戦争を知らない大人たち
本題に入る前に天皇の生前退位問題。
象徴 その心(3) 天皇に「私」はないのか 人権巡り国会で議論 :日本経済新聞いろいろ言われますが、論点はこれです。すでに戦後の帝国議会で新皇室典範の審議で三笠宮殿下が意見を述べてます。つまり天皇の人権問題が本質なんですが、伝統ガーな人たちの反対で積み残したまま現在に至るわけです。これ女帝問題や女系宮家問題も同様なんですが、戦前の帝国憲法を前提とする旧皇室典範に対して新憲法とのすり合わせが十分に行われてこなかったってことですね。
そして先日の天皇のビデオレターでの意見表明ですが、憲法が求める象徴天皇として初の皇位継承者となった明仁天皇が指摘したのは、終身制を前提とする限り、服喪と即位の同時進行というある種のカオスをもたらすという点。これ皇位継承の経験者故の視点と言えます。だから特例法での対応は望んでいないわけです。同時に憲法第2条〔皇位の継承}で「皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」とある通り、皇室典範の改正以外でこの問題を対処できないと憲法で規定されています。女帝や女系宮家に議論が及ぶと、小泉政権時代から反対し続けてきた安倍晋三にとっては面白くないってことで、この問題を安倍政権はどう扱うか、注目されます。おまけ。
SMAP、年末に解散 事務所が発表 :日本経済新聞SMAPは1月にも解散騒動があって、その後テレビでLIVE謝罪というセレモニーを経て沈静化されたものの、水面下ではやり取りがあったようです。ただしプロダクションの移動は無しということで、本人の意思が通しにくい芸能人の人権問題に天皇の人権問題が道しるべになるとすれば、結構重要な意味があります。
ついでに言えば伝統ガーな人たちはそもそも人権がお嫌いなようで、天賦人権説をキリスト教的な価値観をベースとしていて日本の伝統的な価値観に合わないと批判しているようですが、一夫一婦制もキリスト教的価値観に依拠していて、しかもお金持ちは公然と妾を囲っていて、西武鉄道二代目の堤義明が妾腹なのはつとに有名なように、明らかに日本の伝統的価値観に合わないですがね。冗談はさておいて、天賦人権説が王権神授説の対抗言論ということを知っていれば、キリスト教的価値観を捨象して国家主権の対抗概念としての人権という風に普遍化できます。つまり主権国家が主権国家たるためには人権を前提にするから国民の負託を得られるわけです。
で、改憲論者の小池都知事がいろいろぶち上げてくれてますが、まずはこれ。
小池新知事は新国立のサブトラック問題を解決できるか|inside|ダイヤモンド・オンライン元々陸上競技場であるはずの国立競技場ですから、国際大会開催基準としてサブトラックの設置は当然だったところ、サッカー協会やラグビー協会からワールドカップ級の国際大会の開催基準を満たす8万人収容スタンドが要請され、サブトラックは外に作るとしてザハ案に見られる巨大スタンドとして結実し、その後コスト問題で白紙撤回されて再コンペで隈研吾案で決着したのは五輪霧中で指摘したように、風致地区第1号で15mの高さ制限が課せられてた神宮の森の高さ制限撤廃の露払いとしてザハ案の新国立競技場という点で、地権者とサッカー協会、ラグビー協会の共犯関係がある一方、サブトラック問題が生じたわけで、陸連にとっては寝耳に水というわけで、軟式野球場へ仮説する方向ですが、数億円かかるので常設にできないかという意見がある一方、地権者は稼働率の高い軟式野球場がなくなるのは困るというわけです。そこで秩父宮ラグビー場への併設案があるものの、ラグビー協会が反対とはいえ、元々大スタンドをごり押しした手前もありと、エゴのぶつかり合いが解決を困難にしています。環状2号線の湾岸延伸着工とスケジュールが絡む築地市場の豊洲移転問題もあり、難題山積。憲法改正どころじゃない現実です。あとこれ。
都知事公約「満員電車ゼロ」は、こう実現する | 通勤電車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準岐阜にも関わったトンデモ鉄道コンサル氏でツッコミどころ満載ですが、余裕時分を削った結果、ダイヤ改正翌日に東中野事故を起こしたJR東日本や尼崎で脱線転覆事故を起こしたJR西日本が、その後保安装置の強化などの安全投資を深化させたプロセスを無視してます。別に都が財政支援するわけでもなさそうですから、事業者の自助努力を促すってだけ。小池知事の政策スタンスをよく示してます。
