ワールド・アナザー・ヒストリー
21世紀の世界で暗殺事件?いやはや驚きです。実行犯の女性2人と男性1人に加え、北朝鮮籍の男性1人も逮捕され、北朝鮮からは遺体引き渡しが矢の催促で、状況証拠から北朝鮮工作員の犯行は間違いないでしょう。それでも北朝鮮と国交のあるマレーシア政府は慎重姿勢です。通常ならば暗殺のような手段を取った北朝鮮に対して、アメリカを中心とする西側陣営は報復として金正恩の暗殺を仕掛ける可能性が高いですが、どうも足並みが揃ってません。トランプ劇場でアメリカ国内の混乱が続いてます。むしろ中国とロシアがこの問題に強く反応を見せております。
大統領令を乱発するトランプ政権ですが、イスラム圏7カ国の入国制限令は現在司法によって差し止められています。大統領側近のバノン氏の意向で進められました。
トランプ氏側近・バノン氏に発言力 政策を左右、省庁も無視 (写真=ロイター) :日本経済新聞この7カ国は2015年11月のパリ同時多発テロを受けてビザ免除38カ国の国民を含め渡航歴のある人に特別ビザの取得を求めた法律のテロ懸念国7カ国が対象ですが、司法省に事前審査も発効前の告知期間もなかったために混乱しました。司法省の事前審査があれば7カ国の渡航歴のある人の入国制限との関係が問われるでしょうから、そうなると大統領令に手を入れられてしまうため、それを嫌った可能性があります。
推測ですが、オバマ政権時代に連邦議会が決めたテロ懸念国7カ国からの入国を制限することで、テロ防止の水際作戦を演出したかったんでしょう。結果いきなり現場にペーパーだけ降りてきて、現場毎の解釈の違いもあって混乱に拍車をかけたようです。確かに問題のあるやり方ですが、一方で差別批判がIT企業から吹き上がります。
「テロ懸念国」の入国禁止、米IT業界が懸念強める :日本経済新聞米IT企業の多くは、トップを含めて多数の移民が働いていて、入国制限は直接的に業務に支障が出るということですが、暗に差別主義批判といった政治的メッセージが含意されてます。ただしこれを以て「アメリカの民主主義は健在」とは思わない方が良いでしょう。アメリカが移民を受け入れるから一流の人材が集まるとはよく言われますが、これ移民の中のひと握り、せいぜい1%で、残りはサービス業など低賃金労働に就業するワーキングプア層ということで、移民かどうかに拘らず進む格差拡大の結果と変わりません。ってことで、移民受け入れを善とする所謂リベラル派の言説はこうしたゴマカシを内包しているわけで、クリントンが大統領選で負けたのも頷けますし、一方で移民を止めても問題は解決しないってことでもあります。格差拡大は移民やグローバル化よりもIT化による機械化、自動化、省力化の影響と見るべきでしょう。
続いて国家安全保障担当のフリン補佐官の辞任も痛手です。
「ロシア」米政権を揺るがす フリン氏辞任 (写真=ロイター) :日本経済新聞昨年12月に駐米ロシア大使と電話で接触したということですが、政権移行前で問題ってことなんで、移行後に新政権の意向を受けて接触する分には問題ないわけで、トランプ氏が関与していたかどうかなど不明の点もありますが、むしろ駐米外交官との接触自体はパイプ作りという意味合いもありますし、結局対ロシア経済制裁解除など中身の問題です。それより情報源が米情報機関からメディアへのリークのようで、これ日本では政治家や官僚の観測気球として結構利用されているやり方ですが、アメリカでもと思うと複雑な心境です。むしろトランプ政権と情報機関の間に不信感があると見られることが不気味です。
トランプ氏、情報機関と亀裂広がる 組織のあり方検討へ :日本経済新聞アメリカの歴代大統領は4人暗殺されてますし、メディアに不正を暴かれて辞任したニクソン大統領の例もありますし、情報機関とメディアとの敵対はこういった連想を想起します。金正男の次はトランプ?
