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December 2016

Sunday, December 25, 2016

死ななきゃ治らないナントカ

クリスマスです。ハロウインのときのエントリーで指摘したように、日ロ首脳会談での領土交渉の進展はありませんでした。これロシア側からのサインが出てましたが、予備交渉の過程で引き渡し後の領土に米軍基地が置かれる可能性を問われて有り得るとした返答で態度を硬化したとされますが、ソビエト時代から言われていたことの確認に過ぎませんし、沖縄の普天間基地の移転先の辺野古の反対運動や北部訓練場変換に関連した高江ヘリパッドの建設強行に対する反対運動に対して、日本政府が強行している姿勢を見て、日本への主権の引き渡しは無理と判断されたというのが実際のところです。日ロ関係は日米関係に規定されるのが現実です。

加えて言えば択捉島へのミサイル配備問題ですが、これ地対艦ミサイルってところがミソです。つまり標的はあくまでもオホーツク海での外国軍用船の軍事行動をけん制するためで、ロシアの核戦略と関連します。ロシアは保有する核弾頭の数を保持しつつSLBMへの転換を発表しております。オホーツク海にはSLBM搭載原潜を潜ませており、その太平洋側の出口ということですね。これがあるからシリアでのロシア軍の軍事行動に対してアメリカも文句を言えないわけで、核抑止力を効かせながら局地戦を睨んだロシア軍の部隊編成の小規模化とも連動します。そして支援を得たシリア政府軍による反政府勢力の制圧は時間の問題というところまで来ています。正邪の判断を横に置けば、ロシア軍改革は大成功といえます。

あと鉄ちゃん的蛇足ですが、津軽海峡を国際海峡とするためにここだけ領海3カイリに設定しているのは津軽海峡を潜航航行するソビエトの核搭載原潜の通過を現実的に阻止できないことから便宜的にそうしているわけで、現在もロシア原潜の日本海から東シナ海への航路として機能させることが、海洋進出を進める中国へのけん制になるので、維持されています。青函トンネルは日本の鉄道で唯一施政権外エリアを通過する存在としての意味があるわけですが、有事の輸送路となるインフラのメンテナンスを経営不振なJR北海道へ丸投げってのも危ういところです。

こういうことが頭に入っていれば、今回の日ロ交渉で領土問題が1ミリも動かないのは自明というわけです。期待をにじませるメディア報道はおそらく官邸からのリークでしょうけど、逆に領土問題の解決困難を国民に印象付けたわけで、結果的に領土抜きの経済連携となりました。クリミア編入を巡る対ロ経済制裁を一部緩和した形ですが、全面解除ではないからロシアから見ても不満の残る結果であり、大盤振る舞いした割には成果の少ないものになりました。

誤解のないように申し上げますが、私自身はそれでも極東やシベリアの開発を巡る日ロの連携はやるべきだという立場です。できれば日ロ間のガスパイプラインや電力連携線の整備は、日本のエネルギー政策に革新をもたらします。是非やるべきです。むしろ今回のことで領土領土とうるさいめんどくさいウヨどもを黙らせることができれば成果あったと言えます。あれ、安倍政権褒めてるwwwwwww。

一方混迷を深める南スーダンを巡って異変が。

南スーダンへの武器禁輸決議案、安保理で否決  :日本経済新聞
南スーダン情勢の緊迫化で大量虐殺の可能性ありとする武器禁輸の安保理決議で中ロと共に日本が棄権に回り、8ヶ国の棄権で必要な得票数に届かず否決されました。アメリカからは棄権しないよう働きかけがあったにも関わらずですから、アメリカからは非難されてます。日本政府の言い分は武器禁輸で南スーダン政府を刺激する方が危険というロジックですが、自衛隊をPKO派遣しているからということですね。

しかしそもそもPKO法では戦闘地域への派遣は禁止事項ですし、現地情勢次第で撤退を決断しなければならない局面なのに、国連が派遣する文民を警護するという変な理屈で所謂駆け付け警護(意味不明な用語ですが)を新たな任務とするという逆の対応を取っています。同じくPKO部隊を派遣する中国に対するライバル心からか、既成事実の積み上げか意図は不明ですが、現地で起きているのは石油利権のイスラム勢力との分離を狙ってアメリカが後押しした謂わば傀儡政権の南スーダン政府の暴走の結果であり、アメリカの尻拭いを中国と共同で日本の自衛隊が担うって構図はどう考えてもおかしいわけで、頭壊れてないか?

