地場産業振興の狙いがあると言われますが、真に付加価値のある商品ならば実質2,000円でディスカウント販売する必要はないわけで、むしろ地方の零細な供給力を浪費することになりますから、中長期には地域の衰退を助長します。今すぐやめるべきです。加えて高額納税者にとっては事実上の租税回避行動となるわけで、なるほどパナマ文書で日本人の名前Tが少ないのは、海外の租税回避地を使う必要がないからとも言えます。課税当局から見れば、確定申告による合法的な租税回避は当局の税源の捕捉を助けるので問題はないわけですが。

てことで、パナマ文書の流出で大騒ぎしていますが、海外のオフショア利用も外形的には合法的な租税回避ではありますが、問題は情報の秘密性、匿名性にある点が報道ではあいまいです。例えばスイスのように銀行の守秘義務を法律で規定し、海外の富裕層の資金を集めるとか、ケイマンやバージンなど英国自治領や王族領や中南米諸国に見られる非居住者による匿名ペーパーカンパニー設立やシンガポールなど極端に法人税が低い地域など、いろいろな類型がありますが、これらを多重に組み合わせることで、海外流出資金の真の所有者がわからなくなる結果、本来の居住地や源泉地の課税当局から税源が流出すること、そして麻薬組織やテロ組織などのマネーロンダリングに利用されていることなど、様々な問題を抱えるわけです。

またヘッジファンドの一部などの私募ファンドには本人確認が緩いものもあり、場合によっては個人では買えないなどでオフショアのペーパーカンパニーが利用されるケースもあり、パナマ文書にも載っているようで、運用益を課税当局に申告し納税する限りにおいては合法ですが、申告漏れもありそうなので、日本の国税庁がどこまで迫れるかは見物です。元々投資信託(ファンド)は富裕層向けに資金を預って運用するサービスということで、匿名投資組合のような形態から始まりました。資金を託して貨幣を増やすという意味でタイトルのような当て字を考えましたが、タックスヘイブンを租税回避地とするよりも実態を表していると思います。

ちなみに日本でもかつて長期信用銀行発行のワリコーなどの割引債は無記名だったこともあり、企業幹部や政治家が活用してましたが、リクルート事件関連で当時の金鞠自民党幹事長が利用していたことが問題視され、見直されました。また銀行預金や郵便貯金の口座開設も本人確認がされておらず、架空名義口座が少なからずあると言われます。これらも法改正で新規口座に関しては本人確認が義務付けられましたが、過去分までは遡及されませんから、振り込め詐欺などの温床になっていると言われます。

あ、マネーロンダリングですが、近所の宇賀福神社ってとこで、お金を洗うと3倍になって返ってくるってことで、全国から人が集まってきます。通称銭洗弁天と呼ばれてます。ご利益はむにゃむにゃ^_^;。ちなみに北条執権時代の鎌倉ではそもそも銅銭の流通量自体が多くはなかったので、マネーロンダリングができる人は限られていたとか。今と同じだわwwwww。

パナマ文書の流出を契機にOECDを中心に国際的な監視体制ができつつありますが、これで問題が解決すると考えるのは早計です。アメリカは自国民の資金の海外流出に対しては厳しい対応をしていますが、国内のデラウエア州などは手つかずで、外国資本の流入は制限なしですから、新たな不平等条約になりそうです。スイスやルクセンブルグなどはアメリカの圧力に屈し、パナマ文書流出で英領バージンなどのタックスヘイブンとしての地位は低下するかもしれませんが、元々法人税率の低いアイルランドなどが取って代わるだけと見られています。BREXITでロンドンの肩代わりも狙える立ち位置の優位もあります。