北朝鮮の情報機関が一般人を巻き込んだと見られるマレーシアの事件ですが、アメリカの情報機関が本気になればこれ以上のアナザー・ヒストリーを演出することは可能でしょう。何しろスノーデン氏が暴露したように、政治犯に限らず個人情報を集めまくっていて、日本でもNSAから日本人の個人情報を集めたいと申し出があり、日本政府が法令違反で無理と断ったら、違反にならない法律を作れと返したということで、それが今国会審議中の共謀罪なんですね。こんなもん通したら一般市民が米情報機関の演出するアナザー・ストーリーに巻き込まれる可能性があります。で情報機関と対立しているトランプ政権でこの法律を通しても、トランプ政権に恩を売ることにはならないことに注目すべきです。ついでに言えばオバマ政権が種まいた南スーダンPKOも今なら撤退してもアメリカの顔を潰すことにはならないんですが。
てなわけで、日米会談を大成功と自画自賛する安倍政権ですが、日米経済対話でFTAを封印したつもりになっていると痛い目を見ます。為替問題という爆弾を抱えていることは日本政府もわかっているでしょうけど、日米会談で言及がなくむしろドイツや中国に矛先が向かうと考えると大間違いです。
(羅針盤)通貨安批判、同意のドイツ :日本経済新聞ドイツにしてみれば、金融緩和がECBがやっていることで、ドイツ自身は南欧諸国の財政規律が緩むからと反対し続けているわけで、金融緩和で為替操作と言われても「は?」てな話です。その点日本の過剰反応ぶりはむしろ心配です。
財務相、異例の為替水準言及 円安ラインは120円? :日本経済新聞G20為替ルールに抵触する可能性のある財務相発言ですが、それだけ為替問題が敏感な問題ということです。トランプ政権との通商交渉では譲歩を引き出すネタにされること間違いないでしょう。
で、アメリカに日本の資金で新幹線やリニアをという話にあんるんですが、そんな金あればJR北海道を何とかせいと言いたいところです。それに関連してこんなニュース。
トラック人手不足追い風 JR貨物、初の鉄道黒字 :日本経済新聞JR貨物に関しては、温暖化対策もあって(独法)鉄道建設・運輸施設整備支援機構から融資を受けて経営基盤強化の途上にあり、2018年度の黒字化を公約していたので、2年前倒しの達成となり、株式上場が視野に入ってきます。ただし線路使用料問題がネックになります。
JR貨物の線路使用料は貨物列車運行にかかる追加費用プラス1%のインセンティブを基本ルールとし、具体的な金額は線路を保有する旅客会社との相対交渉で決めることになっておりますが、JR発足当時、赤字基調が確実視されていたこともあり、機関車1両あたりの単価を設定するという便法で大幅値引きされています。それもあって機関車の重連運用を単機運用に置き換える目的でDD51重連→DF200単機、ED79重連→EH500単機、EF64重連→EH200単機といった形で新型機に置換を進めてきたわけですが、特に北海道のDD51重連からDF200単機への置き換えは、軸重が14tから16tに増えたこともあり、JR北海道の線路保守の負担になっていることは間違いありません。黒字化なら当然線路使用料の値上げが打診されるはずですが、そうなるとJR貨物の黒字を維持できるのかという問題になるわけで、うまくいきません。
そこで別の方法として、北海道では線路を痛めない軽軸重の小型機関車での小単位輸送という方法で保守費用の負担を軽減することも考えたいところです。これ震災関連でリージョナルカーゴトレインの可能性について言及したことがありますが、今ならハイブリッド技術を用いて構内入替をバッテリー駆動で行い、本線上を高速走行するときはディーゼル発電でバックアップすることで、例えば臨海鉄道のような三セク貨物鉄道を立ち上げて担わせるといった応用が可能ではないかと思います。JR貨物にとってはリスク分散になり、出資自治体にとっては貨物鉄道を保持することで大規模農業を含む産業立地に助けになり、国の温暖化対策事業の補助金も使えるわけで、旅客鉄道としての存続が難しい北海道の路線の存続策になり得るんじゃないかと愚考します。
これヒントはアメリカが貨物鉄道大国で、アムトラックなどの旅客鉄道が線路を借りて営業しているという日本と逆の形ですが、貨物鉄道のインフラ保持が実現できれば、軽量のローカル旅客列車の存続は容易になります。これ地域の産業政策と抱き合わせで道庁が動くしかないですが、今に至る道庁のスタンスでは実現可能性は限りなく低いと言わざるを得ません。
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