前置きが長くなりましたが、サイドバーの「戦争の社会学」ですが、改めて戦争とは?平和とは?ということを考える上で戦争の歴史や意味をを体系的に説明した格好の入門書です。紹介コメントでも書きましたが、奇妙な日本軍に関して章1つを当てて考察してますが、そのトンデモぶりに驚きます。例えばクラウゼヴィッツの戦争論では兵力と兵站の重要性を説いている一方、精神面の重要性を指摘してますが、これを兵力で劣っても精神力で跳ね返すと曲解したり、真珠湾攻撃のような奇襲は短期決戦で迅速に敵国と和平交渉に入るのがセオリーながら和平交渉が準備されておらず、長期戦になって力尽きたわけです。日本は戦争の仕方を知らなかったと。そんな歴史を彷彿とさせる出来事が現在進行中です。
マイナス金利、効果道半ば 導入半年 :日本経済新聞思い出していただきたいんですが、13年4月の黒田バズーカは、2年で2%のインフレ目標達成のための短期決戦だったはず。ところが一向に物価は上がらず、ズルズルと目標年次の先延ばしと追加策という戦力の逐次投入を繰り返すばかり。そもそも出口論も議論せずというスタンスで、日米開戦時の日本軍と何と似ていることか。それどころか今年に入ってマイナス金利政策を導入し長期金利の低下は目論見通りとしても、円高を防げず、それどころか銀行の離反を招くなど散々です。
マイナス金利で減益3000億円 日銀に懸念伝達 :日本経済新聞遂には金融庁のツッコミも。足並みも乱れさしずめミッドウエー海戦の様相でしょうか。一応9月の日銀政策決定会合でマイナス金利政策の検証を約束したものの、言い訳を重ねるだけなのは目に見えてます。
マイナス金利の成果として住宅着工の増加が指摘されてますが、これ中身は賃貸アパートの建設ラッシュなんで、マイナス金利の恩恵はあるかもしれませんが、むしろ実家の相続対策としてのアパート建設と見るべきです。所謂空き家対策法の施行で空き家になった実家を放置できなくなったことと、アパートの課税特例で固定資産税1/6、都市計画税1/3でトータルで1/5ほどに負担減となることから、親が生きていても実家をアパートに建て替えて負担減を目羅うというものですが、その結果民間賃貸空宅の空室率が高くなっています。結果家賃が下落し、持ち家の帰属家賃を含めれば消費者物価指数の2割ほどのウエート付けがされているわけですから、そら物価は上がりませんわ。不都合な真実ですが日銀は認めるでしょうか。
戦争と金融政策は違うと言われるかもしれませんが、短期の作戦として始めた政策が未達で長期戦にずれ込んだ時点で戦略の練り直しが必要なのは同じです。勝てない戦争はしない。戦況が劣勢ならば速やかに退却するってのが戦争のセオリーですが、日銀は未だ出口論を封印しています。思えば東芝もシャープもこうして傷口を広げて立ち行かなくなったわけですし、日本の様々な組織にこうした撤退下手とでも言うべき病弊が蔓延しているようです。関連でこのニュース。
夕張市、JR北に地域振興の協力要請 路線廃止容認の条件に :日本経済新聞財政再建団体となった夕張市としては、」実際これしか選択肢はないと思います。加えて夕張支線の場合夕張市単独で意思決定できる稀有な条件もあったということです。他の路線は複数自治体に跨っていて自治体間の意思のすり合わせだけでひと仕事になります。実質道庁が動かなければ動かないでしょうけど、道庁は動く気配はありません。
あと青森方式というか、道が線路保有して自治体出資三セクに貸し付ける方式も、あくまでも整備新幹線の並行在来線だから、新幹線というインフラの見返りとして県単位で同意を得やすかったってこともありますから、路線の維持だけがテーマの北海道では無理な話です。おまけで言えば青森方式よりも、事業者のIGRいわて銀河鉄道による線路取得費を事後的に県が肩代わりし、沿線自治体に固定資産税を納めさせる一方、自治体側でその税収分を積み立てて保守費用に充てる基金とするというクレバーなやり方をしてます。実質公的な減価償却をやってるわけです。
というわけで、実際に協議が始まれば新たなアイデアが出てくる可能性はあります。ただ気になるのが夕張市長が自身のブログで示したコンパクトシティ構想です。正直言って県庁所在地の青森でさえ明らかに失敗したものが夕張で可能なのか、疑問を禁じ得ません。一応清水沢付近に都市機能を集約しようということのようですが、新たな玄関口となる新夕張駅からは離れてます。炭鉱の廃坑でどんづまりの旧市街をたたむのかどうかはわかりませんが、地理的にもほぼ発展の可能性は皆無ですから、基本的には撤退戦だということを肝に命ずるべきでしょう。
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