この構図は欧米が関与した紛争の多くで見られるもので、ジョージア(グルジア)紛争といいウクライナ紛争といい、親欧米派の裏に米保守派議員やCIAの関与が指摘されてます。またアラブの春に乗じたリビアの反政府勢力への英仏の支援で結果的にカダフィ政権を排除し、シリアでも反政府勢力へのCIAによる支援はもはや公然の秘密で、資金や兵器がダーイシュ(イスラム国)に流れて混乱しているわけです。大量破壊兵器のウソが暴かれたイラク戦争もですが、こういうろくでもないことを繰り返してきた欧米流リベラリズムへの懐疑が、Brexitやトランプ大統領を生んだわけで、大手メディアによる反Brexitや反トランプキャンペーンもこの文脈で見ると読み解けます。加えて欧米諸国のこの手の工作は昨今必ずしもうまくいっていないことも。時代は確実に変わりつつあります。

あと原発関連でいくつかありますが、これを取り上げます。

三菱重工と原燃、アレバに出資で最終調整  :日本経済新聞
福一事故を受けて安全対策の強化が求められて原発事業の採算性が悪化した結果、こういう妙なことが起きます。儲からないからといってやめられない。確かに廃炉や廃棄物処分などでやめられちゃ困るんだけど、コスト面で原発が事業として成り立たなくなってきています。もんじゅの廃炉も決まりましたが、高速炉は廃棄物を減らせる可能性があるということで開発は続けるというのですが、日本が大量のプルトニウムを保有する理由がなくなるという方が大きいのでしょう。もう一つこれ。
東電の原子力事業、再編相手公募へ 経産省有識者会議が提言  :日本経済新聞
f福島の賠償と廃炉で青息吐息の東電と組むメリットはほぼ皆無です。天然ガスなどの燃料調達のために東電と合弁でJERAを設立した中部電力からして東電と組んだことを死ぬほど後悔してるってのに、公募で再編相手が見つかると考える有識者とやらの眠たい議論を続けるのは、東電を破綻処理しなかった結果です。あーうましか。

一方でこんなニュースも。

鉄道が送電会社になる日 電線そのまま活用  :日本経済新聞
実は以前、このエントリーでJRの直流送電網を利用した電力託送事業の可能性を指摘したことがあります。記事はえちぜん鉄道の事例で、沿線の過疎化で収益確保が困難なTローカル私鉄の新たな収益源としての取り組みですが、うまくいけば大手私鉄やJRへ波及することも期待できます。

背景として元々鉄道は負荷変動が大きいがゆえに、電力会社から嫌われ不利な契約条件を余儀なくされているのですが、加えて技術革新で回生ブレーキが常用されるようになり、古い饋電システムではむしろ負荷変動を助長することもあり、固定買い取り制度(FIT)でも鉄道の回生電力は除外されました。そんな中で大手私鉄は変電所にNAS電池やキャパシタなどの蓄電装置を置いて負荷の平準化をしたりしてますが、ローカル私鉄ではそういった設備投資も単独では難しい中で、送電事業で託送料徴収して収益源とすることでクリアしようということです。ささやかなチャレンジですが、直流送電の特徴を生かして直流発電となる太陽光の電力を受け入れるなどして量の確保ができれば、結構使えるビジネスモデルになります。

九電ショックで売り先を失った太陽光発電の受け皿となれば、萎んだ太陽光発電の再活性化の可能性もあります。そして大手やJRにまで波及すればですが、原発の廃炉費用を託送料へ上乗せしようという経産省と電力会社のゴマカシを阻止できる可能性もあります。加えて隠れたメリットも。

電力回生ブレーキでせっかく省エネを実現しても、それを活かせない現在の直流饋電システムですが、例えば3,000Vの高圧直流で饋電してDC-DCコンバータで降圧して架線に供給する直流版AT饋電のようなシステムが可能ならば、変電所の集約と複数の饋電区分への電力供給によって、負荷変動自体を平準化するシステムの可能性です。設備の合理化メリットと共に、大電力故に制御が難しくエアーセクション事故のような饋電系トラブルが増えている首都圏のJRにおいて、防止策になるということが期待できるんじゃないかということです。饋電系トラブルの多いJR東日本がチャレンジしてくれないかな。