尤もロンドンの機能の代替は簡単ではありません。EU離脱が金融にはマイナスの見方が強いですが、EUで検討が始まった金融取引税、所謂トービン税が導入されれば、国境を超える金融取引に課税されますが、EU域内との金融取引は課税されるとしても、域外資金のとりあえずのプール先、例えばオイルマネーやアジアマネーにとっては使い勝手が良くなる可能性があり、新たなタックスヘイブンになる可能性があります。現状のように租税条約は2国間条約に留まる限り、制度の差分を利用した租税回避はなくならず、結局国連やWTOのような国際機関で強制力のある一般ルールを定めるしかないですが、まずアメリカが従うかどうか。WTOもインドの緊急セーフガード発動でアメリカが見捨てて、TPPのような多国間FTAに重点をシフトしました。結局公平公正よりも国益重視という大国のエゴです。そのアメリカもアップル、アマゾン、グーグル、スターバックスなどの課税逃れを許しているのですが。

EUの立場の弱さは、域内に富裕層を多数抱えていて、タックスヘイブンを利用して税源が国外へ漏れ出てしまう現実を止められないことです。欧州版付加価値税や炭素税や上記の金融取引税など新たな税源を模索しているわけですが、それをあざ笑うように海外へ漏出してしまうことを止められません。ある意味欧州が気候変動を含む環境問題に熱心なのは、税源の模索の結果でもあるんですが、結局他国が追随しなければ資金流出を助長してしまうというジレンマを抱えています。イギリスの離脱問題で結局優位に立てない理由もその辺にあります。

日本の消費税の手本となった欧州の付加価値税も、アメリカからは輸出戻し税が事実上の輸出補助金であり隠れ関税ではないかという批判がされていたわけですが、EU域内では既に電子書籍など有料デジタルコンテンツへの課税で、サーバー立地国の課税当局がユーザーの居住国の税率で課税してデータ交換を行うシステムがスタートしており、いずれ輸出戻し税の廃止まで踏み込むことも視野に入れてます。加えて日本では10%増税時に導入とされた軽減税率の廃止も検討されているということで、日本はここでも周回遅れですが、EUが先行して世界を変えるという意欲的な姿勢はむしろアメリカやイギリスを利することになっています。例えば日本がEUに寄り添えば、状況は変わる可能性はありますが、日本は自国の国益ではなくアメリカ追随路線一辺倒です。

消費税を前提に考えれば、スウェーデンのように所得税や法人税も付加価値税型にするという方法があります。法人税ならば人件費を含む付加価値(企業会計上粗利益相当)を税源とするわけで、二重課税は税額控除で対応し、課税ベースが拡大されますから税率は下げられます。よく言われる「スウェーデンは高福祉国だけど法人税を下げた」というのはこういう仕組みなんで、同じことを日本でやろうとすれば経済界から反対の大合唱間違いありません。実際民主党政権時代に法人減税の財源に市税特別措置の見直しを打ち出したら大反対されました。大企業は租税特別措置を最大限利用していたので、最大税率で納税しているところはないわけです。個人の所得税も給付付き税額控除と組み合わせて、低所得なら還付が受けられるという形で社会保障と一体化することが考えられます。こういった議論を深めることが本来の税と社会保障の一体改革です。

てなことで、税の徴収に苦しむ主権国家ですが、タックスヘイブン以上にタックスイーター問題が頭痛いところ。上記の地方創生予算もそうですが、いろいろありますが、ここではこれを取り上げます。

JR九州、10月上場へ 鉄道の黒字化へ執念  :日本経済新聞
上場基準を満たすために旧国鉄債務に上乗せされて国民負担が決まっている経営安定基金を上場時に国庫返納すべきところ、取り崩して資産の減損処理に使い、以後の減価償却費の圧縮を狙ったもの。本業の赤字体質を黒字化のために減価償却の前倒しをして益出ししているわけです。もちろn数字上のテクニックに過ぎず、以後の黒字転換を保証するものではありませんが、目先の上場基準クリアのために国民負担ってのは許すべきではありません。経営トップが安倍人脈ということで、政治銘柄ですね。郵政の二の舞がいいとこでしょう。

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