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Sunday, December 11, 2016

トランプラリーが終わるとき

更新サボってましたが、トランプラリーと呼ばれる謎のリスクオン相場のおかげで安定したPVが続いております。選挙前はトランプショックとさえ言われ、実際一時的に相場は下げましたが、当選後のコメントが意外とまとも^_^;ってことで、むしろ減税や公共事業拡大を好感されてということのようですが、ま、スタート台が低いから普通のこと言えば評価されるってイリュージョンですね。就任後は当然期待が剥がれますから、下げは覚悟しといた方が良いです。

それと不安材料もチラホラ。FRBの今月の利上げはほぼ確実視されてますが、それぐらい今のアメリカの経済は好調ですが、既にピークアウトした疑いがあり、2017年には景気の谷が来る可能性があります。それでもFRBはむしろそうなったときの政策余地を確保する意味でも利上げをすると考えられますが、来年の利上げは微妙になります。というのは、トランプ政権下で成長が鈍化すればFRBの利上げのせいにされてトランプ大統領があからさまな圧力発言をする可能性があり、FRBの独立性が損なわれる可能性があります。丁度第二次安倍政権発足のときに当時の白川日銀総裁を読んであからさまな圧力をかけたことがアメリカで起こるってことです。てことで、基本的にトランプの政策運営はアベノミクスをなぞる形になると思います。格差拡大を批判して大統領になったトランプが格差を助長するってことです。

元々製剤成長率が4%あると言われたアメリカ経済ですが、直近で成長の裏付けとなる生産性向上が停滞し始めており、日本と似た状況になりつつあります。こういう状況で大規模な財政出動をしても、インフレになるだけの話です。加えて移民政策の見直しが行われれば、公共事業を拡大しても人手が集まらず、人件費だけが高騰するという震災後の日本と同じ状況になるだけです。加えて金利差によるドル高がマイナスです。おそらく対米大幅黒字国の日本と中国に為替操作国と非難を浴びせ、外貨準備で積み上げたドルを売るように迫ると思います。その時日本政府はどーする?

一方火種は欧州にもあります。

イタリア首相が辞意 国民投票で改憲否決  :日本経済新聞
これ反EUとか反グローバリズムや保護主義といった問題と見るべきではないんで、イタリアはレンツィ首相の下経済改革を進めてきていたのですが、議会の上院と下院が同党の権限を持つために反対派の抵抗が大きかったということで、上院の権限を縮小する憲法改正案を発議し国民投票にかけたところ、これを否決されレンツィ首相が辞意表明ということですが、今のところ与党出身のマッタレッラ大統領が待った^_^;ってことで足踏み状態ですが、最大の懸案はイタリアの銀行第3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの公的資金による救済問題ですが、政治の空白で緊迫した状況です。そこに立ちはだかるECB。
欧州中銀、イタリア3位銀行の増資延期認めず ロイター報道  :日本経済新聞
モンテパスキの増資引受先が見つからず自主再建が難しくなったのですが、公的資金注入にはペイルインというハードルがあります。仮にも税金で民間銀行を救済するなら、株主や銀行劣後債購入者などの投資家に一部損失負担をさせるというルールですが、この銀行債が問題で、イタリアでは国民に広く保有されており、ペイルインを適用すれば多くの国民が損失を被るということで、政治的には困難な課題です。憲法改正否決もこれが影響したのでしょう。銀行の不良債権問題は元々リーマンショックの後始末の積み残しでもあり、モンテパスキだけの問題ともイタリアだけの問題とも言えないところがあり、仮に破たんすれば欧州全域に連鎖破たんが広がる可能性があります。とはいえ合議の上決めた銀行同盟の中心的なルールだけに、例外を認めにくいということもあり、多分来年には何か目に見えた危機が顕在化すると見るべきでしょう。

というわけで、問題だらけの世界ですが、なぜか日本は好調ですが、陰りも見えます。

GDP1.3%増に下方修正 7~9月、設備投資減で  :日本経済新聞
一応3四半期連続のプラスですが、下方修正の要因が先行指標である設備投資の下方修正ですから、ピークアウトの兆しです。一方で住宅着工と公共工事は好調ですが、中身は相続対応の賃貸アパートが中心で、大都市圏でも今後人口減少が見込まれる中、空き家を増やすことになります。また公共工事もオリンピック関連など事業費の膨張が問題になっているように、増えたことを素直に評価できるものではありません。加えてこんなニュースも。
都市農地、覆う2022年問題
宅地転用で空き家増加?: NIKKEI STYLE
1992年にスタートした生産緑地制度ですが、主に大都市圏で地価対策として農地の宅地並み課税が施行された一方、営農を希望する農家に営農継続を条件に30年間の特例で低税率とした制度ですが、30年後に自治体に農地の買い取りを申請できるとしたものの、自治体も財政難でこれを渋っており、多くの生産緑地が農地指定を外れて宅地などに転用されると見られております。そうなれば宅地の地価は下がりますから、低金利が続くとして住宅着工ブームが訪れ価格破壊デスマーチになると見られます。大都市圏にも農地を残し地産地消でというきれいごとも吹っ飛び、単なる価格破壊に留まらず、マイナス成長の真正デフレに陥るんじゃないかと。日銀の金融政策じゃ回避できないどころか助長します。

そもそも競争力のある大規模圃場を物理的に確保可能な平地はほぼ大都市圏に限られる日本では、農地より宅地等に転用した方が地価が上がりますから、関東平野などで見られる水田地帯に散在する住宅や工場が建ち、小規模農家も土地の転用を夢見て手放さないから大規模化が進まずで、競争力のある農業の可能性は東北の一部と北海道に限られます。TPP対策費で補助金ばら撒いても大規模化は進みません。そもそもトランプ氏のTPP離脱宣言で発効の可能性のないTPPの関連法を強引に成立させるって、意味ねー。その北海道の農業にも暗雲が。

JR北海道、全路線の半分「維持困難」  :日本経済新聞
農業の競争力で大規模化はよく言われますが、それと共に市場アクセスの優位性も重要で、北海道の場合青函トンネルの開通で鉄路で首都圏に直送できるようになったことの影響が大きく、それゆえ北海道新幹線の青函トンネル貨物共用問題でも貨物の撤退は議論から外され経緯があります。農業へのダメージが大きすぎるというわけです。でこれ。
JR貨物、「上場準備へ」 経常益100億円達成見通しで  :日本経済新聞
JR北海道の経営危機を尻目にJR貨物が上場準備ってわかりにくいニュースですが、JR北海道の線路保守の劣化はJR北海道自身による高速化のほか、JR貨物が軸重14tのDD51重連を軸重16tのDF200に置き換えたことの影響もあります。JR貨物は線路を旅客会社から借りて列車運行していて、所謂アボイダブルコスト方式といって、貨物列車運行によって発生する限界費用のみの負担で良いという仕組みで、一応限界費用+1%のインセンティブを原則とし、実際は旅客会社との相対で金額を決めるということになっており、元々縮小均衡前提だったこともあり、実際は機関車の両数を代理変数とするタダ同然の格安水準でスタートしたわけですから、重連を単機に置き換えればむしろ線路使用料は下がるわけです。それでも設立以来赤字続きで旅客会社も値上げを言える状況ではなかったわけで、特に貨物輸送比率の高いJR北海道にとっては重荷だったわけです。そんな事情でEF64重連置換用のEH200はJR東海が入線を拒否しています。

それが鉄道・運輸機構の融資もあり、競争力強化投資とCO2削減やドライバー不足で企業荷主の鉄道回帰もあって、輸送量が下げ止まり、鉄道・運輸機構の融資条件である2018年黒字転換が見通せるようになったということで、上場という話になるわけですが、今まで赤字だったから値引きされていた線路使用料が現在の水準のままとなれば旅客会社から文句も出るわけで、とりわけJR北海道には死活問題でしょう。鉄道の廃止を巡っては自治体の反発や道庁の不作為もありますが、国として農業インフラとしての鉄道という視点での援助は必要ではないかと思います。ま、安倍政権じゃどうせやらないだろうけど。

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